勇者「ここが500年後の世界か……」 1/7

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魔王城──

夜明けとともに戦いが終わりを告げた。

一人の戦士が、魔王を滅ぼしたのである。

魔王「ぐわぁぁぁぁぁ……! ワシの体が朽ちてゆくぅ……!」

戦士「やった……ついにやったぞっ!」

魔王「しかし……なぜだ!? なぜキサマが伝説の剣を持っている!?

たしかにこのワシが破壊したはずなのに……!」

戦士「秘境でひっそりと暮らしてた時空使いってのに出会ってね。

お前が剣を壊した時より過去にさかのぼって、この剣を持って来たんだよ」

魔王「ぐうぅ……! そんなことができる人間がいたとは……!

む、無念……!」ガクッ

戦士(もっともあとでもう一度、過去にさかのぼって剣を戻さないといけないがな。

歴史が壊れてしまうから……)

戦士は故郷の国に帰還を果たし、まずは城に報告に向かった。

城 謁見の間──

国王「よくやってくれた! おぬしはまさにこの国最高の戦士だ……。

いや、勇者と呼ぶに相応しい!」

国王「おぬしには“勇者”の称号を授けよう!

今日からおぬしは、勇者を名乗るがよい!」

戦士「ありがとうございます!」

戦士(俺が……この俺が勇者!? 信じられない……!)

戦士(やったぁっ!)

戦いに生きる者にとって、勇者とは最高に名誉な称号である。

こうして戦士は勇者となった。

次に、勇者は恩師のもとを訪ねた。

マスター流剣術道場──

師匠「このオンボロ道場から、まさか勇者が誕生しちまうとはな。

ったく大したもんだぜ」

勇者「師匠の剣術がなければ、いくら伝説の剣でも魔王は倒せなかったでしょう。

ありがとうございます」

師匠「勇者になっても有頂天にならず、向上心を忘れるなよ」

勇者「はいっ!」

~

賢者の家──

賢者「危険な研究を繰り返し、魔法学界を追放された私から

魔法を習いたいといわれた時は正気を疑ったものだが……」

勇者「あなたの研究した魔法がなければ、魔王の大軍勢には勝てませんでした。

感謝しています」

賢者「こちらこそ、ありがとう。

私の研究が無駄ではなかったと、君が証明してくれたんだよ」

勇者による打倒魔王に大きく貢献したということで、

彼らが世に認められるようになるのはいうまでもない。

そしてようやく、勇者は自分が生まれた町に戻った。

勇者の実家──

勇者「ただいま!」

父「お帰り! 町中お前のニュースで持ちきりだ、よくやったな!」

母「よく無事に帰ってきたね。本当に心配だったんだから」

妹「お兄ちゃん、お帰りなさい!」

弟「兄ちゃん! 冒険の話、聞かせてよ!」

勇者「ありがとう、みんな」

勇者(一週間は祝賀会やらなんやらで、忙しくなりそうだ。

時空使いのところに行くのは、それからかな……)

こうして勇者は、救国の英雄として人々に尊敬され、幸せに暮らした。

めでたし、めでたし……。

──となるはずであった。

一週間後 とある秘境──

勇者は再び過去にさかのぼり、伝説の剣を元あった場所に戻してきた。

勇者「これで歴史を壊さずに済む、か」

時空使い「ああ」

時空使い「しかし、伝説の剣があったとはいえ魔王は強敵だったはず。

称号だけではない。お前は名実ともに勇者だったということだ」

勇者「ハハ、アンタでも人を褒めることがあるんだな。どうもありがとう」

時空使い「さて、行くがいい。私の術は本来この世にあってはならないものだ。

私も住む場所を変える。もう会うこともなかろう」

勇者「時空使い」

時空使い「なんだ?」

勇者「一つ、頼みを聞いてくれないか?」

時空使い「頼み?」

勇者「俺……未来が見たいんだ」

時空使い「未来だと?」

勇者「今俺がいるこの時代は、とりあえず平和になった。

だが、遠い未来果たしてこの平和はどうなっているのか、見届けたいんだ!」

時空使い「………」

時空使い「とかなんとかいって、本当は未来で自分がどう語り継がれてるか

知りたいんだろ? 勇者よ」

勇者「!」ギクッ

時空使い「お前はウソがつけない男だな。ま、そこが気に入ったんだが。

いいだろう。お前がこの世界を救ったのは事実だ。

少し未来を見る権利くらいあるだろうさ」

勇者「あ、ありがとう!」

時空使い「ただし、時空移動はこれが最後だ」

勇者「分かってる。ワガママを聞いてくれてありがとう」

時空使い「分かっているだろうが、確認しておくぞ。

滞在できる期間は半日、12時間経ったら自動的にここに戻る。

ただし向こうで死んだら、死体になったまま戻ってこれない」

時空使い「場所は……なるべくお前の故郷と近い場所に送るようにするが、

多少ずれてしまうだろう」

勇者「大丈夫だ。時空移動はこれで三度目だしな」

時空使い「さて、一番肝心なのは時間だ。どのくらいに飛ぶ?」

勇者「じゃあ……500年後で」

時空使い「500年……またずいぶん先だな」

勇者「あまり近いと、俺が勇者だってバレる可能性があるじゃないか」

時空使い「そうかぁ……? まぁいい、じゃあ500年後に飛ばすぞ」

時空使い「リナネカハキトーネマズイムイタ!」

時空使いが呪文を唱えると、勇者はこの時代から姿を消した。

…

……

………

勇者は道ばたにぽつんと立っていた。

勇者「ここが500年後の世界か……」

勇者(そういや、鎧とか着たまま来ちゃったけど、大丈夫かな……)

勇者(いやいや12時間しかないんだ、色々見て回らないと!)

勇者(すっかり様変わりしてるが、なんとなく見覚えがあるぞ)

勇者(とりあえず、俺の故郷の町に行ってみるか!)

故郷の町──

勇者(すげぇ……! ちょっとした城塞都市みたくなってるぞ……)

勇者(とりあえず門番みたいな奴に話しかけてみるか……)

勇者「こんにちは、旅の者なんですけど」

門番「おおー? 旅の人かね。ぜひ寄ってってくれよ。

ここはかつて世界を救った勇者様が生まれた町『勇者の町』なんだ。

もっとも“町”なんていう規模ではないがね」

勇者(マジかよ、すげー!)

勇者「ちなみに勇者ってのは500年前に魔王を倒したっていう?」

門番「そうそう、勇者様が魔王城に乗り込んで、魔王をやっつけたんだよ。

今じゃ伝記や絵本、教科書にも載ってるから誰だって知ってるよな」

勇者(まちがいなく俺のことだ! すげーすげー!)

勇者が町に入ると、さらに驚くべき光景が広がっていた。

建物は大きく、道路も完璧に整備されている。そして何より──

勇者(町民の中に……俺と同じ格好をしてるのがいるぞ!?)

町民「お、旅のお方。アンタも勇者様ファッションかい?」

勇者(勇者様ファッション……?)

町民「こうやって魔王討伐時の勇者様の格好をしてるとさ。

なんだか俺もやれるかな、って気になってくるんだよね。

アンタもそういうクチだろう?」

勇者「ま、まぁね……」

(少しくらい俺のことが語り継がれてればなーとは思ってたが……。

予想以上だぞ、これは……)

勇者「ところで俺、この町には初めて来たんだ。

もし時間が空いてるんなら、ちょっと案内してくれないか?」

町民「いいとも。少しでも多くの人に、勇者様のことを知ってもらわないとな」

町民「まず、あの大きな建物が『マスター流剣術道場』の本部だ」

町民「勇者様に剣を教えた師匠様の子孫、師範様がリーダーで、

今や世界中に支部を構えている。門下の数はなんと一万人を超える」

勇者「へぇ~(昔は弟子は俺だけだったのに……すごいな)」

町民「あっちの学校は、勇者様に魔法を教えた賢者様の流れを組む魔法学校さ。

こちらも子孫の大賢者様が校長を務めている」

勇者「ほぉ~(賢者さん、研究が認められたのか……よかったなぁ)」

勇者「………」

勇者「ところで、勇者様の子孫はどうされてるんだい?」

町民「えっ、アンタ、そんなことも知らずにここに来たのかい!?」

勇者「いや、まぁ……勉強不足で……」

町民「勇者様の子孫である覇者様は、この町の偉大なるリーダーさ!

国王からも独立自治を認められているほどなんだよ!」

勇者(ウソォ!?)

町民「そして町の中心にある、あれが──勇者様の銅像さ!」

町の真ん中にある広場には、高さ5メートルほどもある勇者像が建てられていた。

勇者(でけぇ! ……なんかずいぶん美化されてるな。ほとんど別人だ。

あんなに鼻高くないし、足も長くないし……でも嬉しいや)

町民「勇者様の一族は、代々あそこの館で暮らしているんだよ」

勇者(うわ、これまたでけぇ~ほとんど城じゃないか。

ずいぶん立派になったんだな、俺の子孫たちは……)

町民「じゃあ、案内はこれくらいでいいかい?」

勇者「十分だよ、どうもありがとう」

町民「じゃあ、この町を楽しんでってくれよ!」

勇者はしばらく町を散策した。

どこもかしこも、勇者グッズであふれていた。

勇者(勇者まんじゅう、勇者ステッカー、勇者ぬいぐるみ……。

お、伝説の剣のレプリカまで売ってるのか、スゴイな)

勇者(これが500年後か……)

勇者(ちょっと照れ臭いけど、来てよかったな……)

勇者(こうまで発展してるとは、先祖として鼻が高いぞ。うんうん)

町をぐるりと一周し、勇者は銅像の前に戻ってきた。

すると、じっと勇者像を見つめる少女がいた。

少女「………」ジーッ

勇者「君も勇者様、好きかい?」

(ま、俺が本人なんだけどね……。ああ、バラしたい衝動に駆られる……)

少女「勇者様なんか、嫌い……大嫌いっ!」

勇者「なっ……!」カチン

タタタッ

兵士A「キサマ、今勇者様を侮辱したな!?」

兵士B「許さんぞ!」

勇者(お、いってやれ、いってやれ)

兵士A「このクソガキがっ!」

バキッ!

少女「あうっ……!」

勇者(え!?)

ドカッ! ガスッ! バシッ!

少女「う、うぅ……」

兵士A「とんでもないクソガキだ!」

兵士B「さっさと連行してしまおう!」

勇者「ちょ、ちょっと待てよ! なにも殴ることはないだろう!?

勇者を嫌いっていったぐらいで──」

兵士A「む、キサマ、このガキを擁護したな!? 同罪だ!」ブンッ

勇者「おっと」ヒョイッ

兵士A「ちいっ(この身のこなし……手強いな)」

ピピピ~~~~~ッ!

兵士Aが笛を吹くと、大勢の兵士が集まって来た。

勇者(おいおい、マジかよ……)

勇者(俺だけなら逃げることもできるだろうが……あの女の子が心配だな。

仕方ない、大人しく捕まるか……。どうせ12時間経てば帰れるし……)

勇者と少女は捕まってしまった。

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