勇者「魔王!お前を倒す!」魔王「ま、参った!」タンス「・・・」 2/5

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門番A「ぐっ・・・」バタッ

門番B「て、敵襲だあああああああああああああ!ピューーーーーーーー!」

門番C「なんだと!」

門番D「どこのどいつだ」

門番E「他にも知らせろ!」

門番F「警報!警報!至急応援を求む!」

門番G「囲め囲め!」

門番H「逃がすなよ!」

勇者「げっ・・・どんどん増える・・・」

賢者「はぁ・・・だから言ったんです・・・」

武道家「・・・」フルフル

魔法使い「ほほほほほほっ!こりゃ賑やかじゃわい」

勇者「やるしかないか・・・!手加減忘れずにね・・・」

勇者「みねうち!」ドスッ

門番Z「ぐっ・・・」バタリ

門番α「こいつら強いぞ、もっと応援を呼べ!」

門番β「近づくな!遠くから攻めるんだ!」

門番γ「男のガキに気をつけろ!すげえ力だ!」

勇者「きりがないな・・・どんどん増える」

賢者「広域魔法で全部ふっとばすわけにも行きませんし・・・」

勇者「ご、ごめん・・・」

武道家「・・・」フルフル

魔法使い「ほほっ、いったん引くしかないか。ほれっキメラの翼!」ビューン

魔法使い「勇者よ。今回は無茶がすぎたのぅ」

賢者「あなたが煽ったんじゃないですか!」

魔法使い「そうだったかのぅ、最近物忘れが激しくての」

賢者「とぼけないでください!」

勇者「ご、ごめんなさい・・・」

賢者「い、いえ、勇者に言ったのではありません。これから気をつければいいのです」

武道家「・・・」コクコク

魔法使い「あーずるいぞい!全部わしのせいかい。勇者がかわいいからって贔屓じゃわい」

賢者「へ、へんなこと言わないでください!」

魔法使い「まぁ、ええわい。勇者今回のことはいい教訓になったじゃろう」

勇者「うん・・・。僕、急ぎすぎてたみたい」

魔法使い「勇者よ、北風と太陽という話をしっておるか?」

勇者「どんなのだっけ」

魔法使い「北風と太陽が賭けをしたんじゃ。旅人の女の子の服を脱がしたほうが勝ちという賭けをな」

魔法使い「北風はのぅ、女の子を待ち伏せるためにまず、その行動をすとーきんぐしたんじゃ」

魔法使い「そして、丁度いい公園を途中で見つけての、そこを夜中通ることを発見したんじゃ」

魔法使い「夜中、女の子が通るのを木陰に潜んでずっとまっておってのぅ」

魔法使い「北風は、通りかかった女の子を強引に連れ込み、服を脱がそうとしたんじゃ」

魔法使い「当然女の子は抵抗しての。悲鳴を聞きつけた警察に連れて行かれてしもうたんじゃ」

魔法使い「一方、太陽はじっくりと友達になることからはじめての」

魔法使い「ついには恋人になり、ホテルの一室で女の子の服を脱がすことに成功したんじゃ」

勇者「そ、そんな話だっけ?」

魔法使い「この話の教訓はの。焦りは禁物、女の子は時間をかけておとせ、じゃ」

賢者「変な話を勇者に吹き込まないでください!」ドスッ

魔法使い「ぐへっ・・・効いたぞい・・・」

賢者「まったく!魔法使いはまったく!」プンプン

武道家「・・・」コクコク

魔法使い「まぁ、そんな焦ることはないということじゃ」

勇者「うん」

魔法使い「じゃが、いい勉強にはなったのぅ。勇気と無謀の履き違えは己だけではなく、仲間まで危険に晒すことになるんじゃ」

賢者「どーせ、どっかの伝説の勇者の受け売りなんでしょ」

魔法使い「ほほっ、まぁそうなんじゃがな」

武道家「・・・」コクコク

魔法使い「要するに、できる事は手の届く範囲にして置こうということじゃ。ほれっ、こんなふうにの」ムニムニ

賢者「エロジジイ!」ドガッ

魔法使い「ぐはぁ」バタッ

勇者「じゃあ、どうやって関所を越えようか」

賢者「私に考えがあります、このようなのはいかがでしょうか」

【関所】

魔法使い「相手に化けるとは考えたもんじゃのう」

賢者「とりあえず魔法使いはそのまんま、敵の魔法使いと大して変わらないから変装はなしです」

魔法使い「ひ、ひどい・・・」

賢者「前のとは別の入り口から行きますよ。さすがにあれだけ大暴れしたところは警戒してるでしょうから」

勇者「そうだね」

賢者「それから私と勇者と武道家はどうみても背が足りないから3人でフードを被って1人として化けましょう」

武道家「・・・」コクン

賢者「私が勇者の上に乗ります。武道家は下ね。勇者は真ん中で本体です」

勇者「け、賢者やわらかい・・・」

賢者「勇者、しっかり支えてください。武道家も」

武道家「・・・」コクン

魔法使い「う、うらやまけしからん・・・」

賢者「よし、じゃあ行商人ということでいきますからね。気をつけてくださいね」

勇者「うん」

武道家「・・・」コクッ

魔法使い「ほほっ」

門番P「ん?なんだ?」

魔法使い「どうもご苦労さん!」

門番Q「まぁ、待て待て。お前らは?」

魔法使い「ほほっ、わしらはただの行商人ですじゃ。ほれっ酒を届けにの」

門番P「ほう、確かに馬車の中は酒だな」

魔法使い「こんなところでずっと立っておったら寒かろう。何本か置いていくからのむがよいぞ」

門番P「おう、じいさん。悪いな」

門番Q「ん?こっちのやつは?」

勇者「は・・・は・・・はっ」

賢者「ゆ、勇者・・・ちょっと・・・」ボソボソ

勇者「はぁっくちょん!」

門番Q「わ、びっくりした」

魔法使い「そ、そやつは風邪を引いておるからの。近づかんほうがよいぞい」

門番Q「へんなとこから声がしたような・・・」

魔法使い「気のせいじゃろう、風邪がうつるぞ・・・ご・・・ごふっ・・・」ボタボタ

門番Q「おい、じいさん・・・血が・・・」

魔法使い「ほほっ・・・わしにもうつっておったようじゃわい」

門番Q「そ、そうか。おい、近づくな」

魔法使い「それじゃあ失礼するぞい」

賢者「ふぅ、あぶなかったですね」

勇者「くしゃみが我慢できなくって・・・ごめん」

武道家「・・・」ナデナデ

魔法使い「そう気にするでない。ナイスアドリブじゃぞ。ほほほっ」

賢者「魔法使いもね。突然あんなアドリブするからビックリしちゃった」

武道家「・・・」コクコク

勇者「そうだよ。トマトケチャップか何か?」

魔法使い「まあの・・・そんなようなもんじゃ」

賢者「まぁ、うまく誤魔化せましたけど・・・」

魔法使い「ここからは敵陣じゃ。すにーきんぐみっしょんで行くぞい」

賢者「意味分かってるんでしょうか・・・このじいさん・・・」

勇者「あはは」

【街道】

賢者「ところで、ねぇ勇者。あなたの剣ってずいぶん立派ね」

勇者「え?これ?」

賢者「ええ、所々に法力が練りこまれていて、剣自体が闘気を宿しているような・・・どこでこんな剣を?家の家宝か何かですか?」

勇者「ううん、僕、父さんも母さんも死んじゃっていないから」

賢者「あ・・・ごめんなさい・・・私・・・」

勇者「気にしないで。ずっと昔のことだから」

勇者「これは王様がくれたんだよ。僕は父さんの形見の剣を持っていくつもりだったんだけど、これにしてけって」

魔法使い「ほほっ、あのドケチの王がよくそれを渡したもんじゃわい」

勇者「あはは。現金は50Gとしてくれなかったけどね。父さんの剣は家に大事に置いてあるよ」

賢者「ずいぶん詳しいわね。王様と知り合いなの?魔法使い」

魔法使い「長いこと生きてれば知り合いも多いわい。腐れ縁というやつじゃ」

勇者「父さん母さんが死んじゃってから、お城でお世話になってたからかなぁ」

魔法使い「お前さんに、それを持つ資格があると思われたんじゃよ、ほほっ」

賢者「勇者、わたしもね・・・。両親はいないんです」

勇者「そうなんだ」

賢者「でも両親は私に色々なものを残してくれました。特に書庫には珍しい本がたくさんあって・・・。

それでたくさん勉強したかいあって、こうして賢者になれたんです」

勇者「がんばったんだね」

賢者「それに、両親が生きてた時に買ってくれた靴を、ずっと大事にしてるんです。ほらっ」

勇者「綺麗な靴だねー」

魔法使い「ほほっ、それも勇者の剣に負けず劣らずの貴重なものじゃぞい」

賢者「これを買ってくれた両親のことを思い出すだけで、楽しくて、幸せになれるんです」

勇者「あはは。うらやましいなぁ」

武道家「・・・」コクッ

賢者「ふふ。でも、こうしてお互いのこと話すの初めてかもしれませんね」

勇者「そっか。僕達、まだお互いのことあまり知らなかったんだね」

魔法使い「じゃ、わしもわしも!赤裸々に語っちゃうぞい」

賢者「魔法使いは自重しててください」

魔法使い「ひ、ひどいのぅ。じゃあ、結束力アップのために、また『約束』というのはどうかのぅ」

賢者「いやらしいことじゃないでしょうね・・・」

魔法使い「違うわい!わしをなんじゃと思っておるのじゃ」

賢者「エロジジイ」

武道家「・・・」コクコク

魔法使い「ほんとにすねるぞぃ・・・。まぁ聞くがよい。これまでも敵から何者かと聞かれることがあったじゃろう」

勇者「うん」

魔法使い「そのような時、古では『名乗りを上げる』ということをやっておったのじゃ。正々堂々、勝負をする上で、お互いの名前を名乗り、負けて死んだとしてもその名を心に刻めるようにの」

賢者「へぇ・・・。そんな風習があったんですか」

勇者「か・・・かっくいい!」

魔法使い「わしが名乗りの上げ方を教えるから、みんなでやるんじゃ。これには団結力を養う意味もあるんじゃぞ」

勇者「へぇー!」

魔法使い「あと、キメポーズも忘れずにの」

賢者「な、なんでそんな恥ずかしいまねを・・・」

魔法使い「恥ずかしいとはなんじゃ!古式ゆかしい慣わしじゃぞ」

賢者「恥ずかしいポーズじゃないでしょうね」

勇者「へぇ、じゃあ今度からやろうね」

武道家「・・・」コクコク

賢者「はぁ・・・わかりました・・・」

【魔王城前】

賢者「なんとかここまで来れましたね」

武道家「・・・」コクッ

魔法使い「自陣では敵も油断しておるからのぅ。ほほっ」ペタペタ

賢者「っっ!や、やめてください」

魔法使い「ここじゃ、目立つことは出来ないじゃろ。ほれほれ、ここがええのんか」クリクリ

勇者「魔法使い、やめてあげてよ。もう・・・」

魔法使い「すまんすまん、緊張をほぐそうとのぅ、ほほっ」

賢者「あとで殺す・・・」

賢者「さて、どうやって魔王までたどり着くか・・・ですね」

勇者「正面から行ったら、また関所の時みたいに、いっぱい応援が来ちゃうよね」

魔法使い「じゃが、それしか手はないじゃろうの」

勇者「さすがに変装しても入れないよね。うん、やっぱり正面からだよ」

賢者「勇者?」

勇者「正面から中に入ったら、入り口を壊そう。外からの応援は防げるよ」

賢者「しかし、中にも相当数の衛兵がいるかと・・・」

勇者「狭い城内なら全員で囲まれることもないよ、だめかな?」

魔法使い「ほほほっ、マジかいの」

勇者「城の中の兵全部が相手になるけど・・・僕達ならできるよ!」

賢者「まぁ、勇者がやるというのならやりますか」

魔法使い「ほほっ、わしわっくわくしてきたぞい」

武道家「・・・」コクリッ

勇者「いくよ!」ダッ・・・ババッ

門番I「む・・・なにも・・・ぐっ・・・」バタッ

門番J「なにも・・・・がっ・・・」バタッ

勇者「みねうちだよ、ちょっと眠っててね」

魔法使い「なかなかやるのぅ、ではわしもいくかの」

魔法使い「ほっ、回し打ち!」

門番K「・・・」バタッ

門番L「・・・」バタッ

賢者「はやっ!あんたやっぱり魔法使いじゃないでしょ!」

魔法使い「ほれっ、お前さんの出番じゃぞい」

武道家「・・・」コクッ

武道家「・・・」ドガアアアアアアアアアン

勇者「す、すごい・・・。正拳だけで入り口が崩れた・・・」

賢者「さ、来るわよ!」

魔法使い「ほほっ!」

衛兵A「何事だ!」

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