「あ、こら、暴れるな」
僧侶「わんわんおっ!」ダッ
「逃げるな、おい、追いかけるぞ」
ダダダッ
勇者「ん?」
僧侶「わんわんおっ!わんわんおっ!」フリフリッ
勇者「このしっぽ振ってる犬は……」
「あ、すみません。すぐ片付けますんで。ほらっ、こっち来い!」
僧侶「きゃうん!」
勇者「えっとあなたは?」
「保健所の者です。この辺りもノラ犬が増えちゃって……」
勇者「野良犬?」
「ええ、こいつ!さっさと来い」グイッ
勇者「野良犬はその後どうされるんだ?」
「殺処分ですよ。まったく、犬を飼うなら最後まで面倒見て欲しいですね」
僧侶「わんわんおっ!?」
勇者「野良犬か。あの可愛い僧侶が野良なわけないよな」クルッ
僧侶「わんわんおっ!?」
「ほらっ、行くぞ」グイグイッ
僧侶「わんっ」ガブッ
「いてっ」
ダダダッ
ギャブッ
勇者「ぎゃあああああ!いってえええ!噛みやがった!」
「こらっ、離せ」グイッ
僧侶「ギャルルルル」ガブガブッ
勇者「や、やめて。千切れる」
パッ
僧侶「わんわんおっ!」
勇者「んっ、何か持ってるな。お前、もしかして……」
「どうもすみません。すぐ連れて行きますんで」
勇者「待て」
「え?」
勇者「よく見たらこれ俺の犬だわ」
「は?」
勇者「わりぃわりぃ、あー、首輪外れちゃったんだなー」
「そうなんですか?」
勇者「そうそう、だから俺が引き取るから」
「わ、わかりました」スタスタ
僧侶「わんわんおっ」
勇者「ちょっとくわえてるそれ見せてみろ」チャランッ
勇者「これは……俺が僧侶にプレゼントしたロザリオ……」
僧侶「わんわんおっ!」フリフリッ
勇者「プレゼントして……そして趣味が悪いとか言われて捨てられたロザリオ……」
僧侶「わんわんお!?」
勇者「話しかけるたびに顔真っ赤にして3日ほど口聞いてくれなかったロザリオ……」
僧侶「……」
勇者「俺のトラウマロザリオをなんでお前が……」
勇者「こんなもの……破壊しつくしてくれる!!」ゴゴゴゴゴゴ
僧侶「がうっ!」ガブッ
勇者「いてぇ!」
チャラ
勇者「なんだよ、お気に入りか?」
僧侶「わふわふっ」グイグイッ
勇者「なんだ?引っ張って」
僧侶「うーっ」グイグイッ
勇者「わーったよ。行けばいんだろ?なんか僧侶のこと知ってるのか?」
勇者「ったく、こんな汚い犬よりはやく、僧侶に会いたいぜ」
スタスタ
僧侶「わんわんおっ!」
勇者「ここは……」
勇者「俺と僧侶が初めて会った場所じゃないか」
勇者「まさか……」
僧侶「わんわんおっ!」フリフリッ
勇者「ちょっ、お前見せてみろ」グイッ
勇者「これは……メスだ!」
僧侶「きゃふっ!?///」カー
勇者「お前僧侶か!?」
ガブリッ
勇者「ぎゃーー!また噛んだ!」
僧侶「がぶがぶっ(どこ見てるんですか!変態!)」
勇者「ほんとにちぎれちゃうからやめて!」
パッ
僧侶「わんわんおっ(もう……勇者は……)」
勇者「ふぅ。なぁ僧侶……だよな?」
僧侶「わんっ!(はい)」
勇者「そうか。なぁ、魔王様って……本当に素晴らしい方だよな?」
僧侶「わふっ!?(え?)」
勇者「わ、わりぃ。俺もお前と同じでちょっと変なんだ」
僧侶「わんわんお!?(え?まさか……)」
勇者「言えないんだけどな。よし!僧侶は見つけた。たぶん!」
僧侶「わんわんお!(僧侶です!)」
勇者「次は戦士の村が近いな。行くか!」スタスタ
僧侶「キャインキャイン」
「あー、またこんなところに野良犬が……こっち来い。保健所に行くぞ」
勇者「またか!それ俺の将来のお嫁さんだから!」
「え?犬がお嫁さん……?え?え?そういうプレイ?」
勇者「い、いや、あの……」
「変態だー!」ダダダッ
勇者「よし!首輪買って来たぞ」
僧侶「わんわんおっ」
勇者「今、着けてやるから。これで保健所に連れてかれたりしないぞ」チャッ
勇者「……」ドキドキ
勇者「お、俺今、裸の僧侶に首輪をつけようとしてる……」ドキドキ
僧侶「わんっ!?」
勇者「裸で四つんばいの僧侶に首輪を……犬だけど」ドキドキ
勇者「いや、想像しろ……想像を加速させるんだ……」
勇者「俺は……裸で四つんばいの僧侶に首輪をつける……」
勇者「見えた!」
僧侶「がぶっ!」
勇者「いてぇ!ちょっ、僧侶!冗談!冗談だって!」
僧侶「わんわんおっ!///」カー
勇者「あ、そういえば僧侶、お前お尻の○丸見え……」
僧侶「がうっ!」ガブリッ
勇者「犬用の服買って来ました」ペコペコッ
僧侶「わんわんおっ!」
勇者「ほらっ、履かせてやる」ドキドキ
勇者「でもこんなんしたらトイレの時どうするんだ?」
僧侶「わふっ!?」
勇者「その度に俺が脱がすのか?僧侶の下」
勇者「それもいいけど……」
僧侶「……」タタッ
勇者「あ、いらねーの?服」
僧侶「わんわんおっ!(もういいです!)」
―――町
勇者「ふぅ、やっと次の町についたぜ」
勇者「城下町じゃ兵とかに見つかったらやばいしな」
僧侶「わんわんおっ?」
勇者「ここで休んでいこうぜ。体も洗いたいだろ?」
僧侶「わんっ!」フリフリッ
勇者「お前お風呂好きだったもんなー」
勇者「よし、あそこの宿にするか」
ギィ
宿屋「いらっしゃい。1名様……ですか?」ジロジロ
勇者「2名でよろしく」
僧侶「わんわんおっ!」
宿屋「まさか……その犬?」
勇者「ああ、そうだけど」
宿屋「犬はお断りだよ。泊まるんなら犬は外に繋いでおいてくれ」
勇者「いや、そんなわけにはいかないんだ。お願い!」
宿屋「だめだめ!お兄さんだけなら歓迎するから。犬なんてあっちやって。しっしっ」
僧侶「きゅぅん……」スタスタ
勇者「待て僧侶」
僧侶「?」
勇者「じゃあ俺も泊まらないからいいよ」
宿屋「え?ちょっと、この辺に犬と一緒に泊まれるような宿はないよ?」
勇者「いいんだ」
宿屋「まぁまぁ、お兄さんだけでも泊まっていってよ。サービスするから」
宿屋「こっちは魔王の手下に町を荒らされて不景気でね。一人でもお客さんは逃したくないんだよ」
勇者「……魔王様は素晴らしい」
宿屋「え」
勇者「魔王様の手下のせい!?魔王様の考えは素晴らしい!従わない町が悪いんだ」
宿屋「んだと、こらっ」
勇者(しまった!俺……僧侶もいるのに)
僧侶「わんわんお!?」
宿屋「表に出ろやこらぁ!」ドンッ
勇者「魔王様に従うのが一番だ!」
宿屋「まだ言うか!俺は女房を魔物に殺されてんだよ」ボカッ
勇者「あぐっ……それも魔王様の考えに従わないから……」
宿屋「てめぇ!殺してやる!」
ドガッ バキッ ドスッ
勇者(くっそ、この人殴っちまうわけにもいけねーし……)
宿屋「まだまだ俺の怒りはおさまらねーぞ!おらぁ!」
勇者「くっ」ビクッ
宿屋「ん?誰だ?とめんじゃねーよ」クルッ
宿屋「誰もいない?」
宿屋「オラ!続きだ……だからとめんじゃねーって」クルッ
宿屋「???」
宿屋「き、気味わりぃな。けっ、このへんにしといてやる。消えうせろ!糞ガキが!」ペッ
ベチャァ
勇者「……」
勇者「はは……悪いな、僧侶。今日は野宿っぽいわ」ボタボタ
僧侶「きゃうん(勇者……血が……それに私のせいで……)」
勇者「よっこいせっと。この辺で寝るか……うぅ……寒いな」
僧侶「……」スタッ
勇者「おわっ、なんだ、乗ってきて」
僧侶「……」ペロペロ
勇者「お前毛皮があるからいいなぁ、暖かい……」ギュッ
勇者「お休み僧侶」
僧侶「わんわんおっ(おやすみなさい。勇者様……」
勇者「んーっ朝かー!」コキコキッ
勇者「体いてー!はははっ」グッグッ
勇者「でも僧侶のおかげで凍死せずにすんだな」ギュッ
僧侶「きゃふっ///」
勇者「さて……行くか!」
僧侶「わんわんおっ!」
勇者「あ、そうそう。俺ちょっと思いついたんだけどさ。呪いって教会で解けないかな?」
僧侶「わんっ!」
勇者「だろ?ちょっと行ってみようぜ」
僧侶「わんわんおっ!」