―――山林
勇者「おーい、ゴリラー!」
僧侶「わんわんおー!(戦士さーん!)」
「うほっ(親分、また人間がきやがりましたぜ)」
戦士「うほうほっ(親分じゃねー、くそー。魔王め……ゴリラになんぞしやがって)」
「うききっ(兄貴ー、また頼みますぜ)」
戦士「うほっうほっ(兄貴でもねー。村に帰っても怖がられるしどうすりゃいいんだよ)」
「うほっ(親分!)」
「うきっ(兄貴!)」
戦士「うほっ(あー、分かったよ。ここで生き延びたのもお前らのおかげだ。追い出せばいいんだろ)」ジャキンッ
戦士「うほぁ!」ダーンッ
僧侶「わふっ!?(上!?)」
勇者「うおっと。剣撃!?」ギィン
戦士「うほっ!(勇者!)」
勇者「やっぱり戦士じゃないか!変わらないなぁ!」
戦士「うほっ!(変わってるっての!なんですぐ俺って分かるんだ!)」
勇者「久しぶりだなぁ。戦士」バンバンッ
戦士「うほっ!(勇者、俺ゴリラにされちまって……)」
勇者「ゴリラ?お前どこも変わってないじゃん。呪い受けなかったんだなー」
戦士「うほほっ!?(呪われてるっての!ってなんで言葉わかんだよ!」
勇者「あははははは、戦士は最初からそんな感じだっただろ?」
戦士「……うほっ(凹むぞマジで)」ズーン
勇者「あ、戦士、こっちの犬が僧侶だ」
僧侶「わんわんおっ!」
戦士「うほほっ(おおうっこんなちっちゃくなっちまったのか)」グイッ
戦士「うほほうほっ(んーっ、メスか。尻の○丸見えだな)」
僧侶「がうっ!///」ガブッ
戦士「うほほっ(しかし魔王のやつめ……えぐいことしやがる。言葉が伝わらないのがこんなにつらいなんてな)」
勇者「何を言っている。魔王様はとても素晴らしい方だろうが」
戦士「うほっ?」
勇者「あ……これはちがくてだな……その……俺は魔王様を尊敬している!」
戦士「うほほ(魔王は俺たちの敵だろ)!?」
勇者「魔王様を倒すなど許さないぞ!」
戦士「うほっ(おい、どうしちまったんだよ!勇者!)」グイッ
勇者「魔王様は……とても素晴らしい……お方です……」ブルブルッ
勇者「ううううっ……」ツーッ
戦士「うほっ(お、おい……唇噛んで……血が出てるぞ)」
勇者「魔王……様は……ぐぬぬ……」ブルブルッ
戦士「うほほっ(お前……もしかしてそれが魔王の呪いか?)」
勇者「戦士!?」
戦士「うほっ(魔王に媚びへつらっちまうのか……ひでえ目にあっただろ?)」
勇者「戦士……お前……ただの足の臭いゴリラじゃなかったんだな……」ポンッ
戦士「うほほっ!(お前が酷いな!)」
勇者「よし!お前の口から王様達に説明してくれ」
戦士「うほっ!?(いや、俺今ゴリラだから!)」
勇者「もともとゴリラだろ。行くぜ」グイッ
僧侶「わんわんおっ!」
戦士「ちょっ」
「うほうほっ(親分、いっちゃうんすかー)」
「うほほ(兄貴ー、行かないでくれー)」
「うほうほっ(女達残して行くなんてかわいそうっすよー)」
「うほっ(群れのボスなんだから最後まで面倒見ろよな)」
戦士「うほっ!(俺はボスじゃねーし、メスゴリラ達と結婚もしてない!)」
勇者「何?お前ゴリラとやったの?」
―――王城前
勇者「行くぜ」
僧侶「わんわんおっ」
戦士「うほうほっ(いやいや、無理だろ。無理無理、無理だって!俺の言葉わかんねーって!)」
勇者「俺は警戒されてるからな。強行突破で王様に直談判だ」
戦士「うほほ(それより盗賊のやつ探そうぜ、なぁ)」
勇者「でも盗賊どこいにいるか見当もつかないしなぁ」
戦士「うほっ(結構その辺にいるかもしれねーぞ?)」
勇者「お前盗賊が何されたか見たか?」
戦士「うほほっ(よく見えなかったな。突然消されたようだったが……)」
勇者「うーん……」
ポンポン
勇者「ん?誰だ」クルッ
勇者「誰もいない?まぁ当たって砕けろだ!戦士!任せたぞ!」ポンッ
戦士「うほほっ!(だから無理だって!)」
兵「あ、勇者殿」
勇者「悪いけど……通らせてもらう」ジャキンッ
兵「探しましたよー。王様が待ってますよ」
勇者「え」
兵「ん?後ろのそれは?」
勇者「あ、えっと、お、俺のペットのゴリラと将来の妻!」
兵「……なかなか良いご趣味ですね、ま、まぁどうぞ」スタスタ
戦士「うほほっ(なんだ?警戒されてねーじゃねーか)」
勇者「おかしいなぁ」
僧侶わんわんお!(妻とか言わないでください!恥ずかしい!)」
王様「おお!勇者殿!戻って来ていただきましたか!」
勇者「王様……これは?」
王様「わしは勇者殿に謝らねばならんな.……」
勇者「え」
王様「魔王のことじゃ」
ビクッ
勇者「魔王様はとても素晴らしいお方です」
勇者「あ……くそっ……また言っちまった……今度こそ殺されるか)グッ
王様「まったく勇者殿の言うとおりじゃ」
勇者「へ?」
王様「なんとの、魔王から丁重な書状での、謝罪と停戦の申し入れがあったのじゃ」
勇者「王様!それは素晴らしい申し入れです!(騙されるな!)」
王様「じゃろう?わしも誤解しておった。この度の戦も魔王の望んでいることではなかったようなのじゃ」
王様「お互いの誤解が誤解を生みこのようなことになったと」
王様「近く、この王城で停戦協定の会談を行うことになった」
王様「勇者殿、いろいろすまなかったな。魔王を倒せと言ったり、勇者殿の言動を疑ったり」
勇者「うううっ……」ブルブルッ
勇者(動け……動くんだ……俺の口……)
勇者(戦士……言ってくれ……)
戦士「うほうほうっほー!(王様ー!戦士だ!話を聞いてくれ!)」
王様「おお!可愛いゴリラじゃのぅ。勇者殿のペットかの?」
勇者「はい……今日はこれで帰ります」ブルブルッ
王様「そうか、会談の折にはまた来るがよい。お主の尊敬する魔王に会えるぞ。あっはっは」
勇者「うぐぐ……」ブルブルッ
戦士「うほっ(おい!どうするよ!会談で王様を殺すとか言ってただろ。魔王は)」
僧侶「くぅ~ん……」
勇者「戦士の言葉が通じないとは……なぜだ」
戦士「うほっ!?(そこ!?)」
勇者「お前本当にゴリラになったの?」
戦士「うほうほっ!(マジ怒るぞこのやろう)」
勇者「あとは盗賊か……」
戦士「うっほうっほ(なぁ勇者、きっと盗賊は雉だぜ雉!)」
勇者「は?なんで?」
戦士「うほっ(犬、猿と来たら雉だろ?)」
勇者「お前は馬鹿でいいなぁ」ハァー
戦士「うほっ!(お前が言うな!)」
勇者「もうこうなったら実力行使しかないかもな……」
戦士「うほほ?(力づくってことか?)」
僧侶「わんわんおっ?」
勇者「ああ、魔王が自身で会談にくるんだ。そこで仕留めれば呪いも解けるかも……」
戦士「うほっ(まぁ俺らが何を言っても聞いてもらえないからな)」
僧侶「きゅぅん」
勇者「そんな落ち込むなよ!大丈夫!」
戦士「うほほ?(だが、勝てるのか?以前負けただろ。それに今回は盗賊もいないで……)」
勇者「前は不意打ちでやられただけだ。今度は真面目にやろう」
僧侶「わんわんおっ!(最初から真面目にやってください!)」
「」
僧侶「わふっ?(え?)」
勇者「どうかしたか?僧侶」
僧侶「わんわんお!(なんか盗賊の突っ込みを聞いた気がして……)」
―――会談の間
王様「ようこそお越しくださいました。魔王殿」
魔王「歓迎など結構。まずは謝罪させていただこう」スッ
魔王「この度の戦……私の不徳のいたすところだ。本当にすまなかった」ペコリッ
王様「そ、そんな、頭を上げてくだされ」
魔王「だが……」
王様「ほらっ、どうぞ席に」
魔王「分かった。ところでここには二人きりですかな?」
王様「ああ、兵も下がらせてある。勇者殿たちが後から来ることになっておるが……」
魔王「そうか」ニヤリッ
王様「魔王殿?」
兵「ちょっ!ちょっと勇者殿!まだですって!まだ入っちゃだめ!もうちょっと待って!」
勇者「待ちきれないの私!魔王様!」ズルズルッ
兵「ちょっとー!」ズルズルッ
戦士「うほほっ(もうやけだな)」ダダッ
僧侶「わんわんおっ!」タタッ
勇者「魔王様ー!」
バタンッ
王様「勇者殿!?」
魔王「ふふっ、来たか」
勇者「魔王様はとても素晴らしいお方です!」ジャキンッ
王様「ちょっ、勇者殿、その剣で何をする気じゃ……」
勇者「魔王様!敬愛しております!」ダダダッ
王様「や、やめっ!」
勇者「うおりゃあああ!」
兵「取り押さえろー!」ガシッ
勇者「な……何を……」
「動くな」グイグイッ
「乗れ乗れー!」ドシドシッ
勇者「うおっ……おもっ……」ググッ
戦士「うほっ(うごけねぇ)」ググッ
僧侶「きゃうんっ(変なとこ触らないでー)」ググッ
勇者「や、やめろ……こいつは……魔王様はとても素晴らしいお方なんだぞー!分かっているのかー!」ジタバタ
王様「申し訳ない……勇者殿がこんなに乱心しているとは……」
魔王「いえ、気にする必要はない。ははは」
魔王(くくくっ、勇者、もっと見せろ。貴様の苦しむ姿を、絶望を……ふはははははは)
魔王(勇者よ……貴様は自分の守ろうとしたものの手にかかって死ぬのだ)
魔王(くくっ、感じるぞ。お前の憎しみ、絶望、それが私の力となる)
魔王「ふははははは」
王様「魔王殿?」
魔王「おっと、会談を続けようではないか」
トスッ
兵「はぅっ」バタッ
「」バタッ
「」バタッ
王様「兵達が突然……倒れた?」
勇者「?」
戦士「うほっ?」
僧侶「わんわんおっ?」
魔王「貴様……来ていたのか。まだ正気を保っていたとはな……盗賊!」
盗賊「」
王様「あ、あの……魔王殿?どういうことで……」
魔王「王よ、お前は眠っているがいい」ドスッ
王様「」バタッ
魔王「後でたっぷり絶望を与えて殺してやる」