魔法使い「レベルの高いモンスターはね、それだけ経験と知恵があるの」
魔法使い「後は、いわなくてもわかるわよね?」
子供「凄い!腐っても勇者なんですね!」
勇者「あれ?いつ俺腐ったの?」
魔法使い「さぁ」
魔法使い「それより足が痛いわ」
勇者「ハイヒールなんて履くからだよ」
勇者「ちなみにドラゴンよりリスの方が強い」
子供「え?」
勇者「高速でカリカリしてくる」
子供「結構遠い・・・」
勇者「魔王の城が人里近くにあったらおかしいだろ」
子供「専用の駅作っておいてそれはないよぉ」
魔法使い「文句が多いとおいてくわよ」
子供「ごめんなさい」
勇者「喧嘩するなって・・・ほら、見えてきた」
子供「うわ、なにあの物々しい雰囲気の城は」
子供「コウモリとんでるし」
魔法使い「夢壊して悪いけど、あれ全部鳩よ?」
子供「え?」
子供「あぁ、よく見ると糞だらけ・・・」
勇者「物々しいよな」
魔法使い「物々しいってどういう意味だっけ」
勇者「さぁ、俺たち中卒だし」
子供「え?」
勇者「着いたな」
子供「うわ、でっかい門」
魔法使い「何度見ても凄いわね、この門」
子供「どうするの!鍵もってるの!」
勇者「え?」
子供「あ、パンチとか魔法でぶっ壊すのか!すごい!!!」
勇者「普通にインターフォン押すけど・・・」
子供「え?」
魔法使い「物騒ねあんた・・・」
子供「なんで僕が異常みたいになってるの?」
ピンポーン ピンポーン
『はーい』
勇者「勇者ですけど」
『あ、今あけまーす』
ゴゴゴゴゴ
子供「自動開閉・・・」
魔法使い「いい加減夢捨てる覚悟できた?」
子供「まだ・・・きっと・・・」
勇者「さっさと入るぞ」
子供「うわぁ、一面お花畑だし・・・」
ガチャ
魔女王「いらっしゃい」
勇者「ども」
魔王子「ママー、だれー?」
魔女王「勇者さんと、魔法使いさんよ」
魔王子「あー!こんちわー!」
魔法使い「こんにちわ」
子供「・・・・」
勇者「今日はもう一人連れがいるんです」
魔女王「あら、かわいい子ね」
魔女王「今お茶出しますから、あがって」
勇者「いつもすみません」
子供「夢でも見てるの?」
魔法使い「おいしい紅茶♪」
魔女王「うふふ♪」
子供(敵陣の真っ只中でおもてなしを受けてる・・・)
魔王子「チョコレートケーキきらいなのー?」
子供「いや、好きだけど・・・」
魔王子「それより向こうで遊ぼうよー!」
子供「え、でも」
勇者「遊んでこいよ」
魔王子「いくよー!」グイッ
子供「ちょっと、まってよ」
魔法使い「いいわね、子供は無邪気で」
勇者「あぁ・・・」
魔女王「いつもすみません」
勇者「こちらこそ・・・」
ガチャっ
魔王「戻ったぞ」
魔女王「おかえりなさい」
勇者「よう」
魔法使い「こんにちわ」
魔王「勇者に魔法使いではないか!久しいのう」
勇者「三ヶ月ぶりくらいじゃん」
魔王「がはは!最近どうだ?」
勇者「半分ニートみたいな生活だからな、変わりねえよ」
魔法使い「まったく、もう」
勇者「どこいってたんだ?」
魔王「ちょっとモンスター達の様子を見にのう」
魔女王「どうでした?」
魔王「我輩のいう事をきいて大人しくしているようじゃ」
勇者「あぁ、それで・・・」
魔王「どうかしたか?」
勇者「いいや、なんでも」
魔王「今日は二人か、ほかのメンバーの顔も見たかったが」
魔法使い「みんな忙しいみたい」
魔王「これも時代の流れか・・・さびしいのう」
勇者「・・・・」
勇者「あ、これ手土産」
魔王「おう、すまんな」
魔法使い「あんたいつの間に」
勇者「手ぶらじゃまずいしな、駅で」
魔王「なんじゃ、魔王クッキーではないか」
勇者「売店でやたらプッシュされてたからな」
魔王「糞まずいんじゃよ、これ」
魔王「城外を散歩していたら、久しぶりに昔の事を思い出したわい」
勇者「昔?」
魔王「ぬしらが初めてワシの目の前に現れた日じゃよ」
魔法使い「懐かしいわね」
勇者「城に着くまでに5回も迷いの森にチャレンジしたんだぜ?」
魔王「がはは!簡単に城に来られては敵わんからのう」
魔女王「確か、城に着いてから格闘家さんが城門を蹴破ったのよねぇ」
魔王「せっかく悪魔の洞窟に鍵を隠したのに・・・」
勇者「お前そういう小細工好きだったよな」
魔王「やる事なかったしのう」
魔女王「おかげで子供が出来ちゃったわよ」
魔法使い「やだもう///」
勇者「お前が恥ずかしがるのかよ」
魔王「最初のバトルは燃えたわい」
勇者「あぁ、命の駆け引きだったな」
魔法使い「ほんと、死ぬかと思ったわよ」
勇者「実際遊び人は死んだしな」
魔王「遊び人・・・あやつがヨーヨーで攻撃してきた時は目を疑ったわい」
勇者「いや、あれ意外といてえんだよ」
魔法使い「なんであんたが攻撃くらってるのよ」
勇者「『伏せろ』とかいって脛を攻撃された」
魔王「それで後半足ひきずっておったのか」
勇者「段々腹立ってきた」
魔王「2回目のバトルも燃えたのう」
勇者「あぁ」
魔王「3回目も燃えたのう」
魔法使い「そうね」
魔王「4回目でなにか違和感を覚えたのう」
勇者「あぁ」
魔王「5回目からぬしらのパーティが減っていったのう」
魔法使い「それでも勝ったけどね」
魔王「10回を超えてから我輩の攻撃は当たらなくなったのう」
勇者「そうだったな」
魔王「休戦してレベル確認したらぬしら150を超えておったのう」
魔王「我輩は90なのに」
勇者「もうすぐ200だ」
魔王「卑怯者」
魔王(その頃じゃのう・・・戦う事を放棄したのは)
魔王「我輩が城にいる間にぬしらは鍛えとるんじゃろ?」
勇者「そんな感じだ」
魔王「卑怯じゃ、卑怯じゃ」
魔法使い「魔王も鍛えればいいじゃない」
魔王「相手がおらん」
魔王「ぬしら以外の人間は弱すぎる、部下も弱すぎる」
魔王「ぬしらは強すぎる、戦うと死ぬ」
勇者「奥さんがいるじゃん(笑)」
魔王「妻は我輩より強い」
勇者「ちょ」
魔法使い(相手を倒さないとレベル上がらないしね・・・)
魔女王「あなた、なにか余計な事いわなかった?」
魔王「な、なんでもござらんよ」
勇者「喋り方変だぞ」
魔法使い(強いんじゃなくて、尻にひかれてるだけでしょ)
勇者「そうそう、お前の速報が開発されたぞ」
魔王「なんの話じゃ」
勇者「お前が復活するとメールがくるの」
魔女王「まぁ!」
魔法使い「いつもは魔道師の駅までの定期的な巡回で魔王の復活が判明するけど」
魔法使い「魔王の気配を察知する機械が作られたの」
勇者「これからは復活した瞬間に察知できるらしい」
魔王「そうなのか」
魔王「早すぎるから、おかしいと思ったんじゃ」
魔女王「家族で過ごす時間もグッと減ってしまうのね」
勇者「・・・」
ペチャクチャ~~~~・・・・
魔王「む、ぬしらそろそろ帰る時間ではないか?」
勇者「もうそんな時間か」
魔法使い「早いわね」
\キャハハハ/
魔王「王子の笑い声がするわい」
魔女王「本当ね」
勇者「あいつを連れてきてよかったかも」
魔王「おかげで自然にお別れができそうじゃわい」
魔女王「毎回泣きついて、大変で・・・」
勇者「・・・・」
魔法使い「・・・・」
魔王「表に出ようか」
勇者「・・・魔女王さん、預けていた鎧と剣を出していただけますか」
魔女王「はい、あなたの剣です」
魔女王「手入れしておきましたから、切れ味は落ちていないはずです」
勇者「・・・・」スチャ
魔王「さぁ、やれぃ」
勇者「同じように命を奪うのなら、せめて、昔のように戦いたい」
魔王「わかっておるじゃろ、もうレベルが違いすぎるんじゃ」
魔法使い「私がやろうか?」
勇者「・・・いや、大丈夫だ」
魔王「いつもすまんのう」
勇者「次はいつ会える?」
魔王「何度いわせる、我輩にもそればかりはわからんのじゃ」
魔王「・・・世話をかけるが、家族をたのむ」
魔王「感謝するぞ、落ちぶれた魔王相手に今でも勇者として向きおうてくれる事」
魔王「そして、我輩との約束を守ってくれる事に」
勇者「またな、魔王」
ズバッ
自分ではもう相手にならないと悟った時
魔王は勇者にある頼みごとをした
「自分は大人しく殺されるから、家族を守ってくれ」
プライドの高い魔王が初めて人間に頭を下げた
自分の望みを命令以外の方法で伝えた瞬間だった
最初は罠かと思った
無視をして魔王を殺した
魔女王と魔王子は魔法使いの必死の説得により殺さなかった
魔王は復活をする毎に同じ頼みごとをした
魔女王と魔王子はその度にやつれていった
勇者は、勇者である前に人間だった
16回目の復活の時、彼らの間に契約が交わされた
勇者にはひとつの得もない
だが、血の通った契約だった
勇者により迷いの森への一切の進入が禁じられたのは、その翌日だった