母「でかけるの?」勇者「あぁ、ちょっと世界を救いに」 3/3

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魔女王「お疲れ様でした」

勇者「・・・なんといったらいいか」

魔女王「大丈夫です」

勇者「俺はいつもいつも、あんたたちから家族を奪って」

魔女王「大丈夫ですから」

勇者「唯の悪人なのに、勇者ヅラして、友達ヅラして」

魔女王「わかっていますから、落ち着いて」

勇者「・・・・」

勇者「いつもの様に、国王からお金が入ったら食料をお持ちします」

魔女王「いつもありがとう」

勇者「俺には、そのくらいしか出来ませんから・・・」

魔法使い「勇者・・・・」

魔女王「胸をはって、あなたは正しい行いをしているのですから」

勇者「あなたはいいんですか?夫が目の前で何度も何度も殺されている現状を」

魔女王「いいわけないでしょう」

勇者「・・・・」

魔女王「でも仕方がないんです、夫が生きているだけでご迷惑をかける事に」

魔女王「それに、あなたの震える手をみては何もいえませんよ」

魔女王「ほかに方法がないのでしょう」

勇者「でも、いつ魔王が復活しなくなるのかわからない」

魔女王「大丈夫、あの人が私達を捨てていなくなるわけありませんから」

魔女王「すぐに帰ってきてくれます」

魔女王「それに、あの人毎回帰り方を変えるから面白いのよ?」

魔女王「玄関い大きいダンボール用意してその中に隠れたり」

魔女王「何事もなかったかのようにリビングでコーヒー飲んでたり」

魔女王「ロッカーに隠れてて、知らずに鍵かけた事もあったわ」クスッ

勇者「・・・・」

魔女王「ごめんなさい」

魔女王「でも、本当に私達は大丈夫だから」

魔女王「きっといつの日か、王子が成長して全人類をムシケラのごとく殺す日がくるから」

魔法使い(色々と笑えない)

魔女王「もー、魔界ジョークじゃない」

勇者「・・・・」

魔女王「ごめんなさい」

勇者「剣、お返しします」

魔女王「・・・ありがとう、いつも夫を苦しませず倒してくれて」

勇者「いえ・・・そんな」

\テレレッテッテッテーン♪/

魔法使い「あ、レベルアップ」

勇者「とうとうレベルが200になっちまった」

勇者「あんたを一回倒しただけでレベルが上がるんだぜ?」

勇者「やっぱり強いよ、魔王さんよぉ・・・」

勇者「じゃぁいつもどおり、このまま帰ります」

魔女王「はい、あの子は」

魔法使い「門の前で待ってますから、伝えてくれませんか?」

魔女王「そうね、そうしましょう」

魔女王「ありがとうございました」ペコッ

勇者「・・・・」

魔法使い「・・・・」

魔女王「またあの人が復活したら、お会いしましょう」

魔女王「本当はもっと遊びにきてくれてもいいのだけれど」

勇者「それだと話の辻褄が合わないでしょう」

魔女王「・・・そうだったわね」

勇者「最後に、いいですか?」

魔女王「えぇ」

勇者「俺たちが憎いですか?」

魔女王「もちろんよ」

魔女王「四肢をズタズタひ引き裂いて、お花の養分にしたいくらい」

勇者「・・・・」

魔女王「でも、尊敬しているし感謝しているわ」

勇者「・・・・」

魔女王「次あった時、そんな敬語使ってたら許さないわよ?」

勇者「・・・人が良すぎるよ魔女王さん」

魔女王「よし!」ニカッ

勇者「魔女王さんも敬語だったじゃん」

魔女王「夫が切られる時ぐらい敬意を払わせて頂戴」

魔法使い(こんな時にもジェラシーを感じてしまう私・・・)

魔王子「お前絵うまいなー!」

子供「友達いなくて、いつも絵ばっかり描いてるから」

魔王子「王子も友達いないんだ!今日から友達だな!」

子供「・・・うん!」

魔女王「ボウヤ、そろそろ帰る時間よ?」

子供「あ、もう5時だ!」

魔王子「ちぇ、また来・・・パパは?」

魔女王「わかってるでしょ?」

魔女王「パパは旅に出たのよ、勇者さん達と」

魔王子「お別れできなかった・・・」

魔女王「すぐ帰ってくるわよ」

魔王子「いつ帰ってくるの?」

魔女王「・・・わからないわ」

魔王子「ふーん」

魔女王「泣かないのね、偉いわ」

魔王子「泣かないよ?友達の前では泣かないよ、だって王子は誇り高き魔王の子供だもん」

子供「・・・」

魔王子「はやく帰れよ!はやく!」

魔女王「こら!やめなさい」

魔王子「はやく帰って、また遊びにこいよ!絶対だぞ!」ダダダ・・・

魔女王「ごめんね、あの子ったら」

子供「いえ、大丈夫ですから」

子供「また遊びにきていいですか?」

魔女王「えぇ、いつでもいらっしゃい」ニコッ

子供「・・・・」

勇者「おうきたか、帰るぞ」

子供「魔王さんを倒したの?」

勇者「あぁ、だから帰るんだ」

子供「魔王さんって悪い人なのかな?」

子供「魔王子は楽しいやつだし」

子供「魔女王さんは優しい人だし」

勇者「・・・さぁな」

勇者「ただ、昔人類を滅ぼそうとした事は事実だ」

勇者「それだけだ」

子供「・・・・勇者様は強いね」

勇者「あぁ、レベル200だからな」

子供「そうじゃな・・・まぁいいや」

勇者「ったく、連れて来るんじゃなかった」

魔法使い「よっぽどはしゃいだのね、疲れて寝ちゃうなんて」

子供「zzzz」

勇者「なんで俺がこいつをオンブしなきゃならんのだ」

魔法使い「私はハイヒール履いてて、足痛いし」

勇者「しらねえよ」

魔法使い「あ、リスだ」

勇者「あれのクッキー作ったほうが儲けれそうなのに」

魔法使い「あんたのお陰で観光客いないから関係ないでしょ」

勇者「それもそう、か」

勇者「しかし皮肉だよな」

勇者「魔王を倒すと報奨金がでて、そのお金であの家族は食べていける」

勇者「魔王は家族のために殺され、人類はその家族が生きるためのお金を出す」

勇者「俺は誰のために戦っているんだ?」

勇者「今は奇跡的にあの家族の正体はばれていないが」

勇者「もしばれたら、俺は誰の味方をすればいいんだ」

魔法使い「・・・そのために私が結界をはっているんじゃない」

勇者「その結界の力をいつ近代テクノロジーが上回るかもわからないんだぞ」

勇者「魔王の復活だって感知されるようになっちまった」

魔法使い「その時はあなたに着いていくわ」

勇者「魔法使い・・・」

魔法使い「それに、私の魔法はそんなにヤワじゃないわよ」

魔法使い「今にパワーアップして、復活を感知させない結界をはってみせる」

勇者「強力すぎると魔道師にばれる」

魔法使い「結界はってるのに気づかない能無しだし、大丈夫よ」

勇者「お前には感謝してるよ」

勇者「正直、こんなの俺だけでは背負いきれない」

勇者「勇者だ?笑わせるな、俺はただの人間だ」

勇者「仲間達は皆責任から逃れるように、現実を見ようともしなくなった」

勇者「責めるのがお門違いなのはわかってる、契約を交わしたのは俺だ」

勇者「それでも、愚痴りたくなる、辛すぎる」

勇者「本当お前だけだよ、もう」

魔法使い「いいのよ、私は自分の好きなようにしているだけ」

勇者「・・・本当にありがとう」

魔法使い「どういたしまして」

勇者「ちょっと泣くから、むこうむいてて」

魔法使い「わかりましたよ、私の勇者様」

魔法使い「歌でもうたいましょうか?」

勇者「それはいらん」

子供「んん・・・ここは?」

勇者「お前の家の前だ、ぐっすり寝てたなこの野郎」

子供「・・・」スタッ

勇者「じゃあな」

子供「今日はありがとう!」

勇者「あぁ」

子供「僕は尊敬してるよ!勇者様のこと!」

勇者「あぁ・・・あぁ!?」

勇者「ってもういねえし」

勇者「俺は勇者なんかじゃねえ・・・」

勇者「・・・・」

勇者(もし俺が死んだら、お前があの家族を守ってくれ)

勇者「たのんだぞ、未来の勇者」ボソッ

プルルル ガチャッ

王様「勇者か」

勇者「王様、魔王を倒しました」

王様「良くやった、褒美をつかわすぞ」

ブツッ

勇者「・・・昔はパレードが開かれたのにな」

勇者「報告する相手が側近になるのも時間の問題かもしれん」

勇者「ただいまー」

母「おかえり、魔王討伐に成功したのね」

勇者「え、知ってるの?」

母「ニュースで見たわよ、10秒くらいだったけど」

勇者「あぁ」

母「人々が勇者の尊さを忘れようとも」

母「私にとってあんたは誇りだよ」

勇者「・・・・」

勇者「へ!ら、楽勝だったよ!」

勇者「らくしょー・・・だった・・・」

勇者(みんな、魔王が死ぬ事に慣れすぎている)

勇者(昔はその恐怖に支配され、純粋に平和を願っていたが)

勇者(今はただ惰性で殺してるだけじゃないか)

勇者(俺達が強くなりすぎたせいか?)

勇者(それとも、人々が冷酷になったのか?)

勇者(国民はなにも知らない、王様だって)

勇者(あの魔王が愛する心をもってる事を誰も知らない)

勇者(だが知った所でどうなる?何万人も虐殺した事実は変わらない)

勇者(だが、それは人類だって同じだろう)

勇者(自分の命を守るためとはいえ、モンスターを余りにも殺しすぎた)

勇者(結局、強いものが支配する、それだけのことなのか)

勇者(俺が王様になれば、少しは現状を変えることは出来るのだろうか)

勇者(・・・考えても無駄だ、寝よう)

翌朝

勇者「・・・ふぁー、ねむ」

勇者「もうちょっと寝るか」

ブブブ

勇者「なんだ?また魔法使いからの誘いか?」

勇者「悪いが今日はそんな気分じゃない」パカッ

『速報:魔王が復活しました』

勇者「はえーよ馬鹿!」

終わり

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