勇者「…はぁ…はぁ…勝った…」
勇者のレベルが12上がった!!
勇者「うぉぉお!?滅茶苦茶上がった!!
魔王「よくやった勇者!!」
勇者「だ、抱きつかないでください…っ!?」
魔王「いやーめでたいめでたい!!実にめでたい!!流石勇者あっぱれ勇者!!」
勇者「雑魚敵倒しただけで喜び過ぎですよ!!」
魔王「またまたー嬉しい癖にー!!」
勇者「貴方が一番嬉しそうですよ…」
魔王「いや、今日は本当いい記念日だな!!勇者ついに敵を倒す!!」
勇者「なんか微妙ですねそれ…」
魔王「私も少し取り乱してしまったかな…、だがこれで少しは勇者らしくなったんではないか?」
勇者「勇者だと決めてかかったのは貴方でしょ…」
魔王「かなりレベルが上がったんだから魔法もいくつか使えるようになったんではないか?どれ使ったみろ」
勇者「で、では…」
ボッ
魔王「おぉ、初級炎魔法だな」
勇者「あと少し回復もできるようになりました、ほら」
魔王「おっ、傷が治ってる…初級回復呪文か、便利だぞソレ最上級までにすると」
魔王「いや、実にめでたい今日ほど感動した日は久しぶりだな!!」
勇者「そ、そうですか…」
魔王「まるで自分の子供が立派に育ってくれた気分だ」
勇者「魔王様に子供っているんですか?」
魔王「いやいない、気分だけ」
勇者「なんか育成ゲームみたいな…」
魔王「きにするな」
勇者「は、はぁ」
魔王「ではもう一戦いってみようか」
勇者「勘弁してくださいよぉ…」
キングワイバーン「くぇ…っ!!」
魔王「よしっ!!」
勇者「はぁ…はぁ…」
魔王「前戦より早く倒せるようになったな、流石は私の勇者」
勇者「もうすっかり夜明けですけど…」はぁ、はぁ、はぁ
魔王「前ほど時間がかからなくなったのは素晴らしい事だな、レベルはどうだ?」
勇者「えぇ…と、あ…17になりました」
魔王「素晴らしい」
魔王「一日で一気に17レベルになったな」
勇者「もう…無理っす…」
魔王「よしよし、今日はもう宿に泊まろうか」
勇者「たった二戦で疲労困憊ですよ…」
魔王「無理もない、今日はゆっくり休むが良い」
勇者「はい…」
魔王「腹も減っただろう、私直々の手料理を食わせてやろう」
魔王「優れた戦士に不可欠なのは厳しい肉体鍛錬と戦闘経験、高度な魔法の習得」
勇者「なるほど…別に興味ありませんが…」
魔王「だがやみくもに戦うだけでは最強の勇者への道は程遠い…」
勇者「なりたくない…」
魔王「その中に食生活もまた大切な意味を持つ、分かるな」
勇者「とりあえず私なに食わせられるんですかね…」
魔王「魔王だけに伝わる秘伝の料理だ、これを食えばお前もレベルの越えた強さを得られる」
勇者「…味に期待しない方がいいようだ」
・
・
・
魔王「ほら、どうだ?…これが魔族の料理だ」
勇者「見た目完全にグロテスクなんですが…」
魔王「竜の心臓や悪魔の目玉、死神の骨…希少な魔物食材で煮込んだスープだ、たまらなく美味しいぞ」
勇者「…魔物って魔物食べるんですね」
魔王「茶化すでない、こんな美味しいもの一生でかかっても食べられん代物だぞ」
勇者「完全に劇薬ですよねソレ」
魔王「ほれ遠慮するでない今日は記念日だ、私が食べさせてやってもいいぞ?」
勇者「それ食べた習慣、猛毒状態になって死んだりしませんよね?味も含めて」
魔王「ほれほれあーん」
魔王「どうだった?」
勇者「…味で死ぬ事ってあるんですね」
魔王「え?今の死はあまりの美味しさに昇天したのかと」
勇者「スプーン一口で死にましたよ!!もう死ぬのも慣れてきましたけど!!」
魔王「死に耐性ができたか、こんな短時間で死に対する恐怖を克服できるとは大した奴だ」
勇者「出来ない方がおかしいですからね?今までから言って」
魔王「怒るな、スープはまだ沢山あるぞ遠慮せず飲め」
勇者「きっと私を殺し足りないんですね貴方は」
魔王「今日の出来はなかなかよかったな」
勇者「…味の悪さが?」
魔王「段々言うようになったなお前」
勇者「言わないとストレスで死にますよ私は」
魔王「精神面にも向上のよちがあるな、まだまだ育成は始まったばかりだが」
勇者「…」
魔王「だがこの短い時間で確実に数段強くなったな、やはりお前が勇者だ」
勇者「あんまり嬉しくないんですが…」
魔王「普通に考えてみろ、常人が何度も殺され何度も蘇生を繰り返されて正常を保てると思うか?」
勇者「…」
魔王「まず精神がいかれて廃人になってしまうだろうな」
魔王「いくら蘇生してくれるから死んでも平気と思えても度重なる痛みと死で狂ってしまう」
勇者「そりゃ…」
魔王「他にもたくさんあるがその辺も勇者と常人の違いかもしれんな、あまり命に無頓着な所も」
勇者「狂う狂わないの話でしょ…」
魔王「少し脱線したな」
魔王「なにはともあれお前の事も少しずつ分かってきた」
勇者「え、私?」
魔王「なんだかんだ言いながら私に付き合ってる所とかな…それでいて今の状況を少なからず楽しんでいる」
勇者「私どれだけマゾだと思ってるんですか…」
魔王「いやいや、流石私が見込んだ勇者だと」
勇者「買いかぶり過ぎですよ…、私はただの農民ですから」
魔王「またまた」
勇者「もう寝かせてくださいよ…ホント疲れてるんですから」
魔王「そうだな、そうしよう」
魔王(実に面白い)
魔王(たった2回戦っただけであそこまでの成長を遂げる恐ろしい成長ぶり)
魔王(勇者とは名ばかりの怪物ではないか)
魔王(人は勇者を敬いそう呼ぶが、実物はただの化け物だとは皮肉だな)
魔王(魔王を倒すための化け物か、勇者とは都合のいい呼び名だな)
魔王(ただ城に籠るばかりではないものだな)
魔王(久しぶりに楽しい気分だ)
「おはよう勇者眠れたかな?」
勇者「うぁ!?」
魔王「さてさて、今日も楽しく勇者育成をしようではないか」
勇者「…」
魔王「…どうした?故郷が恋しいか」
勇者「…いや、これはただの夢か、と」
魔王「夢だと片づけて現実逃避とは勇者失格だな、まだまだ調教が足りんようだ」
勇者「…」
魔王「なんだ、私の顔に何か付いてるか?」
勇者「なんで魔王様はこんな事してるんですか?」
魔王「ん?」
勇者「魔王の敵となす勇者を育てるなんて普通に考えても意味が分かりませんよ」
魔王「ふむ」
勇者「普通なら勇者を分かれば芽を摘むのが当然じゃないですか?」
魔王「んー」
魔王「その質問は私より強くなってから聞くべきだな」
勇者「…」
魔王「今のお前などデコピンで木端微塵だ、思い上がるなよひよっこ勇者」
勇者「…すいません」
魔王「やけに素直だな、ま…不思議がるのは当然だが」
勇者「…」
魔王「とりあえずは暇つぶしとでも言っておこうか」
勇者「暇、つぶしですか」
魔王「んむ、では今日も頑張って勇者しようではないか」
勇者「勇者しようってなんですか…はいはいやりますよ」
勇者「ふぅ…ふぅ…」
魔王「よし通算3匹目撃破」
勇者「えぇと、今だと20…ですかねレベル」
魔王「よしよし順調順調」
勇者「いくつか魔法も扱えるようになりましたね、そういえば」
魔王「ほぉ、ではそろそろ教えるとするかな」
勇者「な、なにをです…?」
魔王「闇魔法」
勇者「それ勇者の使う魔法じゃないですよ!?」
魔王「いや最強の勇者とはあらゆる魔法を扱えなければならん、たとえ暗黒面の魔法でもな」
勇者「それ完全に魔王の領分ですよ…」
魔王「魔族の使う闇の魔法はそこらの魔法とは比じゃない強さだ、それを操れんで勇者は語れんよ」
勇者「えぇー…」
魔王「気を抜くなよ、術に飲まれて暗黒面に落ちるかもしれんからな」
勇者「なにそれ…」
魔王「怨みや怒り憎しみや殺意を込めて放つのだ、魔力に純粋な負の念を込m」
勇者「あのーいいですか…?」
魔王「なんだ人が優しく教えてる所で」
勇者「いきなり憎しみと怒りとか言われても困るんですけど!!」
魔王「あるだろそういうの、それが闇魔法の根源だからはい続けて」
勇者「あんか怪しげな宗教団体に入った気分だ…」
魔王「変な事知ってるなお前」
魔王「例えば最近怒りを感じた事は?」
勇者「今も継続中でありますね」
魔王「よし、ではその思いを魔力に込めるのだホラ続けて」
勇者「…っ」
ぐおぉおぉぉぉぉっ!!
魔王「お前…相当怨んでるな」
勇者「…おかげさまで」
魔王「お前こっち側に近いな」
勇者「全然嬉しくないですから…」
魔王「そう謙遜するな闇魔法が特異な勇者なんて面白いじゃないか」
勇者「それもう勇者で括れるんですかね」
魔王「いや、あながち冗談でもないぞお前は剣より魔法の方が向いてるのかもな」
勇者「…魔法使いとでも?」
魔王「最強を目指す上で剣術はもちろん近接戦闘も含めあらゆる戦闘力を身につけてもらうがお前はその中でも魔法を中心に伸ばした方が面白い」
勇者「魔法…ですか」
魔王「肉体面での戦闘はどうしても人間は魔物に比べ不利だ、勇者とはいえな」
勇者「はぁ…」
魔王「まぁそれも既に対策してるんだがな!!」にやにや
勇者「ちょ…なに企んでるんですか!?」
魔王「お前昨日なに食べた」
勇者「…っ!?」
魔王「劇薬と言ったな、半分正解」
勇者「…おぇええっ!?」
魔王「今更吐こうとしても無駄だぞ?徐々にお前の体はこちら側に近くなってるはずだ、現在進行中でな」
勇者「ゆ、勇者にするつもりだったんじゃないんですか…っ!?」
魔王「べつに魔族の勇者がいてもおかしくないだろう」
勇者「ぐぅ…っ!!」
魔王「そう怖い目で見るな」
魔王「そんなに魔物になるのが恐ろしいか?」
勇者「当たり前でしょ!?」
魔王「外見にそう変化はでんよ、ただ桁外れに強くなるがな」
勇者「…っ」
魔王「人間はどうしても肉体面に劣る、どれだけ魔法で補助しようが強力な鎧や装備を纏おうがな」
勇者「…」
魔王「言った筈だ最強の勇者にすると、人の身で最強など笑える話だ」
勇者「…」
魔王「お、今にもかかってきそうな面構えだな飼い犬の分際で主人に牙をむけるか」
勇者「…どうせ貴方には敵わないですよ」
魔王「結構冷静じゃないか、その判断力もまた強くなるなかで大切なものだ」
勇者「…でも、ぶっ殺す…っ!!」
魔王「…あぁ、やっぱり」
勇者「このクソ魔王がぁっ!!」
ブンッ!!
魔王「そう怒るな、お…結構良い動きになってきたんじゃないか?」
勇者「ごらぁっ!!」
魔王「はははコレが反抗期って奴か」
勇者「死ね!!死ね死ね!!」
魔王「ちょ」
・
・
・
魔王「はい蘇生、もういい加減向かってくるなよ?」
勇者「はぁ、はぁ、はぁ…」
魔王「生き返った瞬間挑みかかるとは、もはや狂戦士だな流石に何回もは飽きたぞ」
勇者「くそ…っ勝てん…」ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ
魔王「…その根性をかって良い事を教えてやろう」
勇者「…?」
魔王「人が魔族になれるなら逆に、魔族から人に戻る方法もある」
勇者「ほ、本当に…!?」
魔王(知らんけど)
魔王「そもそも何故そう人で無くなるのが嫌なのかが理解できないが」
勇者「いやだって化け物になりたくないし…っ!!」
魔王「だからそう見た目に変化が起こるわけでもないが」
勇者「アンタだって人になりたくはないだろ…?」
魔王「…」
魔王「お前が口にしたのは強力な上位魔族の血肉」
勇者「おぇ…」
魔王「配合する食材によって変化が依存するからな、私の知りうる限り最強の魔物食材をかき集めたぞ」
勇者「最悪だ…」
魔王「食って死ぬのも当然だ、なんせ人間には毒そのものだからな」
勇者「騙された…」