王「本気で魔王倒す」勇者「えっ?」 3/3

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――城門

勇者「すごい強そうな門番のボスが倒されてる」

賢者「いつも通りです」

勇者「やっぱり全員で乗り込むの」

賢者「魔王は儀礼的様式美を重んじる趣向があるようです」

勇者「つまり全員乗り込めるほどの間取りと」

賢者「本来ならば少数精鋭を多勢で狙い撃ちにする構造ですが、今回はそれが仇になってるようです」

勇者「こっちは魔王軍でいう多勢の十倍以上いるからね」

賢者「ところでここいらで全軍に勇者様から何か一言伝えると効果的でしょう」

勇者「これ以上士気揚げても逆効果じゃないの」

賢者「魔王城には多くの罠が仕掛けられていると思われます。我が軍への影響は計り知れません」

勇者「盗賊を投入すればいいじゃない」

賢者「彼らだけでは上級の魔物に対処できませんから」

勇者「つまり罠を数の勢いで乗り越えようと」

賢者「集団心理のパワーはバイキルトに匹敵しますから」

勇者「それじゃあみんな聞いてくれ」

ザワザワ…………シーン……

勇者「ついにここまで来た。倒すべき魔王はこの扉の先にいる」

戦士AZQ「お……おおお……」

武道家XA「おおおっ」

賢者「まだ静粛に! 勇者様どうぞ」

勇者「えー皆に伝えることは一つだ」

勇者「全員無事に生きて帰ろう。一人も欠けてはならない。だから命を大事に!」

戦士s「……ぉぉぉおおおお”おおおお”おおおおおおおおおっ!!」

武道家s「あ”あ”ああああああああああああっ!!」

商人s「ア”ア”ア”ア”アアアアアアアアアアッ!!」

盗賊s「ヒョオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

勇者「い、命を大事に!」

魔法使いs「イェア”ア”ア”ア”アアアアアアアッ!!」

僧侶s「勇者様アアアアアアアアアアァァァァッ!!」

賢者s「うわああああああああああいいいいいいいッ!!」

勇者「命を大事に! ねぇ、ちょっと分かってる? 命を大事にだって!!」

賢者「さすが勇者様たった一言で軍の士気を」

ズズーン……

ドドドドドドドドドッドドドドッドドドドドッド

戦士s「進めぇぇぇぇーッ!」

武道家s「魔物だーッ!! チェーッスト!!」

盗賊s「お宝ーっ!」

勇者「ねぇ大丈夫なのこれ?」

賢者「やはり扉のすぐ内側に強力な魔物が待ち伏せていたようです」

勇者「数は?」

賢者「もう殲滅されました。ほぼ最強装備の大群がしかもこのテンションです」

勇者「何人くらい一気に雪崩れ込んだの」

賢者「今ここに勇者様の護衛兵が約2000名います。するとやはり8000名ほどかと」

勇者「もう意味わかんない」

賢者「ただし護衛の中に戦士と武道家はほとんどいません。まったく血の気の多い連中です」

勇者「どうも彼らは『命を大事に』のあとに『するな』と補完したらしいね」

賢者「我々も奥へ向かいましょう」

勇者「魔王城に討ち入ってるはずなのにまるで凱旋気分」

大広間――

魔王の側近「ククク愚かな人間共め。私には打撃も呪文も効かぬ。伝説の武具を以って初めて」

戦士の攻撃! 側近に1のダメージを与えた!▼

戦士の攻撃! 側近に1のダメージを与えた!▼

武道家の攻撃! 会心の一撃! 側近に1のダメージを与えた!▼

盗賊の攻撃! ミス! ダメージを与えられなかった▼

戦士の攻撃! 側近に1のダメージを与えた!▼

魔法使いの攻撃! ミス! ダメージを与えられなかった▼

戦士の攻撃! 側近に1のダメージを与えた!▼

戦士の攻撃! 側近に1のダメージを与えた!▼

 ・

 ・

 ・

1ターン経過

側近「バ、バカな、なんだこの数は」

 

戦士の攻撃! 側近に1のダメージを与えた!▼

僧侶の攻撃! 側近に1のダメージを与えた!▼

盗賊の攻撃! 側近に1のダメージを与えた!▼

 ・

 ・

商人の攻撃! 側近に1のダメージを与えた!▼

「ぐおおおおおおっ」

側近を倒した!!▼

戦士の攻撃! 側近に1のダメージを与えた!▼

武道家の攻撃! 会心の一撃! 側近に1のダメージを与えた!▼ ……

勇者「戦況はどうなの」

賢者「魔王は卑劣で狡猾なワナを城内に幾多にも」

勇者「厳しい?」

賢者「今のところ死者は出ておりません。というより出ても大丈夫です」

勇者「世界中の葉?」

賢者「一人につき3枚ずつ持たせています。しずくは5個ずつ」

勇者「僧侶いらなくない?」

賢者「ステータス変動呪文があります。それに一応バギを習得できます。集中砲火の火力アップです」

勇者「そう。いまさらな話でごめんね」

賢者「あっ、ただいま魔王の側近らしき魔物を倒したとの報告が」

勇者「最終局面になってもいつもと変わらずどんどん話が進んでいく」

賢者「後は玉座の間の扉を残すだけとなりました」

勇者「賢者の指示だよね。やれること残してくれてありがとう」

賢者「いえいえ、魔王だけは勇者様の力が必要ですので」

勇者「うそだったらちょっと承知しない」

――大広間

戦士「あっ勇者殿だっ!」ザワザワ

武道家「勇者さん早く早く!」ギャーギャー

勇者「大広間に味方がびっしりいる」

賢者「全員整列させておきました。玉座の間へのじゅうたんの左右に」

勇者「ねぇ、ここどこだっけ」

賢者「魔王城の最深部の大広間です」

勇者「だよね。ごめんきいてみただけ」

僧侶「勇者様ーっ」

盗賊「ピューッ! ピューイッ!!」

賢者「勇者様勇者様勇者様勇者様」

勇者「怪しい宗教団体の教祖にでもなった気分」

賢者「勇者様のカリスマ性の為せる業です」

勇者「これが玉座の間への扉?」

賢者「そうです。勝手に開けようとした者がいましたがメラミの刑に」

勇者「うわぁこの焦げ跡そのせいだったの」

バアァァン――

魔王「勇者よ。よくぞここまで辿りついた……」

勇者「魔王!」

魔王「卑劣極まりなき数で攻めたておって……我が魔族は決して人間共に屈しはせん!!」

戦士「黙れ魔王!!」ブーブー

武道家「俺とタイマンだコルァ!!」ブーブー

魔法使い「くたばれ魔王!!」ブーブー

魔王「たとえこの場は敗れようとも……我が魔族に受け継がれし矜持だけは見せ付けてくれるわ!」

商人「情けないぞ魔王!!」ブーブー

僧侶「魔王は口を挟まないで!」ブーブー

賢者「かーえーれっ!」カーエーレッ!

勇者「ねぇ賢者。なんか決心が鈍ってきた」

賢者「何をおっしゃるのです。確かに魔王の力は強大無比ですが怖気づくとは勇者様らしくない」

勇者「そういうことじゃないんだけどまぁいいや」

魔王「さぁかかってこい勇者よ!!」(ブーブーブーブー

勇者「行くぞ魔王!!」(ワーワーキャーキャー

勇者「でやあああっ!」

勇者の攻撃! 会心の一撃! 魔王に848のダメージを与えた!▼

賢者「皆のもの勇者様に続けーっ!」

勇者「えっ?」

\ オオオオオオオオオオオオオオオオーッ /

盗賊の攻撃! 魔王に30のダメージを与えた!▼

盗賊の攻撃! 魔王に29のダメージを与えた!▼

盗賊の攻撃! 魔王に33のダメージを与えた!▼

盗賊の攻撃! 魔王に19のダメージを与えた!▼

盗賊の攻撃! 魔王に37のダメージを与えた!▼

盗賊の攻撃! 魔王に25のダメージを与えた!▼

盗賊の攻撃! 魔王に29のダメージを与えた!▼

盗賊の攻撃! 魔王に22のダメージを与えた!▼

盗賊の攻撃! 魔王に18のダメージを与えた!▼

 ・

 ・

盗賊の攻撃! 魔王に20のダメージを与えた▼

盗賊の攻撃! 魔王に24のダメージを与えた!▼

魔王を倒した!▼

魔王「ぐあああああああああああああああああっ」

勇者「ええっ」

軍団「ええーっ!」

勇者「ねぇちょっと待ってよ、まだ最終形態とか残してるんでしょ?」

戦士「こら魔王! まだオレは攻撃してないぞーっ!」

武道家「立てーっ! 勝負しろーっ!!」

魔王「おのれ人間共め……たとえこの身は朽ち果てようとも……」

戦士「あっまだ息があるぞ!!」

武道家「チャーンッス!!」

戦士の攻撃! 魔王に148のダメージを与えた!▼

武道家の攻撃! 会心の一撃! 魔王に202のダメージを与えた!▼

戦士の攻撃! 魔王に152のダメージを与えた!▼

戦士の攻撃! 魔王に160のダメージを与えた!▼

勇者「おーいストーップ! とまれーっ」

戦士の攻撃! 武道家の攻撃! 僧侶の攻撃! ▼

 ・

 ・

 ・

ボロ……

賢者「やりましたね勇者様」

勇者「うわぁ消し炭よりひどい。しかも結局魔王の遺言聞き取れなかった」

こうして 魔王は倒れ 世界に再び平和が訪れた▼

――凱旋・王都

ワーワー ピューピュー

勇者「賢者、結局勇者の役割ってなんだったの」

賢者「伝説の剣で一太刀を入れなければ魔王は無敵でした」

勇者「普通に殴ったら?」

賢者「1しかダメージを与えられません」

勇者「それあの数で迫ったら倒せたんじゃない」

賢者「そうかもしれません」

勇者「勇者いらないじゃん!」ツッコミ

賢者「きゃっ」

勇者「好みの甲高い女声」

賢者「勇者様ご自重ください」

勇者「もうわけわかんない」

賢者「さぁもうすぐ王の元に到着します。参りましょう」

勇者「もうわけわかんない」

王の広間――

王「勇者よ、よくぞ半月で魔王を討ち果たした」

勇者「お言葉ですが王の支援が十分だったためです。わたしめは何もやっておりません」

王「仮にそうだとしても、その統率力は確かなものであった」

勇者「全て賢者のおかげです」

王「ほう、我が娘の」

勇者「えっ?」

賢者「お父様、ただいま帰りました」ファサッ

勇者「えっ」

王「娘よ、立派になったな」

姫「お父様。私はこの旅で勇者様にお見惚れしました」

王「よかろう、相手が勇者ならば許そう」

姫「勇者様、よろしければ私と結婚していただけませんか」

勇者「いいよ」

勇者「もう好きにして」

――結婚式

ヒュルルル~ パン! パン!

*「勇者様ばんざい!」

*「新たな王、勇者王ばんざい!」

*「勇者王ばんざい!」

勇者「ゆうしゃってなに」

姫「私は幸せです」ペタ

勇者「ゆうしゃってなんだろう」

姫「あっ、城の外に仲間が」

勇者「ちゃんと10000人いるの」

姫「はい、欠員はいません。皆、嬉しそうに手を振っています」

勇者「多すぎてよくわかんない」

姫「それではじかに挨拶に向かいましょうか」

勇者「えっ」

戦士「勇者殿おめでとう!」「勇者「勇者殿おめでとう!」でとう!」僧侶「勇者様「様おめでとう」

武道家「勇者ばんざい「んざい!」ばんざい!」商人「おめでとう!」武道家「勇者と勝負「」めでとう」

でとう!」盗賊「最後とどめをさしてすみま「おめでとう「ばんざい!」魔法「勇者様すてき!「」商人「金」

「おめでとう!」戦士「勇者殿おめでとう!「ばんざい「勇者様ばんざい「んざい」「でとう」めでとう!

勇者「これ終わんない!」

姫「皆が勇者を永劫語り継ぐことでしょう」

勇者「この先勇者王は何をすればいいの?」

姫「そろばんです」スチャッ

勇者「えっ?」

姫「まずは財力を蓄えることです」

勇者「えっ?」

姫「曽祖父も勇者でした。代々この方法で確実に世界は救われています」

勇者「えっ?」

姫「さぁ城へ戻りましょう。ふふ、今日もいい天気ですね」

END

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