王「本気で魔王倒す」勇者「えっ?」 1/3

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王「まずは軍資金の10億Gじゃ」ドン

勇者「えっ?」

王「すでに仲間も手配しておる。ルイーダの酒場に向かうがよい」

勇者「えっ?」

王「船も十隻用意した。武具道具も最高性能のものを可能な限り調達した」

勇者「えっ?」

王「支援全般は一切任せるがよい。さぁ旅立つのだ勇者よ!」

勇者「分かりました。じゃあ行ってきます」

――ルイーダの酒場

ルイーダ「王様からお話は聞いてるわ~」

勇者「仲間はどちらに」

賢者「初めまして勇者様。賢者です」

勇者「初めまして。あれ、君しかいないみたいだけど」

賢者「ここには私一人ですね」

勇者「もしかして君と二人旅?」

賢者「いいえ。全員外で待機してます」

ルイーダ「狭い酒場でごめんねぇ~」

勇者「えっ?」

賢者「ちょっとここには全員入りきれないので」

勇者「えっ?」

――城下町広場

勇者「うわぁ」

賢者「こちらの団体が戦士2500人です」

戦士「よろしく勇者(殿)!」×2500

賢者「こちらが武道家2000人です」

武道家「しゃーっす!」×2000

賢者「こちらが商人1500人です」

商人「よろしくお願いします」×1500

賢者「こちらが盗賊500人です」

盗賊達「…………」×500

賢者「以上が武闘派6500人です」

勇者「何これすごい」

賢者「続いてこちらが魔法使い1500人です」

魔法使い「よろしくお願いするぞい(しまーす)」×1000

賢者「こちらが僧侶1500人です」

僧侶「よ、よろしくお願いします」×1000

賢者「こちらが賢者500人です。あ、私は別です」

賢者「よろしくお願い致します」×500

賢者「以上が呪文に長けた3500人です」

勇者「すごい」

賢者「私と勇者様を含めると、総勢10000とんで2名になります」

勇者「どうなってるの」

賢者「ちなみに賢者が十分揃っているので遊び人はいません」

勇者「王様が本気だ」

勇者「じゃあ出発しよう」

賢者「旅の補佐は私にお任せ下さい」

勇者「よろしく」

賢者「ではまず陸路で向かいますか。海路で先に行きますか」

勇者「そうかいきなり船があるんだった。じゃあ陸路で」

賢者「最初に拠点にできる町は4ヶ所ありますが」

勇者「まだ皆レベル1でしょ」

賢者「数でフォローできます」

勇者「犠牲が出ない?」

賢者「多分出ます」

勇者「それじゃあダメだよ。魔王を倒して皆で平和な世界を満喫しないと」

賢者「さすが勇者様ウロコが落ちる思いです。では一番近場の町に向かいましょう」

勇者「普通はそうするんだよね」

フィールド――

ドドドドッドドドッドドッドドドド……

勇者「まるで大軍の行進だね」

賢者「なんせ一万の兵力ですから」

勇者「やっぱり多すぎない?」

賢者「大は小を兼ねるといいます」

勇者「でもこれじゃあちょっと忘れ物したときすぐに引き返せないよね」

賢者「キメラのつばさを使うといいでしょう」

勇者「一万人ごと飛んでいっちゃう?」

賢者「恐らく可能かと」

勇者「可能じゃだめじゃない」

賢者「重要な道具は勇者様に決定権があります」

勇者「気軽に使えない」

まもののむれが現れた!▼

賢者「勇者様、モンスターが現れました。スライムときりかぶこぞうです」

勇者「よし、この旅で最初の戦闘だね」

ニアたたかう ピッ

戦士「待ってたぜ!」 武道家「腕がなるぜ!」 魔法使い「戦闘開始ですぞー!」

「戦士の攻撃!「武道家の攻撃!「戦士の攻撃「魔法使いはメラを「戦士の攻撃

「武道家の攻「戦士の「87ポイントのダメージ「商人の攻撃「賢者はメラを

「盗賊の攻撃「会心の一撃「「戦士の攻撃!「58ポイントのダメージを与えた」与えた」「戦士の

まもののむれをたおした▼

勇者「ストーップストップ終わり! もう戦闘終わり!!」

ボロ……

勇者「ひどい。これじゃ出会うモンスターみんなサンドバッグ」

賢者「今ので全員に1ずつ経験値が入りました」

勇者「だろうね」

賢者「そして総額1008G手に入りました」

勇者「商人すごいけど軍資金10億Gある」

勇者「ところで皆やけに装備が充実してるね」

賢者「王からの支援です。恐らく今以上の武具が手に入るのはずっと先でしょう」

勇者「どれだけ高性能なの」

賢者「例えば戦士の武器はメタルスライムぐらいなら一撃です」

勇者「レベル1なのにそれが何千人といるの?」

賢者「そうなります」

勇者「もう魔王倒せるんじゃない」

賢者「魔王と相対できるのは勇者様ただ一人だけです」

勇者「勇者軍団一万人でも通用すると思うんだけど」

賢者「伝説の武具が必要なのです」

勇者「なにそれ」

賢者「すでに盗賊部隊から情報が入ってきています。もはや世界中の秘宝の情報は掌握済みです」

勇者「もうこれ冒険とかじゃないよね」

最初の町――

勇者「ついたー」

賢者「それではさっそく郊外に宿営地を設けましょう」

勇者「やっぱりそうなるんだ」

賢者「私達と各職業のリーダーはこのまま町に入って宿屋に泊まります」

勇者「リーダーなんて決まってたんだ。みんなレベル1なのに」

賢者「私が独断と偏見で決めました。特に戦士と武道家には苦労しました」

勇者「ケンカしたり?」

賢者「なかなかいざこざが絶えません」

勇者「まだ初日なのに前途多難だなぁ」

賢者「けれどみんな勇者様についていくと言ってます」

勇者「えっ」

賢者「勇者様の『全員帰還』の方針が好印象だったようです。進んで脱退する者などは一人も出ないと考えていいでしょう」

勇者「出てもいいくらいうじゃうじゃいるのに」

――町探索

勇者「ねぇ、町の人たちみんな驚いてるよ」

賢者「王都から魔王討伐の遠征部隊が挙兵されたとの噂が広まっています」

勇者「間違ってないんだけど」

賢者「この町に留まる理由は、勇者様が町長から話を聞くのみです」

勇者「のみってそんな。情報収集は?」

賢者「盗賊達がいます」

勇者「旅の道具をそろえたりは?」

賢者「王からの支援物資は当分尽きることはありません。それに万一の場合でも商人達がいます」

勇者「あとはイベントを進めるだけ?」

賢者「そうなります」

勇者「そのためだけにこの町に来たの?」

賢者「まぁ。はい」

――町長邸

町長「勇者殿ご勘弁くだされ、王都への献納は十分なはずです」

勇者「いきなり弁解されても」

町長「あの大軍はいったい」

勇者「魔王を倒しに行きます」

町長「そうでしたか、いやはやホッとしました」

勇者「あのう何か頼みごとありませんか」

町長「恐縮ながら町の近辺から立ち退いていただければ」

勇者「その他には」

町長「北の洞窟に巣くう魔物を退治していただければ」

勇者「そういうのが本命でした」

町長「さようでしたか。ではよろしくお願いします」

勇者「なんだかごめんなさい」

賢者「どうでしたか」

勇者「北の洞窟に巣くう魔物を退治しに行くことに」

賢者「予測通りです、すでに計画は立てておきました。いかがなさいますか」

勇者「もう日も暮れるし、明日の朝出発しよう」

賢者「今日中に攻略できますが」

勇者「よしとこう」

賢者「分かりました。では各団隊に伝達しておきます」

勇者「君は優秀だね」

賢者「身に余るお言葉」

勇者「優秀な政治家になれるよ」

賢者「しかし様々な高等呪文を習得しています。むしろ戦闘が本業です」

勇者「もう交代しようよ」

――町の宿屋

宿主「ひぃぃ」

勇者「ではリーダー全員が集まったところで今日の報告から」

戦士「軍内の恋愛禁止を申請する!」

武道家「もっとモンスターと闘いたい!」

商人「儲けさせてもらっております」

盗賊「早く寝かせろ」

魔法使い「戦士隊と武道家隊がうるさい」

僧侶「みんなでお祈りする時間を頂けたら」

賢者「全てを勇者殿にお任せします」

勇者「どうしよう一度にそんな言われても。賢者に任せていい?」

賢者「お任せ下さい」

勇者「旅って大変」

――朝

勇者「おはよう」

賢者「おはようございます」

勇者「じゃあ北の洞窟に向かおうか」

賢者「お待ち下さい、まだ戦士隊と武道家隊から全員起床の報告がきておりません」

勇者「ええー無理に起こさなくてもいいよ寝かせてあげようよ」

賢者「軍規が乱れます」

勇者「もう完全に『勇者ご一行』じゃ済まされなくなってる」

賢者「あっ、報告来ました。寝坊した者はメラの刑にしておきます」

勇者「やめようよ」

賢者「それで洞窟の方はどのように攻略しますか」

勇者「なんか町に迷惑かけてるみたいだから早めに終わらそう」

賢者「さすが勇者様。極悪非道な魔物を早急に退治せんとする心意気さすが」

勇者「ありがとう。でも迷惑かけてるのはこの大軍の方ね」

洞窟――

……ドドドドドドドドドドドド……

戦士「乗り込めぇぇぇ」

ドドドドド

武道家「ヒャッハアァー!」

ドドドドドド

盗賊「お宝っ」

ドドドドドド……

勇者「あれこれどうなってるの」

賢者「勇者様が早めに終わらすようにとの事でしたので」

勇者「ちょっと大丈夫なのいきなり無闇に突っ込ませて」

賢者「洞窟が崩れる心配などはありませんが。……あっ」

勇者「ん?」

賢者「今報告がきました。洞窟内の魔物は掃討完了です」

勇者「ちょっと待ってまだ何もしてないんだけど」

賢者「しかし洞窟内に魔物はいません。それとも逃げた魔物を追撃しますか」

勇者「しません。これ以上災害めいた行為は自重してください」

賢者「ではそのように」

勇者「どうしてこうなった」

フィールド――

ドドドドドドドッドドドドドドドオドドドド……

勇者「町長もあまり喜んでいなかったね」

賢者「そうでしたでしょうか。私には喜色満面にみえなくも」

勇者「間違いなく別の理由だろうね」

賢者「ところで次はどちらに向かいましょう」

勇者「ちなみに魔王城に向かうまでの最短ルートは」

賢者「まず伝説の塔で勇者様の武具を手に入れます」

勇者「いきなり?」

賢者「そして魔王城です」

勇者「ええっ」

賢者「なんせ数だけはいます」

勇者「そのルート以外は寄り道?」

賢者「寄り道ですね」

勇者「なにそれもう最短ルートでいいよ」

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