勇者「魔王ぶっ殺す!」魔王「ぶっころす!」 4/4

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魔王「……」

魔王「……」

魔王「……あれ?」

魔王「……ゆうしゃ?」

魔王「なんでそんなところでねているのだ?」とてとて

魔王「ゆうしゃ、ゆうしゃ、おきて、おきて」ゆさゆさ

勇者「……」

魔王「ゆうしゃ、ゆうしゃ、かぜひいちゃう、ここでねてたらかぜひいちゃう」ゆさゆさ

勇者「……」

魔王「うー! おきろ! おきろ! 」ゆさゆさゆさゆさ

魔王「おきろ! おきろ! かんじゃうぞ! おきないとまたかんじゃうぞ!」

勇者「……」

魔王「……」

勇者「……」

魔王「ゆうしゃ……おきて……」ポタ

魔王「お、おきてくれたらとっておきのじょうほうをあげるのだ」ごしごし

魔王「すごいじょうほう、きっとゆうしゃはよろこぶぞ」

魔王「なんとあのまおうのしろのばしょをおしえちゃいます!」

勇者「……」

魔王「あ、あとあと、まおうのしょうたいもおしえちゃいます!」

勇者「……」

魔王「……くぅーん……」しゅん

魔王「……」

魔王「……!(そ、そうだ! 『かいふく』のじゅもん……!)」

魔王「じいにいっぱいおしえてもらったのだ、えーと、えーと……」

魔王「すいみんのかいじょ、たいりょくかいふく」

魔王「ど、どれだっけ……あれ? どうすればいいんだったっけ……」

魔王「うー、うー、おもいだせない、おしえてもらったのにおもいだせない……!」

魔王「はやく、はやく、ゆうしゃをおこさなきゃだめなのに……」

魔王「まりょくのかいふく、げどく、そせい……う、うぅ」

魔王「……!(だ、だれか……)」

魔王「だれか……ゆうしゃをおこしてくれるひとは……」

勇者「……」

魔王「……おきて……おきてください、ゆうしゃ……」

魔王「……う、ひっく……おぎでぐだざい……ゆうじゃざま……」

魔王「わだじをだおじていいですがら……ひっく……まおうをだおじでいいでつがら」

魔王「もうわがままはいいばぜん、いっじょにだびがじだいなんてもういいばぜん」

魔王「いいばぜんがら……おぎで……おぎで……ゆうじゃ、おぎでよゆうじゃ!」

魔王「わだじのだいぜつなひと……ごのよでいちばんだいせつなじと……」

魔王「ゆうじゃああああああああああ」

勇者「うるさい! この……っ、ばか魔王が!!」ぽか

魔王「きゅん」

勇者「耳元でぎゃーぎゃー喚くな、それはなんかの攻撃か? ぶっ殺すぞ!?」

魔王「あ……あ……」

魔王「ゆうしゃあっ!!!!」だきっ

勇者「……! は、離れろこのくそアホ魔王!! 獣くさいんだよ!!」

魔王「ゆうしゃ! ゆうしゃ! ゆうしゃだ、えへへ♪」ぱたぱたぱた

勇者「ぐ……!」

魔王「ゆうしゃ、ゆうしゃ……わたしのゆうしゃ……」

勇者「だ、だれがお前の勇者だ人間の敵め……!(とかいいつつ顔が赤くなってるのが情けない……)」

魔王「てっきり、てっきり、しんでしまったのかとおもった、ゆうしゃがいなくなってしまったかとおもった!」

勇者「……」

勇者(……あれは、あのとき俺は確かに死んだはずだ……)

勇者(でも声が聞こえた……どこかで聞いたことのある声……)

勇者「……なんか、『情けない、おお情けない』ってバカにされたし……」ぼそ

魔王「?」

勇者「まああれだ、『勇者は死なん』! 例え死んだとしても『何度でも生き返る』!」

勇者「……これが勇者の特権だね」

魔王「お、おー……かっこいい、かっこいいぞゆうしゃ、ゆうしゃかっこいいぞ!」

勇者「……」

魔王「……」

勇者「……」

魔王「……」

勇者「……(きゅ、急に黙るなよ、緊張しちゃうだろ!)」

魔王「……」

魔王「ゆ、ゆうしゃ……」

勇者「なんだ、魔王」

魔王「……」

魔王「ゆうしゃがすきです」

勇者「……!」

魔王「ゆうしゃがすきなので、いっしょにたびがしたいです」

魔王「……ずっと、ずっと、ゆうしゃのそばでたびがしたいです」

魔王「でも、でも……ゆうしゃはまおうをたおすのだな……」チラ

勇者「……さすが魔王……(今の『攻撃』は効いたぜ……)」

勇者「あー……」

勇者「……」

勇者「俺は魔王は嫌いなんだ」

魔王「……」

勇者「だってあいつは人間の敵だし、町を壊すし、馬も残さない気のきかないヤツだし……」

勇者(じゅ、純情な勇者の男心を一度踏みにじったし……!)

勇者「そして俺は勇者だし」

勇者「勇者は魔王を倒す旅に出なきゃ……うん、でも仲間も必要なんだよな……」

勇者「……」

魔王「……」

勇者「また一緒に旅に行くか、『犬娘』」

魔王「……! う、うん、うん……!!」

たたたたた

魔王「ゆうしゃよ!!!」だきっ

魔王「あいしているぞ!!」

勇者「……俺もだ」

魔王「えへへ♪ うれしい」ぽ

魔王「でも……」

ガブ

いぬむすめっていうな♪

数年後

俺たちはまだ旅を続けている

相変わらず人にあうこともモンスターに出くわすこともない

(なので相変わらず経験値はゼロ、しかももはや武器すらない)

変わったことといえば……

こうして手をつないで歩くようになったことと……

勇者「……犬娘、大丈夫か?」

魔王「……うむ、すこしみおもになったからといってわたしはへこたれないのだ」

勇者「……お前が大丈夫でも中の子が大丈夫じゃないかもしれないだろ」

勇者「次の町くらいで、しばらく旅を中断しよう」

魔王「えー……きゅ~ん……」しゅん

勇者「そろそろ腰を落ち着かせるのもいいかもしれないしな」なでなで

魔王「……」

魔王「くふ、ゆうしゃにはたしかにこしをおちつかせてほしいの」

魔王「まいばんいじめられるわたしのみになってみろ」ニヤニヤ

勇者「な……!」

勇者「お前だって毎回、毎回……!」

ガブっ

勇者「いっ痛えええええええええ!?」

魔王「……ばつじゃ」

相変わらずの毎日

終わりのない旅……

だがそろそろ休憩が近づいている

魔王「ゆうしゃよ……ずっとわたしたちはいっしょじゃ」

魔王「あいしておるぞ……ゆうしゃ……」

風の音がきこえる

罪深き子らよ……

『最後の二人』よ……

海原を、天空を、大地を征く『最初の子』らよ……

幸せに……

幸せに……

終わり

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