側近「魔王様・・・魔王様!」
魔王「ちょっ、ちょっと待て。もうちょっとでダンジョンの設計図完成なのだ」
側近「スライムの消息が分かりました」
魔王「スライムじゃない!バラモスだ!して、どこにおった」
側近「それが・・・」
魔王「何かあったのか!?」
側近「勇者と遭遇したのは間違いないようです。恐らく交戦したのではないかと」
魔王「おそらく?詳しくもうせ」
側近「バラモスは勇者と戦う前に置手紙をおいて・・・行ったそうです」
魔王「行った?どこへだ」
側近「滝の上で激しく火花が散ってるのが見え、使い魔が追いついた時には誰もおりませんでした」
魔王「なんと・・・」
側近「恐らく勇者とともに滝に落ちて・・・可愛そうに・・・スライム・・・」
魔王「おお・・・なんということ・・・それからスライムじゃないバラモスだ」
側近「命がけで勇者を仕留めたんですね」
魔王「それで置手紙とは?」
側近「これです」パラッ
魔王「・・・読めんな」
側近「読めませんね」
魔王「今度スライム語も勉強しておくとしよう・・・」
側近「バラモス語じゃないんですね」
魔王「しかし、ダンジョンが完成してからなら命を落とすこともなかったものを・・・勇者め・・・」
側近「え?そうなんですか?」
魔王「私やダンジョンの周辺に術式をあらかじめ組んであるからな。以前は勇者は蘇生して王城に帰しておった。今はちょっと準備不足で無理だがな」
側近「なんでまたそんなことを」
魔王「私のダンジョンで死者など出さんよ。バラモスも魂になっておるであろう。復活させたら大いに褒めてやろうではないか」
側近「そうですね」
ズズーン・・・ズズーン・・・
魔王「この振動は・・・なんか覚えがあるな・・・」
側近「まさか・・・」
魔王「いくぞ!側近!」
【魔王城(仮)前】
勇者「・・・ライデイーン!・・・ライデイーン!」ズガーン!ズガーン!
勇者「いくぞ・・・うおおおおおおおおおおおおお」ゴゴゴゴ
勇者「ギガ・・・」
魔王「やめんか!」スパーン!
勇者「いてっ!」
魔王「城ごと壊そうとするな!って生きておったのか!勇者!」
勇者「なんで俺が死ななきゃいけねーんだよ、あぁん?」
勇者「それよりこの間は人の話の途中でよくも逃げやがったな!糞が!」
魔王「だから1年ほど待ってくれと何度言ったら」
勇者「そんなに待てねーよ!!」ズリズリッ
魔王「ん?足どうかしたのか?」
勇者「いてーんだよ!陰険な魔物けしかけやがって!なんだあのきりかぶ野郎は!」
魔王「ふはははは!十分足止めになったようだな!あときり株野郎じゃない。タンスの角だ!」
勇者「俺のかわいそうな足の小指に謝れ!ぶちころす!」ガンッ
タンスの角「キシャシャシャ」シュン
勇者「うぐぅ・・・・ま、また同じところを・・・。待ちやがれ!」
魔王「追いつけるわけあるまい。タンスの角はすばやさを強化しておるからな。はぐれメタルより速いぞ」
勇者「なにそれずるい」
魔王「いやなら私を倒してみるがいい。ところで、お前またぼっちなのか?」
勇者「やかましい!いつまでも同じと思うなよ!行け!スラリン!君に決めた!」
???「ピキー!」ドガッ
魔王「どふぉう!」グラッ
側近「魔王様!大丈夫ですか!?」
勇者「行け!もう一度体当たりだ!スラリン!」
???「ピキキー!」ドガン
魔王「ぐはぁっ!」
勇者「スラリン!電撃だ!」
???「ピキチュー!」ゴゴゴゴゴ
側近「あれは!地獄の雷!」
バリバリバリバリー!
魔王「ぎゃああああ!」
勇者「どぉだ!ぼっちじゃねーぜ」
魔王「お・・・お前は・・・バラモス!」
スラリン「ピキー!」
勇者「もうバラモスじゃないとさ」
魔王「なぜだ・・・なぜ裏切ったのだ・・・バラモス・・・あれほど気にかけておったのに・・・」
スラリン「・・・ピキー・・・」
勇者「謝ることねぇよ。スラリン」
魔王「なんだと?」
勇者「てめぇ自分が何やったか分かってねぇのかよ!あぁん?」
魔王「な・・・なんだというのだ」
スラリン「ピー・・・」
勇者「いいから言わせろって。まったく王様ってのはどこでも一緒だな!」
魔王「なに?」
勇者「自分は城でふんぞり返って手先を使って、はい、よろしくってな!」
魔王「そ、そんなつもりは・・・」
勇者「黙れ!薬草と10ゴールドしか渡さなかったらしいじゃねーか!」
魔王「それはそうだが・・・」
勇者「ひでえな!俺んとこの王様よりひでーよ。まぁこっちはこっちで棍棒のようなものと50ゴールドしかもらえなかったけどな」
魔王「お前がなんでそんなに詳しくしっておるのだ」
勇者「こいつが全部話してくれたよ。最初はちゃんと俺に挑んできたぜ。スライムがこんなにつえーとは思わなかったぜ・・・最後はどっちも倒れちまってよ」
スラリン「ピキー!」
勇者「ああ、そこでお互い動けねーし少しずつ話をしたんだったな」
勇者「で、聞いてみたらこいつも俺と同じような境遇らしいじゃねーか。自分では出て行かない王様に命令されて命がけで向かってきてよ」
勇者「ろくな装備も渡さずによく前線に出せたな!」
魔王「待て。バラモスには私の魔力を全力で注がせてもらった。それはどんな装備よりも・・・」
勇者「黙れ!それだけじゃねーんだよ」
魔王「なに!?」
勇者「てめぇ、こいつの前でもその美人の側近とイチャコラしてやがっただろ。こらぁ」
魔王「そ、そのようなことはした覚えは・・・」
勇者「自覚がねぇのが一番うぜぇんだよ!その時のスラリンの気持ちを考えたことがあるか?」
魔王「気持ち・・・だと?」
勇者「スラリンはなぁ・・・スラリンはなぁ・・・」
スラリン「ピキー・・・」
勇者「いいから言わせろ。スラリンはずっとてめぇのことが好きだったんだぞ!」
魔王「まさか・・・」
勇者「好きな相手が別の女とイチャコラしながら死んでこいって命令された気持ちがわかんのか!てめぇ!」
魔王「・・・」
勇者「ボロボロになるまで戦った後、こいつは泣きながらもういいって言ったんだ」
魔王「・・・」
勇者「もう魔王は諦めて、俺の仲間になるってな!てめぇを倒して全部忘れさせてやるよ!」
魔王「ま、待て待て待て!バラモス!本当か!?」
勇者「こいつと俺の目的は一致したんだよ!こいつはお前を倒して忘れたい。そして俺は全てのリア充を滅ぼしたい。行くぞ!」ズバッ
魔王「待て!お前目的変わってるぞ!」ギィーン!
バラモス「ピキー」ドガッ
魔王「ごふぅ・・・」
勇者「ギガデイーン!」ズゴゴーン!
スラリン「ピキキー!」バリバリバリッ!
魔王「ぐぐぐ・・・」プスプスプス・・・
側近「魔王様!!」
勇者「さぁて、とどめだぜぇー」スッ
側近「待ちなさい!」バシッ!
勇者「側近か!そんな女の細腕で防ぎきれると思っているのか!」ガンッ
側近「くっ・・・」バシッ
スラリン「ピキー!」ドカッ
側近「ううっ・・・」
側近「させません・・・この人に先に逝かれるのはもう嫌です・・・」
勇者「スラリン!側近は任せた!俺は魔王にとどめを!」スッ
側近「それ以上やったら私は・・・私は・・・」ゴゴゴゴッ
勇者「なっ!側近の様子が・・・」
側近「この姿は見せたくありませんでしたが仕方ありません・・・勇者・・・魔物のボスクラスがそのままの姿で倒されると思いましたか?」ドクンッドクンッ
勇者「まさか!第2形態か!?」
側近「グアアアアアアアアアアアアアアアオオオオオオ!」ズズーン
勇者「で・・・でけぇ・・・」
スラリン「ピキキー!」
勇者「な・・・あれが古代巨人族・・・だと!?数千年前に滅びたんじゃないのか!」
側近「グアアアアア!!」ドガガッ
勇者「スラリン危ない!」
スラリン「ピキー!」
魔王「な・・・な・・・あれが・・・側近だと・・・」
側近「グオオオーン!」ガッ
勇者「うおっと!しかしでかいしむっさいな・・・これは100年の恋も冷めるってもんだぜ。かわいかったのに」
魔王「あ・・・う・・・・あうあうあー」ブクブクブク・・・バタッ
勇者「気絶するほどショックだったか・・・まぁなぁ・・・」
側近「グアアアアアアアアア!」ズバッ
勇者「うあああっと!こりゃ駄目だ・・・逃げるぞスラリン!」
スラリン「ピキー!」
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側近「魔王様・・・魔王様・・・起きてください魔王様・・・」
魔王「う・・・む・・・はっ、そ、側近!」
側近「大丈夫ですか?魔王様・・・」スッ
魔王「うわあああああああ!」ズザザザー
側近「な・・・なんで逃げるんですか!」
魔王「す・・・す・・・」
側近「す?」
魔王「すんませんでしたあああああ!!」ガバッ
側近「え?え?」
魔王「自分調子に乗ってました!先輩!たかだか数百年しか生きてないのに魔王とか言ってすんませんでしたああああ!」
側近「そ、そんな・・・今までどおり喋ってください」
魔王「いえ!そんなわけには!」
側近「魔王様・・・年上はお嫌いなんですね・・・」
魔王「そ・・・そんなことは・・・」
側近「私の第2形態を見て嫌いになったんですね・・・そうですよね・・・あんな姿じゃ・・・」
魔王「待て」
側近「魔王様に嫌われたんじゃ・・・もう私ここにいられません!」ダッ
魔王「待て!」ギュッ
側近「離してください!魔王様!」
魔王「違うぞ!側近、そんなことは思ってもおらん」
側近「でも魔王様、私を避けてます」
魔王「私が言いたいのは私が魔王でいいのかということだ」
側近「え?」
魔王「私はお前より弱いかもしれんぞ」
側近「魔王様に必要なのは力だけじゃありません」
魔王「第2形態とかないぞ?ラスボスなのに」
側近「今度私の第3形態・・・魔王様だけに見せてあげます///」
魔王「第3形態?」
側近「普通の姿ですから安心してください」
魔王「そうか。まぁ楽しみにしていよう」
側近「魔王様こそ私でいいんですか?」
魔王「側近、お前ではなくては駄目だ。お前が必要なのだ」
側近「魔王様・・・」
魔王「大切な友だからな。さて・・・新たな魔物を呼び出すか。また勇者が来るかもしれん」
側近「・・・」
魔王「どうした側近?」
側近「別に・・・。今度はどのような?」
魔王「古代の魔王に習ってみようと思う。勇者が困りそうな魔物を呼び出すぞ」
側近「というと?」
魔王「かつて考案はされたがあまりの恐ろしさに呼び出されなかった魔物がいるのだ」
側近「おお!」
魔王「経験値の少ないメタルスライム。お金を持っていない踊る宝石。どうだ?」
側近「それは怖い」
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