側近「魔王様・・・すでに囲まれているようです。数は・・・1000はいるかと・・・」
魔王「ふはははは!1000か。たいした歓迎は出来んが私が相手をしてやろう」
側近「魔王様!?」
魔王「お前達は奥に隠れているがいい。私を狩る?違うな。獲物はあやつらだ」
勇者「いや、さすがに無理だろ」
魔王「私が目的ならば私が相手をするのが筋であろう」
勇者「あ、そ。じゃ、側近ちゃん。スラリン行こうか」
側近「魔王様・・・まさか一人で・・・」
勇者「スルーっすか。俺スルーっすか」
魔王「言うな、側近。さらばだ」
側近「魔王様!お待ちください!これは・・・お守り代わりです」チュッ
魔王「キ・・・キス・・・」
勇者「神様!魔王を殺せる今日の日を与えていただけたことを感謝します!」ジャキン!
魔王「うぐぅ・・・」バタッ
スラリン「・・・」
勇者「え?いや、俺何もまだやってないよ!そんな目で見るな。スラリン!」
側近「焼け付く息を直接吹き込みました。魔王様といえど一週間は動けないでしょう」
勇者「え?」
側近「あれだけの数。とても突破は出来ないでしょう。誰かが囮にでもならないと。モシャス!」ドロン
勇者「魔王の替わりにひきつけようってのか」
側近「私にはもう魔王様を失うのは耐えられません」
勇者「でも魔物の魂って不滅じゃねーの?」
側近「確かに私達の魂は人間のように天に召されることもないですし、輪廻を繰り返すこともありません」
勇者「なら・・・」
側近「だからと言って死んでも蘇られるとは限りません。特に名を忘れられてしまっては誰も呼び戻してはくれません」
側近「私・・・もう諦めていたんです。でも魔王様は召喚し、新しい名前までくださいました」
側近「そして、この名前。今こそ魔王様にお返しする時です」
勇者「そんなことより魔王をあの連中んとこに放り込んでさっさと逃げない?んで、あんなん忘れて俺と一緒に」
側近「・・・」ギギギギギッ
勇者「頭がああああああああああああ!手・・・手離してあああああ、あ、俺ここで死ぬわ」
スラリン「ピキー!」ガブッ
勇者「いでででで、スラリン噛み付くな」
勇者「じょっ冗談!冗談だよ!いやだなぁ。ははは」
側近「次に魔王様を侮辱したら許しませんよ」
勇者「わかったわかった。スラリンも悪かったよ」
スラリン「ピキキーピキーピーキピキキー」ポロポロ
勇者「な、なに泣いてんだよ」
スラリン「ピーピーピキピーピキキキー」
勇者「いや、そんなこと言われても」
スラリン「ピキーキーキーピーピー」
勇者「よく考えろ。俺は人間、お前は魔物だ」
側近「スラリンの気持ちを考えてないのはあなたも同じだったみたいですね」
勇者「うっ・・・スラリンお前の気持ちは分かった。そんなに俺を想っていたなんてな」
スラリン「///」
勇者「でもないな。うん、ないわ。お前との間に友情は感じてもそれ超えることはないな、うん」
スラリン「・・・」ガブッ
勇者「いっで!だって俺人間がいいもん!せめて人型がいい!」
側近「かつて人間になったスライムがいたそうですよ」
勇者「マジで?」
側近「想いの強さ次第で奇跡も起きるかもしれませんね」
勇者「ふーん・・・」
スラリン「ピキー」
側近「ではもう時間もないようです。私は行きますね」
勇者「ちょっ」
側近「魔王様のことはよろしくおねがいします」
勇者「俺がそんなんやると思うか?」
側近「思います」
勇者「・・・」
勇者「っしゃーねーな!運んでやるよ」
側近「勇者、あなたは割と最低の人間ですが、ほんの少しの良心はもっていたようですね」
勇者「ひでぇ、これでも勇者だぞ」
側近「ふふ、そうですね。そう、あなたは正しいといっておきましょう」
勇者「正しい?」
側近「そう、正義です。そして私達魔物が悪です。これは古から変えようのないルールなんでしょうね」
側近「だからこそ、魔王様は悪としてなすべきことをやらなければならない。でもそこに悲しむ人を生み出したくなかったんでしょうね」
側近「魔王様はいつか必ず勇者に討たれる定めなんですよ。魔王様はそれを分かっておいででした」
側近「最後は自分が討たれるとしてもみんなが笑ってられるようなダンジョンを作りたかったんでしょう」
勇者「だったら魔物がいなくなってたらどうなるんだ?」
側近「おそらく人間の中から魔王が選ばれるんでしょうね。それはあなただったかもしれませんよ」
側近「あなたには魔王様のやってることがバカバカしく見えたんでしょうけど、この方はそんなやさしい方なんですよ」
側近「ちょっと調子に乗っちゃうところもありますが、私はこの方のことが好きです」
側近「この方は悪の王道をすすめる方です」
勇者「悪の王道?」
側近「見せてあげますよ。悪の王道というものを」
勇者「お、おい」
側近「魔王とは正義により死すものと見つけたり!さようなら!」ダダダッ
・
・
・
・
・
魔王「・・・・んむぅ・・・はっ」
勇者「おう、目ぇ醒めたか」
魔王「ここは?」
勇者「ここはどこでもねぇよ。ただの原っぱだ。名前なんてねぇ」
魔王「そ、そうだ!魔物狩りの一団は!?」
勇者「もう帰ったよ。魔王を狩ってな」
魔王「どういうことだ。側近?そうだ、側近はどこだ」
勇者「側近はお前の替わりに狩られたよ。あれだけの数を相手に良く戦ってたし、王様たちも半壊したが最後はやっぱり人数がものを言うよな」
魔王「そ、そんな・・・」
勇者「悪の王道っつーもの見せてもらったよ。ありゃすげー女だ」
魔王「おおおおおおおお、側近ーーーーーーーーーーーー!」
・
・
・
・
・
・
魔王「うっ・・・・ううう・・・・側近・・・・側近・・・・」ポタポタ
勇者「んで、お前いつまで泣いてんの?」
魔王「うう・・・・」
勇者「ま、俺は伝えることは伝えたから帰るけどさ。その前に言っておく事があるかな」
魔王「うう・・・」
勇者「リア充ざまぁああああああああああ。ぷぎゃあああああ」ゲシゲシ
勇者「てめぇもついに非リア充になりやがったな。ぎゃっはははは!」グリグリ
魔王「・・・」
勇者「なっさけねーなぁ!女一人失って泣いてるだけかよ。はーっはっはっは!」ゲシゲシ
魔王「う・・・」
勇者「さて、言うこと言ったし。じゃあな、そこで永遠に泣いてろ。側近もお前なんかじゃなく俺につけば生きてられたのになー。馬鹿な女だな」
魔王「側近を馬鹿にするな!」ドガッ
勇者「ぐっ」
魔王「側近は私が復活させる!」
勇者「はっ、側近の魂は前のお前みたいに封印されちまったぞ?」
魔王「そのようなもの私が破ってみせる!」
勇者「魂自体もお前の時どころじゃねーぜ?ちりじりに引き裂かれちまったぜ?」
魔王「全て探し出してやる!」
勇者「どんだけかかると思ってんだよ」
魔王「何千年かかろうとかまわん!」
勇者「そうかい。ほれっ!」ドンッ
魔王「ぐあっ、何を?ん?水晶?これは・・・」
勇者「お前を探知してた水晶だよ。城の占い師からかっぱらってきた」
魔王「というか、これは私の魔水晶ではないか!」
勇者「そうなのか。昔魔王城からでも取ってこられたんだろ。どうもそれで占っていたみたいだ」
魔王「確かに昔はこれで勇者の動向見てたからな。まさか私が見られてたとは」
魔王「しかし勇者、なぜ私にこれを・・・。お前は私が嫌いだったのではないのか?」
勇者「うっせ!嫌いだよ!あのまま泣いて何もしねーんなら渡さずにさっさと帰ったさ」
魔王「え?」
勇者「側近復活させるのにいるだろ!別にお前のためじゃねー」
魔王「勇者・・・ありがとう・・・」
勇者「魔王が勇者に礼を言うんじゃねー。まぁ悪の王道っての見せてみろや」
魔王「しかしよく取ってこられたな」
勇者「王様は狩りの時に重体だからな。国中がバタバタしてるからな。意外と簡単に取ってこれた。これで追われることはないだろ」
勇者「じゃ、行こうか。スラリン」
スラリン「ピキー」
魔王「勇者!いつか私がダンジョンを作ったら挑みに来いよ!」
勇者「何千年後の話だよ。先にやることがあんだろ。その時の勇者に言え。じゃあな・・・いっでぇ」ガンッ
タンスの角「キシシシシ!」
勇者「まだいたのかよ・・・しつけーな・・・。待ちがやれ!!」ダダダダッ
・
・
・
・
魔王「さて!行くか!」
・
・
・
・
・
【数千年後】
魔王「いでよ!新たなる同胞よ!」
???「ん・・・ここは・・・」
魔王「ふはははは」
???「・・・?」
魔王「私は魔王!お前にこの世界での名を与えよう!」
???「え?」
魔王「お前の名は側近だ」
側近「はい!」
おしまい