勇者「なんかあれだ」 2/3

1 2 3

海賊「おお、生きてたかおめえ!!!」

子分1「へえ、なんとか・・・それより見てください!!獲ってきやしたよ!石!!!」

勇者・戦士・魔法使い「「「・・・・・・・・・・・・。」」

子分1「いやね、行ってきたんですよ西の鉱山に。奥深くの場所でしてね」

海賊「ボストロールは?」

子分1「眠ってやしたよ!そんでやつがグースカこいてる間に、ちょろっと持ってきたわけですわ」

海賊「でかしたぞ!!!なあ、お前ら!これで大陸へ渡れるぞ!」

勇者「あ・・・ああ、はい。そうですね・・・ありがとうございます」

魔法使い「子分くんもありがとうね・・・」

子分1「へへっ、お役に立てたようで光栄でさぁ」

海賊「そうとくれば、早速出港だぁ!おめえら、準備しな!!!」

子分達「アイアイサー!!!」

~大陸側の港町~

海賊「着いたぞ!」

勇者「本当何から何までありがとうございました」

戦士「初めは悪者かと疑ってかたじけない」

海賊「ぶわっはっはっは!!酒ぇ飲んでりゃそういうこともあるって!」

勇者「あの、これ20万G・・・乗船料ってことで」

海賊「ハァ!?!?!?!?そんな大金を?!?!」

子分「別の港町の連絡船だったら200Gで渡れやすぜ」

勇者「いや、なんて言うかその・・・こうしないと気が済まないっていうか昨日のお酒もあれですし、あの、本当いいんで受け取ってください」

海賊「はぁ・・・そこまで言うんなら受け取るけどよぉ、おめえさんがた一体・・・」

勇者「まあ、なんていうかちょっとなんかあれなんですけど勇者一行ってことで・・・」

勇者・戦士・魔法使い「「「・・・・・・・・・・」」」

勇者「なんかあれだな」

戦士「ああ、これはちょっとあれかもしれないな」

魔法使い「こう・・・なんというかスッキリしないわね」

勇者「あ!」

戦士「どうした?」

勇者「せめて盗賊のアジトだけでも壊滅させてくればよかったかな・・・」

魔法使い「あー・・・なんかされるがままに船乗っちゃったもんね」

勇者「罪滅ぼしというか"何かをした"感出す為に20万G払ったけど」

戦士「かなり大金だな」

勇者「もともと自分で稼いだお金じゃないから全然心が痛くない・・・」

戦士・魔法使い「「・・・・・・・・」」

勇者「気を取り直しいこう、まだ旅は始まったばかりだ」

戦士「しかし最短で来ているからもう中盤を過ぎているだろう」

魔法使い「呆気無いわ」

勇者「城下を出て今日で何日だ?」

戦士「出たのは昨日の朝じゃないか」

魔法使い「呆気無いわね」

勇者「せめて、この街で何か・・・」

戦士「もう段々目的が変わってきているな」

魔法使い「仕方ないわよ、人は安心や安定を求めるものよ。ベタな展開、お決まりのパターン」

勇者「平和と混沌の間で葛藤している・・・まあいい、今日はここで宿を取ろう」

~宿~

勇者「はあ・・・」グビッ プハァ

戦士「まあ、ため息も出るな」

魔法使い「イベントがあれだものね」

勇者「そもそも最初からおかしかった。勇者が旅立つ動機って普通何?」

戦士「まあ『王様に頼まれて、世界平和のために』・・とか?」

勇者「そこだよ、もう!何だよ!『私怨なんじゃが』って何だよ!!」

魔法使い「王様も気まぐれね」

勇者「気まぐれどころじゃないよ・・・しかも普通最初の装備って『普通の剣、普通の防具』でしょ?」

戦士「それが初っ端そのめちゃくちゃな装備だもんな」

勇者「おかげでモンスターとの戦闘も始まらない・・・」

勇者「君たちさ、女神の加護って知ってる?」

戦士「ああ」

魔法使い「話には聞いた事があるわ」

勇者「俺はそれを受けていて、君たちもパーティだから恐らく知らず知らずのうちにそれを受けてるはずなんだが」

魔法使い「えっ!?じゃあ私達、死んでも蘇生されるの?」

勇者「いや、普通に死ぬ」

戦士「なんだそりゃ」

勇者「俺が聞きたいよ全く!」

魔法使い「城下の酒場も何かあれだったわね」

勇者「そう!!普通はさ!酒場で話しかけて、僧侶と魔法使いと戦士を!仲間にするんじゃないのか!」

戦士「ラストオーダーで入店拒否ってなんだよな」

魔法使い「気が利かない店主だったわね」

勇者「しかも僧侶仲間になんなかったし」

戦士「まああいつはああいう感じのあれだからな」

魔法使い「それにしても断る流れじゃなかったけどね」

勇者「君たちは知り合いだったの?」

戦士「ああ、各地のギルドで依頼を受けて日銭を稼いでたのさ」

勇者「そうなのか」

魔法使い「まあ、フリーターみたいなもんよ」

勇者「そういえばそこそこ強いとは言っていたけど、レベルは?」

戦士「78」

魔法使い「82」

勇者「そこそこどころか十分すぎるよ!!!なんだよ!戦闘起こらないとかそういう問題じゃないじゃないか!」

戦士「まあ起こっても問題ないからな」

勇者「だいたい、港町のあれもそうだよ」

戦士「あそこは決定的だったな・・・」

魔法使い「海賊さんね」

勇者「普通はさ、港町を荒らす海賊どもを退治して、『ありがとうございました、お礼に船を使ってください』だろ」

戦士「特殊な職業の連中もいるんだな」

魔法使い「結構普通にいい人達だったわね」

勇者「そう。彼らは悪くないんだ、全く悪くない。悪くないことが悪い、と思ってしまうこの現状が悪いんだ」

戦士「ややこしいが俺たち的にはそうなるな」

勇者「その後だよ、その後」

魔法使い「あれは正直『これはないわ』ってなったわね。」

勇者「いよいよだよ。盗賊団のアジトを壊滅させて、船を借りようって時にだよ」

戦士「全くもって正義を執行するタイミングがないな」

勇者「本当その通りだよ!イベントが全体的に『○○が○○だったけど○○だったから大丈夫だった』で解決してるんだよ!!!」

戦士「ああ何かそんな映画を見たことあるなそういえば」

魔法使い「恋した相手が生き別れの兄弟だから無理かと思ったけど実は違ったので大丈夫だった、のやつでしょ、私と見に行った」

戦士「それそれ」

勇者「なにはともあれ、苦労しないどころか徒労すらない旅なんて味気ないよ」

戦士「まあ、まだ旅は終わらないんだしさ、この先の街とか、魔王城とかで一悶着あるかもしれないだろ」

魔法使い「あまり気を落とさず頑張りましょうよ」

勇者「今のところ何も頑張っていないんだよ・・・」

戦士「城下で聞き込みしたあの奇跡的な男のトラップっていう可能性がまだあるしさ」

魔法使い「それもそうね、気を抜かないことだわ」

勇者「そうか・・・それもそうだな。よし、今日はもう休もう。」

~翌朝~

勇者「この港町は平和そうだね」

戦士「海賊らしきものの姿も見かけないな」

魔法使い「賑わっていて良いわね、私何か買い物していこうかしら」

ドンッ

魔法使い「キャッ!」

子供「・・・・」ダッ

タッタッタ・・・・・

魔法使い「何よあの子、ぶつかっていって謝りもしないなんて・・・」

勇者「ま、まさか・・・おい、財布が盗られてないか?」

魔法使い「あっ・・・・・・・・!!!」

魔法使い「あ、あったわ」

勇者「そうか。」

戦士「なんかこう、"良いとこ"まではいくんだがな」

魔法使い「今の感じよかったのにね」

勇者「むぅ・・・」

戦士「先へ進もうか」

~砂漠~

勇者「この砂漠を超えれば魔王城は目の前だ。」

戦士「町人の話によると、途中に集落があるからそこで宿を取って、回復してから魔王城へ向かおう」

魔法使い「この長い砂漠を一日で超えるのは大変だものね」

勇者「よし、進もう」

ザバァッ!!!

勇者「!? 砂の中からモンスターが?! ・・・サンドワームか!!かかってこい!」ジャキッ

ザザザ・・・

戦士「と思いきや勇者の装備を見るなり逃げていった」

勇者「何なんだよもう!!」

~砂漠の集落~

勇者「モンスターどもめ、結局ザバァッ(登場)、ザザザ(退場)の繰り返しじゃないか」

戦士「もはやちょっとしたアトラクションだったな」

魔法使い「宿を取って、明日砂漠を超す分の水を調達しましょうよ。」

勇者「そうだね」

勇者「ごめんください」

宿屋「いらっしゃい、旅のお人か、どちらから?」

勇者「城下の方から、魔王を倒しに」

宿屋「勇者様ご一行様ってわけか!こいつぁ失礼したね。しかし悪いね、今の村の状態じゃ大したもてなしができねえ」

勇者「何かあったんですか?」

宿屋「元々この村は、ちょっと東に行ったところにあるオアシスから用水路をひいていたんですわ」

勇者「ふむふむ」

宿屋「しかしちょっと前に、そのオアシスに突然でっけえーワニのモンスターが現れて、呪いの魔法でオアシスの水を止めちまいやがったのでさ」

勇者「そうだったんですか」

宿屋「ええ、飲み水が中々手に入らねえもんで、料理もままならねえんですわな。それにそのバケモン、恐ろしいことに度々村に来ては村人を食っちまいやがる・・・」

戦士「恐ろしいモンスターだな、退治した方がいいんじゃないか」

宿屋「しかし村に腕の立つもんはいねえし、何よりドラゴンほどでかいモンスターなんだよ、かないっこないさ」

勇者「我々が退治しましょう。水がないと我々もこの先の砂漠を超すのに困りますから」

宿屋「あ、この砂漠を超すくらいの水の備蓄ならあるんで持ってってくださって結構ですぜ。おいら達は地中のカエルしぼった水飲んでりゃ大したことはないんで」

勇者「それではダメなんだ!!!!!!(憤怒)」

宿屋「へ、へえ・・・まあ退治してくれるってんならありがたいんですが・・・。そうだ、やつを退治できた暁にゃ、立派な馳走と酒を用意させていただきやすよ」

勇者「ありがとう」

宿屋「へへ、何もない所でして・・・これくらいしかできませんで申し訳ない限りでさ」

勇者「いやいや、いいんですよ。」

宿屋「外は暑い、今日はどうか部屋に上がって休んでいってくだせえ」

──────────────

戦士「危なかったな」

勇者「危なかった」

魔法使い「"水の備蓄あるから持ってっていいよ"が出てくるとはね」

戦士「砂漠の民は逞しいな」

勇者「うっかりふたつ返事しなくてよかったよ」

~翌日~

勇者「よし、出発しよう」

戦士「オアシスは東だったな」

魔法使い「行ってみればそいつが居るかしら」

勇者「そうだな、とにかく向かってみよう」

勇者「いよいよって感じだね!」

戦士「ああ、今度こそだな!」

魔法使い「み、見て!!あのデカイのがそうじゃない?」

ギャオォォ・・・・ キシャァ~・・・!!

ドォン・・・・

勇者「な、何だあれは・・・!?」

戦士「巨大なワニと・・・特大サイズのサンドワームが争っているぞ!!!」

勇者「ま、まずい!!急げ!!!!」ダダダッ

キシャァ~・・・・!!

ズシーン・・・・・・・・・・・───

1 2 3