国王「勇者よ、魔王を倒すのじゃ!」
勇者「邪智暴虐の限りを尽くす悪の大魔王を倒して世界に平和を取り戻すんですね!」
国王「いやなんか違うんだけど」
勇者「はい?」
国王「ほぼ私怨なんじゃが」
勇者「はぁ・・・」
国王「かくかくしかじかまるまるうまうま・・・」
勇者「あーそれはまあ確かに」
国王「じゃろー?!ほんと『あ、こいつないわマジ殺そう』ってなったわけ」
勇者「あー」
国王「だからまあ頼む」
勇者「任せてください!」
国王「そなたには女神の加護がついとる」
勇者「なるほど、ということは死んでも・・・」
国王「いや普通に死ぬ」
勇者「えっ」
国王「加護がついとるからって油断したら死ぬから気を付けて頑張れよ、と言おうとしたんじゃよ」
勇者「なるほど、気を引き締めろということですな」
国王「その通りじゃ」
国王「あとちなみにさっき行ってた悪の大魔王だけど倒すのそっちじゃないから」
勇者「えっ」
国王「なんか普通の魔王の方」
勇者「そいつは悪い奴じゃないんですか?」
国王「いやそいつも普通に嫌な奴だから倒していい」
勇者「あ、なら良かったです。悪を滅ぼすのが俺の宿命ですから」
国王「立派じゃの。悪の大魔王の方は人間の軍隊が全力で叩きのめしつつあるので、勇者は安心して魔王を討伐してくれ」
勇者「あ、そうなんですか、じゃあ世界に平和が訪れるのも時間の問題ですね」
国王「そういうことじゃ」
国王「旅立つそなたに装備を与えよう」
聖剣
聖盾
聖鎧(全身一式)
50万G
勇者「す、すごい・・・せいぜい良くても銅剣と鉄の鎧くらいかと・・・」
国王「奮発して集めてきたんじゃ。期待しておるぞ」
勇者「ありがとうございます!」
国王「城下の酒場には屈強な強者どもが集まっていると聞く。旅の仲間に誘うと良かろう」
勇者「ありがとうございます、行ってみます」
勇者「私怨とはいえ悪人だ。頑張って懲らしめよう」
勇者「にしても食後のデザートの時間を魔物の襲撃で邪魔されるなんて気の毒に・・・」
~酒場~
勇者「やあ、こんばんは」
店主「あの、もうラストオーダーの時間終わってるんで・・・」
勇者「なんと、これはしくじった」
勇者「店の外で客が出てくるのを待っているとするか・・・」
──────────────
勇者「お、出てきたぞ・・・やあ、こんばんは」
戦士「やあ、どうした」
勇者「実はかくかくしかじか・・・」
魔法使い「それで旅の仲間を探してるってわけね」
戦士「そりゃあ、俺たちはそこそこ強いし役に立つと思うが・・・どうする?」
魔法使い「私は構わないわよ?」
僧侶「あー、私はそういうのは、ちょっと」
勇者「あ、でも報酬は弾むよ、なんならこの場で10万Gずつ渡しても・・・」
僧侶「あーなんかそういうんじゃなくてなんか、うん、」
勇者「あっ全然無理強いとかするあれじゃないんで、うん、ごめんね」
僧侶「あっ、ううん全然、ごめんごめん。」
戦士「僧侶はまあそういうあれじゃないしな」
魔法使い「まあ三人いれば大丈夫でしょう」
勇者「そうか、じゃあ早速出発だ!」
魔法使い「今、夜の12時よ?それに私達酔っ払ってるし。」
勇者「あ、じゃあ明日にしよう、ごめんごめん、張り切っちゃっててさ」
戦士「じゃまた明朝に」
~翌朝~
勇者「さあ行こう!」
戦士「まずは情報収集か・・・」
魔法使い「魔王の城の場所が解らないとどうしようもないからね」
勇者「人に聞いて回ろう、まずはあっこにいる男性に訊ねてみよう」
勇者「やあ、こんにちは、つかぬことをお聞きするのだが、魔王の城の所在を知らないかい?」
町人「ああ、知っているよ」
勇者「なんと」
町人「魔王の城の場所、行き方、最短ルートから最安ルート、観光ルートから何から何まで知っているよ」
勇者「なんと」
戦士「逆に怪しいな」
町人「怪しいことなんかないさ、ここの道を真っ直ぐ行ってかくかくしかじか・・・」
勇者「なんと一人目からいきなり全ての情報を知っている人に出会ってしまった」
魔法使い「あっけないわね」
戦士「罠かもしれんぞ、気を付けよう」
勇者「そうだな、それにしてもアテは無いので言われた通り港町へ向かおう」
~平原~
勇者「モンスターが襲ってこないな」
魔法使い「その装備見て襲ってくるほどモンスターも馬鹿じゃないってこまね」
勇者「なんかこう、なんというか勇者的なあれがないなあ」
戦士「大したあれも起こらないしな」
魔法使い「なんか僧侶も居ないしね」
戦士「ああ、なんかなあなあな感じで不参加になったな」
勇者「しかも酒場入ったらL.O終わってるとか言われて外で待ってたんだよ俺」
戦士「まあ旅を続けていけば[村の近くの洞窟に棲む恐ろしいモンスターに悩まされているから助けてくれ!]みたいなあれもあるかな」
魔法使い「そうだといいわね」
戦士「きっかけも所詮私怨だし釈然としない感じのあれで終わらないと良いんだがな」
~港町~
勇者「港町についたぞ!」
魔法使い「あんまり活気が無いわね」
戦士「船で大陸を渡るんだったな?」
勇者「ああ、しかし少し疲れたので今日はそこの酒場で一杯やって休もうじゃないか」
魔法使い「そうしましょ」
~酒場~
勇者「しかし本当に一匹もモンスターにあわなかったな」
戦士「まあ良い事じゃあないか、何事も無く無事に終われば」
魔法使い「そうね、それにしてももうちょっとベタさがあっても良い感じはするけどね」
バタァーンッッ!!!
海賊「酒をよこしやがれーーー!!!!」
勇者「!?」
海賊「なんだてめぇら、見ねえツラだな・・・」
勇者「俺は勇者だ。魔王を倒す旅をしている。貴様こそ何者だ!」
海賊「俺か?俺はなぁ、ここらの海一帯を仕切る海賊様だあ!!!」
戦士「なるほど、この港町はこの海賊どもに支配されてるってワケか・・・」
勇者「罪のない人々を苦しめて金品を巻き上げたり酒を奪ったりしているんだな!」
魔法使い「どうりで街にあまり活気が無いと思ったわ」
勇者「悪党は許さない!この港町から手を引くんだ!さもないと・・・斬る!」
海賊「はあ?なぁ~に言ってやがんだ!俺を斬るだってぇ?ハッハッハ!やってみやがれってんだ!
おい、お前らァっ!!」
かいぞくは なかまをよんだ!
ゾロゾロワラワラ・・・
子分1「お頭に手ぇ上げようってのか?お?」
子分2「んなこたぁ海坊主が許しても」
子分3「おれっち達が許さねえでやんすよ!!」
海賊「ぐわーっはっはっは!そういうこった!怪我ァしたくなかったらすっこんでな!」
勇者「ぐっ・・・多勢に無勢か・・・卑怯だぞ!」
海賊「ハッハッハ!なんとでも言え!おい、店主はどこだ!!」
店主「はいよ、あ~、ご予約の?」
海賊「ああ、今4人だけど後からもう3人来る。酒をよこしやがれ!!」
店主「あちらのご予約席へどうぞ」
勇者(!?)
勇者「マスター。」
店主「はい」
勇者「彼らは海賊だな?」
店主「ええ、ここらの海一帯を仕切る海賊ですね」
勇者「ということは町人を苦しめたり漁師を攻撃したり」
店主「いえ、そういうあれではなくて・・・」
勇者「・・・どういうことだ」
店主「いえね、ここらの海は高級魚がよく穫れましてね、大陸側からの密漁船がよく来るんですよ、
その密漁船を彼らが襲って我々の港町の漁師を助けてくれてるわけです。」
勇者「それでみかじめ料をたんまり取って」
店主「いえいえ、そんなことはしませんよ、彼らも昔は漁師でしたからね。」
勇者「・・・・」
海賊「おい店主!フィッシュアンドチップス2つだ!!!」
店主「はいはい、ただいま」ザッザクッ トントントン
戦士「街に活気がなかったのは・・・」
店主「あ~、まあ休日はこんなもんでしょうよ、みんな朝が早いからさっさと引っ込んで寝ちまうんですわな」ジュ~
勇者「そ、そうだったのか」
店主「まあ口は悪いですがね、悪いやつじゃあないですよ」ササッ
トンッ
店主「フィッシュアンドチップスおまち」
海賊「うわははは!!いつも悪いな!!!!」
勇者(常連か)
勇者「なんかあれだったな」
戦士「そうだな、なんかこう」
魔法使い「『お、ついに来たか!?』って思ったけどそうでもなかったわね」
勇者「まあ平和なのは良い事だがな・・・」
戦士「結局あのおっさんに奢ってもらっちゃったな」
勇者「ああ、儲かっているんだろうな・・・」
魔法使い「ま、無事に済んで良かったじゃない!今日はもう休みましょ」
勇者「そうだな」
~翌日~
勇者「よし、船を探そう!!」
戦士「向こうの大陸への連絡船は無いらしいから、誰かに乗せてもらわないとな」
魔法使い「昨日の海賊のおっさんにあたってみましょうよ」
勇者「名案だね」
勇者「あの、昨晩はどうも・・・」
海賊「ん?おお、おめえらか、どうした?」
勇者「向こうの大陸へ渡りたいんですけど」
戦士「良かったら船に乗せてもらえないかと思ってな」
海賊「う~ん・・・」
海賊「乗せてやりてえのは山々なんだが、実はちょっと事情が悪くてな」
勇者「・・・と言いますと?」
海賊「俺らの船にゃ特殊な部品でよ、"かぜおこしの石"っつー魔法石が組み込まれてるのよ、昔行商から買ったもんでな、それを使うと船はすげースピードが出るわけよ」
勇者「はあ」
海賊「それが昨晩、酒飲んでる間に盗まれちまってな、そいつがないと大陸付近の急流は越せねえのさ」
勇者「なんと・・・」
海賊「盗人どもから石を取り返すか、西の鉱山の奥深くまで潜って取ってこなきゃなんねえんだが、どっちも危険なんだよなあ」
戦士「西の鉱山には何かあるのか」
海賊「ああ、ボストロールっつーとんでもねえバケモンが棲んでんだ、人間なんかあっという間に食われちまう。
一応子分に向かわせてはいるが・・・ま、無理だろうな・・・」
勇者「ふむふむ、ということはその盗人共のアジトから石を取り返すか」
戦士「西の鉱山のバケモノを倒して石を採掘してくればいいんだな」
海賊「簡単に言うがおめえさんがたよ、どっちも無理な話よ。次の行商人が売りに来るまで石は・・・」
勇者「俺達がやりますよ、なんとかして石を手に入れてきます」
海賊「はぁー!?無理だって、危険過ぎるぜ」
魔法使い「なによこう見えて私達、結構強いんだから」
海賊「そうは言うがよぉ・・・しかし」
戦士「何、無理を頼んでいるのはこちらなんだ、これくらいのことはしないでどうする」
勇者「盗人のアジトの場所は?」
海賊「おそらく盗みを働いたのは、東の洞窟をアジトにしている盗賊団の連中だ。この辺じゃ悪事を働くのは密猟者かあいつらぐれえしか居ねえからな
しかし奴らの親分ってのも結構な強者って聞くぜ。なんせ団員70人の盗賊団だ。ケチな盗みをしやがる嫌な連中だぜ。」
戦士「ふむ、西と東か、どちらから行くか・・・」
海賊「俺ぁどっちもオススメできないがね・・・」
魔法使い「勇者はどうしたらいいと思う?」
勇者「盗賊のアジトへ向かい石を奪取・・・できれば盗賊団を壊滅させよう。悪党は滅ぼさなきゃ!」
勇者「それに恐ろしいモンスターといえどボストロールは野生のモンスターだしね。人間に生活を脅かされる言われはないだろう」
戦士「なるほど、それではまずは東の洞窟に向かうか」
勇者「うん、いよいよ『ぽく』なってきたな。」
戦士「ああ、頑張ろう」
魔法使い「やっときたわね、こういうベッタベタな展開が」
海賊「ん?何いってんだお前ら?」
勇者「いやいや、こっちのはなs」
子分1「お頭~~~~~ッ!!!!!」ダッダッダッ