勇者「ま、間に合わなかった・・・ワニのモンスターが・・・」
戦士「サンドワームに負けてしまった・・・」
魔法使い「呪いがとけて、用水路に水が戻っていく・・・」
勇者「・・・・・・・・チクショオォォォォォーーーーーーッッッ!!!!!!!!」
宿屋「やぁー勇者様!!さっき用水路に水が戻ってきましてね、本当によくやってくださった!」
勇者「いえ、そうじゃなくて・・・」
戦士「実はかくかくしかじか・・・」
魔法使い「私達、何もしてないのよ」
宿屋「あー・・・そうだったんですか、砂漠はワームの縄張りですからねえ・・・地下の水までヤツが独占しちまって、ワームの親玉がブチ切れたんでしょうなあ」
勇者「はあ・・・」
宿屋「いやなに、勇者様がたにお手数かけたのは間違いねえんだ、どうか今夜はゆっくり馳走になっていってくださいな!」
勇者「それじゃあまあ、お言葉に甘えて・・・」
勇者「・・・・・・・」ガツ・・・ガツ・・・
戦士「・・・・・・・」ムシャ・・・ムシャ・・・
魔法使い「・・・・・・・」グビッ
戦士「・・・『また』だったな」
勇者「・・・・ああ」
魔法使い「『オアシスを占領する悪いモンスターが現れたけど先住民のサンドワームが倒してくれたから大丈夫だった』わね」
勇者「・・・一文に纏めないでくれ」
戦士「虚しくなる」
宿屋(こ、この人達一体どうしたんだ・・・)
勇者「しかし今回は"徒労"くらいにはなったんじゃないか」
戦士「そ、それもそうだな、結構歩いたし」
魔法使い「そうね、一応そういうことにしておきましょうよ」
勇者「・・・気が滅入るな。まあいい、明日はついに魔王城に到着だ。心してかかろう」
戦士「そうだな、今日はもう休もう」
魔法使い「魔王は普通に魔王だといいわね」
勇者「そうだな・・・この分だと、少々不安だが・・・」
勇者(魔王城では流石に数々のトラップや四天王が待ち受けているだろうが・・・)
勇者(どうにかして活躍のできる、波瀾万丈な冒険になるといいんだが)
~翌日~
勇者「お世話になりました、あの、これ泊めていただいたお礼に」
宿屋「10万G!?!?!!??う、受け取れねえよぉこんな大金は!!うちの宿賃は130Gだぜ?!」
戦士「しかしあれだけ馳走になったしな」
宿屋「あれだってせいぜい200Gぐらいのもんですぜ」
勇者「いいからッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
宿屋「─────ッ!?」
勇者「・・・いいんです、受け取ってください、受け取ってくれないと、俺・・・」
宿屋「へえ・・・、そこまで言うんでしたらありがたく受け取りやすが・・・。」
勇者「お世話になりました」
───────────────────
戦士「"何かをした感出すため料"か」
勇者「ああ、しかし・・・まあいい、進もう。敵はもうすぐだ。」
~魔王城~
勇者「ついにラストダンジョンだな」
魔法使い「最初にして最後のダンジョンね」
戦士「結局あの町人の情報も全部デマでもなければ罠でもなかったな」
勇者「そうだったな・・・奇跡的に全ての情報を知っている究極に親切な人だった」
魔法使い「本当にいるものなのね、聖人みたいな人が」
勇者「そうだな・・・・。よし、突入しよう。」
勇者「これは・・・毒沼か」
戦士「そのようd・・・・・いや、まて」
戦士「これただの色水だ」
勇者「ぐ、ぐぬう・・・・・」
戦士「中は不気味だな」
勇者「しかし・・・何もないな」
魔法使い「そうね・・・・・キャッ!」
バカッ────
戦士「落としあ─────!」
ストンッ
魔法使い「な・・・じゃないわね」
戦士「浅っ」
勇者「なんだよこの罠!!罠とも呼べないよ!!!!」
魔法使い「間違えて階段一段飛ばして降りた時みたいな感じになってちょっと冷や汗かいた程度よ」
勇者「ぐぐ・・・・俺達をコケにしているのか・・・!!」
戦士「まあ何事もなくて良かった。先へ進もう」
戦士「モンスターは全然居ないようだな」
魔法使い「嘗められてるのかしら」
勇者「直接は関係ない敵だけど、だんだん魔王が憎くなってきたな」
戦士「完全に怒りの矛先になってるな」
ズォッ ドドドドド・・・・
魔法使い「!? 天井が落ちてくる!?」
ドドドド・・・ゴォ・・・・
戦士「ま、まずい─────ッ」
戦士「─────ッハァ!ハァッ、ハァッ・・・・・・!」グググ
勇者「せ、戦士!!!大丈夫か!!」
戦士「ここは・・・俺が一人で押さえる・・・・お前たちは先に・・・行けっ!」グッ・・・
魔法使い「でも・・・・!」
戦士「いいからっ・・・・早く行くんだっ・・・すぐに追いつくっ・・・・!!!!」グ・・・
勇者「戦士・・・・・・必ず・・・戻ってこいよ!!」ダッ
戦士「あっ・・・・ちょ、ちょっとタンマやっぱ一緒に行く」
勇者「何・・・・・あ」
戦士「なんかこの天井・・・この位置で止まった・・・」
戦士「完全にコケにされた」
魔法使い「今のこそ、って感じだったのに・・・」
勇者「・・・魔王を滅ぼす。」
戦士「ああ。」
魔法使い「やりましょう。」
勇者「王様は・・・そうだ、言っていた。俺が"そいつも悪人なんですか"と聞いたら"嫌な奴"と」
戦士「・・・・」
魔法使い「ビックリ箱的なものを渡されて蓋を開けてみたものの不発だった感があるわね」
戦士「しかもそれを意図的にやってきている」
勇者「くそっ・・・・」
~魔王の間~
魔王「勇者はもうじきか」
側近「はっ、そのようです」
魔王「クックック、我が魔王城のトラップにハラワタが煮えくり返っておろうな」
側近「あっ今ワープゾーンのトラップに辿り着きました。どのワープホールに乗るか悩んでいるようです」
魔王「あの"どれに乗っても行き先一緒のワープホール"か・・・ククク」
側近「一発クリアーです」
魔王「だろうな」
側近「怒ってますね」
魔王「クックック」
側近「あ、今四天王のところに着きましたね」
魔王「"全員同じビジュアルの色違いでしかも同時に出てきて属性攻撃もしてこないそんなに強くない四天王”か」
側近「一撃ですね」
魔王「だろうな」
側近「"どうなってやがんだよオオォォーーーーーッ!!!"と叫んでます」
オ・・・・・・ォ・・・・・・ォ・・・・・・・・
側近「ここまで聞こえて来ましたね」
魔王「相当おかんむりだな」
バタァンッ!!!
勇者「魔王オオオオォォォォォーーーーーーッッッ!!!!!!!」
魔王「ついに来たか」
勇者「貴様・・・・貴様だけは・・・・・・・ッッ!!!!」
戦士「散々俺たちをコケにしやがって!!!!」
魔法使い「このフラストレーション、あんたで晴らさせてもらうよ!!!!!」
魔王「クックック、よくきたな、愚かな人間の勇者よ・・・」
勇者(ビジュアルと口調は普通の魔王っぽい・・・・いいぞ!)
魔王「今すぐ滅ぼしてやっても良いのだが・・・少しだけ前口上を述べさせてもらおうか」
戦士(良い感じだ)
勇者「ふん、冥土の土産に聞いてやろう」
魔法使い(決まったわね)
魔王「貴様らの冒険にはどこか違和感があっただろう・・・私怨の国王、死んじゃう加護、過保護な装備、
ラストオーダー過ぎた酒場、ついてこない僧侶、攻略本並の町人、
襲ってこないモンスター、悪くない海賊、始まらないおつかいイベント、
妙に強い味方メンバー、スリっぽいだけの少年、倒す前に終ってるボス・・・」
勇者「な、なぜそれを・・・」
側近「私の千里眼で監視させていただいておりました」
魔王「その他にも様々な違和感があったはずだ・・・そして我が城のトラップ・・・これが何を意味するか解るか?」
戦士「ま・・・まさか・・・」
魔王「ククク・・・余が貴様に"王道なイベントになんなくて全体的にパッせずなんかあれな感じになる呪い"をかけていたのだ!!!」
勇者「ッ・・・・!!!!!」
魔王「『運命をつかさどる魔法』とでも言おうか・・・勿論、この旅の間の出来事、すべて余が仕組んだわけではない」
魔王「この呪いが貴様らをそういう感じにさせたのだ・・・クックック」
魔法使い「ひどい・・・なんでそんなことを・・・っ!」
魔王「余は・・・何度も人間と争い・・・勇者に封印されては復活し、また争い・・・繰り返してきた」
魔王「人間は余を封印し、世界は平和になり、勇者は讃えられ、伝説になる」
魔王「しかし、それでは結局・・・余はいつまで経っても人間に勝てないのだ、復活せども、復活せども・・・」
魔王「人間の持つ、予定調和・・・運命力・・・そういったものを乱さなければ、余に勝機はない」
魔王「だから呪いをかけてやったのよ、おかげで貴様らの精神はボロボロ・・・ククク」
魔法使い「なんて・・・なんて嫌な奴なの!!!」
戦士「しかしそれもここで終わりだ・・・」
勇者「貴様をここで滅ぼすッ!!!!行くぞみんな!!」
魔王「それも叶わぬッッッ!!!!!」
勇者「!?」
魔王「クックック・・・ここまでズタボロにしたのに、まともに戦って勝たれては結局は同じこと・・・」
魔王「余は・・・寿命だ・・・・・・貴様らの戦いは・・・ここで終わり・・・・」
魔王「貴様らの旅は・・・釈然としない気分のまま・・・単にうざい魔王を・・・倒さずに終わる・・・・余の・・・・勝利だ・・・・・」
勇者「させないぞッ!!!魔王ォーーーーーッ!!!」ダダダッ
魔王「呪いは・・・・解けんよ・・・」ガクッ
魔法使い「・・・・・・・・・・」
戦士「・・・・・・・・・・」
勇者「・・・・・・・死んだ」
勇者「・・・・・・───チクショオオオォォォォーーーーーーーーッッッッ!!!!!」
側近「魔王様・・・お疲れ様でした・・・・・。」
勇者・戦士・魔法使い「「「・・・・・・・。」」」
側近「魔王様は死にました。"パッとしない感じになる呪い"は解けたでしょう」
勇者「・・・そうか」
側近「私を殺りますか?あなた方の実力であっても5ターンくらいは戦えますが」
勇者「いや・・・やめておくよ、もう」
戦士「ああ・・・」
魔法使い「蛇足になっちゃうしね」
勇者「この冒険は蛇ですらなかった気もするけどね・・・」
側近「私はこれから魔界へ帰りますが」
勇者「そうか」
側近「魔王様の呪いが解けたのであれば、悪の大魔王を倒しに行ってみてはいかがですか?」
勇者「!!」
側近「今度こそ波瀾万丈な冒険ができると思いますよ」
戦士「そうか、それもそうだな!」
魔法使い「名案ね!あなた中々良い奴じゃない」
側近「魔王様は満足してお逝きになられた、それはあなたがたのおかげでもありますから」
勇者「ありがとう、精神的にすごくモヤモヤした旅でしかもラストもなんか釈然としない感じだったけど、今度は頑張るよ」
戦士「強敵を求めて新たなる旅に出る、か」
魔法使い「ふふ、"それっぽい"じゃない」
勇者「魔王、死んでしまったな」
戦士「しかし全部呪いの仕業だったとは・・・」
魔法使い「ある意味恐ろしい敵だったわね」
勇者「ストレスが半端じゃなかった。まあいい、一度国に帰って国王様に報告だ」
戦士「俺達の取り分ってどのくらいなんだ?」
勇者「どうだろうか?150万どっこいじゃないか?」
魔法使い「貰うのも憚られるような冒険だったけどね・・・」
戦士「それもそうだな・・・」
勇者「まあ、とにかく国に帰ろう」
~王の間~
国王「勇者よ、魔王を打ち倒しよくぞ舞い戻った」
勇者「は。(倒してないんだけどね)」
国王「そのお二方の、お仲間には200万Gずつ褒美を与えるように計らおう」
戦士・魔法使い「有難きしあわせ。」
勇者「ところで、国王様」
国王「なんじゃ?」
勇者「我々は、これから悪の大魔王を倒す旅に出ようと思うのです。」
国王「ああ、あやつならおぬしらが出て行った翌日に人間の軍隊が倒したぞ」
勇者「・・・・・・・・・チクショオオォォォォォォーーーーーッッッ!!!!!!!!!!」
~おわり~
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