現場
親方「マオウサマバンザーイ」バンザーイ
男「親方の催眠いつ解けるのー?」
勇者「男さん!?」
男「どうしたの勇者?」
勇者「昨日は魔王ちゃんと仲直り出来たか見に行ったのに追い出して」
勇者「酷いです!!」
男「ごめんごめん(あの側近と会わせるのは危険な気がするし)」
勇者「今日は魔王ちゃんいないんですか?」キョロキョロ
男「家で留守番中」
勇者「ということは今日は二人きりなんですね」
男「仕事をしましょう」
勇者「はい」
勇者「男さんの家族はどこに住んでるんですか?」
男「ここから遠いところ 母さんがカレー好き」
勇者「カレー好きはお母さんからの遺伝なんですか」
男「そんなとこかな」
勇者「それでこの前の話なんですけど」ブンッ
男「」ガンッ
勇者「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」
男「大丈夫だから そんなに謝らなくてもいいよ」ハナイター
勇者「男さん優しすぎです」
男「いや こんなもんじゃない?」
勇者「ちょっとは怒ってもいいと思います」
男「う~ん 昔から怒ることだけは苦手だからなー」
男「カレー屋さんを作るのもみんなを笑顔にしたいからだし」
勇者「みんなを笑顔にですか?」
男「カレーは子供も大人も好きだからね 美味しいカレーを作って」
男「みんなが笑顔になってくれればそれでいいかなって」
勇者「素敵です その夢」
勇者「私にその夢 手伝わせてもらえませんか?」
男「」
勇者「なんて言ってみただけですよ」エヘヘ
男「もし俺が本当にカレー屋さんを作ることが出来て」
男「それなりに自信がついたら 勇者も働いてみる?」
勇者「私なんかでいいんですか?」
男「いいよ その代わりにビシバシ扱くけどね」
勇者「その時はお手柔らかにお願いします」
勇者「ちなみに目標金額とか決めてるんですか?」
男「もうすぐかな 昔からの夢だし」
勇者「良かったら私たちの世界で出しませんか?」
男「うんーそっちでもいいけどなー面白そうだし」
勇者「それだったらずっと一緒にいられるし」ボソッ
男「なにか言った?」
勇者「今日も仕事が終わったら男さんの家に遊びに行っていいかなーって」エヘヘ
男「今日もごめん 無理」
勇者「」
男「ただいま帰ったよー!!」
魔王「男! おそい――」
側近「遅い!!」ガンッ
男「痛い!? いきなりなに!!」
側近「キサマは魔王様の片腕である自覚があるのか!!」
男「そもそもその話自体が……」
側近「口答えはするな!! そもそもキサマは……」
魔王「」
魔王「今日の朝から側近と男の仲がいい気がする」
側近「気のせいです」ザクッザクッ
男「人を刺しまくる人とは仲良くなれません!!」
側近「だが父上は刺されるともっとやってくれと言ったぞ」
男「その男は犯罪者です」
側近「馬鹿な!! 父上は犯罪など一度もしたことがない私の誇りだ!!」
男「バレなければいいのだよ バレなければ」
魔王「男 話がある」
男「なにー?」
魔王「そろそろ余の魔力も本格的に溜まる頃だ」
男「ふーん」
魔王「魔力が溜まったら余は魔界へ帰らなくてはならぬ」
魔王「ここの生活も楽しいが余も魔王なのでな 国民を捨てることは出来ん」
男「」
魔王「真剣に聞く お主は余の片腕としてついてきてくれるか?」
男「一度あっちに行ったらこっちに戻ってこられる?」
魔王「それは難しい」
男「そっかー」
魔王「余は強制はしない お主が決めてくれ」
男「ちょっと悩んでいい?」
魔王「まだしばらくいるから それまでなら」
男「いきなり明日いなくなったとか止めてね」
側近「」
側近「それで キサマはどうするつもりだ?」
男「どうしようかなー」
側近「真面目に答えろ」
男「気持ち的には行きたいよ 魔王は好きだし」
男「それにあっちでもカレー屋さんは出来るしねー」
側近「ならばなにが問題なんだ 人間が魔族の間に混ざれないとでも思っているのか?」
男「……」
側近「私はキサマに一緒に来て欲しいと思っている」
側近「数日一緒にいただけだが キサマは私の鎧を剥いだんだからな」
男「……」
側近「魔王様の気持ちからは絶対に逃げるなよ」ザッザッ
男「魔王の気持ち……ね」
勇者「話ってなんですか?」
男「魔界に行こうと思うんだ」
勇者「」
勇者「魔王ちゃんのことが好きだからですか?」
男「わかんないや」
勇者「わからないって」
男「わからないから悩んでるのかな?」
勇者「だったらいかないでください」
男「どうしようか」
男「いやうん 別に魔界に行くからって魔族になるわけじゃないし」イヤイヤ
勇者「どういう意味ですか?」
男「いつでも ずっと俺は一つのことだけに拘ってきた」
男「それはどこに行こうとも変わらない変える気はない」
勇者「カレー屋さんを作るってことですか?」
男「それ以前さ どうも勇者たちの世界の人間はカレーをう○ことしか見ていない」
男「幾らカレーが美味しかろうと世界の認識がう○こじゃ意味がない」
勇者「じゃあ……?」
男「カレー外交の始まりだ」ニヤリ
魔王「それでは男 準備はいいか?」
側近「というより男 キサマどれだけ荷物を持っていく気だ!!」
男「材料は現地調達でいく 後は鍋とかその他」
魔王「まあ良い むしろその方が張り合いがある」
側近「負荷が重くなるんですが」
男「じゃあレッツゴー」
魔界 魔王城
男「気のせいでしょうか?」
魔王「なにがだ」
男「超ドンパチしてません?」
側近「あれぐらい物の数ではない」
男「マジ物の数じゃなかった」
魔王「余の実力が遺憾なく発揮されたな」
側近「それにしても一人も殺さず無力化しろとはな」
男「やってくれたじゃん マジ感謝」
魔王「もっと褒めるがいい!!」エヘン
側近「それでだ まずキサマには魔王様のお母上に会ってもらう」
男「どうして?」
魔王「先代の魔王だからだ 今でも余よりも強いのだぞ」
男「そりゃ怖い」
魔王女「魔王 良く帰ってきてくれましたね」
魔王「はい 玉座を長いこと空にして申し訳ありませんでした」
魔王女「あなたが死ねば 次の魔王が育つまで時間がかかります」
魔王女「それがわかっていて帰って来たのならば何も言うことはありません」
魔王「はい」ビクッ
魔王女「それでそちらがあなたがあちらで見つけてきた 新しい側近ですか?」
男「はい」
魔王女「それでは私と彼を二人にしなさい」
魔王「お母様!!」
魔王女「二人にしなさい」
魔王「……はい」
側近「行きましょう」
男「一つ言うならば せっかく帰って来たんだから娘に抱きつくぐらいはさせたらいい」
魔王女「私の立場ならそれが容易でないことぐらい知っているハズです」
男「それでも子は親に甘えたいものなんじゃないの?」
魔王女「それは子のいない者の言葉です」
男「誰かさんの体験談さ」
魔王女「」
男「」
魔王女「私たちの間に固い挨拶などいりませんね」
男「全くもってその通り お久しぶり歴代最強の魔王」
魔王女「お久しぶりです 歴代最弱の勇者」
魔王女「全く 歴代勇者の中でも食べ物のために逃げた勇者など前代未聞です」
男「カレーは正義だろ それに俺は元はあちらの世界の人間なんだ」
男「誰かさんが変な魔方陣で呼び出して 偶然俺が勇者になった それだけの関係だろ」
魔王女「ごほん! あれは捨て去った過去です」
男「あの頃 親に甘えられなくて泣いてた魔王がこんなババアになってるとは 長生きしてみるもんだ」
魔王女「言うなといっているんです それとババアは止めなさい」
男「それがこんな形で再開するとは」
魔王女「あなたは全然変わっていませんね」
男「誰かさんが人間と魔族の架け橋になるって言ったから安心してあちらへ帰ったのに」
男「いつまで経っても変わらず変わらず 逃げ出した勇者なんて前代未聞だけど どうやら俺は成長が止まったようで」
魔王女「仕方ないのです あなたが帰った後に私は結婚をし」
魔王女「生まれた娘に志半ばで魔王の力を持っていかれるとは」
男「更に俺の変わりに生まれた勇者は最強クラスときた」
魔王女「やってられませんよ全く」ヤレヤレ
魔王女「それで何の用ですか? 今更戦況を掻き乱そうとでも?」
男「いや カレーをご馳走にきた」
魔王女「あなたは昔から本当に変わりませんね カレーカレーと」ハァ
男「まあね 母さんが好きだったってのもあるけど」
男「俺の初恋の子がカレーしか作れない俺のカレーを好きだって言ってくれてさ」
男「その笑顔が忘れられないので 最高のカレーを用意しました」
魔王女「」
男「食べてくれますか お嬢さん」
魔王女「あなたは……本当に変わらないです」グスッ
男「つーわけで夕食です カレーです」ゴトン
魔王女「」
魔王「おい男!!」
男「なに?」
魔王「普段から私たちと一緒にご飯を食べない母様をどうやって呼んだんだ!!」
男「カレーは正義としかいいようがないな」キリッ
魔王「」
男「それでは今回のカレーは普通のカレーです なんの変哲もないです」
魔王「これは!?」モシャモシャ
側近「なっ!?」モシャモシャ
魔王女「」モシャモシャ
魔王「(今まで食べたカレーの中で一番微妙)」
側近「(不味くはないけど普通だな)」
男「……」
魔王女「男」フキフキ
男「なんですか?」
魔王女「腕は落ちていませんね 褒めて遣わします」
男「ありがとうございます」