―――倉庫
魔王「む?ここがお前の家なのか?」
男B「うん。そうだよ?」
魔王「変わったところに住んでいるのだな」
魔王(人間とはつくづく変な生き物だ)
男A「さてと」
魔王「あ……」
子猫「にゃあ?」
男A「この子はこっちに置いとこうか」
魔王「では、その者をよろしく頼むぞ?」
男B「待ってよ。お礼もなしに帰るの?生き物を預かるって大変なことなんだぜ?」
魔王「どういうことだ?」
男B「命を一つ、背負うんだぞ?それ相応の見返りがあってもいいだろ?」
魔王「そうか……なるほど。それはすまない。気が効かなかったな」
男A「いい子じゃん……じゃあ、とりあえず服でも脱いでよ。ここ、暑いだろ?」
魔王「いや、そこまで暑くは……」
男A「いいからいいから」
魔王「な……!?おい、やめろ!手を離さぬか!!」
男B「そのまま押さえつけちゃえよ」
男A「そうだな……おいしょっと!」
魔王「ぐ……貴様……無礼であるぞ……!!」
男B「そのままにしてろ……にひひひ」
魔王「やめんかぁ!!離せ!!」
男A「暴れないの。気持ちいいことするだけだからさ」
魔王「いい加減に……!!」
子猫「にゃぁああ」
男B「なんだ、こいつ。邪魔だ!」
子猫「ふぎゅ!?」
魔王「な!!?おい、足蹴にするとはどういうことだ!?」
男B「邪魔だったから蹴っただけ。―――それよりもう我慢できねえ。パンツから脱がせるか」
魔王「ふざけ……るなぁぁぁ!!!」
男A「え―――」
男B「お―――」
―――街
住民「なんだ?!向こうからすげえ爆発音がしたぞ!?」
住民「やべえ!!燃えてる燃えてる!!!」
住民「消火活動いそげー!!!」
魔王「……」
魔王「……く……」
魔王「人間とは……そういう生き物か……」
魔王「心を油断させ……相手を貪ろうとする……下賤にして卑劣……」
魔王「人間など……滅ぶべきだ……」
子猫「……にゃぁ」
魔王「心配するな……もう傷は癒えているだろう?」
魔王「お前は人間に渡さん。私が責任を持つ……安心しろ。我は魔王ぞ……」
―――翌日
武道家「ふーん!今日もいい天気だ」
勇者「おおぉ……」
遊び人「お兄ちゃん!?大丈夫!?顔が倍ぐらいに腫れてるけど!?」
勇者「へーき……へーき……」
僧侶「あの、姉さん」
武道家「なんだ?」
僧侶「何かあったんですか?」
武道家「ああ。何度か遊び人のところに行こうとしたから、その都度顔に飛び膝蹴りをいれてやった」
僧侶「そ、そこまでしなくても……」
武道家「いーや、アイツはケダモノだ。これぐらいしとかないと癖になる」
僧侶「はぁ……でも、少し可哀想ですし。―――兄さん」
勇者「ん?」
僧侶「……ホイミ。はい、少し腫れが引きましたよ?」
勇者「おぉぉ……流石は俺の妹……お兄ちゃんはうれしいぞぉぉ!!」
僧侶「あ、の……そんな抱きつかないでください……」
勇者「あぶぶぶぶ」
僧侶「きゃぁ!?ちょ、胸に顔を埋めないで……」
勇者「妹にしてはけしからん胸だな……これはもっとチェックせねば!!」
僧侶「あん……もう、兄さん……やめ、ん……」
武道家「くたばれ!!害虫野郎!!!!」
勇者「ぶごぉ!?!?」
遊び人「お兄ちゃーん!!」
武道家「ほら、いわんこっちゃない。甘やかすと私達に害が及ぶんだ」
僧侶「き、気をつけます」
武道家「……にしても、僧侶の胸は……はぁ……」
僧侶「あの……姉さん?」
武道家「姉の威厳って……何で決まるんだろうなぁ」
僧侶「え?え?」
遊び人「お兄ちゃーん!!どこー!?」
―――街
勇者「ふう……やっと街に着いたな」
僧侶「まずは宿屋の確保をしないといけませんね」
武道家「そうだな。あとは買い出しも」
遊び人「お兄ちゃん!お兄ちゃん!あっちにアイス売ってるよ!!」
勇者「欲しいのか?」
遊び人「うん!……ねえ、お兄ちゃん、かってぇ?」
勇者「あっはっはっは、アイスの一つや二つで満足するのか?店ごと買ってやるぞ!!」
遊び人「さっすが、お兄ちゃん!かっこいいー♪」
勇者「もっと言って、もっと言って!!」
武道家「馬鹿か……」
僧侶「あはは、まあ、アイスはともかく、必要な物を買っておきましょう」
武道家「そうだな。―――ん、なんか向こうがやけに騒がしいな」
僧侶「そういえば……人が集まってますね」
勇者「なんかあったのか?おし、遊び人、いってみるぞ!」
住民「こりゃひでえな……」
住民「瓦礫から死体が出たんだって?」
勇者「あの……すいません」
住民「ん?旅の方か?」
遊び人「そうでーす。なにかあったんですかぁ?」
住民「原因不明の爆発があってね。今、瓦礫の中から若者が二人、死体で見つかったんだ」
勇者「それはそれは……」
遊び人「こわいよぉ」
住民「全く……なにが原因なのかねえ」
勇者「火薬庫かなにかだったんですか?」
住民「いや、使ってなかった倉庫で土嚢しかなかったはずなんだ」
勇者「へえ」
遊び人「どのーってなぁに?」
勇者「原因不明の爆発ねえ」
遊び人「ねえねえ、どのーってなぁに?」
―――宿屋
遊び人「ペロペロ……おいしー!!」
勇者「そうかそうか」
武道家「はぁ……」
勇者「なんだ?お姉ちゃんもアイスほしかったの?―――飴玉しかないけど」
武道家「いらねえよ!!」
勇者「折角、タダでもらったのに……」
武道家「タダでもらったものを渡そうとすんな!!!」
僧侶「ところで勇者様、原因不明の爆発とは?」
勇者「ああ。火薬もなにもない倉庫が昨夜、爆発したらしい。死者も出た」
武道家「何もないのに爆発するかよ」
勇者「うん……お姉ちゃんの言うとおりだと思う」
僧侶「気になるんですか?」
勇者「何も無いのに爆発はしないから……もしかしたら魔物の仕業かもしれない」
僧侶「なるほど。では、少し調べてみましょうか?もし、魔物の仕業なら放ってはおけませんし」
―――魔王の城
魔王「―――揃ったな?」
魔物「はは!!」
魔王「では、出陣する!!」
魔物「「おおおーーーー!!!!」」
スライム「魔王さま。どうして今度の街は魔王さま自ら?」
魔王「あの町は屑の巣窟だ……我自身の手で葬らなければ気が済まん!!」
スライム(こわぁ……いつになく真剣に怒ってる……なにかあったのかな?)
子猫「にゃぁ」
魔王「これ、ついてきてはいかん」
子猫「にゃあ」
魔王「だから、ダメだって……しかたない。我の腕の中にいるがよい」
子猫「うにゃ♪」
魔王「貴様もきっとあの場所で蔑まれてきたのだろう?―――我が全てを破壊してくれる!!」
魔王「いくぞ!!人間に地獄を味わせてやるのだぁぁ!!!」
―――街
勇者「うーん……」
武道家「こんな瓦礫からなんかわかるのかよ?」
遊び人「これ黒こげー」
僧侶「兄さん、こっちの瓦礫は燃えた形跡がありません」
勇者「てことは……熱は拡散したんじゃなくて、一直線だったわけか」
武道家「どういうことだ?」
勇者「つまり、爆発の熱は発生源から一定の方向にしか行かなかったんだよ、お姉ちゃん」
僧侶「普通の爆発ではない……呪文による爆発というわけです」
勇者「やっぱり魔物の線が濃厚かも」
僧侶「そうですね……どうします、兄さん?」
勇者「よし、ちょっと周辺を探してみよう。なんかいるかも」
遊び人「わーい!夜のお散歩だぁ♪」
勇者「遊び人は俺の傍を離れるなよ?もっとこう、密着してていいからな?」
武道家「おい……殴られたいのか?」
―――郊外
魔王「あの街が今回の標的だ」
魔物「はは!!」
魔王「よし……突撃するのではなく、じっくりと飲み込んでいくぞ?」
魔物「つまり……音を立てずに殺すのですね?」
魔王「そうだ。見えざる恐怖に怯え、そして死んでいく。それが屑にとって相応しい最後だ」
魔物「わかりました。―――よし、いくぞ!!」
魔物「「おお!!」」
魔王「さてと」
スライム「魔王さまはどちらに?」
魔王「この街の人間は一人として逃がさん。外に逃げてきた人間を我が八つ裂きにする」
スライム「うわぁ」
魔王「ふふ……苦しみながら死ね……楽に死なせたりはせんぞ……」
子猫「うにゃ?」
魔王「案ずるな……必ず殺す……お前を貶めた人間など……必ずな」
―――郊外
勇者「うーん、誰もいないか」
武道家「そうだな……妙な気配は感じるけど」
遊び人「妙な気配?」
武道家「ああ……なんか、闇に紛れてるっていうか」
僧侶「まさか……悪霊?!」
遊び人「いやぁぁ!お兄ちゃん、怖いよう!」
勇者「よしよし、お兄ちゃんが守ってやるからな?」
遊び人「約束、だよ?」
勇者「勿論だ!」
遊び人「おにいちゃん……すき♪」
武道家「……こっちも守れよ」
勇者「いや。お姉ちゃんは自分で自分の身を守れるでしょ?」
武道家「てめ―――ん!?」
魔王「―――何人も逃がさん!!!!」
勇者「お姉ちゃん危ない!!!」
武道家「―――うわぁ!!!」
魔王「ほう……うまくよけたな……」
武道家「いたた……おい!?大丈夫か!?」
勇者「なんとか……お姉ちゃんこそ、大丈夫?」
武道家「あ、ああ……守ってくれて―――」
勇者「遊びにーん!!怪我はないか!?小石とかぶつかってない!?」
遊び人「うん!大丈夫だよ!」
勇者「ふう……遊び人の柔らかい肌に傷がついたら俺が嫁にするしかないもんな」
遊び人「えぇー。じゃあ、傷ついたほうがよかったなぁ……えへへ」
勇者「かわいいやつめ!!うりうりうり!!」
僧侶「あの……敵がいるんですけど……」
武道家「―――逝っちまえ!!ロリコン!!!」
勇者「ぶらっぷぅ!?!?」
魔王「おい……無視とはいい度胸だな、人間ども」
勇者「おぉ……もう瀕死だぜぇ」
遊び人「お兄ちゃん……血が出てる」
勇者「あ、じゃあ、舐めてくれる?」
武道家「おい」
勇者「ジョークです!勇者ジョーク!!」
僧侶「あの!みなさん真剣に!!」
魔王「―――貴様らぁぁぁ!!!!」
子猫「にゃぁ」