勇者「旅に出る前に言っておきたいことがある」 3/6

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―――倉庫

魔王「む?ここがお前の家なのか?」

男B「うん。そうだよ?」

魔王「変わったところに住んでいるのだな」

魔王(人間とはつくづく変な生き物だ)

男A「さてと」

魔王「あ……」

子猫「にゃあ?」

男A「この子はこっちに置いとこうか」

魔王「では、その者をよろしく頼むぞ?」

男B「待ってよ。お礼もなしに帰るの?生き物を預かるって大変なことなんだぜ?」

魔王「どういうことだ?」

男B「命を一つ、背負うんだぞ?それ相応の見返りがあってもいいだろ?」

魔王「そうか……なるほど。それはすまない。気が効かなかったな」

男A「いい子じゃん……じゃあ、とりあえず服でも脱いでよ。ここ、暑いだろ?」

魔王「いや、そこまで暑くは……」

男A「いいからいいから」

魔王「な……!?おい、やめろ!手を離さぬか!!」

男B「そのまま押さえつけちゃえよ」

男A「そうだな……おいしょっと!」

魔王「ぐ……貴様……無礼であるぞ……!!」

男B「そのままにしてろ……にひひひ」

魔王「やめんかぁ!!離せ!!」

男A「暴れないの。気持ちいいことするだけだからさ」

魔王「いい加減に……!!」

子猫「にゃぁああ」

男B「なんだ、こいつ。邪魔だ!」

子猫「ふぎゅ!?」

魔王「な!!?おい、足蹴にするとはどういうことだ!?」

男B「邪魔だったから蹴っただけ。―――それよりもう我慢できねえ。パンツから脱がせるか」

魔王「ふざけ……るなぁぁぁ!!!」

男A「え―――」

男B「お―――」

―――街

住民「なんだ?!向こうからすげえ爆発音がしたぞ!?」

住民「やべえ!!燃えてる燃えてる!!!」

住民「消火活動いそげー!!!」

魔王「……」

魔王「……く……」

魔王「人間とは……そういう生き物か……」

魔王「心を油断させ……相手を貪ろうとする……下賤にして卑劣……」

魔王「人間など……滅ぶべきだ……」

子猫「……にゃぁ」

魔王「心配するな……もう傷は癒えているだろう?」

魔王「お前は人間に渡さん。私が責任を持つ……安心しろ。我は魔王ぞ……」

―――翌日

武道家「ふーん!今日もいい天気だ」

勇者「おおぉ……」

遊び人「お兄ちゃん!?大丈夫!?顔が倍ぐらいに腫れてるけど!?」

勇者「へーき……へーき……」

僧侶「あの、姉さん」

武道家「なんだ?」

僧侶「何かあったんですか?」

武道家「ああ。何度か遊び人のところに行こうとしたから、その都度顔に飛び膝蹴りをいれてやった」

僧侶「そ、そこまでしなくても……」

武道家「いーや、アイツはケダモノだ。これぐらいしとかないと癖になる」

僧侶「はぁ……でも、少し可哀想ですし。―――兄さん」

勇者「ん?」

僧侶「……ホイミ。はい、少し腫れが引きましたよ?」

勇者「おぉぉ……流石は俺の妹……お兄ちゃんはうれしいぞぉぉ!!」

僧侶「あ、の……そんな抱きつかないでください……」

勇者「あぶぶぶぶ」

僧侶「きゃぁ!?ちょ、胸に顔を埋めないで……」

勇者「妹にしてはけしからん胸だな……これはもっとチェックせねば!!」

僧侶「あん……もう、兄さん……やめ、ん……」

武道家「くたばれ!!害虫野郎!!!!」

勇者「ぶごぉ!?!?」

遊び人「お兄ちゃーん!!」

武道家「ほら、いわんこっちゃない。甘やかすと私達に害が及ぶんだ」

僧侶「き、気をつけます」

武道家「……にしても、僧侶の胸は……はぁ……」

僧侶「あの……姉さん?」

武道家「姉の威厳って……何で決まるんだろうなぁ」

僧侶「え?え?」

遊び人「お兄ちゃーん!!どこー!?」

―――街

勇者「ふう……やっと街に着いたな」

僧侶「まずは宿屋の確保をしないといけませんね」

武道家「そうだな。あとは買い出しも」

遊び人「お兄ちゃん!お兄ちゃん!あっちにアイス売ってるよ!!」

勇者「欲しいのか?」

遊び人「うん!……ねえ、お兄ちゃん、かってぇ?」

勇者「あっはっはっは、アイスの一つや二つで満足するのか?店ごと買ってやるぞ!!」

遊び人「さっすが、お兄ちゃん!かっこいいー♪」

勇者「もっと言って、もっと言って!!」

武道家「馬鹿か……」

僧侶「あはは、まあ、アイスはともかく、必要な物を買っておきましょう」

武道家「そうだな。―――ん、なんか向こうがやけに騒がしいな」

僧侶「そういえば……人が集まってますね」

勇者「なんかあったのか?おし、遊び人、いってみるぞ!」

住民「こりゃひでえな……」

住民「瓦礫から死体が出たんだって?」

勇者「あの……すいません」

住民「ん?旅の方か?」

遊び人「そうでーす。なにかあったんですかぁ?」

住民「原因不明の爆発があってね。今、瓦礫の中から若者が二人、死体で見つかったんだ」

勇者「それはそれは……」

遊び人「こわいよぉ」

住民「全く……なにが原因なのかねえ」

勇者「火薬庫かなにかだったんですか?」

住民「いや、使ってなかった倉庫で土嚢しかなかったはずなんだ」

勇者「へえ」

遊び人「どのーってなぁに?」

勇者「原因不明の爆発ねえ」

遊び人「ねえねえ、どのーってなぁに?」

―――宿屋

遊び人「ペロペロ……おいしー!!」

勇者「そうかそうか」

武道家「はぁ……」

勇者「なんだ?お姉ちゃんもアイスほしかったの?―――飴玉しかないけど」

武道家「いらねえよ!!」

勇者「折角、タダでもらったのに……」

武道家「タダでもらったものを渡そうとすんな!!!」

僧侶「ところで勇者様、原因不明の爆発とは?」

勇者「ああ。火薬もなにもない倉庫が昨夜、爆発したらしい。死者も出た」

武道家「何もないのに爆発するかよ」

勇者「うん……お姉ちゃんの言うとおりだと思う」

僧侶「気になるんですか?」

勇者「何も無いのに爆発はしないから……もしかしたら魔物の仕業かもしれない」

僧侶「なるほど。では、少し調べてみましょうか?もし、魔物の仕業なら放ってはおけませんし」

―――魔王の城

魔王「―――揃ったな?」

魔物「はは!!」

魔王「では、出陣する!!」

魔物「「おおおーーーー!!!!」」

スライム「魔王さま。どうして今度の街は魔王さま自ら?」

魔王「あの町は屑の巣窟だ……我自身の手で葬らなければ気が済まん!!」

スライム(こわぁ……いつになく真剣に怒ってる……なにかあったのかな?)

子猫「にゃぁ」

魔王「これ、ついてきてはいかん」

子猫「にゃあ」

魔王「だから、ダメだって……しかたない。我の腕の中にいるがよい」

子猫「うにゃ♪」

魔王「貴様もきっとあの場所で蔑まれてきたのだろう?―――我が全てを破壊してくれる!!」

魔王「いくぞ!!人間に地獄を味わせてやるのだぁぁ!!!」

―――街

勇者「うーん……」

武道家「こんな瓦礫からなんかわかるのかよ?」

遊び人「これ黒こげー」

僧侶「兄さん、こっちの瓦礫は燃えた形跡がありません」

勇者「てことは……熱は拡散したんじゃなくて、一直線だったわけか」

武道家「どういうことだ?」

勇者「つまり、爆発の熱は発生源から一定の方向にしか行かなかったんだよ、お姉ちゃん」

僧侶「普通の爆発ではない……呪文による爆発というわけです」

勇者「やっぱり魔物の線が濃厚かも」

僧侶「そうですね……どうします、兄さん?」

勇者「よし、ちょっと周辺を探してみよう。なんかいるかも」

遊び人「わーい!夜のお散歩だぁ♪」

勇者「遊び人は俺の傍を離れるなよ?もっとこう、密着してていいからな?」

武道家「おい……殴られたいのか?」

―――郊外

魔王「あの街が今回の標的だ」

魔物「はは!!」

魔王「よし……突撃するのではなく、じっくりと飲み込んでいくぞ?」

魔物「つまり……音を立てずに殺すのですね?」

魔王「そうだ。見えざる恐怖に怯え、そして死んでいく。それが屑にとって相応しい最後だ」

魔物「わかりました。―――よし、いくぞ!!」

魔物「「おお!!」」

魔王「さてと」

スライム「魔王さまはどちらに?」

魔王「この街の人間は一人として逃がさん。外に逃げてきた人間を我が八つ裂きにする」

スライム「うわぁ」

魔王「ふふ……苦しみながら死ね……楽に死なせたりはせんぞ……」

子猫「うにゃ?」

魔王「案ずるな……必ず殺す……お前を貶めた人間など……必ずな」

―――郊外

勇者「うーん、誰もいないか」

武道家「そうだな……妙な気配は感じるけど」

遊び人「妙な気配?」

武道家「ああ……なんか、闇に紛れてるっていうか」

僧侶「まさか……悪霊?!」

遊び人「いやぁぁ!お兄ちゃん、怖いよう!」

勇者「よしよし、お兄ちゃんが守ってやるからな?」

遊び人「約束、だよ?」

勇者「勿論だ!」

遊び人「おにいちゃん……すき♪」

武道家「……こっちも守れよ」

勇者「いや。お姉ちゃんは自分で自分の身を守れるでしょ?」

武道家「てめ―――ん!?」

魔王「―――何人も逃がさん!!!!」

勇者「お姉ちゃん危ない!!!」

武道家「―――うわぁ!!!」

魔王「ほう……うまくよけたな……」

武道家「いたた……おい!?大丈夫か!?」

勇者「なんとか……お姉ちゃんこそ、大丈夫?」

武道家「あ、ああ……守ってくれて―――」

勇者「遊びにーん!!怪我はないか!?小石とかぶつかってない!?」

遊び人「うん!大丈夫だよ!」

勇者「ふう……遊び人の柔らかい肌に傷がついたら俺が嫁にするしかないもんな」

遊び人「えぇー。じゃあ、傷ついたほうがよかったなぁ……えへへ」

勇者「かわいいやつめ!!うりうりうり!!」

僧侶「あの……敵がいるんですけど……」

武道家「―――逝っちまえ!!ロリコン!!!」

勇者「ぶらっぷぅ!?!?」

魔王「おい……無視とはいい度胸だな、人間ども」

勇者「おぉ……もう瀕死だぜぇ」

遊び人「お兄ちゃん……血が出てる」

勇者「あ、じゃあ、舐めてくれる?」

武道家「おい」

勇者「ジョークです!勇者ジョーク!!」

僧侶「あの!みなさん真剣に!!」

魔王「―――貴様らぁぁぁ!!!!」

子猫「にゃぁ」

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