魔王「良く考えたら、勇者たちと戦う理由ないじゃん?」 1/5

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―――魔王の城

魔王「……ふむ。人間が発行しているこの新聞とやらは、中々興味深いな」

手下「魔王様、何か面白い記事でも載っていました?」

魔王「ああ……なんでもアリアハンではG高らしくて、経済危機のようだ」

手下「ほうほう」

魔王「そのおかげで輸出業が軒並みダメージを受けている。会心の一撃とまで見出しに書かれている」

手下「人間も大変ですね」

魔王「うむ。しかし、他人事ではないな」

手下「といいますと?」

魔王「我々も最近は財政難に悩まされているだろう?」

手下「そうですね……何故か勇者が我々の所持金を奪っていく事案が多いですから、その都度、勇者保険が適応されちゃいますし」

魔王「ふむ……このままでは火の車だ……どうすれば……」

手下「簡単でございます。―――魔王様が人間達を支配すればいいのですよ」

魔王「バカ!魔族と人間は先日休戦協定を結んだばかりだろ!!それに悪いのは勇者一行だ」

手下「そういえば、別になにもしていないのに、なんでアイツらは魔王様を倒そうとしているんですかね?」

魔王「そこだ。我が不思議なのは」

手下「確かに一部の魔物が人間に悪さをしているとの報告もありますが……」

魔王「我は魔族の王ではあるが、魔物を指揮しているわけじゃないからなぁ」

手下「魔王様が指示を出せる魔物はこの城に仕えている者のみ。しかも大半が出不精ですからね」

魔王「そう。おかげで買い物もままならん。なんで我が買い出し係を決めるくじ引きに毎回参加せねばならんのか?」

手下「それは……まぁ、先々代の魔王様が公平であるべきと主張したからで……」

魔王「なんか納得いかんなぁ」

手下「でも、私達は嬉しいんですよ?」

魔王「なんで?」

手下「だって、魔王様とこうして気兼ねなくお話ができるんですから」

魔王「うむ……それ、我の威厳が損なわれていると解釈してもいいのか?」

手下「滅相もない!!魔王様が下々の気持ちも理解してくださっている、ということですよ」

魔王「物はいいようだな」

手下「そうですか?」

魔王「話を戻そう。勇者のことだ。何故、我の首を狙うのか」

手下「やはり、一部の魔物の所為でしょうか」

魔王「その一部の魔物はどんなことをしてきたんだ?」

手下「えっと……報告書によると、強盗、恐喝、強姦、放火、捕食……」

魔王「はぁ……もうよい」

手下「はい」

魔王「人間に恨まれても仕方ないな……」

手下「村人全員を焼き殺した魔物もいるようですよ」

魔王「それは動機があるんだろうな?」

手下「なんでも子どもに「顔が気持ち悪い」と言われて腹が立ったとかで」

魔王「ぬうぅ」

手下「勇者も魔物の所持金を奪いたくなりますね」

魔王「全くだ……魔族の風上にもおけん連中だ」

手下「先月、魔王様が打ち出した魔物のイメージアップ作戦も芳しくはありませんし」

魔王「なに?スライムペット化計画はどうした?」

手下「スライムはいいんですよ。でも、流石に魔女ババアとかさまようよろいまでペットショップに並べるのは……」

魔王「そうか……いいと思ったのだが」

手下「ちなみ、その店は昨日勇者に破壊されました」

魔王「なんだと!?魔族の血税をなんだと思っているんだ!?」

手下「勇者からしたら魔物の住処に見えたみたいで」

魔王「くそ……」

手下「店員がゾンビでしたしね」

魔王「がいこつにしておくべきだったか」

手下「それは関係ないかと」

魔王「我としては人間ともっと友好的な関係を築きたいのだが……」

手下「というと?」

魔王「人間たちが作り出す文化は非常に興味深いものが多くてな」

手下「ほう……例えば?」

魔王「バザーとかこう活気があって面白いと思うぞ」

手下「魔王様……またお忍びで出かけましたね?」

魔王「む……いや、まあ、良いではないか」

手下「はぁ……」

魔王「ともかくだ。我は人間と共に歩んでいきたいと思うわけだ」

手下「はい」

魔王「こうして共に生を受けた以上、やはり共存せねばならない」

手下「そうの通りです」

魔王「そして共存するのであれば、やっぱりちんちんかもかもしたいだろ?」

手下「ちんちん?」

魔王「おほん……仲良くしたいということだ。この宇宙船地球号の乗組員同士で血を流すなんて、馬鹿馬鹿しい」

手下「それはもちろんです」

魔王「―――なにか、良い手はないだろうか」

手下「そうですねえ……」

魔王「勇者か……勇者は国民からも人気があるのだろうなぁ」

―――村

勇者「おじゃましまーす」

村人「勇者さま!?突然、なんですか!?」

戦士「お、ここのタンスに力の種があったぜ!!」

村人「うわぁぁ!!勝手にタンスを開けないでください!!」

魔法使い「壷の中には薬草がありましたわ」

村人「それは私の……!!」

僧侶「こちらの引き出しには200Gもあります」

村人「それは私のへそくり……!!!」

勇者「よし、次の家にいくぞ!」

村人「待ってください!!勇者様!!お金……お金だけは!!」

勇者「触るな……剣の錆になりたくはあるまい?」

村人「ひぃぃぃぃぃ!?!?!」

勇者「俺たちはてめえらのために魔王と戦ってるんだぜ?協力するのが当然だろ?」

村人「そ、そんなぁ……」

―――魔王の城

魔王「ふむ……そうだ!」

手下「何か妙案が?」

魔王「その一部の極悪な魔物……我が直接倒すというのはどうだろう?」

手下「なるほど」

魔王「うむ、そうすれば人間たちの信頼を得られるかもしれん」

手下「しかし、人間達の評価はあがるかもしれませんが、同族からの支持率が下がってしまうかもしれませんよ?」

魔王「それもそうか……では、極悪な魔物のことを周辺の同族がどう思っているのか調査してから検討するというのは?」

手下「まあ、評判が悪ければそのまま倒しても問題ないでしょうが……評判がよければどうするんですか?」

魔王「ふむ……それはケースバイケースだな」

手下「どういうことです?」

魔王「例えば、極悪な魔物が一匹なのか集団なのかで、それは変わってくるだろう?」

手下「なるほど。極悪魔物集団だった場合、そこのリーダーは魔物から支持されているでしょうね。そのときはどうするので?」

魔王「そうだな……そこは決断するしかあるまい。その魔物の行為に正当性が微塵もなければ、制裁を加える。両者の言い分が拮抗する場合は、話し合いの場を設けよう」

手下「分かりました……では、そのように」

―――村

勇者「この村一番の女か?」

村長「は、はい……」

女「……」

勇者「ふん……ま、この田舎でこの顔なら合格点だな」

女「あ、ありが……とうござい、ます」

戦士「勇者、さっそくまわすか?」

魔法使い「そのあとは私達の新呪文の実験台になってくださいね♪」

僧侶「生身の人間にしてみないと威力が分かりにくくて……すいません」

村長「あ、あの……北の洞窟に住んでいる凶悪な魔物の討伐は……?」

勇者「ああ……約束だからな。明日、行って来てやるよ。よかったなぁ、娘一人差しだすことで村が助かるんだから」

村長「……っ」

勇者「さあ、こっちにこい!」

女「いたっ……!!」

勇者「ふふ……さあ、楽しませてくれよ?―――久しぶりなんで加減はできないけどな!」

―――魔王の城

魔王「よぉし、ではリストアップしてくれ」

手下「既に出来上がっております。世界凶悪魔物ランキングと検索してみれば、すぐに出てまいりました」

魔王「便利な時代になったものだ。どれどれ?」

手下「魔王様、この洞窟に住んでいる魔物なんてどうですか?」

魔王「うん?こいつは……キラーマジンガか」

手下「どうやら近くの村を定期的に襲っているようですね」

魔王「最近住みついて……ふむ、犠牲者は既に多数か」

手下「キラーマジンガは好戦的で嗜虐性の強い魔族ですからね。襲っている理由は快楽を満たすとかそんなとこでしょう」

魔王「よし。まずはこいつを討伐しにいこう」

手下「御意。―――皆の者!魔王様が出られるぞ!」

魔物「ははー!!」

魔王「しばらく城を空ける。留守を頼むぞ!」

魔物「プリンは食べてていいですか!?」

魔王「一人、二つまでだ!いいな!二つだぞ!!―――では、行ってくる!!ふははははは!!!」

―――北の洞窟

魔王「ここか」

手下「おい!キラーマジンガ!!出てこい!!」

キラーマジンガ「―――誰だ?」

魔王「ほう……貴様がキラーマジンガか……初めて見たな」

キラーマジンガ「誰だ?」

魔王「我は魔族の王、魔王なり!」

手下「頭が高いぞ!」

キラーマジンガ「は!あの腰ぬけで有名な人か」

魔王「ほお……一介の魔物風情が吠えてくれるな」

キラーマジンガ「人間との共存を主張してるんだっけ?なんであんな弱い連中と仲良くしたがるのか、わかんねえな」

手下「貴様!無礼だぞ!!」

キラーマジンガ「あんな奴ら、俺たちを楽しませるために生きていればそれでいいんだよ」

魔王「楽しませる?」

キラーマジンガ「いいぜぇ……あいつら、足や手を斬り落とすと面白い声を出すんだ……きひひひ」

魔王「ふぅ……これはもう話し合いの余地はないな」

手下「ですね」

キラーマジンガ「なんだ?」

魔王「貴様をここで葬る。それが魔族の王として務めだ!」

キラーマジンガ「きひひひ!面白い……腰ぬけ野郎になにができるってんだよ!!ああ!?」

手下「魔王様。ここは私にお任せください」

魔王「ぬ……」

手下「このような奴、魔王様の手を汚すほどではありませぬ」

キラーマジンガ「いってくれんじゃねえか……ドラゴンのくせに」

手下「ふふ……ドラゴンを舐めない方がいい」

魔王「ふん……手加減はいらぬぞ?」

手下「はは」

キラーマジンガ「てめえら……切り刻んでやるぜ!!やっはぁー!!!」

手下「―――ふ」

魔王「勝負あったな」

―――村

女「―――あぁぁああああああ!!!!!!!!」

魔法使い「ふふふふふ!燃えるわ……これ、すごくいいわ!!」

女「あづいぃぃぃいいい!!!!!だずげでぇぇ!!!!!」

僧侶「あーあ……死んじゃいますよ?」

勇者「もうこっちは楽しんだ。構わん」

戦士「ふふ……ケツの締まりな中々だったから、すこし惜しかったけどな」

女「やめでぇぇ!!!!!!!おねがぃぃぃじんじゃうぅぅぅぅうう!!!?!」

勇者「魔法使い、苦しんでいるぞ?」

魔法使い「もう、勇者様ったら、それがいいんじゃないですか」

戦士「えぐいなぁ……あっはっはっは!!」

僧侶「ふふ……安心してください?死にそうになったら、ちゃんと回復してあげますから。まだまだ実験に付き合ってもらいますよ?」

女「―――いやだぁあぁああああああああああ!!!!!!!!!」

勇者「ふふふふ……!!」

村長「く……すまない……すまない……うぅぅ……!!」

―――北の洞窟

手下「―――ふう」

キラーマジンガ「がぁ……ご……?」

魔王「ふん……大口を叩いた割にその程度か」

手下「こやつめはどうされますか?」

魔王「―――殺せ。更生も期待はできんだろ。来世に託すほかあるまい」

手下「では……ふん!!!」

キラーマジンガ「あが――――」

手下「これで完了です」

魔王「これでこの周辺地域は住みやすくなっただろう」

手下「しかし……魔王様?」

魔王「なんだ?」

手下「このお姿を人間に見せないと意味がないのでは?」

魔王「あ……しまった」

手下「ま、今回はこれでいいじゃないですか。城に帰りましょう。プリンが無くなってしまいますし」

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