勇者「倒しに来たぞ魔王!!」魔王「また来たのか…」 4/4

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賢者「ごめんね」

【王城地下奥部屋】

??「……僧侶が死んだか、記憶引き継ぎよし、服の用意よし」ガチャガチャ

??「しかし所持品の報告はまだか・・・・・はやくせねば」ズルズル

【王城地下一階】

勇者「待ちくたびれたぜ、王様」

王様「ゆ、勇者!? それに賢者と、貴様は誰じゃ!」

魔王「探究者とでも名乗っておこうかの」

賢者「やほー、王様」

勇者「王様自ら運んでたとは、部下が信用できないってところか?」

王様「ど、どうしてここに…はっ、先日の侵入者は貴様らか!」

賢者「ご名答ですわ、王様。さて、ご説明をお願いできます?」

賢者「この用意された私たちは?」

賢者「私たちがこうなってる理由は?」

賢者「その他もろもろ、お願いしますわ」

王様「賢者、貴様……裏切ったのか」

賢者「裏切る? なんのことですか?」

王様「き、貴様」

賢者「私の役目は「所持品」を報告することだけ」

賢者「むしろ、裏切られたのは私の方ですよ?」

賢者「なんでいちいち所持品の報告をしなくちゃいけないのか、と思ってましたが」

賢者「しかも高額報酬で、いや助かってましたが」

勇者「やけに羽振りがいいと思ったらお前…」

賢者「さあ王様、ご説明をお願いしますよ。さあ、さあ、さあ!」

王様「ふ、ふははははははは!」

勇者「なんだ…?」

王様「どうせお主らはここで待ち伏せしていれば誰にも見つからないと思ってたのだろう!」

王様「わしが来ないにしても事情の知ってるものが来ると!」

王様「人目につかず、証拠の揃ってるこの場所なら訊き出せると!」

王様「残念だったな! 監視カメラがある!」

王様「先日はステルスを使っていたようだが、わしの目に見えている以上今回は違う!」

王様「映っているならすぐにでも兵士がくる!」

賢者「それはどうでしょうか」

王様「なんじゃと?」

賢者「あ、僧侶ちゃんは返してねっと、ほい!」スイッ

僧侶「ぐーぐー」

賢者「まあ兵士さんが来るまでに、わかりやすく先ほどの質問に対する回答をお願いしますよ」

王様「ふん、しかしお主ら、こんなことをしてただで済むと」

勇者「思わねーよ、最初は俺らの身が危ないからやめようとも思った、が」

賢者「よーく考えたらどうでもいいのよね」

王様「な、なんじゃと!?」

勇者「だってよ、王様、こんな隠すようなことしてさ、悪いのは王国だろ?」

勇者「だったらそんな王国から狙われるようになってもいいさ、俺は世界を救うための勇者だ」

勇者「悪の味方は、しないんだよ」

王様「き、さま、魔王を倒すだけの道具のくせに――!」

勇者「俺は、そうだな、戦争なんてしないっていうような奴の味方でありたい」

王様「愚か者めが…!」

勇者「それでいいさ、勇者は頭を使う職じゃねー」

賢者「うふふ、戦士ちゃんみたいな言い草ね」

勇者「うるせ」

王様「わしを殺すつもりか」

勇者「まさか。ただ、この地下施設は破壊させてもらうけどな」

王様「なんじゃと!? そんなことをすれば貴様ら二度と生き返れなくなるぞ!」

王様「ここには作られた貴様たちがある! それを壊せば生き返れないぞ!!」

勇者「作られたね…やっぱ、俺たちは作られた存在か」

賢者「たぶん、元の身体はあったけどみんな複製なんでしょうね」

勇者「俺たちは偽物……わかってたが、面といわれるとさすがにへこむな」

魔王「それでも本物だろうよ。お前たちの意志がある限りはな」

勇者「精霊が怒るわけだ、人間の複製なんて生命の冒涜だよな」

勇者「何度も生き返って考えが麻痺してたけどさ、やっぱひとつの命で精いっぱい生きるべきなんだ」

勇者「だって、みんなそうやって生きている」

勇者「だからここにあるものは全部、必要ないよ」

勇者「ここにあるものは全部壊す、それで気ままな旅して自由に生きるよ」

勇者「戦うだけの旅だったし、色んな事を知る旅に出たい」

王様「……ふ、ふははは! 出来ると思うか?」

勇者「なんだって?」

王様「ここを抜け出してもすぐ指名手配をかけてやる!」

王様「気ままな旅なぞ出来はしない!!」

勇者「いや、できるさ」

王様「なに? ……しかし、兵士はまだか、いくらなんでも遅すぎる…」

賢者「ああ、気付いてないんじゃない?」

王様「なに?」

魔王「この部屋の生命全てに透過魔法と消音魔法がかかっておる」

魔王「そのカメラとやらには映らぬよ」

王様「じゃ、じゃがわしの目には確かに――」

勇者「王様、この魔法はかけられた者同士なら見えるんだ」

魔王「兵士は常に監視するわけにもいかぬだろう、動かず飲まずなんて魔王でもあるまいしな」

魔王「おそらく異常があるときのみ注意深く監視するのではないか?」

魔王「扉が開いたり、あの箱が開いたりな」

魔王「しかも貴様自ら動くなら信用もされてなさそうじゃ、わざわざ見まい、どうでもいいじゃろ」

魔王「それにちゃーんと扉も箱も動かし終わったあとに魔法をかけたからな」

魔王「急に人の姿が消えるを見られたら焦るだろうから、そこは賭けじゃった」

魔王「じゃが来ないとなると――」

勇者「どうやら作戦成功みたいだな。ま、来ても負ける気はしないが騒ぎにはなりたくないしな」

魔王「といってもいつまでも騙せるものではないだろうがの」

魔王「というわけでそろそろ締めるとするかの、ほれ起きろ僧侶」

僧侶「ゆ、勇者さんー…」

勇者「ん? 俺がなんだって?」

僧侶「ううーん、へ、え、いやなんでもないれす!!」

魔王「寝ぼけるな! 終わりは全員集合と決まっておる!」ポカポカ

僧侶「痛いです痛いです! じゃあ戦士さんは!? 戦士さんは!?」

魔王「ちゃんと起きておけよ、とりあえずこの謎を大団円で終えるぞ」

僧侶「無視ですか…って、秘密がわかったんですね!」

魔王「おおむね予想通りじゃったよ」

勇者「僧侶には後で話した方が…」

魔王「そうじゃの、とりあえずこの王をとっとと始末じゃの」

王様「し、始末…!」

魔王「殺しはしないと言ったじゃろう」

魔王「ぶっちゃけお主わしと喋りかぶっとるからとっとと退場じゃ」スッ

王様「ひっ」

魔王「一時の間じゃが、洗脳させてもらおう。そしてこの隠しごとすべてを国民に発表じゃ」

勇者「できるのか? 戦士ほど馬鹿じゃないぜ、この人は」

魔王「できるよ」

勇者「できるなら最初からすれば楽だったろう」

魔王「できるかどうかわからんかったがな、見てわかったよ。精霊に嫌われすぎたの、人間の王よ」

魔王「この者は魔力耐性が0を通り越してマイナスじゃ、余裕でかかる」

王様「そ、そんなことをすればわしは――!」

魔王「どうなるんじゃろうな、だがどうでもいい」

魔王「貴様のようなものにまかせるよりは、この国も良い国になっていくじゃろう」

魔王「では、残された最後の謎、わしらが及ばぬ技術の先!」

魔王「それを自ら民衆の前で語り、物語から退場せよ!」

――――

――

クローン。王は勇者一行を作り出していた技術をそう言った。

元いた才能ある少年と少女を魔王を討伐するための道具として複製したと。

複製することによって、たとえ蘇生不可能な状態からでも何度でも蘇らせることができた。

そうしたある意味不死と呼べる存在を使って魔界を侵略することが王の目的だった。

記憶の引き継ぎについてはクローン同士の脳を特殊な電波でリンクさせていたらしい。

死と共に記憶を電子というデータに置き換えクローンの脳へ飛ばすというた細工もされていた。

これらのことを行った技術は、王国以外は持ち得ぬものだった。

そうして作られたクローンは与えられた役目通りに行動するように仕向けられた。

王国は町村の住人や、勇者一行の一人などに勇者の旅路を誘導、監視、報告をさせていた。

物語に支障を加えないためか、それらの人は多くを知らされていなかったが。

王国が用意した「勇者一行」は、王国が用意した「シナリオ」をなぞり、王国が用意した「舞台」で動いていた。

すべては魔界を「世界救済」という名の下に掌握するために。

だが、そのシナリオは崩れ去った。

とにもかくにも、王は精霊の怒りに触れる研究を行っていた。

それは国民の怒りにも触れ、王は王としての役目を終えることになった。

国は王に全ての責任をなすりつけ、その後どうなったかはわからない。

ただ、勇者一行のクローンデータは王の手によって破棄されており、二度とそのクローン生まれることはないだろう。

そして及ばぬ技術の先は、世界全てに伝わった。

この出来事により、短期間で文明の水準が大幅に上がることになる。

――

――――

勇者「思ったんだけどな」

魔王「うむ」

勇者「あんな大掛かりなことしなくて王様をこっそり洗脳して」

勇者「こっそり教えてもらって、こっそり帰ったらよかったんじゃないだろうか」

魔王「ならんな、謎を知るだけじゃヤじゃもん」

勇者「もんとか言うな」

魔王「謎を知った上で、正しい行動をとる」

魔王「そうしなければ謎が解けても胸のつっかえがとれぬじゃろう!」

魔王「わしはすっきりした気持ちで世界を知って行きたい!」

勇者「わがままだなぁ」

魔王「それにああしなければ王はお前に役割を与えたままじゃったろうしな」

勇者「…そうかね」

魔王「さって、それじゃ世界を見に行こうじゃないか勇者」

勇者「そうだなー、次はどんな謎を解明しに行くんだ?」

魔王「お主の生き返りの秘密は知れたからの、くろーんとかなんとか」

魔王「難しくてあまり理解できてないが…」

勇者「おいおい…、まあ、俺もだが」

魔王「じゃから次はわしのほうの謎じゃ」

勇者「お前の?」

魔王「うむ、わしどう見ても人じゃろ?」

勇者「そうだな」

魔王「人型の魔族でもここまで人の姿を模した魔族はおらぬ」

勇者「で、なぜ人型なのかを知りに行くと」

魔王「うむ! そろそろ戦士のこともなんとかしないといけぬしの…」

僧侶「勇者さーん、魔王さーん」

賢者「待たせたねー」

勇者「お、準備できたか、次の目的は魔王城だぞ」

僧侶「はじめて行く魔王城がまさか魔王討伐のためじゃないとは」

魔王「魔王不在をどうするのかも考えなければな…」

勇者「じゃあ新しい勇者一行として旅に出ますか」

僧侶「勇者一行に魔王、ですか。なんだか面白いですよね」

賢者「ますます勇者くんのハーレムねぇ」

魔王「さぁてお主ら! 世界の不思議を解明しに行こうではないか!」

fin.

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