勇者「倒しに来たぞ魔王!!」魔王「また来たのか…」 1/4

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魔王「一度殺したのにまた来るとは性懲りもない奴じゃな…」

勇者「ふん、噂に聞いたのと全然違う美女だったから油断したんだ」

魔王「び、美女とか言うな!!」

勇者「殺した相手に何照れてるんだよ」

魔王「わしは別に殺すつもりはなかったんじゃがな、正当防衛じゃ」

勇者「それはそうかもしれないけどさぁ…」

魔王「じゃろう? それに確かめたいこともあったしの」

勇者「確かめたいこと?」

魔王「なあ勇者よ……お主はなぜ、生きておる?」

勇者「なぜ生きているからって…世界を救うため?」

魔王「違う、そういうことじゃない。意味とかじゃない」

勇者「はあ? 意味がわからん…」

魔王「わしはお主を、殺したぞ? なのになぜ、生きておる?」

勇者「そりゃ俺が死んでもお城に転送されて生き返るからだろ」

魔王「本当に?」

勇者「現にこうして生きてるじゃないか」

魔王「ふむ、なるほどな。…報告通りだな」

勇者「なにが」

魔王「いやいや魔族がの。勇者が殺しても生き返るこんなのおかしいーっての」

勇者「蘇生するのは別におかしいことじゃないだろう?」

魔王「確かに、蘇生自体は大変高度な技だが死した命を生き返らせることができる」

勇者「だろう?」

魔王「…わしはこの蘇生自体好きじゃないんじゃがの、ずるいし」

勇者「は?」

魔王「いや…じゃが魔法でも修復不可能な傷を受けてしまうと蘇生は不可能じゃ」

勇者「だから、そうなる前に城に転送されるんだろ?」

魔王「……されておらぬよ」

勇者「は?」

魔王「されておらぬと、言ったのじゃ」

勇者「ど、どういうことだ?」

魔王「部下の魔族はのー、お主を殺したあとひき肉にしたらしい」

勇者「ええー」

魔王「肉片はその後部下の魔族が美味しく頂きました」

勇者「食された…」

魔王「この行為はお主を殺した魔族すべてが行っておる」

勇者「俺そんなに美味しそうなの?」

魔王「というか、魔族のほとんどが肉食じゃし」

勇者「お前もか?」

魔王「わしはグルメじゃから、人肉など硬くて食えんわ」

勇者「グルメって……つか、それ本当か?」

魔王「本当とは?」

勇者「だって俺はこうしてお城から生き返ってきたわけだし」

魔王「うむ、わしもそんなことあるわけなかろーもんと思ってたんじゃがな」

勇者(もんって…つか俺は何で平然と対談してるんだ…)

魔王「勇者一味の肉じゃなかったのか、と」

勇者「そうなんだろ。だって俺たちは死ぬたびに城で生き返ったぞ」

魔王「そこでわしは部下の魔族が言ってたことが正しいかどうか試してみることにした」

勇者「試してみた? 肉片にしたのか」

魔王「それじゃと入れ替えられても判別がつかないじゃろ」

勇者「そうか…なら…」

魔王「うむ、ここに用意しておる」

勇者「……! !? お、俺の、し、死体…?」

魔王「こうして、証明されたの。不自然な生き返りが」

勇者「……」

魔王「ふむ、ショックで言葉も出んか。まあ自分の死体なんて普通見ぬしな」

勇者「あ、いや、ちょっと考え事。ちょっと驚いたが慣れたわ」

魔王「え、ええ? 順応性高いの、お主…」

勇者「まあそうじゃなきゃ勇者なんてやってられんわ」

魔王「むむ…なんとなく釈然とせんの」

勇者「まあ変わりものだと言う自覚もある」

魔王「そうじゃな…一度お主を殺したわしともこうして喋ってくれとるしな…」

勇者(ああ、変な状況と言う自覚はあったのか…)

魔王「そう言うなら、わしも変わりものじゃがな」

勇者「違いはない」

魔王「して勇者よ、改めて訊くがお主はなぜ、生きておる?」

勇者「…いや、わからん。俺はこうして生きてるし、だがその死体はどう見ても俺だし」

魔王「そうじゃの…わしも長いこと生きているがこのような現象は知らん」

勇者「…いや、どうせその死体も幻覚かなんかだろ?」

魔王「なんじゃと?」

勇者「何故か話しこんでしまったが、どうせそれも俺を油断させるため…」

魔王「ち、違う違う」

勇者「さあ、戦闘をはじめるぞ魔王!」

魔王「やじゃ」

勇者「…や!? な、なんで!?」

魔王「わし平和主義者じゃしー」

勇者「いや俺思いっきり殺されたし、死体そこにあるし」

魔王「正当防衛じゃし、それに死体は幻覚なんじゃろ?」

勇者「う…、そうだ、が、幻覚には見えない…てか俺幻覚効かないしな…」

魔王「じゃろ、お主の不可解な生き返りは紛れもなく起こっておる」

勇者「じゃあ一体どういうことなんだよそれは」

魔王「わからぬ」

勇者「…なら仕方ない、いささか喉につっかえるものはあるがこのまま戦闘を――」

魔王「まあ待て勇者よ」

勇者「な、なんだよ…」

魔王「わしはこの謎を解明したい」

勇者「それは、俺もそうだが」

魔王「じゃろう? いくらなんでもこれはおかしい。魔法でも解明できるものか?」

勇者「それは…」

魔王「なら人間お得意の科学とやらか? それでこの謎は解明されるのか?」

勇者「俺の知る科学じゃ…わからない」

魔王「そうじゃろう、思えば勇者、お前の世界には謎が多い」

勇者「俺の世界…?」

魔王「なあ勇者よ。死んだら必ずお城で生き返る勇者よ」

勇者「……」

魔王「わしと一緒に、世界の不思議を解明せんか?」

勇者「不思議だって?」

魔王「わしは別に世界が征服したいわけじゃない、証拠に戦争もしてない」

勇者「…確かに、魔族側が人間領を侵略することはほとんどなかったな」

魔王「戦争なんて、ないほうがいい。最低限の戦いがあればそれでいい」

魔王「魔王と勇者が殺しあうなんて、古い時代は終わったんじゃ」

魔王「ま、勇者の方から攻めてきたので、仕方なく迎え撃ったがの」

勇者「悪かったな、古くて」

魔王「仕方あるまい、魔族を攻め入るのは、前時代の魔族がそういう認識を植え付けたからじゃ」

魔王「これから徐々に変わればよい、その方がお互い幸せな未来が見える」

勇者「変な魔王だ」

魔王「そう言ったじゃろう?」

魔王「わしは世界を征服する気はないが、世界を解明したいんじゃ」

勇者「解明?」

魔王「うむ。生まれた時からずーっと、ずーーっと、ずーーーっと、城育ち」

魔王「正直飽きたわ、この城から出ればわしの知らないことがたくさんある」

魔王「わしはそれが見たい、この世界のすべてを知りたい」

勇者「見に行けばよかったじゃないか」

魔王「できなかったよ、これでも魔王じゃ、王が城を開けることはできん」

魔王「魔王を継承させようにも相手がおらぬ」

魔王「そこでわしは待った、連れ出してくれる相手を」

勇者「ま、まさか…」

魔王「うむ、勇者よ。わしをここから連れ出してくれ!」

勇者「ゆ、誘拐じゃねーか…」

魔王「囚われのお姫様を連れ出すようなもんじゃ」

勇者「そんな年齢なのか…?」

魔王「また氏にたいのか」

勇者「ごめんなさい生き返るけど痛いものは痛いんです」

魔王「ならよしっ!」

勇者(なんで魔王とこんなフランクに…けど何故か憎めないんだよな…)

魔王「じゃ、行くぞ」

勇者「行くって、どこに」

魔王「そりゃお主、人間の城じゃよ、まずはお主の生き返りを解明しよう」

勇者「…それで、お前をここから連れ出せと」

魔王「うむ!」

勇者「うむじゃねーよ! 豊満な胸を張るな!」

魔王「せ、セクハラじゃぞ!」

勇者「はいはいごめんなさいね、で、つまりお前はあれだろ?」

勇者「自分で出ていくのは問題だから俺に連れ去られたことにするんだろ?」

魔王「うむ! 連れ去られてしまったら仕方ないしの!」

勇者「おっぱいを張るな!!」

魔王「お、おお、お、おぱ、おぱ、おっぱいなどと恥ずかしい!!」

勇者「なにお前ピュアキャラなの? それともアホの子なの?」

魔王「アホとはなんじゃ!」

勇者「いやだって俺が連れ出したことにしてみろ、魔族が人間界に復讐しに来るぞ」

魔王「あ」

勇者「それこそお前の望まない戦争に発展するだろうが」

魔王「お、おおー、ゆ、勇者は実は偉い子なんじゃなー」

勇者「お前は実は馬鹿だったんだな」

魔王「ぐぅ」

勇者「そんな頭で良く謎を解明したいとか言ったな」

魔王「わ、わからんことは気になるじゃろうが」

勇者「知ってるようなことを言うから頭良く見えたけど幻想だったよ」

魔王「ぐぅー…」

勇者「ぐうの音しか出ないな」

魔王「今のは腹の音じゃ」

勇者「さらに食いしんぼうキャラだと!?」

魔王「まあ食事の問題はあとでたらふく勇者に御馳走してもらうことにして」

勇者「そうだな俺も腹減ったしあとで…え!? おごるの!?」

魔王「はてどうしたものか…城の者は勇者が連れ出しやすいように全員出てもらってるし」

勇者「エンカウントなくておかしいと思ったらそんな理由が」

魔王「ううん、どうしようどうしよう」

勇者「というかすでに俺は協力決定なのか」

魔王「なんじゃ、してくれないのか」

勇者「そりゃだって、勇者と魔王だぞ?」

魔王「古臭い古臭い、勇者と魔王が手を組む話など腐るほどあるぞ」

勇者「そうなのか?」

魔王「そうじゃそうじゃ、それに女だと思ってなかったみたいじゃが女魔王もあるあるじゃ」

魔王「それで勇者、お主、わしに協力してくれないか?」

勇者「…まあ、お前が敵意を持ってないのはわかったよ、殺されたけど」

魔王「あ、あれは正当防衛じゃし、部下の報告も確かめたかったし…」

勇者「まあ俺も悪かったよ、話も聞かずに殺そうとして」

勇者「それに、俺が死んでも生き返るのは誰でも知ってるしな」

魔王「生き返り方は謎じゃがな、その謎を解明するためにもわしと」

勇者「ああうんわかった」

魔王「協力してくれるとうれし――え!? ほんとか!」

勇者「おう。俺はみんなの幸せのために生きる勇者だ」

勇者「ここでお前を倒すより、ともに手をとったほうがそうなりそうだ」

勇者「たしかに魔族からの侵略もほとんどない、やっぱ仲いい方がいいよな」

魔王「…わしが言うのもなんじゃが、勇者はお人よしじゃな」

勇者「考えるのがめんどくさいだけだよ、なるようになる」

魔王「えーと、わしがお主を騙してるとは」

勇者「んんー、どうでもいい、ここに来るまで10レベはあげたし」

魔王「10!? お主前の戦闘でも相当レベル高かったじゃろ!?」

勇者「ほら、女魔王に負けたの案外悔しくて必死にレベあげを」

魔王「再び来るのが遅いと思ったら…!」

勇者「それに生き返ると言ってもなるべく死にたくはないしな…」

勇者「うん? そういえばお前俺がまた来た時うんざりしてたよな」

魔王「そ、そうじゃが?」

勇者「そのわりには待ってたような発言を…」

魔王「わーわー! 確かに来てくれないと困ったけどそれはただちょっと困るかなって思っただけでわしはべつに」

勇者「さて、じゃあどうやってお前をここから平和的に連れ出そうか」

魔王「だからわしは外に出る道具としてお主を利用しただけでそれ以上は、ん?」

勇者「普通に連れ出しただけじゃ問題だしな…」

魔王「この際わしの信頼を失う覚悟で置き手紙して城を開けるか…」

勇者「それが一番得策の様な気も――」

??「勇者! 無事か!!」

勇者「せ、戦士!? お前、なんでここに! 王都で待つように言ったろうが!」

戦士「あたしたちを戦いに巻き込みたくないからってそんなの水臭いぜ!」

勇者「いやしかしな、魔王は強いし」

戦士「だいじょうぶだ、どうせ死んだって生き返る」

勇者「そういう考えだからだよ…」

戦士「え?」

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