~砂漠~
僧侶「本当に蜃気楼そのもの。あんなに深い森が一瞬で消えちゃった…」
盗賊「………」
僧侶「元気になって良かったですよう、盗賊さん~!妖精さん達には本当に、感謝してもしきれないくらいです……もう無茶しないでくださいね?約束ですよ!」
盗賊「お前が言うな!」ゴンッ
僧侶「痛い!!なんでぶたれるんですか、なんでなんで~!!?」
盗賊「傷が治っても寿命は縮んだぜ……いいかクソアマ、次にベッドがひとつっきゃ無いなら、テメーは床で寝ろ!わかったか!!」
僧侶「それは!ひっひどいですよぅ!盗賊さん!!」
盗賊「うるせえ!!」
盗賊「………まあ、その。悪かった、な…、手当てしてくれて、……ありがとよ」ボソボソ
僧侶「はい?何か言いましたか?盗賊さん」
盗賊「~~ッッッ、うるせえっ!!」ゴン! ゴン!
僧侶「痛い!痛い!?まさかの2連発!?」
盗賊「おらぁぁぁ邪魔だ邪魔だ!!退けェェッ!!」ズバ ドス
魔物「ギャァアア!!」
盗賊「ヒャハハハ!!死にたくなかったら砂に埋もれてろ、魔物どもぉぉぉ!!」
僧侶「あわわわわ……と、盗賊さん、なんかキャラ変わってませんか~ッ!?」
盗賊「妖精の薬って大したもんだな、次から次へと力が沸いてくるんだよ。なーんか攻撃力が二倍になっているような感じでよぉ~?今なら砂漠の魔物を一掃できそうだぜ!」
盗賊「毒が抜けたから腕を振っても痛くねーしな!つーかテメーは黙って手綱握ってろ!!」
僧侶「めちゃくちゃ好戦的ですぅ!!?誰この人!?」
魔物「キシャー!!」
盗賊「魔法なんざ撃たせるかよ!!」ズバァッ
僧侶「は、早っ!盗賊さん、すごい素早い!!出てきた瞬間、魔物真っ二つです…!?」
盗賊「ギャハハハハ!!」
僧侶「こ、怖い!盗賊さんが怖いよー!!よっ妖精さん、なんて薬出してくれたんですか、これ~っ!?」
~砂漠の出口~
馬屋「お?兄さんの馬がこっちまで来るのは珍しいな。道中大変でしたでしょ。お疲れさま、旅の人」
盗賊「兄さん?向こう側にいた馬屋と兄弟なのか、あんた」
馬屋「ああ、そうさ。いつもは砂漠の中央にある、砂漠の国で引き返してくるからね…兄さんの馬が真っ直ぐここまで来るのは本当に珍しいんだ」
馬屋「やっぱりあの噂は本当だったんだなあ…砂漠の国が戦争を起こす、って。他のお客もほとんど引き返して来るしさ。こりゃウチもそろそろ避難すべきかな…」
僧侶「本当、砂漠の国が封鎖されていたから、ひどい目にあいましたね…」
盗賊「そうかあ?俺は結果的にラッキーって感じだったがな。まだまだ力がみなぎっているしよ」
僧侶「ひいぃ」ガクブル
馬屋「じゃあ、この砂馬はウチが預かるよ。ちなみにここは宿屋も兼ねているんだ、休んでいくかい?」
盗賊「どうすっかな…まだ日も高ェし、距離によっちゃあ水と食糧を補充して、このまま進むのもいいが…」
僧侶「あのう。勇者様はどちらに向かわれましたか?」
馬屋「勇者様?いや、どちらも何も、いらしてないよ、そんなお方は」
僧侶「あれえ!?」
盗賊「……どういうこった、まさか追い越しちまったのか?じゃあここで待っていれば、ついに勇者と合流できる…!?」
馬屋「なんの話だい?」
僧侶「あの…私達、勇者様の仲間だと、神託を受けたものなのです…でも、勇者様とすれ違ってしまって…そ、それで今、勇者様を追いかけているんです」
盗賊「最後の消息が、あんたの兄貴から聞いた情報でな。砂漠の国に入った、と。だがここに来ていないって事は、まだそこに居るって事でもあるんだろ?」
馬屋「ふうん…まあ、確かにこの砂漠を渡るには、徒歩か砂馬かだけど…」
馬屋「だけどホラ、今、砂漠の国は戦争を考えているだろ?余所者にはすごく厳しいんだ、もしかして捕まっていたりしたら、出てくるまでにすごく時間がかかるだろうし」
僧侶「あわわ……勇者様…」
馬屋「それに、戦争となると砂漠を渡る方法は地上だけじゃなくなるからなあ。砂漠の国は有事の際に気球を出すから。それを使っている可能性もあるよ?」
盗賊「気球?気球って何だ?」
馬屋「ほら。空を見上げてごらんよ」
盗賊「……?なん、だ?ありゃあ…鳥にしちゃ変な形だ」
僧侶「太陽が眩しくて、よく見えないけど…なんだか丸いものが、いくつも空に浮かんでますね…」
馬屋「なんで空を飛べるのか、作りはわからないけど、ああいう空を飛ぶものなんだよね、気球って。あれには砂漠の国の兵士が乗っているんだ。今丁度演習中なんだろうね」
盗賊「あんな便利なもんがあるのかよ。あれを使えば熱い砂に苦労しなくてもいいじゃねーか」
馬屋「悪い方向に考えると、砂漠の国に捕まっているか…勇者様っていうくらいだから腕は立つんだろうし、もしかして戦争に駆り出されているかもしれない」
馬屋「勿論、いい方向に考えて、ここで待っていれば合流できるかも、だけどね」
盗賊「う~む。でけェ博打だな……砂漠の国に入れりゃ一番確実なんだが…」
僧侶「でも、あの門番さん達は絶対、中に入れてくれないですよね…」
馬屋「金を払ってくれればいくらでも泊めるよ、と言いたいところだけど…命あっての物種と言うしな。ウチもしばらくしたらここを引き上げて、兄さんと一緒に避難するからね」
盗賊「…ここから旅人が出発するとして、よく目指す場所の見当はつくか?」
馬屋「そうだなあ、いくつか小さな村があるけど……やっぱり一番は、カジノの街じゃないかな?」
盗賊「カジノ!?」ピクッ
馬屋「ああ、通称眠らない街。世界一大きなカジノや劇場、酒場のある街さ。一攫千金を夢見る人間が沢山集うんだよ。砂漠の国からもそこを目指す人は多いし、港もあるから余所の国からわざわざ遊びに来る人までいるん
盗賊「よーし行き先決定!!カジノの街へ行こう!!」
僧侶「ええええ!?ちょっと、盗賊さん!勇者様はどうするんですか!?」
盗賊「知るか!いや違う、それだけ有名な街なら、勇者も立ち寄るんじゃねーか?どうせ待つならどこも同じ、なら楽しい場所で待っていた方が断然いいだろ!?もしかしたら博打で一山当てて大金持ちになれるかもしれね
僧侶「本音だだ漏れですう!!?わっ私は反対ですよ!賭け事なんて、神様に叱られますよう!!」
盗賊「クソアマ……」グッ
僧侶「はぇ!?ななな、ななななんですか、肩なんか掴んで……そ、そんな真面目な顔しても、ダメダメ!ダメですからねっ」
盗賊「俺を信じろ、クソアマ。勇者だってそうさ、今まで無双って勢いで活躍していたじゃねーか…もし戦争に巻き込まれていても、あいつならきっと無事だ」
僧侶「あの、それとこれとは、話が別…」
盗賊「なあクソアマ。俺達すげー頑張ったよな?今まで頑張ってきたよ、本来表舞台に立つ事のねえ俺が、回復魔法の使えねー役立たずでトラブルメーカーで本ッ当どうしようもねぇクソ以下のクソアマが、ここまでよく頑
僧侶「私の事だけめちゃくちゃ辛辣ですう!?」
盗賊「頑張った自分への褒美ってやつだよ、コレはよ……いざ行かん、カジノの街!博打の女神が股開いて誘ってやがんだよ、俺を!淫乱女が!可愛がってやるぜー!!」
僧侶「封印しやがれですよ、そんな神様!!」
~カジノの街~
僧侶「ううう…こんな事している場合じゃないのにぃ……」
盗賊「あああ!すげー輝いてやがるな!!このネオンの光は世界一美しいわ!テンション上がるーっ!!」
僧侶「もー!もーっ!!忘れないでくださいね、盗賊さん!?勇者様と合流が最大の目的ですからね!?」
盗賊「はいはい、わかってるわかってる。すっごいわかってる超わかってる誰よりもわかってる」
僧侶「あんまり適当に返事してると、このメイスで神罰を下しますよ!」
盗賊「まずは砂漠の魔物や道すがら得た収穫物を換金だ。それから宿を確保して……カジノに劇場に酒場ぁーっ!!みなぎってきたぜェー!!」
僧侶「神罰ーっ!!」ブンブンッ
盗賊「久し振りに旨い飯も食いたいしよ~たっぷり稼がねーとなっ」ヒョイヒョイ
僧侶「ああん、もう!治すんじゃなかったです、こんな罰当たりな人~っ!!」
僧侶「うーっ、カジノってすごいうるさい……み、耳が壊れそう、です」
盗賊「お前の口の方がうるせーよ。いつもギャーギャー騒いでんじゃねーか。つーか、なんでついて来るんだよ?宿屋で寝てろよ」
僧侶「私の第六感が告げるんです!盗賊さんを一人にしたら魔物に食べられちゃう、と…金食い虫って魔物に!」
盗賊「まったく信用ならねーな。っと、姉ちゃん、この金を全部コインに替えてくれ」
バニー「はぁ~い、醒めない夢を堪能していってね!」ジャラジャラ
僧侶「あわわわわ……な、なんですか、あの破廉恥な衣装の人!?おっぱいでかっ!!おっぱいでかっ!!?」
盗賊「あれじゃね?触れば御利益あるかもよ。てめーの洗濯板も大きくなったりして…」
僧侶「」ムニュムニュムニュ
バニー「いやんっ何をしているの、お嬢ちゃん?」
盗賊「冗談だったんだが」
僧侶「ありえない…ありえない……何あのでっかいの…」
盗賊「まさかお前を羨ましく思う日が来るとは。さて…何から遊ぶかねぇ」
僧侶「あんまり長居しないでくださいよ?大事な旅の資金なのに、ほとんどコインにしちゃうなんて…信じられないですう…!」
盗賊「ったく、うるせえな。ほら、少しコインをやるから、おとなしく遊んでいろよ」
僧侶「わっ私は賭け事なんて…!」
盗賊「いいから、いいから。やってみたらハマるって、お前も。ほら、そのスロットなんかいいんじゃねーか?レバー倒してボタン押すだけだし、簡単だろ。バカなお前でもできるさ」
僧侶「酷っ!?うう…勇者様~!助けてぇー!」
盗賊「ここに描いてある絵柄が揃ったら当たりだ。俺は向こうのポーカー台で遊んでっからよ、コインが無くなったら、俺のところに来るか、宿屋に帰るなりしろよ。じゃーなー」
僧侶「あっ、と、盗賊さん…!行っちゃった……」
僧侶「もうっ!しょうがない…勿体無いから使うだけ使って、宿屋に帰ろう…」
僧侶「えっ、と。絵柄を揃えるんだっけ…?あ、スライムさんの絵もあるんだ、可愛い~。温泉スライムさんと衛兵さん、元気にしてるかなあ…」
僧侶「コインを入れて…レバーを倒して」ガシャンッ
僧侶「ボタンを押す…」ポチポチポチ
ピロリロリン!
僧侶「あ、絵柄揃った。…わ、わっ?コインが出てきちゃった!い、いいのかな…?」
僧侶「えと…今のはさくらんぼの絵が……と、とにかくコインを無くさなきゃ、宿屋に帰れない…」ガシャン ポチポチ…
僧侶「あう、今度は揃わなかった!一枚ずれてたら星の絵柄が揃ったのに~」
僧侶「………」ガシャン ポチポチ…
僧侶「………」ガシャン ポチポチ…
遊び人「ひっく。…ん~?世も末だな……僧侶のガキんちょがカジノで遊んでるなんて」
遊び人「よぉ、お嬢~ちゃん。こんなところにいていいのかい?僧侶様は教会にいるべきじゃねーかぁ~?」
僧侶「し、静かにしてくださいよう!!集中が途切れるじゃないですかっ」
遊び人「うお、見かけによらず怖いな~。つーか、ダメダメ。この台はハズレ台だから。いくらやってもでかい当たりはこないぜ?」
僧侶「…そ、そうなんですか?」
遊び人「ほら、こっちの台にしなよ。内緒だぜ、この台はそこそこ当たる稼ぎ台なんだ……ひっく」
遊び人「情報代な、コイン少しもらうぜ」
僧侶「あっ、私のコイン……」
パンパカパーン!!
僧侶「!? 絵柄が揃った…わ、わ!?コインがいっぱい!!」
遊び人「ここで遊ぶと100枚なんてすぐ消えちまうけどなあ。この台でまず枚数増やして、ポーカーやレースに注ぎ込むのが常套手段ってやつなんだよ」
パンパカパーン!!
僧侶「きゃーっ!きゃー!!スライムさんが揃いましたよ~!?」
遊び人「おー、やるじゃねーか、お嬢ちゃん。つーかよく黙々とスロットばかりできるなあ…飽きないの?」
僧侶「ううん、絵柄が揃うとすごく嬉しいです!コインがいっぱいになりました~!」
遊び人「はははっ、最初は鬼みたいな顔していたくせに、可愛いじゃねーか。よっし気に入った、一杯奢ってやろう!」
遊び人「バニーちゃ~ん、俺達に酒ちょうだい!このお嬢ちゃんにゃミルク多めにしてやってな」
僧侶「え!?私、お酒なんて……というか、私のコインですけど、それ!?」
遊び人「大丈夫だって、ほとんどミルクだからよ。酒なんかちょびっとしか入ってないよ、ちょびーっと!何事も経験だ、飲んでみなって!あ~旨い、タダ酒ほど旨いものはないね~」グビグビ
僧侶「も…もうぅ!なんだか盗賊さんがもう一人いるみたいです……」
盗賊「…こっちはスリーカード。俺の勝ちだな、コインはもらうぜ」
ディーラー「おめでとうございます」ジャラジャラ
盗賊「はい、どうもごちそうさま、っと」
盗賊「(へへ、ヌルい相手だなぁチョロいもんだ…暫くこいつで稼ぐとするか)」
盗賊「よし、もう一戦いく………ぞっ?」ドンッ
盗賊「な、なんだ?誰だ……」
僧侶「盗~賊さん~、見ぃ~つけたぁ~」ゲフー
盗賊「な!?クソアマ!?何してやが……うわ、酒臭っ!!」
遊び人「やー、なんていうか……ごめんね、あんまりいい飲みっぷりだから…調子にのっちゃって」
盗賊「誰だ、テメー……っつーかクソアマ!離れろ、なに膝に座ってやがるっ!!」
僧侶「ん~……気持ちいいです~…」ギュー
遊び人「あ、これ。お嬢ちゃんが稼いだコインだ、渡しておくよ。元々この倍はあったんだが…半分は酒に消えちまった、いや本当ごめーんねっ!」
盗賊「何してくれてんだ、テメー。…だが今のツキを捨ててたまるか。あとでクソアマもお前もブッ飛ばすからな!逃げんじゃねーぞ!?」
僧侶「んー…」スリスリ
遊び人「血の気の多い兄ちゃんだなぁ~。いいじゃん、おとなしい猫みたいになってんだしさー。大虎より子猫の方が断然いいでしょ?」
盗賊「るっせーな、黙ってろ!騒がれっとツキが逃げるだろうが!」
僧侶「ん~ふふふ」ポイポイ
盗賊「あっ!?てめっ、何してんだクソアマ!!勝手にカードを抜くな!」
ディーラー「お客様?いかがしますか、ゲームを下りますか?」
遊び人「あ、いやいや続けます、続けまーす。今切ったカードぶん、新しいのくださ~い」
盗賊「テメーらなあぁ……!」
遊び人「ほらほら兄ちゃん!青筋立てている暇なんかないよ~?集中集中!!」
盗賊「絶対ブッ飛ばしてやる……ん?んん!?…ま…マジ?マジかよ!!」
遊び人「なに、なになに?どーしたの?」
盗賊「ふ、ふ、ふ……フルハウス来たぁぁぁぁ!!!」
遊び人「うおおおい!?」
僧侶「んー…うるさいぃ……」ギュウゥ
盗賊「よ、よしよし!!よしよし、よくやった、クソアマ!テメーがカード抜いたおかげだ、褒めてやる!!」ナデナデ
僧侶「うへへへへ~」デレデレ
遊び人「俺も褒めてちょ~うだいよー、ゲーム続行させたのは俺じゃん?酒!酒飲ませてくれよーっ」
盗賊「チッ、調子のいい野郎だな。まあいい、俺も喉が渇いたし休憩すっか。おいディーラー、今勝ったぶんのコインをくれ」
対戦者「……調子こいてんじゃねーぞ、コラァ!!」ドガッ!!
遊び人「うわっ!?」
ディーラー「お客様、乱暴は困ります!」
海賊(対戦者)「うるせえっ!テメー!イカサマしてんだろ、ブッ殺すぞクソガキ!!」
盗賊「はあ?言いがかりはやめろよ、ちゃんとディーラーに配ってもらったカードで勝負してんじゃねーか」
僧侶「きゃははは、クソガキだって、クソガキ~クソアマとお揃い~」ケラケラ
遊び人「お、おい、兄ちゃん…よくよく見たら、こいつはヤバい相手だ……暴れ者の海賊集団の一人だ。関わるな、適当にゴマ擦って機嫌治そうぜ…」
盗賊「関係ねーよ。博打においてのイチャモンは白けんだよな、大体こいつ、雑魚も雑魚だぞ?見てりゃいいカードばんばん捨てたりしてよ、ルール自体わかってない素人じゃねー?」
海賊「こ、このガキ…!!」
遊び人「やめときなって、兄ちゃんさあ!」
海賊「ブッ殺す!!」シャキン
遊び人「ほらあぁ!短剣なんか隠し持ってるーっ!!」
盗賊「おい、このデカい荷物、ちょっと持っててくれ」
僧侶「やー…盗賊さんじゃなきゃ、やーだー!」
盗賊「はいはい、おとなしくしていろっつーか、そいつに懐いてろよ、うざってェ」
遊び人「兄ちゃん!やめときなって!!危ないから!」
盗賊「こんな雑魚、暗黒街でうんざりするほど相手にしてきたんだよ」
海賊「クソガキがぁぁぁぁ!!」ドドドド
盗賊「こういうバカはな、大抵考えなしに突っ込んでくっから…まず避けて」ヒョイ
盗賊「足を引っかけ」ガッ
海賊「おうっ!?」ドタァッ
盗賊「転んだところにのし掛かり、腕を逆向きに捻り上げる」メキメキ
海賊「ぎゃああああ~!!?」ジタバタ
盗賊「…ほらな?はい、ご退~場~。あとは怖ェ黒服さんとランデブーしてきなァ」
僧侶「きゃー!きゃー!!盗賊さん、強~い!」
遊び人「何者なんだよ、兄ちゃんは……」
盗賊「まあ色々あるんだが、表向き善良な一般人だ。おい、河岸を変えようぜ。白けちまったし」
遊び人「自分で善良とか言っちゃうの。まー俺は酒が飲めればいいけどさ……じゃあ隣の酒場に行こっか、劇場も併設されてんのよ?」
遊び人「今の時間だと、なかなか可愛い娘が揃ってんだよな~、……そう考えっと、お嬢ちゃんを酔い潰して正解かぁ。宿屋とか取ってないの?寝かせてきたら?」
僧侶「くー……すぴー……」
盗賊「行き来する時間が勿体無ェよ。こういうのはな、勢いが大事なんだ、勢いが。そいつ、一回寝たらなかなか起きないしよ。このまま行こうぜ」
遊び人「豪快なのかなんなのか…とりあえず、お嬢ちゃんは返しておくからねっ」
盗賊「返さなくていいっつーの、重てーなー、ったくクソアマが…」
僧侶「……すー……すー……」
~酒場~
遊び人「うおおおーっ!踊り子ちゃーん!!こっち向いてー!あっあっ、見える、見える!もうちょい足上げろやぁ!!」
盗賊「旨い旨い旨い飯旨い」ガツガツムシャムシャ
遊び人「なあ、兄ちゃんはどの娘がいいよ?俺は右の娘かな~、あの太腿!たまんないねっ!」
盗賊「そうさなぁ~…あの真ん中とかなかなか。今にも乳がこぼれそうじゃねーか、ぶるんぶるん揺れちまって。あー挟んでもらいてー」
遊び人「あらっ、兄ちゃん巨乳派だったのかよ。そんなお嬢ちゃん連れてっから、俺はてっきり……」
盗賊「てっきりなんだよ。こいつはただのデケー荷物だ、バカが。あーぁ、ガキのお守りなんざ最悪だぜ…発散する隙が全くねーからよ~溜まる一方なんだよなー」
遊び人「心中お察しします、てなもんだ。なんでそこまでして、その子と一緒にいるんだよ?嫌々言うわりにゃ大事にしているように見えるんだけど」
盗賊「あーっ、もううんざりだ。くだらねェ詮索が好きな奴が多いな……喰らえっ」
遊び人「そりゃなあ、冒険者とかパーティ組んでいるだけって感じじゃないし……痛っ!?ピーナッツが飛んできた!?」パチッ
僧侶「ふが、ふが…」
盗賊「こいつの鼻、武器になるかも」