女王「勇者、死んでしまうとは何事です」 2/4

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ある村

勇者「ここも、女王さまの評判悪いかな……」

??「もう王国なんて懲り懲りだ!」

勇者「?」

村の青年「国が俺たちに何をしてくれたっていうんだ」

青年「魔物たちとの戦いという口実で重税を取ってばかりで我々を助けてはくれない」

青年「このままじゃあ絞られるだけ絞られて、隣の村たちのように魔物に滅ぼされるだけだ」

青年「そうするぐらいなら、国に拘束されずに、私たちだけで村を守った方がマシだ」

ざわ・・・ざわ・・・

村人C「確かにその通りだよな」

村人D「税金ばかり持って行って、私たちの生活も厳しいというのに」

村人E「私たちのことも守ってくれないくせに」

青年「きっと今でも城では、俺たちの血税で王族と貴族どもが呑んで踊っているに違いない!」

青年「そんな奴らに搾り取られて死ぬぐらいなら、俺たちだけの力でも村を守った方がマシだ!」

>>そうだ、その通りだ。

勇者(…村人たちだけで村を守る)

勇者(確かにそうも出来るかもしれないけど、限度があるよ)

勇者(しかも、あの人たちは勘違いしている)

勇者「皆、ちょっとボクの話を聞いて欲しいよ」

>>何だ?

青年「なんだ?この村の人じゃないな」

勇者「ボクはこの村の人じゃないよ。ボクは王都から魔王を討伐するように命じられて旅をしている勇者だよ」

>>勇者?

>>勇者だってよ。

勇者「皆は女王さまが自分たちから税を奪うだけで、自分たちを守るつもりはないと思ってるみたいだけど」

勇者「女王さまは自分のために皆がくれた血税を無駄使いするようなまねはしないよ」

青年「嘘だ!もしそうだとしたら何故他の村たちは滅ぼされたんだ!彼らが国にあげた税金はどこに消えた」

勇者「皆の税金はちゃんと国の人たちを守るために使ってるよ」

勇者「ただ、それでも皆を守る程の力がなかっただけだよ」

ざわ・・・ざわ・・・

青年「結局国が無能ってことじゃないか。そんな王のために働いて死ねというのか!」

勇者「ボクの話を聞いて!」

勇者「今王都の城の中は空っぽだよ」

勇者「金になるような飾りや、家具たちも皆売ってしまって」

勇者「今城の中は皆の家のように食卓や椅子、寝るためのベッドぐらいが全部だよ」

勇者「女王さまだって、高い宝石や金ものは全部売りつけて国防に使ってるよ」

勇者「一国の王さまとは思えないほど倹素な姿で過ごしているよ」

・・・ざわ・・ざわ・・・

勇者「王族の私財も全部使いきって、勇者のボクにも、最初は100Gというろくな剣一つも買えない資金しか与えてくれることが出来ない程貧乏な状態だったよ」

勇者「それでも、女王さまは皆のために精一杯頑張ってるよ」

勇者「そして、勇者のボクも、そんな女王さまのためなら、そして、皆を守るためなら命を賭けて頑張るよ」

勇者「だから、皆も女王さまを信じて欲しいよ」

勇者「以前のような魔物たちの攻撃が合った時、皆は自分たちだけで村を守る自身があるの?」

青年「そ、それは…!」

勇者「今国が皆一つになって互いを助け合わないと、誰一人もろくに助けることができないよ」

勇者「誰かを助けるために皆を犠牲にするってわけじゃないよ」

勇者「ただ、皆が女王さまやボクたちを信じてくれないと、ボクも女王さまも、皆を助けたくてもそうすることができない」

青年「脅迫するつもりか?自分たちに逆らうと守ってくれないというのか」

勇者「そうじゃないよ!」

勇者「どうしてわかってくれないの?」

勇者「女王さまだって皆を守られるような力があったならそうしてたはずだよ」

勇者「精一杯頑張っても出来ないことだってあるんだよ」

勇者「女王さまはね、助けることが出来なかった人々のために泣いていたよ」

勇者「皆を守れなかった自分の無能さを嘆いていたよ」

勇者「ボクは女王さまのそんな顔をもう見ないためにも、皆のためにも言ってるんだよ」

勇者「女王さまの信じて、今までのように信じてついてきて」

村長「随分と騒がしくしているの」

青年「!」

>>村長!

>>起きても大丈夫なのですか。

村長「外が騒がしくての、病だからと言って黙って寝てばかりは居られんかったんじゃよ」

村長「にしても、随分若い勇者よの」

勇者「……」

村長「この国もそれ程腐っているということじゃ」

勇者「そんなことは…!」

村長「王族たちのことを言ってるわけではあるまい」

村長「お前たちのことじゃよ!」かーつ!

青年・村人「!」ビックリ

村長「何が無能が王族じゃ!」

村長「自分たちのことしか知らんのはどっちじゃ!」

村長「国を司る者の苦労も知らずに…目の前の損益に目が眩みおって」

青年「し、しかし村長」

村長「もしもじゃ、坊や。お主らだけでこの村を守るとしてみよう」

村長「でもとても沢山の数の魔物たちが現れたのじゃ。とても自分たちの力だけじゃ勝つことが出来ぬ」

村長「そんな時に隣の村に助けを求めるのじゃ。自分たちと一緒に力を合わせて戦おうと」

村長「どうせこの村が滅ぼされると次は彼らの村がなくなる番じゃろうからの」

村長「力を合わせた方がきっと多くの者どもが助かる」

村長「なのにお主らはこう言ってんのじゃ」

村長「お前たちの村を助けるために行っている間、魔物たちが自分たちの村に襲ってきたらどうするのだ?」

村長「そしたら、人のものを守るために、自分たちばかり犠牲になる様ではないか」

村長「そんなことになるぐらいなら、奴らを壁にして、自分たちは自分たちのものだけを守った方が良い!と」

村長「なんと愚かな発想じゃ」

村長「そうした所で、村一つ一つのちからだけじゃあ、村を守れずどっちの村も滅ぼされるじゃろう」

青年「………」

村長「誰かのために犠牲にされることが出来ない連中のために、自分の身を犠牲にするような馬鹿はおらぬ」

村長「お前らのような考えで国が守れるか!」

青年「し、しかし村長」

村長「まだ何か言うことがあるのか!」

村長「そんなに犠牲にされるのが嫌なら一人で森に乗り込んで魔物どもから自分を守ってみろ!」

村長「誰もお前が挫けた時に手を貸してくれる奴なんざおらぬわ!」

青年「っ」

村長「そんなお前らのために国はあるんじゃよ」

村長「お前らが国に尽くすことを惜しんだ分、国のどこかでは人が死んでゆく」

村長「他の村がそうしても同じじゃ」

村長「王さまはお前たちのために頑張ってるわけじゃない」

村長「この国の民皆のために頑張っておるのじゃ」

青年「……」

村人「……」

村長「厳しい時期じゃ。お前たちが恐いのも分かる」

村長「じゃが、そんな子供のような駄々を言ってるうちにも、王さまはこの国のために自分の骨肉を削っていらっしゃる」

村長「そしてこの勇者も、お前たちのために命を賭けて魔王と戦う修行を積んでおるのじゃ」

村長「さあ、皆仕事に戻りな。そしてもうこんな馬鹿な騒ぎを起こして老人の眠りを邪魔をするでない」

村長「勇者さま、わしに付いてきてもらえるかの」

勇者「あ、はい」

村長の家

村長「済まないの、若い連中が若気で暴れてるだけじゃ」

村長「本当はそうする度胸も能力もおらぬ癖に、ただ国を誹謗するばかりじゃ」

勇者「……他の村でも見たことがあります」

勇者「きっと、この国の多くの人たちが女王さまについてそう思ってると思います」

村長「馬鹿な連中じゃよ」

村長「先代王の時にあれだけ助けられても、少しでも自分たちに不利になれば直ぐこうじゃ」

村長「とは言え、辛い時なのは事実じゃからの」

勇者「……」

村長「勇者さまは、今の王さまを見たことがおるかね」

勇者「はい、とても綺麗なお方で、優しい方です」

村長「ふぉふぉふぉ…随分と惚れておるようじゃの」

勇者「え?ちがっ…そんなことでは……」

村長「ふぉふぉ…隠さんでも良いのじゃよ」

村長「わしも今の女王さまのお顔を拝見する機会があったからの。その美しさはちゃんと憶えておる」

村長「なに、まだ女王さまが幼い姫さまであった頃の話じゃがの」

村長「先代王さまは、良く娘を連れて、国のあっちこっちを見まわってたものじゃ」

村長「あの時に会った姫君が、先代王の血を引いているなら、きっと良き王であることは間違いないじゃろう」

村長「魔王さえ復活してなければ、この国もきっと笑顔で満ちてたはずじゃ」

村長「じゃが、今や人々の顔で笑顔なんて見ることも難しくなってきおった」

勇者「…女王さまは泣いていました」

村長「……」

勇者「ボクは、女王さまの力になりたいです」

村長「…そうか」

村長「なら、今よりももっと頑張らねばならんの、若い勇者よ」

勇者「…はい」

勇者「あれ?」

勇者「城門の門番が……居ない」

大臣「おお、勇者ではありませんか」

勇者「大臣さま」

大臣「噂は耳にしました。旅で村を回りながら、人々を励ます言葉と、女王さまの苦労を皆に話してくれているらしいですな」

大臣「王国への評判が下がる一方だったのに、感謝しています」

勇者「ボクはただ、皆に本当のことを話したばかりです」

勇者「所で、女王さまを謁見出来ますでしょうか」

大臣「……それが」

女王「っしょ!」

勇者「…!女王さま?!」

女王「?ああ、勇者」

勇者「どうしたんですか、その姿は」

勇者「服が土まみれになって…それに手に持っているのは…」

大臣「私がいくら止めても聞いてくださらず…」

女王「国の存亡がかかっているのです」

女王「私にできることならしなければ」

大臣「女王さまは、国の使用人たちを皆解雇しました。親衛隊も皆、国の防衛軍に編成しました」

勇者「え?」

大臣「城の予算をできるだけ削減するため、絶対に残るという人たちだけ残して」

大臣「城の庭も皆畑に変えて、村を失った人々が食べていけるように分けてあげました」

大臣「それだけでなく、女王さまご自分もああやって畑を耕して人々を助けることも…」

勇者「……」

女王「城の中にばかり居ても、できることが限られますからね」

女王「あの人たち皆、私が無能なせいで家族や家を失った人達です。他にもいっぱい居るでしょう」

女王「私がこの人たちを助けるためならできる限りを尽くすつもりです」

勇者「……」

勇者「女王さま」

勇者「これ、使ってください」

女王「…これは…?」

勇者「これよりももらったのですけど、これ以上は持てなくて…」

女王「…?」

じょおうは たからばこを しらべた。

なかには 65535Gが 入っている。

女王「!?」

勇者「村を巡りながら女王さまのことを話したら、人々が少しずつ女王さまに伝えて欲しいともって来ました」

勇者「後、ボクもモンスターを倒しながら集めました」

勇者「国の予算に入れてください」

女王「こんなにたくさんのGをどうやって…」

勇者「村の人たちに女王さまの話をしたんです」

勇者「ボクが知っている限り、女王さまの本当の姿を、その苦労を全部伝えました」

勇者「そしたら、皆少しずつ集めてくれました」

勇者「自分たちを、国のために頑張ってる女王さまに使って欲しいって」

勇者「これはその人たちの信頼です」

勇者「そして、ボクの女王さまへの尊敬です」

女王「…とりあえず、中に入りましょう」

女王「私に話して欲しいです」

女王「国の人々が今どんなことを思っているか」

女王「彼らの話を聞きたいです」

勇者「はい」

そして、ボクは女王さまに、ボクが旅をしながら見たこと聞いたことを全て話した。

話を聞きながら女王さまは真剣な顔でその話を聞いたり、またある時は自分の足りない部分を嘆いたりもしていたけど、

大半の時、女王さまが笑っていた。

自分はまだ人々から愛されているって、彼らもまた頑張っているって。

女王さまはボクの話を聞いて力を得ていた。

以前女王さまの涙を見た時、ボクは心が割れるように思った。

でも、今こうして女王さまの笑顔を見ていると、その姿があまりにも美しくて、嬉しそうで、

一瞬自分が勇者で相手が女王さまであることを忘れそうにもなった。

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