魔王「いい魔王」 4/5

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魔王「やべぇ…入れすぎた」

少女「魔王…あなた…」

魔王「出て行け」

少女「…へ?」

魔王「出て行け。全部家から出ろ!スライム!」

スライム「かしこまりました」

スライム「失礼します」ガシッ

少女「え、ちょっと、魔王!」強制離脱

魔王「出来るだけ爆発を収めないと家だけじゃなくて森全体が消え去るぞ」魔力全開

魔王「あぁ、【良い魔王】にもなれずこんな所で死んでたまるかよー!」

家の外

少女「魔王!」

スライム「入っては駄目です。魔王さまは出て行けと仰っていました!」

少女「放して!魔王に聞きたいことが」

ボーン!!!

女・スラ「!」

スライム「魔王さま!」

魔王「けほっ!」真っ黒

魔王「あぁ…なんだこれ、けほっ!」

少女「あ…な…」

魔王「…我の家が…資材全部なくなってしまった」

魔王「なんてことをしてくれるんだ、お前は」

少女「い、今の爆発って…」

魔王「調合を間違えたんだ」

魔王「薬というのは、作り方によって体を癒す回復ポーションになれるけど、ちょっとだけ違ったら街一つぶっ壊すことも出来るんだよ」

少女「…じゃあ、魔王はその気になればそんなものも作れるの?」

魔王「作れるぞ。まあ、造らないけどな」

魔王「それに道具がなんであっても使う奴の良し悪しで良く使うか悪く使うかが変わるものだ」

少女「………」

スライム「家がなくなってしまいましたね」

魔王「うーん、家は立て直せば良いけど研究材料がな……この世界では手に入らないのも多いし」

スライム「また転送で持ってくるのですか?」

魔王「さっき爆発抑えるのに魔力使いすぎて暫く無理だわ。てか家立て直す気力もねえ」ヨロヨロ

スライム「魔王さま!」ガシッ

魔王「あぁ…スライムのスライムは落ち着くなぁ…」ぷよぷよ

スライム「ま、魔王さま」カァ

少女「あの、魔王、良かったら暫く村で過ごしてみない」

魔王「あぁ?」

村人A「お、スライムちゃんに少女ちゃんじゃん」

村人B「村娘コンテストの一位と二位か。絵になるな」

村人A「で、あの真ん中に居るのは…誰だ?」

村人B「さあ」

村の広場

少女「あー、あー、皆さんココに注目」

少女「こちらに居る人は今まで影からあたしたちを助けてくれた魔王さんです」

>>魔王?

>>アイツが良い魔王って人?

>>初めてみた

少女「今回、諸事情によって、これから村で住むことになりました」

魔王「…おい、誰がずっとここに居ると言った。今日だけだからな。魔力の補充ができたらまた森に…」

>>おおおお!!!

教会

魔王「…で、村人たちの泊まっていけとの誘いも断って来たのがここか」

少女「ここあたしが住んでる所よ」

魔王「不気味なところに住んでるな」

少女「え?…ここ不気味なの?」

魔王「不気味だろ?こんな神々しい所、我は苦手だ」

神父「あなたたちの敵である女神の居場所であるから当然でしょう」

少女「神父さま」

魔王「女神か……」

神父「ここはあなたたちのような連中が出入りしていいところではありません」

少女「神父さま、もういい加減に」

魔王「生意気な言動だな。我が今まで汝らを何度も助けてきたというのに」

神父「悪魔の果実であるほど甘いもの…」

魔王「勝手に言え、と言いたいところだが我もここに居ることは好かない。ここに居ることはこっちから願い下げだ」

少女「ちょ、ちょっと魔王」

スライム「……失礼します」

少女「……」

魔王「……」

スライム「魔王さま…」

魔王「俺は間違っていたのかもしれない」

スライム「はい?」

魔王「俺は良い魔王になるつもりで人間ども助けてきた。だがその恩を受けても尚我を悪と呼ぶ連中も居る」

魔王「結局魔王とは、魔物に対して良い王であれば良いって意味だったのかもしれない」

スライム「……しかし、多くの人々は魔王さまのことを讃えています」

魔王「それも自分たちに良いうちだ」

魔王「都合が悪くなればどう変わるか見えている」

スライム「しかし……この世界には魔物はわたくししか居ません」

魔王「…そうだな。この当たりで魔物は確かにお前しかない」

魔王「だから他の所へ行ってみようと思う」

スライム「…ここを去るのですか」

魔王「丁度家も壊された。明日にでも出発するぞ」

スライム「…分かりました」

少女「神父さま!人の前で言っていいことと悪いことがあると思います!」

神父「奴らは人ではなく魔な存在です」

少女「どっちでも同じです!大体あんな古臭い伝説が何の意味があるというのですか。今があの人が良い魔王であることがその証拠じゃないですか」

神父「……」

神父「そうかもしれませんね」

少女「!」

神父「私の口が過ぎてました」

神父「少女、行ってあの方々を連れ戻してください。私も謝罪しましょう」

少女「わかりました」パァッ

スライム「寝場所はどうしましょうか。村長に頼めば良いところではなくとも寝られる部屋を手配してくれるはずです」

魔王「そうしよう」

少女「魔王ーー!」

魔王「うん?」

少女「はぁ…はぁ…良かった。まだどっか他の所に行ってなくて」

魔王「どうした。教会になら…」

少女「帰ろうよ。神父さまも謝るって。さっきは言いすぎたって言ってるから」

魔王「…」

魔王(怪しいな)

魔王「いや、やっぱ他の所で寝るわ。教会なんて気味悪いし」

少女「だ、だけど…」

スライム「魔王さま、ここは少女さんの言葉に甘えた方が…」

魔王「甘えるも何も我が嫌だと…」

スライム「ここは一つ、少女さんの顔を立たせる意味でも、お願いします」

魔王「……」

少女「そ、そうよ。元を言えばあたしのせいで家も壊れたんだから…お詫びぐらいさせてくれてもいいでしょ」

魔王「…あぁ、分かったよ。行く」

少女「!」パァ

少女「良し、早く、早く行こう」

魔王「分かったから引っ張るなって」

寝室

少女「夕食って…どうだった?口に合った?」

スライム「美味でした」

魔王「我は食べることはあまり必要性を感じないからどうとも…まあ、食えなくはなかったな」

少女「…」ムッ

魔王「しかし、教会になんでこんな部屋があるんだ。しかも布団が二つも」

スライム「あ…魔王さま、それは…」

少女「…ここ、実は弟たちの部屋なの」

魔王「弟?…あ、そういえばそういう奴ら居たな。今はどうした」

少女「死んだよ。戦争に連れて行かれて…」

スライム「……」

魔王「ふーん」

少女「…それだけなの?」

魔王「戦争って元々死を覚悟して行く所だ。特に悲しむこともない」

少女「それはそうかもしれないけど…」

魔王「しかし、人間どもも救えない奴らが多い。他に戦う相手がないからって自分たち同士で戦うとは」

魔王「我よりももっと悪魔らしいことするではないか」

少女「……お休み」バタン

スライム「…魔王さま、もう少し気の利いた話でも」

魔王「なんでアイツにそんなこと言わないといけない。我は寝る。明日出発するからそう思っておけ」

スライム「……」

深夜

神父「……この部屋です」

??「間違いありませんな?」

神父「はい、料理にも深く眠る薬を使ってますので、寝ているでしょう」

??「教会の伝説に出る魔の存在…まさか本当に存在するとは…」

神父「奴らを首都の教会に連れていき、宗教裁判で裁き罰を下すのですな」

??「ええ、魔の存在たちは伝説によれば神に敵対する不届きものたち」

??「自分が魔王であることを認めた途端、火刑にされるでしょう」

神父「…宜しくお願いします」

??「神のご加護が」

魔王「…」Zzzz

スライム「……」

バサッ

スライム「…?」

??「縛り付け」

スライム「な、なんですか?ひゃっ!」

??「袋に入れろ!」

スライム「ま、魔王さま!」

魔王「…」寝てるまま袋に入られる

スライム(大変…わたくしだけでもなんとか脱出しなければ…)スライム化

??「な、何だ?おい、捕まえろ」

??「駄目だ。水みたいで袋に入れても漏れてくる!」

スライム「ここは先ず逃げなければ…」スッ

翌朝

少女「魔王!魔王!!」タッタッタッ

神父「少女、騒がしいですね。どうしたのですか」

少女「神父さま!魔王が居ません!スライムちゃんも!」

神父「…はて、もう森に帰ったのでは」

少女「そんなはずはありません!あそこにはもう家も残ってないのに…それにあたしに何も言わずに…」

神父「もしかすると完全にどこかに消え去ってしまったのかもしれませんね」

少女「はい?」

神父「……」祈祷

少女「…神父さま、何か知ってますよね」

神父「何のことやら…」

少女「神父さま!何か知っているなら言ってください!」

神父「私は彼らに関しては一切知りません」

スライム「その言葉、あなたの神に誓ってもそう言えますか?」

少女「スライムちゃん!」

スライム「昨夜、覆面をした者たちが魔王さまを拉致しました。わたくしだけなんとか逃げ切りましたが」

少女「!」

スライム「わたくしは魔王さまの第一の部下。あの方の志に従い良き魔物であることを誓いました」

スライム「ですが、わたくしの主の身の安全なら、あなたが言っていた邪悪な存在に成り下がろうとも魔王さまをどこに連れて行ったのか聞き出しましょう」

神父「…とうとう本性を表しましたか」

スライム「吐きなさい、さもなくば」

神父「言えませんね。人間のためにも、あの魔王には死んでもらわなければなりません」

スライム「…あの方はあなたたちのためにあれほど尽くしたのに、どうして…」

神父「あなたのその姿がその理由です」

神父「人でもないのに人の姿をして人の術ではない力で人々を惑わした」

神父「その姿、まさに悪魔」

スライム「…あの方【良い魔王】でした」

神父「【良い魔王】とは、即ち【良い悪魔】のこと」

神父「人を惑わし、苦しめてこそ、【良い魔王】と呼べるのでは?」

スライム「……」

少女「首都よ」

スライム「…?」

少女「間違いない。魔王は首都の教会の総本山に連れて行かれたはず」

神父「な、何故それを…」

少女「最近神父さまが良く首都の方に手紙を送っていることを思い出しました」

少女「以前から仕掛けていたんですね」

神父「…少女、これは…」

少女「黙ってください!」

神父「!」

少女「…神父さま、人の力ではない力を使うのが魔物って言いましたか?」

神父「…少女、それは…」

少女「なら、この教会の女神像を片手だけで持ち上げられるあたしも…魔物ですか?」

神父「そ、それをどうするつも…や、やめ

少女「こんなのが…!」ドコーン

神父「!!」潰される

血まみれの女神像

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