魔王「いい魔王」 1/5

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魔王「我は魔王」

魔王「魔王と言っても、まだ己の世界を持っていない雛魔王だけどな」

魔王「いや、魔王の卵という表現がもっと似合うのか?」

魔王「まだ127才しかなっていない我は魔王の中では魔王と呼ばれることも出来ない子供」

魔王「だけど、いつかは必ず立派な魔王になってみせる」

魔王「そして、今日はなんと、大魔王さまが各地の有名な魔王たちを集めさせて宴会を開く日だ」

魔王「無論己の世界すら配分されていない我が行けるような場所ではないが」

魔王「他の子供たちがそうであるように駄目と言われたらもっと見たくなる」

魔王「すごいだろうな、魔王たちの宴会…」

魔王たちの宴会場

魔王(おお、すごいなー)トウメイマホウなう

??「おいい!酒が足りぬぞ!酒はどこだ!!」ドガーン

メイド「ひっ!す、直ぐに持っていきます!」

魔王(うわ、あそこにいる魔王って【破壊神】の二名を持つ超有名な魔王だ。あんな人まで来てるのか)

魔王(もし我みたいな奴が入ってきてるのがバレたら塵も残らず消し去る!)

人間女「魔王さま、はい、あーん」

妖精「魔王さま、こちらの方が美味しいですよ」

??「うむ、確かにどれも美味だが、そろそろお前たちの方も食べたくなってきたぞ」モミモミ

女「いやん、魔王さま、こんな人目の多いところで…?」

妖精「仕方なのない方ですわね。この女たらし」

??「うはは!」

魔王(あそこには居るのはハーレム魔王……両側に居る人間の女と妖精ってめっちゃ綺麗じゃないか。くそっ、我もあんな魔王になりたい!)

母魔(王)「はーい、子勇ちゃん、あーんして」

子勇「あーん」

母魔「美味しい?」

子勇「うん、すっごく美味しい♪」

母魔「そう、良かった」

魔王(あれは…誰だ?良く判らない。なんか子供連れてきてるし)

大魔王「楽しんでるようだな」

魔王(げっ!大魔王さま!?)

母魔「ええ、招待してくれてありがとう」

大魔王「隠居したと聞いたら、まさか人間の子供を連れ込んで来るとは…大した自信じゃないか」

母魔「連れてくるわよ。自慢の息子だもの」

大魔王「【破壊神】に並ぶ凶悪な魔王と呼ばれたお前も、すっかり丸くなったものだな」

母魔「もうやめたけどね。そういうあなたこそ、随分と丸くなったみたいじゃない?」

大魔王「……何の話だ」

母魔「……」ジー

魔王(なっ!こっちを見てる?そんな馬鹿な……)

魔王(ま、まさか、魔法が効いていないのか)

魔王(そんなはずは……)

子勇「……」ジー

魔王(って、この男の子までもこっち見てる?!)

魔王(まずい…取り敢えずここを離れよう)クルリ

メイド「きゃっ!!」

魔王「うわっ!」魔法解除

子勇「あ、解けた」

母魔「しかも料理の残りを持ってるメイドにぶつかったせいで全身に生ゴミぶっかけられちゃったわね」アラアラ

魔王「うわぁ……」

大魔王「…この魔王の恥めが!」

魔王「ひっ!」

大魔王「ここに居る魔王たちは皆して魔王たちの歴史に刻まれるほどの有名な魔王どもばかり」

大魔王「そんな魔王たちが貴様ごときの魔法を見抜けなかったと思ったのか」

魔王「じゃ、じゃあどうして…」

大魔王「…宴会を楽しむために見逃していたのだ。なのにこんな失態を見せるとは…」

大魔王「貴様のようなものが魔王になっても全ての魔王たちの恥になるだけだ」

大魔王「この場でその命を絶ってやる」

魔王「た、たすけ…」

魔王(わ、我はただちょっと見たかっただけなのに、こんなところで死ぬのか?)

母魔「……」

子勇「…」グイグイ

母魔「うん?」

子勇「……あれ、助けてあげて」

母魔「あぁ…うーん、でも魔王たちの宴会を台無しにした罪って結構重いのよね…」

子勇「…うん?」ウルウル

母魔「…もう、わかったわ」ハァ

大魔王「せめて痛みなく殺してやることをありがたく思え」

魔王(も、もう終わりか。ちゃんとした魔王にもなれずにこのまま…)

母魔「はい、そこちょっとストップ―」

大魔王「…なんだ」

母魔「うちの子がいい事思いついたんだけどね」

母魔「きっとあのまま殺すよりも皆楽しめると思うわよ」

破壊神「何だと?」

ハーレム魔王「聞こうではないか」

母魔「ねえ、君。魔王になってどれぐらい経つの?」

魔王「い、いいいま127才です」

母魔「じゃあまだ人間たちが居る世界に行ったことないわね」

魔王「は、はい…」

大魔王「何を考えている」

母魔「ねえ、この子に世界一つ任せてみない?」

大魔王「……!」

母魔「で、次の宴会にまでアイツが【良い魔王】になれたら、今回のこと許して次の宴会に参加させてやるってどう?」

大魔王「…こんな魔王に次元一つを渡せというのか」

母魔「別に新生のところなら構わないでしょう。逆に考えてみてよ。ここに命賭けてまで来る馬鹿な奴って普通居ないでしょ」

母魔「逆に大物かもしれないわよ」

大魔王「……」

破壊神「面白そうじゃないか。やらせてみたらどうだ、大魔王」

大魔王「…ふむ」

魔王「あ、ありがとうございま…」

破壊神「しかし!もし失態を見せるなら、今回のことも含めてそれ相応の罰を受けることになるだろう」

破壊神「今日ここで死んだ方がマシだったと思うぐらいにな」

魔王「……!!」ゾク

魔王(どの道、我に選択の余地はない。寧ろこれはチャンスだ!)

魔王(良い魔王になって、ここに居る魔王たちに認められれば、我も立派な魔王になれる!)

魔王「やります!」

魔王「必ず【良い魔王】になってみせます!」

大魔王「……良いだろう」

大魔王「次の宴会が開くまで機会をやる。それまで良い魔王になっておけ」

大魔王「万が一にでも、貴様がここに居る魔王たちが納得するほどに良い魔王になれば、貴様がここに来るのを許してやる」

大魔王「だがその逆だった場合は…わかってるな

魔王「わ、わかりました!」

魔王「結局、新しく造られた世界に行くことになった」

魔王「一応生きるために言ったものの、我に出来るのだろうか」ハァ

母魔「そこの雛魔王ちゃん」

魔王「!あ、あなたは…」

母魔「危機一髪だったわね」

魔王「さ、先ほどはありがとうございました。この恩、必ずや…」

母魔「良いの、良いの。礼なら子勇に言いなさい。この子が言わなかったら、私もあなたなんか助けるつもりはなかったわ」

子勇「……」ネムイ

魔王「あ、…ありがとう…」

子勇「…頑張って」ニコッ

母魔「じゃあ、私たちはもう先に帰るわ。子勇も眠そうにしてるし」

子勇「…」スー

母魔「ああ、立ったまま寝ちゃ駄目」

魔王「あの、もう一つ、質問しても宜しいでしょうか」

母魔「なに?年と体重とスリーサイズ以外なら答えてあげるわ」

魔王「あの…【良い魔王】というのはどうすればなれるのでしょうか」

母魔「……それはあなたが見つけ出さないと駄目ね」

母魔「ただし一つだけ言ってあげれることはある」

魔王「なんですか」

母魔「魔王たるもの、自分が選んだ道を貫くための力を持ってなければ駄目ってこと」

魔王「……」

母魔「じゃあ、私は失礼するわね。もう会うことはないでしょうけど」テレポート

魔王「良い魔王、どうすればなれるんだろう」

新生の世界

魔王「ここが我に任せられた世界か」

魔王「ってここ何も居ないじゃないか」荒野

魔王「そうか。新しくできた世界。しかも我が初めての魔王」

魔王「城も、魔物もろくにいないわけだ」

魔王「まったくのゼロからはじめなければならないのか」

魔王「これはどうすれば良い魔王になれるのか更に分からなくなってきた」

魔王「…取り敢えず、歩くか」

魔王「荒野から出て緑陰のあるところに来たのは良いものの」森

魔王「本当に何もないな。魔物の魔力も感じないし」

魔王「一体こんな世界で何をどうすれば……」

??「ぴぃー、助けてー」

魔王「うん?」

少年A「なんだ、これ」

少年B「ぷよぷよしてる。おもしれー」チョンチョン

スライム「うええ、いじめないで」

魔王「何だ、スライムか。最弱の魔物じゃないか」

魔王「道理で気配を感じないわけだ」

魔王「となると…あの少年たちが例の【勇者】というものなのか?」

魔王「まあ、スライムでもないよりはマシだろ。助けるか」

魔王「ちょっと魔王としての威厳とか出した方が良いな」

魔王「こらぁ!!」

少年A「な、何だ?」

スライム「ふえ?」

魔王「我が眷属を弄ぶ不届き者は誰だ!」魔力全開

少年B「な、何だあれ」

少年A「なんかヤバそう。逃げるぞ」

少年ズ「うわぁーー!」

魔王「ふん、気迫だけで逃げるとは…勇者も大したことないな」

スライム「」気絶中

魔王「」

魔王「おい、起きろ」

スライム「ひぇっ!」

魔王「情けない奴だ。あんな子供どもになめられて恥ずかしくないのか」

スライム「あ、あなたは、誰ですか」

魔王「我を知らぬとは愚かな」

魔王「我は魔王。お前たち魔物の主だ」

スライム「魔物…?」

魔王「…そこから知らぬのか」

スライム「ボクって【魔物】ですか?」

魔王「そうだ。そしてお前は魔王である我の第一の部下となるのだ。喜ぶが良い」

スライム「【魔王】…ってなんですか?」

魔王「それも知らぬのか。良いか。魔王とは……」

スライム「……?」

魔王(…って、我も魔王って何やるのか知らないじゃん。どうすれば良い魔王になるのか知らないし)

魔王「と、とにかく、とても強い存在なのだ」

魔王「あの勇者どもが我を見て逃げるのを汝も見ただろ」

スライム「…!」

スライム「ボクのこと助けてくれたんですか」

魔王「そうだ。元々なら我ほどの存在がスライムごときに話をかけるなどありえぬが」

魔王「良い魔王を目指している我であるから特別に話をしてやっているのだ」

スライム「【良い魔王】…?」

スライム「魔王さまは良い魔王さまなんですか」

魔王「いかにも」

スライム「…良い魔王さまだー」ピョンピョン

魔王(なんかはしゃいでる)

魔王「と、とにかく、汝はこれより我の眷属だ。どこまでも我に付いてくるが良い」

スライム「はい、魔王さま」

魔王(よし、他の魔王たちが見れば大したことのない一歩だが、我にとっては良い魔王への大きな第一歩だ)

スライム「これからどうするんですか、魔王さま」

魔王「そ、そうだな…どうしようか」

魔王(この先のことまったく考えてないからな…)

少年A「アイツだよ」

少年B「アイツが俺たちのことを…」

??「おい、お前」

魔王「はぁ?」

少女「お前があたしの弟たちのこと虐めたのか」

魔王(なんだありゃ……)

魔王「貴様は何者だ」

少女「あたしはこいつらの姉だ。あたしの弟を泣かせた奴は許さない」

魔王「健気な人間だな。だが、先に我の眷属を虐めたのは汝の弟の方だ」

少女「え?…そうなの?」

少年A「そ、そんなことしてないよ」

少年B「ちょっと面白そうだったから見てただけだ」

スライム「嘘だ。ボクのこと虐めたもん」ピョンピョン

少年B「い、いつだよ。何時何分何秒」

魔王(まるで子供喧嘩だな)

魔王「くだらん。スライム、行くぞ」クルリ

少女「あ、待って。まだ話が」道遮断

魔王「我の行く道を塞ぐな」強く横に押す

少女「きゃっ!」クギッ

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