女神「魔王が人間界に攻め込んだようです」 4/9

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魔法「勇者はさ……そんなに戦士の事が好きなの?」

勇者「ま、まま魔法使いちゃんいきなりなにを!?」

魔法「見てれば分かるわよ……あんなに異性に懐く貴女、見た事が無いもの」

勇者「あ、あはは……何だろうね。何ていうか……近くにいてくれると凄い安心できるんだ」

勇者「それにあの人に見られていると、その……凄い嬉しいんだ」

魔法「はぁー……要するに一目惚れね」

勇者「か、かなぁ?」アハハハ

商人A「ここから先は魔物の被害が多いらしい。何時でも出れるように頼むよ」

戦士「おう、任せてくれ」

勇者「うわー……緊張してきた」ドキマギ

魔法「魔物と言っても格段に強いのが現れる訳じゃないから、リラックスしていなさい」

戦士「まあ先制されないようにだけは気をつけるか」ギリギリ

勇者「弓……」

魔法「何時買ったのよ」

戦士「昨晩作ったんだよ」ビッ ドッ

勇者「……遠くの木に刺さった」

魔法「戦士の本分は弓? 剣?」

戦士「敵だっ!」ビッ

勇者「行くよ!」バッ

魔法「はっ!」ゴォォォ

戦士「何とかなるな」

勇者「先制を取れるって凄いですね」

戦士「そりゃあな。相手を怯ます事も出来るし、好機を生み出しやすいんだ」

魔法(というより戦士の能力のポテンシャルが異常なのよねぇ)

戦士「よし、全力で打ってこい!」

勇者「といやああああ!!」ガガガガ

魔法「向こうは向こうで訓練ねぇ……」

魔法「ウェッブリバーの首都まではあとどのくらい掛かりそうなのかしら?」

商人A「後十日ってところかなぁ。いや、あんたらのお陰で順調だからな。1,2日短くなるかもな」

魔法(後十日で徒歩旅かぁ)

ウェッブリバー首都

商人A「それじゃあ俺らはこれでな」

商人B「三人とも頑張るんだとぉ~」

勇者「お世話になりました~」ブンブン

魔法「ありがとうございました」フカブカ

戦士「そちらも達者で」ペコ

戦士(にしてもウェッブリバーか……前回の魔獣騒動の時は素通りだったから実質180年ぶりか)

戦士「一先ず宿は取ったしこれからの事だが……」

勇者「馬車探し? 行商探し?」

戦士「1,2日くらい休暇を入れよう」

魔法「それは……いいのかしら?」

戦士「俺達は超人じゃないんだ。睡眠だけの休息だけで延々と旅なんてできないだろう」

戦士「ま、多少の訓練はするにしても」チラッ

戦士「少し位休んで文句を言われるのであれば、手前がやれって言い返せばいいさ」

勇者「あのー今の目配せは何でしょうか?!」

戦士「休暇でやる分にはまあ、少し位みっちりやっても問題ないか、みたいな」

勇者「みっちり?!」

魔法「愛されているわねー」

勇者「えーー!」

勇者「魔法使いちゃーん! 買い物行こーー!」

魔法「そうね、折角首都に来たんだものね」

勇者「こ、こんな服とかどうかな?」フワッ

魔法「……」ブッ

魔法「ダメよ、そんな過激な服」ガッシ

勇者「え゛! 露出少ない、っていうか普通の服だよね!!」

魔法「ダメよ、そんな過激な服! 勇者があまりにも可愛い過ぎて、危険な虫が多く寄ってくるわ!!」クワッ

勇者「えー……」

戦士(ここら辺は花公園になったかー)

戦士(……水の女神の従者が吹っ飛ばしてえらい騒ぎになったんだよなぁ)ウーム

戦士(お、あの店まだやっている。あの当時はぱっとしない定食屋だったが、今じゃ立派な老舗かぁ)シミジミ

戦士(うん? なんだあの人だかり……兵士か?)

戦士(おいおい、結構重傷者多いな。鉱山勤務の交代とかか?)

戦士(おー衛生兵達が慌しく駆けている……前線の衛生兵は魔力も薬剤も不足しているかも分からんね)

衛生兵「そっちの患者はA棟に。もう二人来て、この人が危険。全力で回復魔法をかける」

「は、はい!」

戦士(噂をすれば何とやら……あの子はどうして毎回軍属なんだ)ゴクリ

衛生兵「ふう……後の方はB棟で治療を。皆お疲れ様」

「一先ず三日は帰還する隊は無しかー」

「束の間の休息ね」

戦士「忙しそうだな」

衛生兵「! ……兵……剣……戦士?」

戦士「よく分かったな」

衛生兵「戦士、剣だけじゃないから」

戦士「生前は弓だもんなー」

衛生兵「えーと……勇者の護衛?」

戦士「なんで皆知ってるの」

衛生兵「風の噂?」

戦士「随分と具体的な噂だなぁ」

衛生兵「魔王討伐頑張ってね?」

戦士「……キーアイテムがー」

衛生兵「頑張れ~」ヒラヒラ

戦士「あぁ、無情なっ」

戦士「それじゃあ俺はそろそろ」

衛生兵「前線は厳しいみたい……気をつけてね?」

戦士「ああ。まー首都にまで手が伸びるとは思わないが、魔物達の襲撃に気をつけてくれ」

衛生兵「分かった」コクリ

勇者「こ、これとかどうかな?」ヒラリッ

魔法「ダメよ!! 絶対にダメよおお!!」ハァハァ

勇者(よし、魔法使いちゃんとはもう一緒に買い物しない☆)

戦士「さて、そろそろ出発するか」

勇者「休んだような鍛えられたようなよく分からない休日だった……」

魔法「怒涛の打ち込みをしていたものね」

魔法「で、旅の足は……」

戦士「残念ながら行商とかは捕まらなかったよ」

魔法「あー……」

勇者「どうにかならないのですか?」

戦士「確実ではないし運頼みでよければあるにはある」

魔法「首都を通らないコースで行く行商?」

戦士「ロックケイブ方面から直接グリーングランドの方に向かったりする場合」

戦士「ウェッブリバー首都の南部を通るコースがあるんだ。ほらここら辺が街道になっているだろう」

勇者「おお、本当だ」

戦士「勿論、直接グリーングランドに向かう事に比べれば遠回りになるが」

戦士「もしも向かっている行商があれば向こうが勝手に追いついてくれるって算段だ」

魔法「しかも私達を乗せてくれるかも分からない」

戦士「そう、出会うのも乗せてもらうのも運頼みさ」

魔法「あー……なにか悪い気がしt」

勇者「じゃあ南を通るルートで!」

戦士「まあ、街道を行くとなると視界もある程度開けているし、多少は安全っちゃあ安全だしな」

魔法「……そういう気の使い方はいらないのだけれど?」

勇者「えー」

戦士「えー」

魔法「でもまあ……ありがとうね」

戦士「デレた?」

勇者「魔法使いちゃんはデレデレだよ?」

魔法「勇者になら溶けきっても構わないわっ」キリッ

戦士(百合か……)フゥム

魔物の群れ「アァー……ァー」

勇者「ゾ、ゾンビ系……」

魔法「グロいわねぇ……」

戦士「んー……」ノビー

戦士「たまには俺も全力で切りかかってみるか。二人は休憩していてくれ」

勇者「えっ?! これ全部一人で?!」

魔法「二十体はいるわよ?」

戦士「できない事はやらない主義なんでな」スラァ

魔物の群れ「」

戦士「こんなもんか」ヒュン ッパァ

魔法「全て一太刀から続く返す刃で切り伏せるだなんて」

勇者「もう戦士さんが勇者を名乗って下さいよ」

戦士「いやただの戦士だろう。元からただ単に戦っているだけだから」

戦士「そら、休憩終わりだ。出発するぞ」

戦士「たあ!」ズバババン

勇者「やあ!」ズバン

魔法「……」ウズウズ

戦士「魔力は温存しておくんだ。無闇に撃つんじゃないぞ」

魔法「分かっているわ。分かってはいるのよ……」ウズウズ

戦士(仕方が無いとは言え不憫だな)

戦士「うーむ、犬型の魔物が多いな」

魔法「魔物なんて解体して何しているのよ」

戦士「いや、食えそうな部分を……」

勇者「……魔物、食べるんですか?」

戦士「食えるようならな。こっからは町との間隔も開くから、今のうちに食料調達していた方が備えになるからな」

戦士「うーん……ま、普通に食えそうだな」

勇者「げっ」

魔法「うえー」

パチパチ

戦士「焼けたみたいだな」

勇者「……」

魔法「……」

戦士「なんだその顔は。食いたくなければ無理に食わなくていいんだぞ」ジュー

戦士「下拵えは十分に出来ないから香辛料で誤魔化しだが……」パク

戦士「ウマイ! 良いレバーだ!」

勇者「……」ゴクリ

魔法「……」ゴクリ

戦士「……一応、もう二食は賄うつもりだったんだが」

勇者「はぁ」サスサス

魔法「悪くないわね」サスサス

戦士「全部食べつくしてくれてまあ……」

戦士「気に入ってもらえたのならそれでいいけどな」

勇者「また食べたい!」

魔法「犬型の魔物様様ね」

……

勇者「ウェッブリバーを出て早五日……」

戦士「明日には鉱山の近くまで行けそうだな」

魔法「兵士達の駐屯地でもあればいいんだけども、ね」

戦士「まああると思……」

勇者「……? 空に何が」

戦士「鳥型の魔物か? 苦戦するようだったら攻撃魔法を頼む」

魔法「分かったわ」

魔物A「ギャア! ギャアア!」バッサバッサ

勇者「で、でか!」

魔物D「グギャアアア!」バッサバサ

戦士(勇者と分断されたか……甘く見すぎだったか)

戦士「魔法使……」

魔物A「ギャアアア!!」バサバサ

魔物B「グゲエエエエ!」バサバサ

魔物C「ギエエエエ!」バサバサバサ

勇者「はっ? ちょ、え!」

魔法「勇者、振り払って! それだけ密着していては魔法も撃てないわ!」

勇者「や、ちょ、うわわわ!」フワ

魔法「え?」

戦士「は?」

「いやああああぁぁ……」バッサバッサ

魔法「攫……われた?」ポカーン

戦士「……勇、者」ブル

魔物D「ギャアアア!!」

戦士「邪魔だ!!」ズバッ

戦士「勇者! 勇者ぁ!」ダッ

魔法「せ、戦士?!」

戦士「糞! こんな、糞!! 俺は……!」ダダダ

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