魔王「今日も平和だ飯がうまい」 4/4

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謁見の間─

ギィ……………

国王「……貴様が、魔王か」

魔王「ああ」

国王「随分と、好き勝手に……やってくれたものだな」

魔王「貴様等の罪に比べれば、生ぬるい」

国王「………」

魔王「さあ、国王よ。あまり貴様に時間を掛けていられないのだ。死んでもらおうか」

国王「……お前は、魔王なのだろう」

魔王「それがどうした」

国王「我が一族の力を、知らぬわけではないだろう」

魔王「………知っているとも、嫌というほどな」

魔王「魔物を封じる、奇跡の術」

国王「生涯に数体のみだがな……だが幸いこの老いぼれでも、お前一匹を封じるのならば、可能だ」

魔王「ふっ………くっ…くく」

国王「何がおかしい!!」

魔王「私に、その術は効かない」

国王「何?!」

魔王「嘘ではないぞ。試しに、やってみろ」

国王「舐め………るな!!」

国王 は 呪文 を 唱えている!

魔王「………」

魔王「………」

魔王「長かった……」

国王 は 呪文 を 解き放った!!

国王「な……に?」

魔王「ほら、な」

国王「な、何故だ!!何故貴様は封印できない?!!」

魔王「………」

国王「呪文は完璧だったはず!それが!何故!!」

魔王「私は…」

国王「貴様は何者だ?!」

魔王「人間だ」

国王「?!!」

魔王「まあ、今となっては元人間だがな」

国王「で、でたらめを言うな!人間が魔王などと!馬鹿げたことを!!」

魔王「……貴様、私の顔に覚えはないか?」

国王「は…………」

魔王「まあ…かなり昔の話故、覚えておらぬのも無理はないだろうが」

国王「…………あ」

国王「あ、あ、」

国王「ああああああああああああああああああああ!!!!」

ザンッ──………

魔王「ああ、全く。煩い爺だった」

魔王「………ここか」

地下─

魔王「このような薄暗い場所で……」

魔王「何年も、何年も………」

魔王「………」

魔王「………え、ぐ」

魔王「だ、駄目だ。まだ、駄目だ」

魔王「……どこだ」

魔王「どこに………ある」

魔王「………」

魔王「………」

魔王「………」

魔王「あ」

魔王「あった……宝玉」

魔王「この、中に……」

……───

『………』

『あ、そっきんさん!』

『………偽姫、ちゃん』

『おかえりなさい!おとーさんは?おとーさんも、かえってきたんでしょ?』

『……ん』

『え?』

『ごめん……ごめんよ………俺は…あいつの力には……』

『あいつはあの国王の力を知っていた』

『知っていて、俺達に隠していたんだ』

『自分で、偽姫ちゃんの復讐をしたかったんだろう』

『それがこの……ザマだ』

『すまない………』

『本気か、偽姫ちゃん』

『うん』

『いっぱい、べんきょうする』

『いっぱいがんばって、つよくなる』

『おとーさんのかわりに、ばらのおせわをする』

『わたしが、おとーさんをたすける』

『わたしが………まおうになる!』

魔王「お父さん」

魔王「私はやったよ」

魔王「お父さんの代わりに、仕事も薔薇園のお世話も……復讐も」

魔王「それにね、私ね、あんまり泣かなくなったんだよ」

魔王「強くなったんだよ、私」

魔王「だから……褒めてくれるよね」

魔王「昔みたいに」

(魔王改め)魔王の娘「よしよしって、して……くれるよね!」

魔王の娘 は 宝玉 を 砕いた!!

魔王「ここは……?」

娘「…………あ」

魔王「ん…………お前は……」

娘「あ、あ」

魔王「私の娘……か?」

娘「あ………う、う……」

魔王「いやしかし……何だか大きくはないか、お前。一体何が」

娘「うわあああああああん!!」

娘 は 魔王 に 抱きついた!

魔王「うお」

魔王 は 動揺している!!

魔王「どうした。これは一体何なのだ、何故お前が成長している」

娘「お、おとーさん………おとーさんだ。ほんものだ…」

魔王「ああ、父だ。だから、一体これは」

娘「封印されてる間のこと……知らないんだね」

魔王「ああ。全く分からない…………って、封印?何だそれは?」

娘「それでも………いい」

魔王「良くはないだろう」

側近「おーおー、片付いたようだから見に来てやったが」

魔王「ああこら泣くな。全く…大きくなっても変わらんな、お前は(ナデナデ)」

娘「ひっく………」

側近「いやー、いいね。久々の『日常』っていうのは」

魔王「おい側近…」

側近「何だ?」

魔王「三行で……頼む」

側近「ああ?三行もいらねえよ」

側近「『ハッピーエンド』。それ以外に何がある」

魔王「なるほど……?」

娘「おとーさん……」

魔王「何だ」

娘「お帰りなさい」

魔王「……ただいま」

娘「えへへー………」

【完】

魔王の部屋―

魔王「………ふああ」

娘「(スゥスゥ)」

魔王「……また、こいつは…」

娘「むにゃ……う」

魔王「こら、起きろ娘」

娘「ん…………おはよー、おとーさん」

魔王「お前、またいつの間に入って来たのだ」

娘「お父さんが寝静まった隙に!気配は殺しました!」

魔王「全く……嫁入り前の娘がはしたない真似をするな」

娘「お父さん、私をお嫁に出したいの?」

魔王「断固拒否する」

娘「じゃあ構わないじゃない♪」

魔王(何か、違うような……)

娘「それでね!並み居る軍隊を一人で蹴散らしたんだ!」

魔王「ほ、ほう……」

娘「凄いでしょ?私すっっっごく強くなったんだよ」

魔王「は…はは……それは、凄いな」

娘「えへへー…あ、そろそろ自主トレの時間だ。また後でね、お父さん」

魔王「お、おう………」

魔王「おい、側近」

側近「言いたいことは分かるが、一応聞いてやる。何だ?」

魔王「あの子は………その、たくましくなったな…」

側近「そりゃ、あんたを助け出すために強くなるって努力したからな」

魔王「しかしあれは少々桁外れだろう……」

側近「元々才能あったんだろ、魔王として」

魔王「釈然とせぬな……」

魔王「ところで、最近気付いたことがあるのだが」

側近「ん?」

魔王「何と言うか、ごく稀に魔物…特に雄の魔物達から妙な殺気を感じるような気がする」

側近「ああ、そりゃ娘ちゃんに惚れてる奴等だろ」

魔王「何?!!」

側近「ああ、心配すんな。あいつらもう、娘ちゃんに手酷く振られてるはずだから」

魔王「な、何だ驚かせるな……しかしそやつらが、何故私を敵視する?」

側近「ああ。娘ちゃん、毎回『好きなタイプはお父さん』って言って振るんだよ」

魔王「…………」

側近「ニヤニヤするんじゃねえよ、気色悪い」

娘「ふう、終わった……よ」

魔王「おお、お疲れ(モグモグ)」

娘「それ………そのケーキ」

魔王「お前が先ほど残して行った物だ………が」

娘「………楽しみに」

魔王「?!ま、待て!早まるな!!今すぐ代わりの物を用意させる!」

娘「楽しみに取っておいたのにいいい!!」

娘 の 渾身の一撃!

魔王「ぐふあ」

魔王 は あっさり 力尽きてしまった!

娘「あ…!ご、ごめんなさいお父さん!ついちょっとだけ本気出しちゃった!!」

側近「うっわあ」

娘「お父さん!お父さーん!!死んでしまうとは情けないよ!」

側近「娘ちゃんが殺ったんだろ」

夕食―

娘「いただきます!」

魔王「頂きます」

娘「おいしいね、お父さん」

魔王「そうだな」

娘「一緒だと、もっとおいしいね」

魔王「ああ」

娘「でもやっぱり、仕事を終えた後のご飯は格別だね!おいしいね!」

魔王「………そう、だな」

魔王の部屋―

娘「今夜は堂々と参上しました!」

魔王「仕方ないな………ほら、来い」

娘「うん!」

魔王「全く………」

娘「えへへー…お父さん大好き」

魔王「よしよし……お前は変わらんな(ナデナデ)」

娘「お父さんも昔と変わらないね」

魔王「当たり前だろう」

娘「お父さんがいない間ね、ここで一人で寝てたんだよ」

魔王「……ああ」

娘「寂しかったよ。いっぱい泣いたんだよ」

魔王「すまない…」

娘「ぎゅってしてくれたら、許してあげる」

魔王「分かった分かった(ギュッ)」

娘「えへへ」

娘「お休みなさい、お父さん」

魔王「お休み、娘」

娘「明日も明後日も、ずっと、ずーっと一緒だよね」

魔王「勿論だ」

【終】

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