【エピローグ】
魔王「おい、それはちょっと酷いんじゃないか?」
側近「でも勇者いなくちゃ仕事ないでしょ?」
魔王「まぁ、そうなんだが」
側近「りっぱなニートになりましたね」
魔王「なんだと?」
側近「いえ、なんでもありません」
魔王「ところで、お前に任せた各国の制圧はどうなった?」
側近「それは抜かりなく」
魔王「ほぅ、王国のやつらはどうしたのだ?」
側近「国王は処刑しました、大臣も同じく」
魔王「まぁ、妥当な判断だな」
側近「お褒めに与り光栄です」
魔王「姫はどうした?」
側近「それは制圧にやった魔物がいただきました」
魔王「なん・・・だと。やったのか?」///
側近「やりました」
魔王「そ、そうか・・・まぁあの姫は美人だったからな・・・仕方あるまい」
側近「ええ、バーベキューパーティーをやってみんなで美味しく頂きました」
魔王「く・・・食っただと?姫を?」
側近「ええ、肉食の魔物でしたから、送ったの」
魔王「ふっ、ふざけるな!あんな美人めったにいないんだぞ!」
側近「そんな事言われましても・・・」
魔王「こっちは勇者への対応ばっかで童貞こじらせて大変なんだぞ!わかってるのか!」
側近「いえ、全然」
魔王「はぁ、むなしい・・・」
側近「なんか勇者たち倒してから元気ないですね」
魔王「そうだな。あいつらと戦ってるときがテンションマックスだったからな・・・」
側近「元気出してください。世界征服したんだからもう税金がっぽがっぽですよ」
魔王「そうか。王室を排除して我等が支配してるのであったな」
側近「ええ、それでも王室の取立ててた税金より軽くなったと評判です」
魔王「あいつらどんだけ搾り取ってたんだ・・・」
側近「まぁ生かさず殺さず支配してますよ」
魔王「私の役目がないな・・・」
側近「まぁ勇者たちとの戦いの傷でも治してください」
魔王「あぁ・・・翼も二枚とも失ってしまったし、角も折れてしまったからな・・・」
側近「あぁ、じゃあ経費で接着剤落としておきますね」
魔王「こ・・・こいつは・・・」
側近「冗談ですよ、そんな怒らないでください」
魔王「ところで勇者たちの様子はどうだ?」
側近「ええ、問題ありません。氷魔法でずっと保存しております」
魔王「そうか、復活することのないようにな」
側近「大丈夫です。蘇生は可能な状態ですが、四肢も首も念のため切断してありますから」
魔王「み・・・見たくないな」
側近「勇者たちは何故か蘇生不可能なまでに殺すと王城で復活するようですからね」
魔王「ああ、何度かそのようなことがあったな。何故かその後お金が落ちておった」
側近「なんでも勇者たちの所持金の半額が残されるそうです」
魔王「なぜだ?」
側近「この世の理として言えませんな。太陽が東から昇るのと同じことです」
魔王「勇者たちが王城で復活することもか?」
側近「ええ、だから蘇生可能な状態で捕らえることにしたんです」
魔王「なるほどな。だが消滅させずに倒すのは苦労したぞ」
側近「だからニー・・・魔王様はゆっくり静養していていただいてかまいません」
魔王「いまニートって言おうとしただろう?」
側近「いいえ」
魔王「言おうとしたな?」
側近「いいえ」
魔王「・・・。まぁいい。まぁ自由な身だ。ちと外に出てみるかな」
側近「外・・・ですか」
魔王「ああ、もうこの城にずっと缶詰だからな。勇者の行く先に色々魔物を配置したりはしたが、ここから指示をだしているだけでは退屈だ」
側近「そうですね。ではいきましょうか」
ギギィ
【魔王城前】
魔王「では、ちょっと出かけてくるぞ」ダッ
側近「行ってらっしゃいませ」
ボッ
魔王「え?火?あ・・・あああ・・・ぎゃあああああああああああああ!」ボボゥ
魔王「も・・・燃えるうううううう!」
側近「魔王様、早く戻ってください」
魔王「ぐあああああ・・・はぁはぁ、な・・・なんだこれは」
側近「ふぅ、大したことなくてよかったです」
魔王「私は吸血鬼だったのか?いや、そんなことはない・・・城の敷地内で太陽を浴びでも大丈夫だぞ・・・」
側近「我々はここから出られないのです」
魔王「なんだと?」
側近「これもこの世の理です。ほらっ」スッ
ボッ
魔王「おお!側近の手が燃えた」
側近「ここから出るとさっきのように燃えて最後は消えてしまうんです」
魔王「な、なんでそんなことに・・・」
側近「先ほども言いましたようにこの世の理・・・神が定めたルールですか。我々はここにいなくてはいけない・・・と」
魔王「なぜ神がそんなことを・・・」
側近「勇者が来た時にここを留守にしていてはいけないから・・・とか」
魔王「冗談はよせ。私は行きたい所にいくぞ」
側近「ですから不可能です・・・。このルールの中では・・・」
魔王「では永遠にこの城にいなければならないのか?」
側近「いえ、そうとも限らないでしょう。例えば、私は魔王様の命令で各国に行ったことがあります」
魔王「そういえばそうだな」
側近「たぶんそれは魔王様の命令があったからではないかと・・・」
魔王「命令?」
側近「ええ、その必要があったから外に出られた。そうだと思うんです」
魔王「必要だから?」
側近「目的、と言っても良いかもしれません。魔王様、試しに私に命令して見てください」
魔王「命令?どんな命令だ?」
側近「『自由にどこへ行ってもよい』っと」
魔王「そうだな。試してみるか。側近、自由にどこへ行ってもよいぞ」
側近「では・・・」ダダッ
魔王「おお!側近が外に出ても無事だ!」
側近「や・・・やった!」ブルブル
側近「いやっほぅ!じ・・・自由だあああああああああああ!」ダダダッ
側近「はぁはぁ!空気うめえええええええ!城のかび臭い空気と全然違う!」
側近「ひゃっほぅうう!久しぶりの外だあああああ!ああ、緑だ・・・緑がこんなに!」
側近「川だああああ!水だあああああああああ!ひゃあああ、つめぇえ!気持ちいい!」
側近「ああああ、土の匂い、木の匂い、さいっこうだ!ひゃっはー!」
魔王「お・・・おい、側近?」
側近「いやっほぅ、いえええい」
魔王「おい、戻って来い、側近」
側近「ええ?なんですってぇ?きこえませーん!」
魔王「あ・・・あいつ・・・耳栓してやがる・・・」
側近「もう二度と戻るか!ばーか!ばーか!世界は魔族のものになってんだから遊びまくってやるぞおお!ひゃー!」バサバサ
ピューッ
魔王「い・・・いってしまいおった・・・」
魔王「側近め・・・」
魔王「しかし・・・あいつは私の命令で外に出ることが出来た・・・ということは・・・」
魔王「私が私に命令すれば・・・」
魔王「私は、私が外に出ることを許可するぞ!」ダッ
魔王「あっ、あぢぢぢぢぃ!だ・・・駄目だ」
魔王「私が以前外に出た時はどうだったか?いや・・・外にでたことあったか?」
魔王「そういえば・・・以前大魔王様の命令で出たことが・・・」
魔王「ふむ・・・そうなると・・・」
魔王「おい!お前!」
門番「はっ!なんでしょう!魔王様」
魔王「お前は今日から側近だ。一緒に来い」
側近「え?ですが、側近はもういたのでは?」
魔王「逃げた。一緒に来い。それから城内の兵を集めろ」
側近「は・・・はっ!」
魔王「全員あつまったな」
側近「何をするんです?」
魔王「大魔王様に挑む!」
側近「え?ええ!?」
魔王「この世界は征服した!あとは大魔王様さえいなくなれば怖いものなど存在せん!」
側近「そ・・・それはそうですが・・・」
魔王「それに、聞きたいこともたくさんあるしな」
側近「何か言いましたか?」
魔王「なんでもない。お前に使者を任せる。大魔王様に渡りをつけてこい」
側近「え?私?うう、な・・・なんでニートの命令を・・・」
魔王「さっさといけ!」
側近「はっ!」ダダッ
魔王(これで・・・何かが分かるはず!)
側近「お連れしました!」
大魔王「我を呼びつけるとは何事だ」
魔王「はっ、大魔王様においてはご機嫌麗しく・・・」
大魔王「我を呼びつけるとは何事だ!」
魔王「実はお聞きしたいことがありまして・・・」
大魔王「申してみよ」
魔王「単刀直入に言います。大魔王様はこの世の理をご存知か」
大魔王「なんのことだ」
魔王「この世界には不自然なことが多いのです、勇者の不死身しかり、私が城を出られない事しかり。これをどうお思いか」
大魔王「なんのことだ」
魔王「しらを切るおつもりか!大魔王様!あなたを倒して真実を語っていただく!」
大魔王「なんのことだ」
魔王「・・・」
大魔王「用はそれだけか・・・」
魔王「これは・・・摂理の外なのか・・・」ボソボソ
大魔王「用がないのであれば帰らせてもらうぞ!さらばだ!」
魔王「はい・・・」
側近「魔王様、よろしかったので?討ち取るのでは」
魔王「気が変わった。大魔王様は私以上に縛られているようであったのでな」
側近「はぁ・・・」
魔王(城は出られない・・・それでは・・・)
魔王「側近!竜騎士を呼べ!」
側近「え?今度はなんです?」
魔王「いいから早くしろ」
側近「はいはい・・・これだからニートは・・・」ブツブツ
竜騎士「お呼びで。魔王様」
魔王「ああ、すまないな。ちょっとドラゴンを貸して欲しくてな」
竜騎士「あぁ、どちらか行かれるのですか。確かに勇者にやられたその翼では飛べませんね」
魔王「ああ、頼めるか」
竜騎士「御意。選りすぐりのドラゴンを用意しましょう」
側近「それでどこへ行くんです?」
魔王「とりあえずまっすぐ上空を目指す」
側近「はぁ?なんでそんな」
魔王「確かめるのだ!その世の摂理を」
魔王「いくぞ!ドラゴン!」
ドラゴン「ギャアアアス!」
バサバサ
魔王「私の体は・・・大丈夫だな。まだだ・・・もっと!もっと上空へ」
バサバサ
魔王「もっとだ!」
バサバラ
ドラゴン「ギャアアス!」
魔王「どうした!?うっ・・・上空から・・・風?」
ドラゴン「ゼィゼィ・・・」
バサバサ
魔王「無理か・・・もういい・・・引き上げるぞ」
ドラゴン「クェェ・・・」