僧侶「朝起きたらみんながいなかったです」 3/5

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僧侶「あ!?(バシャ!」

客「おわ!?つめた!!」

僧侶「す、すいません!!」

客「おい、どうしてくれんだよ!!?服がぬれちまっただろ!?」

僧侶「すいません!すいません!!」

客「謝ってすむ問題じゃねーよ!」

僧侶「ひっ!?」

少女「―――あ、すいません。今すぐ拭きますから」

客「いーや、そんなことじゃ、気が収まらないね!」

少女「え……?」

客「お前ら、俺たちに今晩つきあえよ……結構かわいいし……それで許してやるよ」

僧侶「そ、それは……」

客「ほら、服を濡らしたんだ。それぐらいいいだろ?なあ?」

男「そうだなぁ、いいんじゃねーの?」

男「えへへ、いいねえ。二人ともかわいいじゃん」

少女「ちょっと……放してください」

僧侶「いたっ……!」

客「あー我慢できねえや、一緒にトイレいこうぜ」

僧侶「な?!」

男「げへへ……何する気だよ!!」

客「決まってんだろ?」

男「いいなぁーいいなぁー」

僧侶「いや……はなして……」

客「うっせえ!服を濡らしといて文句いうな!!」

僧侶「ひぃ!?」

客「おら、こい!」

少女「―――やめろ、屑野郎」

客「え?」

少女「―――腰を深く落として……はぁ!!!」

ドゴォ!!

客「ぐほぁ!?!」

僧侶「な!?」

少女「ふん。あなたは客じゃない、帰ってください」

客「てめえ……!!」

男「舐めやがって……!!」

僧侶「あ、あ……」

他客「おいおいやべえぞ」

他客「にげろにげろ」

少女「女の子相手に刃物を抜くなんて……情けない」

客「うっせえ!!!」

少女「―――はぁあああ!!!!」

客「―――あがぁ……が……」

少女「ふぅ……押忍!」

僧侶「あ、あ……お客さんの顔が……面白い形に……」

女「あー少女ちゃん、またやったなぁ?」

少女「オーナー!だって、この人たちが」

客「て、てめえがオーナーか……こんなふざけた店員を……」

女「どうせあんたたちが変なことしたんでしょ?自業自得よ」

客「なんだと?!」

女「ほら!屑はこの店に入る資格はない!出ていき、な!!!」

ドゴォ!!!

客「ぐへぇえ!?!」

僧侶「あの……もしかしてお二人とも……」

少女「うん。私もオーナーも同じ道場で格闘技を学んだの」

女「ま、女性のたしなみってやつ?」

僧侶「は、はあ……」

―――街中

店主「はぁ……どうすれば……このままでは俺は殺される……やばい……やばい……」

男A「くそ……あの女……絶対に今度犯してやる……!!」

男B「そうだな……よし、じゃあ、夜にこっそり後ろから襲うか?」

男C「いいな、それ、やるか?」

男A「じゃあ、いつやる?」

男B「そうだなぁ……」

店主「おい」

男A「なんだよ、おっさん?」

店主「その話、一枚噛ませろ」

男B「はぁ?」

男C「なんだよ、きめえよ」

店主「こっちは瀬戸際なんだ!!!」

男A「な、なんだ……?」

店主「―――いいから話せ。力になれるかもしれん」

男A「ってわけだ」

店主「なるほど……その店員とオーナーは美人か?」

男B「まあ、かなり良い線いってると思うぜ?」

男C「ああ、態度はムカつくけどな」

店主「ふふ……そうか」

店主(バカが三人もいれば使いようによっては……ふふ)

男A「で、どうするんだ?」

店主「よし、じゃあ、明日から準備に取り掛かろう。お前ら、俺が今から言うものを用意しろ」

男B「あ?」

店主「この作戦に重要なものだ」

男C「なんだよ、それ」

店主「いいから言うとおりにしろ。―――良い思いをさせてやる」

男A「マジか」

男B「ひひ……いいねえ」

店主(よし……こいつらに全ての罪を被ってもらうか……くくく)

―――酒場 閉店後

僧侶「じゃあ、お二人とも昔は武道家として冒険もしてたんですか?」

少女「うん。少しの間だけど」

女「まあね」

僧侶「なるほど……それであの強さですか……」

女「でも、ちょっとやり過ぎたんじゃないの?」

少女「オーナーだって」

女「あとでなんかあるかもしれないね」

僧侶「なにかって……?」

少女「報復ですか?そんなこと……」

女「ま、夜道は気をつけるこった」

僧侶「怖いですよ!!やめてください!!」

少女「まあまあ、私が一緒に帰ってあげるから」

僧侶「ほ、ほんとうですか!?」

少女「うん、勿論」

―――魔王の城 地下室

勇者「ここは……!?」

武道家「う……!?」

賢者「魔王の食事の後……のようですね」

武道家「げぇえええ!?!おえぇえええ!!?!」

勇者「むごい……なんてことだ」

賢者「女性ばかりを食っているようですね……」

勇者(僧侶を置いてきて正解だったな……)

賢者「……しかし、妙ですね」

武道家「はぁ……はぁ……何が?」

賢者「これだけ遺体の一部があるということは、かなりの大人数をここに収容していたことになります」

勇者「それがどうかしたのか?」

賢者「……まだどこかに生存者がいても不思議ではありません」

勇者「そうか……これだけの数を食べるとなると……恐らく、どこかに貯め込んでいるな」

武道家「よ、よし……まずはそいつらを救おう」

―――翌日 道具屋

男A「ちょっといいか?」

男性「はい?」

男A「このメモに書いてあるものを全部くれ」

男性「これは……ふむふむ」

男A「あるんだろ?」

男性「あるにはありますが……これをどうされるのですか?」

男A「うるせえ。いいから用意しろ」

男性「わ、わかりました」

男性(だが……これは明らかに眠り粉の原料になるものだ……)

男性(……何をするつもりなんだ……?)

男A「……」

男性(どうみても悪用しそうだな)

男性「―――お待たせしました。どうぞ」

男A「おせえよ!―――ったく、なんで俺がパシリなんて……ぶつぶつ……」

男性「―――ふう」

男性「困った客だ」

僧侶「あの……」

男性「あ、僧侶さん。どうかしました?」

僧侶「えと……私、酒場で働こうかなって、思いまして……それで、あの」

男性「ああ、なるほど。わかりました。遠慮せずに自分に合ったところで働くといいですよ?」

僧侶「すいません。ご迷惑だけかけて、何も恩返しできずに……」

男性「いえいえ。気にしないでください」

僧侶「すいません……それではこれで」

少女「まったまった!おつかいが残ってるでしょ?」

僧侶「あ、そうでした……」

男性「お前もいたのか」

少女「相変わらず品揃え変わらないね」

男性「ほっとけ」

僧侶「お二人ともお知り合いなんですか?」

少女「うん、幼馴染なんだ」

男性「腐れ縁だな」

少女「酷いなぁ」

僧侶「あ、私が商品を探しますね」

少女「お願いね」

男性「どうだ?酒場は楽しいか?」

少女「うん。オーナーもあの僧侶さんも良い人だしね」

男性「でも、失敗も多いだろ?」

少女「うん。昨日はお客さんにお水をぶちまけちゃって大変だったよ」

男性「あはは、いかにも僧侶さんがやらかしそうだ」

少女「まあ、ボコボコにしたけどね」

男性「……おい、それどんな奴だった?」

少女「どんなって……」

僧侶「あ、これで全部です……って、どうかされたんですか?」

男性「僧侶さん、すこしお話が」

―――男Aの家

男A「買ってきたぞ」

店主「おーおー、そうそう。これだ」

男B「これで眠り粉が作れるのか?」

店主「ああ。まあ、エルフが作るような精巧なものじゃなくて即席だけどな」

男C「よくそんな作り方しってんな」

店主「まあな」

店主(魔物から教えてもらったなんてどうせ信じないだろうしな)

男A「ったく、なんでこんなひでえ面で外にでなきゃいけないんだよ……くそ」

男B「じゃんけんに負けたからだろー」

男C「ぎゃはは、なんだ?その痣だらけの顔を笑われたのか?」

男A「そんなんじゃねーよ」

店主「おい、無駄口を叩く暇があれば手伝え」

男B「ちっ……えらそうーに」

店主(ふふふ……これで首の皮が一枚繋がったな……くくく)

―――魔王の城 地下牢

勇者「もう大丈夫ですよ?」

女の子「怖かった……こわかったよぉ……」

勇者「もう大丈夫です……安心してください」

賢者「それにしても50人以上はいますね……」

武道家「まずは外に出してやらないとな」

勇者「ああ」

賢者「あの、少しいいでしょうか?」

女の子「は、はい」

賢者「みなさんは魔物に攫われてきたのですか?」

女の子「いえ……私も含めてここにいる殆どの人は人間の手によって連れてこられたといえます」

賢者「なんですと!?」

女の子「勇者様たちのお耳には入らないことだと思います。―――特定の人間が秘密裏に自分の懐を潤すために、または自分かわいさに人間を魔王に捧げているのです」

魔物「きさまら!!!なにをしている!!!」

勇者「―――ちょうどいい、詳しい話を聞くことにしようか」

―――酒場

女「へえ……眠りの粉を」

少女「どうします?」

僧侶「そんなのをこの店でばらまかれたら終わりですよ!!」

少女「ザメハを使う人が眠らされたら終わりだもんね」

僧侶「ええ……私は使えませんけど」

女「でも、仕掛けてくる方法が分かってるだけ、マシでしょ?」

少女「そ、そうですかね?」

女「眠りの粉か……確かに店内でばらまかれたら終わりね」

僧侶「じゃあ、どうするんですか?」

女「うーん……」

少女「その男の住処でも分かれば乗り込むのに……!!」

女「おお!それいいね」

僧侶「はい?」

女「乗り込んじゃえばいいじゃないの」

少女「どういうことですか?」

女「だって、あの道具屋のお兄さんが気を利かせてくれたんでしょ?」

僧侶「でも……本当に知識のある人物が裏にいるなら、分からないって」

女「でも、賭けてみる価値はあると思うなぁ」

少女「どうするんですか?」

女「まあ、シンプルな作戦よ」

僧侶「はぁ」

少女「……」

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