―――男Aの家
店主「よし、作戦は頭にはいってるな?」
男A「おう。この眠りの粉を店内でばらまいて……寝た三人を運び出し、馬車の荷台に乗せる」
店主「ああ、その通りだ」
店主(くくく……お前らには悪いがな……ふふふ)
男B「なんかワクワクしてきたぜ」
男C「たっぷりかわいがってやるぜ」
―――魔王の城 地下牢
魔物「ぐはぁああ!?」
勇者「さあ、答えろ。この人たちはどうやって集めた?」
魔物「は……人間の中にも屑中の屑がいるんだよ……勇者」
勇者「なに?」
魔物「金に釣られて自分の娘を献上したり、自分の命欲しさに宿屋に泊りに来ただけ旅人の女を眠らせて魔王に差し出す奴とかな!!」
勇者「……貴様!!!」
魔物「ぐぇぇえええ!!?」
賢者「勇者様!」
勇者「どこにいる?その人間達は!?」
魔物「は……世界中にいるぜ……」
武道家「ちっ……俺達のやってることがバカらしくなるな」
賢者「武道家さん、そんなことを言わないでください」
勇者「―――そうだ。魔王さえ倒せばいいだけの話だ」
賢者「ええ。その通りです。行きましょう、勇者様!」
―――酒場
少女「オーダー追加でーす!」
僧侶「は、はひぃ!?」
少女「あっぶないなぁ。ほら、ちゃんともって。焦らず急がないと」
僧侶「だから、そんなこと―――」
男A「―――邪魔するぞ」
女(きなすった。ちゃっかりガスマスク付けてるし……)
少女「何の用ですか?」
男B「くらえ!!」
僧侶「あ……!!」
ボフン!!
少女「く……ぁ……」
僧侶「あ……ん……」
女「くっ……」
男A「すっげえ、客も寝ちまった。よぉし、若い女だけを運び出せ!!」
店主「おっし、早く荷台に乗せろ!」
男A「女は全部で5人だ」
店主「よしよし、十分だ」
男B「いいぜ!」
店主「おし。じゃあ、行商人のふりをするから、道中で何か訊かれた打ち合わせ通りにするんだぞ?」
男C「分かってるって」
男A「ところでいいところってどこなんだ?教えてくれよ」
店主「着いてからのお楽しみだ。女を抱くには最高の場所だ」
男B「マジかよ!!」
男C「うひゃー!!」
店主(くくく……そう、まさに天国だ……くくく)
男性「―――町長!!」
町長「分かっておる……町におる骨のある男共を呼べ」
男性「はい!!」
町長「うむ……やはりあの店主め……魔物に魂を売っておったか……」
―――魔王の城 城門前
店主「ついたぞ」
男A「おいおい……ここって……!!」
魔物「お、お前、久しぶりだな。キキ!!」
男B「うわぁ!魔物だ!?」
店主「大丈夫だ。俺の顔なじみだ」
男C「なんだと……!?」
店主「ほら、この娘たちなら魔王様も喜んでくれるだろ?」
魔物「どれどれ……おお、確かに!!いいぞ、入れ」
店主「よし、運びこむぞ。手伝え」
男A「お、おお」
魔物「キキ!!傷つけんなよ?」
男B「わ、わかってるよ……」
僧侶(ま、まさか……魔王の城にきちゃうなんて……)
少女(どうしよう……予想外だ……)
―――城内 エントランス
勇者「まて!」
賢者「どうかしました?」
勇者「あれを見ろ」
武道家「あ、あれは……人間!?」
店主「よし、ここでいい」
男A「おい……ここが最高の場所なのかよ」
男B「本当にやらせてくれんのか?」
店主「ああ……天国につれていって……やるぜ!!」
ザシュ!!
男A「あ……てめぇ……」
ドサッ
男C「うわぁぁぁぁ!!!!」
店主「俺の正体を知られたからには生かしておくわけにはいかないんだよ……くくく」
男B「なんだとぉ!?」
僧侶(わ、わ……)
女(タヌキ寝入りがばれたわけじゃないようね……仲間割れ?)
店主「くくく……」
男B「だ、だれにもいわねえ!!勘弁してくれ!!!!」
男C「俺もだ!!誰にも言わない!!だから!!!」
店主「てめえら屑の口約束なんか信用できるかよ!!!」
魔物「やめろ」
店主「あ……」
魔物「ここは魔王様の城である。汚らわしい人間の血をばらまくな」
店主「す、すいません」
男B「ひぃぃ!!?」
魔物「ふん……殺すなら……こうしろ。―――イオナズン!!」
男B&C「―――ぎゃぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!!!!!」
ドドォォォォォン!!!
魔物「塵すら残さんように処理せねばな。さてと……ふむ、中々の上玉だ。魔王様も喜んでくれるだろう」
勇者「あ、あれは……!!」
賢者「我々が泊っていた宿屋の主!!」
武道家「じゃあ、あの子はやっぱり……見間違いじゃなくて……僧侶か?!」
勇者「―――く!!」
賢者「勇者様、今飛び出しても先ほど消されてしまった人と同じ目に遭います!」
勇者「しかし!!」
武道家「どうするんだよ!!」
賢者「あの子も少しばかりの呪文が扱える。簡単には死にますまい。それよりも彼女たちを逃がさないと」
女の子「うぅ……」
勇者「任せる」
賢者「勇者様!?」
勇者「俺の愛する人が今、危険にさらされているんだ!!見過ごすことなんてできない!!」
賢者「……わかりました。でも無茶だけはしないでください」
武道家「すぐに行くからな」
勇者「分かった……すまないな」
―――魔王の部屋
魔王「ほほぅ……これはこれは、珍しい……僧侶がいるではないか」
店主「は、はい……いつもただの旅人では飽きるだろうと思いまして……へへ」
魔王「その趣向や良し。気に入ったぞ、わっはっはっはっは!!」
店主「お、おほめいただき……至極光栄でございます」
僧侶(威圧感がすごい……死にそう)
少女(起きるタイミングがない……)
女(まさか魔王に謁見するなんて……)
魔物「では、魔王様。地下牢に連れていきます」
魔王「まて……僧侶は今、この場で食らう」
僧侶(えぇぇ!?!?)
少女(ご愁傷様)
女(南無)
僧侶(そんなぁぁ!!!勇者さーん!!!)
魔王「神に仕える者を食らうことなど、滅多にないからな……くふふ、どう味わってやろうか……」
―――魔王の城 城外
賢者「では、皆さん。出来るだけ一か所に集まってください」
女の子「は、はい」
賢者「では、飛ばす場所は勇者様の故郷です。そこで王にこの手紙をお渡しください」
女の子「これは……?」
賢者「それを見せれば、貴方たちを温かく迎えてくれるでしょう」
女の子「ありがとうございます!勇者様にも是非、お伝えください!!」
賢者「はい。勿論です。では―――バシルーラ!!!!」
シュン!!
賢者「ふう……」
武道家「休んでる暇はないぜ」
賢者「ええ。勇者様を追いましょう」
武道家「急ぐぞ!」
―――待て!!!
賢者「―――な!?」
勇者「―――待て!!!」
魔王「ぬ?!」
店主「あ……!?」
魔物「貴様は勇者か!?」
勇者「その娘は返してもらおう」
魔王「ふふふ、我の食事を邪魔するとはいい度胸だ。近頃の勇者はテーブルマナーも知らんらしいな」
勇者「生憎と田舎育ちでね。母親も放任主義だった」
魔王「ふん、気品もなにもなったものではないな」
勇者「―――だから、返してもらおう。貴様にとってはただの食糧でも、俺にとっては掛け替えのない愛する人だ」
僧侶(ゆ、ゆうしゃ……さま……///)
少女(お熱いことで)
女(設定温度は30度?エコじゃないね)
魔王「下らん。―――とめてみたくば、我を倒してみよ!!ふははははははははは!!!!!!」
勇者「いくぞ!!外道め!!!」
魔物「させるか!!!!」
勇者「ちっ!邪魔をする―――」
少女「―――せいやぁぁ!!!!」
ドゴォ!!!
魔物「ぐえぇ!?」
勇者「え?」
女「―――はい!せい!!あちょー!!」
ドゴ!バキ!!ドン!!
魔物「ぐべろぼぉ!?!」
勇者「な……魔物を素手で圧倒した……」
魔王「貴様ら……!!」
店主「お前ら!!なんで起きてやがる!?!」
少女「道具屋のお兄さんに偽物掴まされたんですよ」
女「どうやら顔が腫れあがった男が原料を買いに来たらしくてね、怪しすぎるから全く別の原料を渡したんだって」
店主「な、なんだとぉ?!」
僧侶「―――気がつかなかった、アナタの負けです」
勇者「僧侶!!」
僧侶「勇者さーん!!置いて行くなんて酷いですよ!!!」
勇者「すまない……君のためを思ってだったんだ」
僧侶「知ってます……でも、そんな優しさはいりません。ずっと、お傍にいさせてください」
勇者「ああ、もう離すもんか……!!」
ギュ……
少女「ひゅーひゅー」
女「エアコンきつぞーここ」
魔王「おのれぇ……我をコケにしおって……許さんぞ!!!」
店主(まずい……ここらが潮時か……)
少女「ピンチには変わりないか」
勇者「お二人とも下がって」
女「冗談。ここで下がったら武道家として失格でしょ」
勇者「ふ……わかりました。ですが、絶対に死なないでください!!」
少女「了解しました!!」
店主「よ、よし!いまだ―――」