勇者XXX「ふふっここまでだな、大魔王よ。」
大魔王「ぬぅう、たかが人間にここまでされるとは…。油断したわ…。」
勇者XXX「最後にお前の泣き言が聞けてうれしいよ。じゃあな。」
―勇者XXXは剣をゆっくりと振り上げた。―
大魔王「あまいわ!!!」
ピカーー!!!
―大魔王は呪文を唱えた!勇者XXXと大魔王は光につつまれた!―
勇者XXX「な、なにをした!」
大魔王「お前は強い。さすがの余も今のお前には勝てぬ、今のお前にはな。」フフフ
大魔王「ならばお前から‘今のお前’を奪うまでのこと…。」
勇者XXX「きさまあああああ!!」
―光はさらに明るさを増し、あたりはその輪郭を徐々に失っていった!―
大魔王(お前から次に奪うのはお前の命だ。それまでその姿になった自分の運命を呪うがいい)ハッハッハッハ
【池のほとり】
(…。)
勇者XXX「…。」
勇者XXX「ここはどこだ…。俺は確か大魔王と戦っていたはず…。何故池のほとりにいる?」
クラッ
勇者XXX「う…。」
勇者XXX「顔でも洗うか。」
―勇者XXXは池を覗き込んだ!紫色の瞳の乙女が水面に写っている。―
勇者XXX「うわぁあああああああああ!!!!!rftgyふじこおl」
勇者XXX「おんなになってる!!?」
勇者XXX「うそだうそだ!?」
さらさら
勇者XXX「黒髪ロングだ――――!?」
もちもちぴちぴち
勇者XXX「もち肌だーーー!?」
ち、っぱいん
勇者XXX「ひんぬーだ――――――!?」
つるん
勇者XXX「ないないないないないない!うわぁああああ!」
クチュ
勇者XXX「あ…。/////」
(目が覚めたら俺は女になっていた。そしてこの後、俺が大魔王と戦ってから数年たっていたことを知る。世間では俺は死んだことになっており、俺の実力に当てはまる後釜がいないこの時代では各国から勝手に認定された勇者たちであふれかえっていた。)
【王立図書館】
勇者XXX「あったぞ。そうか、最後に大魔王が唱えた呪文は俺を違う者に変化させる呪文だったんだな。なになに…。」
チェンジス:モシャスの亜系呪文。相手を変えたいものに変化させる呪文であり仲間を強いものに変えたり、敵を弱いものに変化させるために使用される。
勇者XXX「おおこれだ、これだ。」
効果持続時間は施術者の魔力によるがすぐきれるものから、大魔王程度の魔力であれば半永久的に続くものもある。
勇者XXX「ひえええええ。」
効果解除条件は施術者によるReチェンジスもしくは施術者の死亡。
他の施術者によるチェンジスの上書きも不可能である。
しかし変化されたものがその状態で死亡したり、子を宿すなど運命を固定された場合は
その効果が解除されることは永遠になく再度チェンジスをかけることはできない。
勇者XXX「おいおい!」
勇者XXX「まぁ、前者の大魔王にReチェンジスをかけてもらうのはあり得ないが、大魔王が死ねば効果が切れるってのはありがたい話だな。目的は変わらない。よし!」
勇者XXX(こんな状態じゃ今までの様な一人での冒険は無理だ。大魔王を倒す仲間が必要だな…。)
【始まりの街の城 玉座の間】
王様「勇者、ちゃんと西の塔攻略進んでる?」
勇者「申し訳ございません。まだ途中までです。」
王様「ちょっと早くしないと他の国の勇者に手柄とられちゃうよ?大魔王を倒した王としてわしの名前をのこしたいんだからさー。」
勇者「はっ!その代わりと言ってはなんですが踊る宝石が巣食うほこらをみつけました。」
王様「おおお!おっととゴホン。そうかごくろうじゃ勇者。おぬしにそこのほこらのモンスターまで退治させるのはしのびない。わしの近衛兵をかわりによこそう。」ニヤァ
勇者「はっ」
王様「そうそう、おぬしに仲間をひとり見つけておいたぞ。しかも後衛じゃ感謝せよ。」
勇者「はは!ありがとうございます。」
王様「記録官!いまの事を記録しておくように!」
記録官「はっ!○年×月 王様、勇者をねぎらい、その背中を守る仲間を見つけ出された。また世界の平和のため自ら魔物の退治を行うと宣言されました。」
王様「うむ。」
勇者(俗物が。)
【始まりの街 城下】
僧侶(勇者XXX)「はじめまして勇者様。僧侶ともうします、よろしくお願いいたします。」
(ふっふっふ、やはり勇者一行として大魔王討伐に向かうのが一番だ。我ながら名案!)
勇者「…。」クル スタスタ
僧侶「あ、勇者様?!どこへ?」
勇者「宿。」
僧侶「え?確かにもう夕暮れですもんね。」
勇者「…。」スタスタ
【宿】
勇者「男一人。」
宿屋の主人「はいご案内~。」
僧侶「あ、あの?」
勇者「…。」スタスタスタ バタン!
僧侶「ひとりで部屋にいっちゃった?」(なんだ、こいつ?無視しやがって。)
宿屋の主人「あいかわらずだねえ勇者ちゃん。」
僧侶「へ?」
宿屋の主人「勇者ちゃんの優しさですよ。どうせ早いか遅いかですし逃げていいってことですよ。」
僧侶「???」
(宿屋の主人の話では勇者XXXが死んだ今では本気で大魔王を倒そうとするものは少なく、
勇者一行に加わろうなどという変わり者は見かけなくなってしまった。
そのためこの国では勇者のパーティーに加わったものには報奨金が出るようになったのだが
ほとんどのものが報奨金目当てにパーティーに入り翌日姿を消しているとのことだった。)
僧侶「そういえば100Gもらってた…。」(世も末だな。)
【宿屋 朝】
僧侶「おはようございます勇者様!」(結局宿屋のラウンジで夜を明かしてしまった。)
勇者「…。」
僧侶「勇者様?」
勇者「容量の悪いやつだな。逃げ遅れたのか?」
僧侶「ちがいます!わたしは勇者様にお仕えするためにパーティーに入ったのです!」
勇者「もう追加の報奨金はでないぞ?」
僧侶「~~~~。」(こいつううううう!!!)
僧侶「…。」テクテクテク
勇者「?」
浮浪者「おや、かわいい僧侶様、まずしい私に何かめぐんでくださらないかね?」
僧侶「わたしにはこのようなものしか差し上げられません。貴方様に主の思し召しがありますように。」
浮浪者「ひゃぁあああこんな大金!!100Gだなんて!ありがたや、ありがたや。」
勇者「!」
僧侶「勇者様、次の目的地はどこでございますか?」ニッコリ
勇者XXX(ドヤ)
勇者「めずらしいやつだな。本気で大魔王を倒す気でいるのか?」
僧侶「はい!」
勇者「…。」クル スタスタスタ
僧侶「あぁ!勇者様まってください!」(もーーー!!なんだこいつ)
【西の塔入口】
勇者「お前、魔物と戦ったことはあるのか?」
僧侶「いえ」(お前よりあるわ!ぼけ!)
勇者「じゃあこれが初陣だな。さがってみていろ。」
―オークがあらわれた!―
―勇者の攻撃!オークに18のダメージ!―
オーク「がおるるうる」
―オークの攻撃!勇者に15のダメージ!―
勇者「フンッ、オークのくせに生意気だな。」
オーク「ぐおおおう!」
僧侶(よええええええ!こいつ本当に勇者か。オーク単体だろ?
そら本気で大魔王討伐考えないわな。
まぁ勇者一行って立場さえあれば旅も楽だし最後は俺が大魔王倒せばいいしな…。)
勇者(恐怖で声も出ないか。)
勇者「うおおおお!!!」
―勇者の攻撃!会心の一撃!オークを倒した!―
勇者「はぁはぁ、これが魔物との戦いだ。やめるなら今のうちだぞ。」
僧侶「…。」
―僧侶はホイミを唱えた!勇者の傷が癒えていく!―
勇者「!」
僧侶「勇者様他にお怪我はありませんか?」ニコ
勇者「勝手にしろ!」クル スタスタスタ
僧侶「うれしい、お供していいんですね。」
(まじこの雑魚をどうやって育てるかが難題だな…。はぁ…。)
【西の塔ダンジョン】
僧侶(時間かかるなぁ…。こんなダンジョン、前の俺だったら3往復はできてるぜ。)
僧侶(しかし女の体は体力ないな…。そういえば朝ごはんも食べてないし、お腹ペコペコだ…。)
僧侶「」グゥーー
僧侶「勇者様…。////」
勇者「飯ならないぞ。うちの王様はけちだからな給料なんてほとんどでない。もう食費もない。」
僧侶「だ、だいじょうびですぅ~」(エーー)
【西の塔最上階】
ボス「よくきたな人間。だがそれもここで終わりだ!」
勇者「でやあああ!」
―勇者とボスは戦っている!―
僧侶「…。」(お腹すいたな…。)
―勇者とボスは戦っている!―
僧侶「お腹すいたな…」
―勇者とボスは戦っている!―
僧侶(まだかな…。)
―勇者とボスは戦っている!―
僧侶「ザキ」ボソ
―ボスを倒した!―
勇者「え?倒した?」
僧侶「わーすごいです!勇者様西の塔のボスをたおすなんて!さあお城に帰りましょ。そして報酬をもらうのです。そしてそしてお腹いっぱいご飯をたべようじゃないですか!」
勇者「そっか、意外とあっさりだったな。」
僧侶「はい!」(こいつを鍛えるためのはずが空腹に負けて倒してしまった。)
【始まりの街】
勇者「僧侶、ほら。」
僧侶「おかえりなさい勇者様!陛下は喜んでくださいました?」
勇者「まぁ西の塔を攻略したわけだからな。夕飯をかってきた。」
僧侶「わーーーおいしそうなプリンぱん!食べていいんですか?」(めしー!めしー!)
勇者「ああ」
僧侶「わぁぁああい!しあわせー!」(ふごー!ふごー!)
僧侶「あれ?勇者様は?」
勇者「俺は城でフルコースを食べてきた。」ポリポリ
僧侶「エーズルイ」
勇者「散歩してくる。」クル スタスタスタ
僧侶「…。」
【裏山】
勇者「あぁ、あったあった。この時期でも生えてるんだな。」ブチ
勇者「モシャモシャモシャ」
勇者「ゴクン」
勇者「まずいな…。」ボソ
勇者「しかしあの王様、西の塔に大したアイテムが落ちてなかったからって報酬があれだけっておかしくないか?次の冒険の準備したら、パン1個しかかえねーじゃねえか!」ブツクサブツクサ
勇者「…。」
勇者「ここらの野草は食い尽くしたな…。」グー
僧侶(こっそり後をつけてきたらまさかこんなみじめな勇者がいるなんて…。俺も飢えにたえてきたことはあったがこの扱いは悲しすぎる…。それなのに俺にプリンぱんを買ってくれたのか。)
【宿屋】
僧侶「お帰りなさい。」
勇者「うん?お前まだパン残してるのか?腐るぞ。」
僧侶「勇者様をまってたんです。」
勇者「?」
僧侶「食事とはただ動物のように物を口に運ぶものではありません。食事とは家族や仲間が寄り添い一日の労をねぎらいながら神への感謝とともに行う祈りなのだろうと思います。」
勇者「あほか。俺ははらいっぱいだっつーの。」グー
僧侶「一緒に夕食をとってはくれませんか?」
勇者「…。ちっ、しょうがねえな。」パク
僧侶「あー!待ってくださいよ。わたしも。」パク
勇者「甘いな。」
僧侶「甘いです。」
僧侶「勇者様との初めてごはんはプリンぱんでしたね。」ニコ
勇者「あぁ。」
僧侶(愛想ねーな。)
【東のほこら ダンジョン内】
僧侶「勇者様は何故勇者様になられたのですか?」トテトテ
勇者「何故そんなことを聞く?」
僧侶「それは勇者様のことをもっと知りたいからです!」
(大魔王を倒すレベルまで育ってもらうには前情報は不可欠だからな!)
勇者「なれと言われたからなっただけだ。」ポリポリ スタスタスタ
僧侶「えぇ?それはどういう事ですか?」
勇者「お前少しうるさいぞ。」
僧侶「ごめんなさい」シュン
(このコミュ障勇者め!)