子勇者「お前を倒さないとママに会えない」ウルッ 2/5

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ー回想ー

魔王の息子「ママー」

母魔「あら、どうしたの?子魔、その花冠」

子魔「えっとね、これね、メイドお姉ちゃんたちと一緒に作ったの」

母魔「そう、似合ってるわね」

子魔「それでね、これ、ママの」

母魔「ママに?」

子魔「うん、ボクが作ったの、花冠。ちょっと変だけど」

母魔「そんなことないわ。ママ子魔にプレゼントもらえてとても嬉しいわ」

子魔「ほんと?」

母魔「子魔が飾ってくれる?」

子魔「うん」

母魔「どう?」

子魔「すごく似あってるよ、ママ」

母魔「子魔とおそろいね」

子魔「うん♪」

ー回想終わりー

母魔「子魔……」

側近「魔王さま」

母魔「勇者は」

側近「はい、丁寧に運ばせました」

母魔「私が行くまで起きないようにしておきなさい」

側近「すでに指示しております。身勝手ながら、

治療魔法に一見識を持ってる者を呼んでおきました。体の傷跡を治すことが出来るかはわかりませんが

母魔「…ありがとう」

側近「魔王さまの側にいてもう五百年ですから」

母魔「…」

側近「あの勇者の姿を見て亡くなられたぼっちゃんのことを…」

母魔「側近」

側近「失礼…」

母魔「…いえ、たしかにあなたの言う通りよ、否定しない」

母魔「あの子を見ていたら、子魔のことを思い出してしまった」

母魔「可愛い子だった」

側近「坊ちゃんは生まれつきの強さと賢さをお持ちになっておられました」

側近「坊ちゃんが生きて居られたら、きっと歴代最強の魔王になられたでしょう」

母魔「…子魔はもう居ないわ」

母魔「私のせいだった」

側近「そのようなことは…」

母魔「私が人類滅亡などとくだらない計画に目を眩んでさえいなければ」

母魔「あの子があんなに虚しく病で死ぬ前に助けられたはずよ」

母魔「優しいあの子は私の邪魔にならないようと自分の病を隠していた

母魔「気づいた時はもう何もかも遅かった」

母魔「魔王ともあろう者が自分の子独りを助けることが出来なかった」

側近「その後、魔王さまは達成寸前まで行っていた人類滅亡計画を咄嗟に中止なさいました」

側近「そして百年ぶりに人間はまるでゴキブリのように蘇ってきてまた我らを威脅しました」

母魔「そして送ってきた勇者という人間は、まだまだ小さい子供」

母魔「いったいどういうことなの」

側近「それなのですが」

側近「水晶玉で、人間の国の様子を見たのですが」

母魔「何?」

側近「勇者の母となる者は、見るに国王の妃になったそうです」

母魔「…は?」

側近「今の人間の王はとても好色な男で、」

側近「美しい勇者の母を見て目が眩んだようです」

側近「夫を若くして亡くした勇者の母を見て」

側近「人間の王は彼女を己の者にしようと画策したようです」

側近「そして邪魔になる息子は勇者と称して

我らの元へ送り始末するつもりだったようで」

母魔「母は何もしなかったというの?」

側近「なにやらその母という人間も男の肌が恋しかったようで」

側近「しかも相手は王、目が眩んで子を見捨てるとしてもおかしくはないかと」

母魔「下衆どもが」

側近「人間も腐ったものです」

側近「先代の魔王たちも認めていた人間の良き所はまるで残っていません」

側近「如何いたしましょう。勇者は」

母魔「……」

側近「そのまま人間の国へ返すとしても、またここへ戻されるか、それとも…」

母魔「…まだ小さい子よ。なのに自分が捨てられたことも知らずに、ここまで来た」

側近「人間とは思えぬほどの強い精神を持った者です」

母魔「誰にも頼らず己の力のみでここまでやってきた。

母魔「あの子は勇者ではない。魔王の器よ」

側近「私もそう思います」

母魔「あの子を魔王に育てれば、きっと良い魔王になる」

側近「彼を洗脳しましょうか?」

母魔「いいえ、そのつもりはない」

側近「と言いますと?」

母魔「あの子を魔王にはしないわ」

側近「ならば」

母魔「…側近、あの子の母の姿、見せてみなさい」

側近「魔王さま、それは」

母魔「命令よ」

子勇の居る部屋

子勇「…うん、ママ…会いたいよ」

「勇者…起きなさい」

子勇「ママ…?」

「勇者」

母「勇者」

子勇「……ママ?」

母「勇者」

子勇「ママ……ママー!!」

子勇「ママー!あいたかったよー」

母「はい、ママも勇者に会いたかったわ。良く頑張ったわね」

子勇「…ママ?」

母「うん?どうしたの?」

子勇「どうして、ボクのこと勇者って呼ぶの?」

母「うん?あ、ああ、ごめん、皆勇者って呼ぶからついママもそう読んじゃうのよね」アセアセ

子勇「やだー、ママはボクのこと子勇って呼ぶの。勇者って呼ぶのやー」

母「そ、そうね。ごめんなさい、ママが子勇のこと間違って読んじゃって」

母「ママに怒ったのかしら」

子勇「!ううん、違うよ。怒ってないよ。ママ大好きだよ」

母「うん、ママも子勇のこと大好きだよ」

子勇「ママ」

母「ほら、起きなさい。ママがご飯作ったから」

子勇「ご飯!」ぐぅー

母「あらあら、お腹ペコペコみたいね」

子勇「うぅ…」コク

母「ほら、早く手洗ってきなさい。ママと一緒にご飯食べましょう」

子勇「うん」

母魔「…」

母「はい、今日は子勇が帰ってきたことを祝って大盤振る舞いよ」

子勇「わーっ、すごくおいしそー!」

母「ちゃんと手は洗ってきたわね?」

子勇「うん、いただきます」

母「召し上がれ」

母「もうそんなに早く食べなくても食べ物はどっかに行きませんよ?」

子勇「うっ!」詰まった

母「ほら、だから言ったじゃない」トントン

子勇「けほっ!けほっ!ふぅ、死ぬかと思った」

母「もう…そんなの美味しかったの」

子勇「うん!ママが作ってくれた料理、すごく美味しいよ!」

母「そう言ってくれると作った甲斐あるわね」

子勇「ママ」

母「何?」

子勇「どうしてボクとママ、お城の中に居るの?」

母「うん、それはね……そう、王さまにもらったのよ」

子勇「…王さま嫌い」

母「あら、どうして?」

子勇「だって、ママのこといやらしい目で見てたもん」

母「もうそんなこと言って…」

子勇「だってほんとだもん。城を出る時もママのこと合わせてくれなかったんだもん」

母「……うん、そうかもね。でも、もうそんなことはいいでしょ」

母「これからはママはどこにも消えない。子勇と一緒に、ずっとここで住むのよ?」

子勇「ずっと?」

母「ずっと、二人だけで」

子勇「昔みたいに?」

母「そう。子勇もそれがいいよね?」

母「このお城はね。王さまが魔王を倒した勇者にくれたお城なの」

母「ここでママとずっと一緒に住むのよ」

子勇「…嬉しい」

母「ママも嬉しいわ。こうしてあなたが無事に戻ってきてくれて、ほんとに良かった」

子勇「……」

母「お腹いっぱい食べた?」

子勇「うん、お腹いっぱい……ふああ」

母「また眠くなったの。さっきあんなに寝てお寝坊さんだね」

子勇「うぅ…だって眠いんだもん」

母「ふふっ、そうね、眠いんだもんね、仕方ないわね」

リアルで眠いよ?

子勇「ね、ママ、一緒に寝よ?」

母「甘えん坊さんね。魔王も倒した勇者さまが、ママが一緒に寝てくれないと眠れない子と誰が想像するのかしら」

子勇「うぅ…今日のママは凄く意地悪だよ」

母「あらあら、ごめんね。ほんとはママも子勇とずっと一緒に寝たかったの」

子勇「ほんと?」パーッ

母「ほんとよ」ニコッ

子勇「お休みなさい」

母「ええ、お休みなさい、子勇」チュッ

子勇「わっ!」

母「うん?どうしたの?寝る前にいつもほっぺにチューしてたじゃない」

子勇「してない、そんなことしてないよ?」

母「あ、あら?そうだったっけ。じゃあ、これからは寝る前に子勇のほっぺにチューしちゃうね」

子勇「……うん」

子勇「」すぴー

母「…」

母魔「子魔…」

子勇「…ママーらいすき…」

母魔「……」ギューッ

側近「魔王さま」

母魔「声が大きいわ」

側近「失礼しました」

母魔「報告を」

側近「魔族の精鋭軍団を、全て集めました。いつでも人間どもの息の根を絶つことができます」

母魔「…やってしまいなさい」

母魔「淫行に乱れたバビロンを滅ぼしてしまいなさい」

母魔「その地が彼らの悲鳴と血を吸って、二度とあのような汚らわしい生き物どもがこの世に残らないようにしなさい」

側近「ははっ」

子勇「…ん……ママ?」

子勇「居ない」

子勇「ママはどこ?」

子勇「ママ、ボクを置いて行かないで」

子勇「ボクと一緒に居て」

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