勇者「しかし何というか……、趣味悪いなお前……」
勇者「何か魔物とか徘徊してるし……」
勇者「これじゃあただの魔物の巣だよ」
魔王「デザイナー顔らへんから仕方ないやろ!」
魔王「ゴブリンさんは大体大工やで!」
魔王「とりあえず、ココを拠点にするで」
魔王「そして三国、最終的には大国を支配する……」
魔王「滅ぼすというボケに走るのもええな……くくく……」
勇者「ふざけんなよ」
勇者「そもそもそんなの私が許すわけがないだろ!」
勇者「いや、私が許しても、第二第三の勇者がお前を討伐する!」
勇者「お前の命運もここまでだ!」
魔王「そうなったらアンタの命運もここまでやな……」
勇者「ぐぅ!?」
魔王「そう! ワイらはもはや運命共同体!」
魔王「ワイが倒れれば、アンタも倒れる!」
魔王「アンタが倒れても、ワイは倒れん!」
魔王「……つまり、ワイが圧倒的にイニシアチブをとってるわけやね」
魔王「はっはっは! この元ニート姫が!」
魔王「自分の生活力のなさを嘆くがええわ!」
魔王「とりあえずゴブリンさんに味噌汁の作り方教わって来い!」
魔王「ついでに花嫁修業もさせたるわ!」
勇者「なっ……! 私はお前に操を捧げる気などない!」
魔王「コッチからお断りや、この貧乳女」
勇者「最大雷呪文を食らいたいようだな……」
勇者「果たして何発もつかな……?」
魔王「マジスイマセンでした」
勇者「しかしここにいて、何とかなるものなのか?」
勇者「夜が明けたら、他の国の奴が攻めてくるぞ?」
魔王「問題ないわ」
ゴゴゴゴゴゴ……、ガシャン
魔王「ちょっとこの地面から出てきたボタン押してみぃ」
勇者「え、うん……」
ポチッ
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
魔王「勇者がボタンを押すと、突然城が浮遊を始めた」
勇者「え!? ちょっと!? 本当に浮いてるの!?」
魔王「ゴブリンさんの大工力は三国一ぃいいいいい!!」
勇者「ゴブリンすげぇな!」
魔王「これを使えば、城に居たまま世界を移動できるわけや」
魔王「魔王が城でニートしてる理由もなっとくやろ?」
勇者「スゴーイ! 飛行船より速い!」
魔王「おいやめろ」
勇者「しかしこれさえあれば、城でニートし放題だな!」
勇者「なんで私の旅の始まりにコレがなかったんだろう……」
勇者「そしたら家でずっとニート姫してられたのに……」
魔王「しみじみした感じやけど、言ってること最低やな」
魔王「あと一応言っとくけど、うちに居る限り、ニートはさせへんで?」
勇者「へ?」
魔王「ワイの家来、それも奴隷からのスタートや!」
魔王「味噌汁を作るお仕事が待ってるんやで!」
勇者「働きたくない……」
魔王「駄目だコイツ……」
魔王「まあ、そんな駄目人間にぴったりの魔物を呼んできたから」
魔王「コック長や!」
コック長「どうも」
勇者「骸骨コックだぁー――!!」
勇者「私の冒険でも散々苦戦させられた強敵!!」
勇者「隙あらば、アイテムを奪い!」
勇者「隙がなければ、フライパンと包丁を使い、攻撃してくる!!」
勇者「仲間の盗賊が、まだドラゴンを相手にしてる方がマシだったと嘆くありさま!」
勇者「そんな冒険者には厳しすぎる魔物……」
魔王「それが、今三百体ぐらいこの城には居ます」
勇者「魔界だぁー――――!!」
勇者「もうやだお城帰る!」
魔王「了解、最初に落とすのは大国やね」
勇者「え?」
魔王「という訳で、ゴブリンさん、舵を大国に向けて!」
ゴブリン「ブヒィー!」
魔王「ほな行くで! 目指すは大国!」
勇者「え、ちょっと待って! 里帰りしたくない!」
魔王「もう遅い!」
魔王「という訳で、魔王一向は大国へと向かったのであった……」
魔王「しかし領地に入ったとたん、待ち受けてきたのは多大なる魔術射撃」
魔王「RPGのはずがSTGに早代わりである…・…」
勇者「ボソボソ、ナレーションしてんじゃねー――!」
ボゴォオオオン!!
魔王「あ、あかん! メインエンジンがやられた!」
勇者「お城にメインエンジンなんてあったんだ!」
魔王「脱出するで!!」
勇者「ど、どうやって?」
魔王「飛び降りるに決まってるやろ!」
……
…………
………………
勇者「う、うう……、ここ、どこだ……」
魔王「かくして、魔王一向が飛び降りたのは……」
勇者「ナレーションしてんじゃねぇ! 雷呪文!」
ボガァアアアアアン!!
魔王「プス……、プス……、貧乳……」
勇者「この駄目魔王が……」
勇者「辺りを見回してみると……、ここは湖付近のようだな」
勇者「よくお兄様と義妹と家来を連れてやってきたっけ……」
勇者「あの頃は仲が良かったのに……」
勇者「お兄様と義妹がくっ付いてからは……」
魔王「アンタだけのけものにされたというわけやな」
勇者「いきなり起きてくんな!」
魔王「ハッ、魔王のHPどれくらいかしっとるか? 五万以上や!」
魔王「更に第二形態、第三形態もあるで」
魔王「手加減した雷呪文ごときで倒せるわけがないやろ!」
勇者「くっ……、それでも私達の総攻撃で負けたくせに!」
魔王「四対一やで? そりゃ負けるて」
魔王「まあ、今からアンタ一人と戦っても全然負ける気はせぇへんけどな」
魔王「友情の力、結束の奇跡、という奴やね」
魔王「しかしそれも、もはやない……」
魔王「そしてワイは今生きてる」
魔王「人類はBADEND直行やね」
勇者「わ、私一人でも別にお前ぐらい倒せる!」
魔王「無駄無駄、余計なことはしなさんやな」
魔王「それにそうなっても別にええとおもっとるんやろ?」
魔王「なんせ、アンタ人類どころか一番頼りにしてた仲間に裏切られたもんな」
魔王「用が済んだら用済み言うやっちゃ」
勇者「ぐぬ……、うう……」
魔王「あらら、しおらしくなってもーて」
魔王(悪墜ち一歩手前言うとこやね)
魔王(くくく、我ながら悪いやっちゃ)
勇者「それでも……」
魔王「ん?」
勇者「それでもお兄様ならきっと何とかしてくれる!」
魔王「なんやそりゃあ……、というか生き別れた弟どうなってん」
魔王「いや、操ってたんワイやけど」
魔王「アンタに戦わせに行ってからのその後知らんねん、アイツの」
魔王「もしかしてブサっとやっちゃったん?」
勇者「私が止めを刺す寸前で、正気を取り戻し……」
勇者「自ら滝の中へと落ちていったわ」
勇者「きっともう生きては居ないでしょう」
勇者「仲間もその時は励ましたりしてくれて優しかったのに……」
魔王「そりゃ災難やったな……」
勇者「……お前の」
魔王「ん?」
勇者「お前のせいだー―――!!」
勇者「お前みたいな奴がいるから、いつまでたっても世界は私に冷たい!」
勇者「つまりお前が全ての元凶!!」
勇者「ということでここでお前を討つ!!」
魔王「ま、ま、まてや!! 現実逃避で討とうとせんといて!」
魔王「それにアンタ一人やったらいくらレベル70ほどでも討伐は無理やて!」
勇者「私のレベルは99だ……」
魔王「なん……、だと……」
勇者「という事で覚悟しろこの魔王!」
勇者「最大最強最悪の雷呪文!」
勇者「天地一体! 我のに歯向かう敵を塵も残さず消し去れ!!」
勇者「くらえー―――!!」
魔王「ちょ、堪忍! 堪忍してーな!!」
義妹「その声……、まさかお姉さま……?」
魔王「天に向かって手を掲げてる勇者に対して、ワイが命乞いをしている」
魔王「まさにその瞬間、森の中から女神が現れた――」
義妹「やっぱり、その姿、お姉さま……」
勇者「なっ……」
義妹「また我の視界に入るとはな……、三国の連中に捕らえられ」
義妹「奴隷以下の生活を送っていると思っていたが……」
義妹「ほう……? 魔王に寝返ったのか……」
義妹「まあいい……、コレで体面を気にせず、貴様に抹殺指令を下せる」
魔王「ヤバイ、この義妹、超ラスボスやで!」
勇者「ふ、ふん! 義妹よ! よもやそのような台詞をはいて」
勇者「この私と魔王の混合パーティーの前から」
勇者「生きて帰れると思っているのか!?」
義妹「くっくっ、良いのか勇者よ……」
義妹「我が死ねば貴様のお兄様が悲しむ事になるぞ?」
勇者「うっ……、くっ……!」
義妹「ふはははは!! そういうことだ! 貴様は我に手出しできまい!」
義妹「何せ、我は貴様のいとしのお兄様の嫁なのだからなぁ?」
魔王「それ、ワイには関係なくね?」
義妹「えっ」
勇者「えっ」
魔王「極大火炎呪文ー―――!!」
勇者「待て待て待て待て!! 駄目だ! 撃つなって!」
義妹「えっ、ちょ、止めて! あいつを止めなさいお姉さま!」
ドゴォオオオオオオオオオン!!
シュウウウウウ……
魔王「よーし、そのまま動くなや? 次は当てるで?」
義妹「……ひっ!」
勇者「おい、待て! 義妹を撃つつもりなら私を倒してからにしろ!」
魔王「心配あらへんて。なにも手出すつもりはあらへん」
魔王「ただこの娘、大国との交渉に使えるとおもてなぁ」
勇者「悪い顔だ!」
魔王「しかし王妃様が一人でココに来たはずがないし……」
魔王「大方、近くにけっこうな大群がおんねやろ?」
魔王「恐らく墜落した城の生き残りを探してた」
魔王「それにアンタは同行してて、たまたま聞き覚えのある声を聞いたから」
魔王「こっちによってきたというところやろ? どうや?」
義妹「は、はい……、そのとおりです……」
魔王「というわけや、勇者さん」
魔王「この娘、人質にするしか生き残る道はないで」
勇者「う……、うん……、しかたない……のかな?」
義妹「貴様! 魔王に寝返っただけでは飽き足らず!」
義妹「もはや家族に対する情も失ったかぁ!」
魔王「……この娘、多重人格かいな」
勇者「……ちょっと、猫かぶりが過ぎるだけだ」
ザザザザザザザザ
魔王「おっと、今の声を聞きつけて、あっという間に軍隊登場ゥ~」
魔王「しまった囲まれたで」
勇者「どうしてこうなった」
魔王「しかしこっちには人質が居る! お前らどけぃ!」
勇者兄(以下勇兄)「俺の妻を放せ!」
魔王「なんか、普通に主人公っぽい王様が出てきおった」
勇者「私の兄だ……」
勇兄「勇者! お前、まさか魔王側に寝返るなんて!」
勇者「寝返ってません! 奴隷にされただけです!」
勇兄「同じ事だろうが!」
勇者「じゃあどうしろと! 三国に裏切られ、自国では義妹が命を狙ってる!」
勇者「だったら寝返るしかないじゃない!」
魔王「あれ? 寝返ったん?」
勇者「……ハッ!」
勇兄「そうか……、魔王に寝返ったというのなら」
勇兄「実の妹でも私は戦おう……」
勇者「お、お兄様……」
魔王「この娘がどうなってもええんかいー!」
義妹「ひぃいいー――!」
勇兄「卑怯だぞ魔王! 妻を放せ!」
魔王「ヒャッハー!! 実の妹みたいに見捨てたらどやねん!」
勇兄「くそっ! 勇者! お前からも何とか言ってくれ」
勇者「ふふふふふ……、お兄様……、ふふふふふ……」
勇兄「ゆ、勇者……?」
勇者「どいつもこいつもいなくなっちまえェー――!!」
勇者「最大最強最悪最終雷呪文ー――――!!」
勇者「天地割れよ! 魔を射抜く最後の剣よ、ココに来たれ!」
魔王「皆逃げェー――い!! あれはワイの究極火炎呪文より危険やー――!!」
一同「いやああああああああ!!」
……
…………
………………