勇者「どうしてこうなった!!」魔王「いやしらんがな」 1/6

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勇者「全てお前のせいだ! お前がいるから私は!!」

勇者「城でニート姫をしていたのに、勇者にされて旅に出され!」

勇者「世界にある三国を渡り、三国それぞれの代表を仲間にし!」

勇者「村民から頼まれる数々のお使いをこなし!」

勇者「旅が始まった時から一緒だった、セバスチャンがパーティーから離脱し!」

勇者「やっとの思いでたどり着いた魔王城で生き別れの弟と決着をつけ!」

勇者「そして魔王を倒し、止めを刺す一歩手前で、仲間に裏切られた!」

勇者「それでこのざまよ!」

魔王「あ、今、ワイらはどこかの城の折の中に閉じ込められておるんや」

勇者「黙れ! 喋るな! お前のせいだ!」

魔王「このお姫様はうるさいなー。カルシウム足りとるん?」

勇者「カルシウム? カルシウムなんて足りるかぁ――!!」

魔王「脂肪分も足りとらへんみたいやしな」

勇者「何処見てる!?」

魔王「女っ気がほとんどといってないよな、アンタ」

魔王「そんなんやから魔王討伐の旅に出されたんちゃうん?」

魔王「実際、男ばかりのパーティーで色恋のひとつもなかったんやろ?」

勇者「黙れ! 喋るな! 空気がもったいない!」

魔王「空気がもったいないってお前……」

勇者「もったいないものはもったいないんだ!」

魔王「まあ、ええけどさ……、ココ何処か分かるん?」

勇者「……、恐らく魔法使いの国だろう」

勇者「私の魔術を封じる牢など、そこにしかあるはずがないからな」

魔王「ほーかー、まったく厄介なもん作ってくれたもんやで」

勇者「お前のせいだ!」

魔王「まったくうるさいやっちゃ……」

魔王「怒鳴る元気があるんやったらさー」

魔王「脱出方法でもかんがえーや」

勇者「そんなものあったら、とっくに脱出してる!」

魔王「まあ、そりゃあそうやな」

勇者「何でそんなにのんきなんだお前はー!!」

勇者「それになんだ! その口調は!」

勇者「最後の戦いの時も思っていたが!」

勇者「『よくここまでたどりつけたな、まあお茶でものまへん?』」

勇者「これが世界を左右する戦いの幕開けだぞ!?」

魔王「そんなんいっても、魔界やと皆こんな喋り方やで?」

魔王「わいが特別なわけやあらへんて」

勇者「そうなの?」

魔王「嘘や」

勇者「このやろぉおおおお!!」

魔王「まあ、魔界やとこうやって皆、冗談が好きやったな」

魔王「それと全力で皆ボケんねや」

魔王「『ちょっと人間界滅ぼしてくるわー』とかさ」

魔王「あれはわいの中で最高のボケやったなぁ……」

勇者「ボケで人間界滅ぼしに来るなよ!!」

魔王「まあ、今のも冗談や」

魔王「ところでさ、これからどうなると思うん?」

勇者「お前が? 私が?」

魔王「両方でええよ」

勇者「そうだな……」

勇者「まあ、お前は恐らく三国の代表が集まれるところで」

勇者「確実に処刑されるよな……」

魔王「まあ、そうやろなー」

魔王「で、アンタは?」

勇者「私はー……、うん、三国以外の国」

勇者「大国の出身だから、恐らくそことの交渉材料にされる……」

魔王「まあ、仮にも姫さんやしな」

勇者「そういうことだ。まあ上手くいけば助かると思う」

魔王「でも助からへん可能性のほうが高いんやろ?」

勇者「だって旅に出さされるぐらいの姫だぞ?」

勇者「ぶっちゃけあのまま国にいたら、政権を巡って暗殺されてたし!」

勇者「そして確実に政権は私の義妹が手に入れてるし!」

勇者「つまりこのままデス・オア・ダイ!」

勇者「どうしてこうなった!!」

魔王「いやしらんがな」

勇者「お前のせいだー―――!!」

魔王「また初めから続けんのか?」

勇者「うるさい! 黙れ! しゃべるな!」

魔王「やれやれやで……」

魔王「まあとりあえず落ち着きぃな」

魔王「ココから出る方法一緒に考えましょ?」

勇者「う、うん……」

魔王「魔術は使えへん……、武器も取られとる……」

魔王「しかし外には見張りはおらず、あるのはこの鉄格子のみ……」

魔王「……いけるで」

勇者「マジで!?」

魔王「魔界にいたときに知人に教えてもらった技術があれば」

魔王「牢屋の鍵ぐらい開く事が出来るんや!」

勇者「おおおー!」

魔王「た・だ・し」

勇者「なんだよ?」

魔王「何か細いもんが必要や……。針金とか……」

魔王「もってへんか?」

勇者「そんなの持ってるわけないだろ!」

勇者「ココを何処だと思ってる! そう、牢屋!」

勇者「そして牢屋に入れられたのは……」

勇者「お前のせいだー――!!」

魔王「ほんまにうるさいやっちゃ……」

魔王「……ん、待てよ? お前貧乳やけどブラとかしとる?」

勇者「な、なんでそんなこと聞くんだよ!」

魔王「しとるんか?」

勇者「う、うん……」

魔王「脱げ」

勇者「はぁ!?」

勇者「な、なんでだよ!? 今更人間に色気づいたか!」

魔王「ええから脱げー!」

勇者「いーやー!」

魔王「魔族の力にちょっと筋力を」

魔王「魔翌力で補強してるだけの小娘が適うはずもなく……」

魔王「あっというまに勇者はブラを奪われたのだった……」

魔王「って魔翌翌翌力ってなんやねん」

勇者「この世界で魔術を使うのに必要な力だろ?」

勇者「世界中に空気のように蔓延してるんだよ」

勇者「縮めて魔翌力と呼ぶ」

魔王「説明ありがとな」

勇者「て言うかブラ返せー!!」

魔王「魔翌翌翌力ってなんやねん!」

魔王「凄い噛みかたしたな我ながら!」

魔王「くそっ世界からの妨害やな!!」

勇者「何を言ってるんだ、お前は……」

魔王「まあ、ええわ」

魔王「ほなちょっとこれ借りるで」

勇者「返せー! て言うかコッチみんな!」

魔王「今勇者はブラをひん剥かれ、涙目で半裸である」

勇者「後なんでナレーションお前なんだよ!」

魔王「このブラから針金を取り出して……」

魔王「これを使って……チョチョイのチョイ」

ガチャ

魔王「開いたわ」

勇者「え!? マジで!?」

魔王「ブラは使いもんにならんようなったけどな」

勇者「…………」

勇者「お前のせいだー!!!」

魔王「それ口癖かいな?」

魔王「ほら、この牢から逃げれば魔術が使えるで」

魔王「魔術を使えば、こんなところ簡単に逃げ出せるわ」

勇者「う、うん……、それじゃあ外に出るか」

ガシィ

勇者「なんだよ、手なんか掴んで」

魔王「……今気がついたんやけどさ」

魔王「アンタが外に出たら、力が元に戻るやろ?」

勇者「そうだな」

魔王「力が戻ったら、まず何する?」

勇者「そりゃあまずお前を討伐……」

バンッッ!! ガシャ!

勇者「ああ! 閉めた! 自分だけ外に出て閉めやがった!」

魔王「当たり前や! 何で自分が討伐されかねんのにわざわざアンタを出さなあかんねん!!」

勇者「くそっ! さすが汚いな魔王汚い!」

魔王「当然の理や!」

魔王「さて、そこでアンタは末永く生きるんやね」

魔王「ワイは手始めにこの城をぶっこして、一世一代のボケの続きをする」

魔王「ほなな!」

勇者「ま、待って! 討伐しないから待って!」

ピタ

魔王「ふむ……、今の話しほんまか?」

勇者「うん! 討伐しないから開放して!」

魔王「……」

魔王(もちろんこんな事まともに信じるワイやあらへん……)

魔王(どうせ外に出た瞬間、最大雷魔術を使ってくるに決まってる)

魔王(しかしコイツは今、人類に裏切られた状態)

魔王(ワイを討伐しても行く先がないことを思い知らせれば)

魔王(上手く手ゴマにできるか……?)

魔王「その話、もうちょっと聞かせてもらいましょか」

魔王「ほんまにそこから出てもワイを討伐せえへんねんな?」

勇者「うん! 約束する!」

魔王「ワイの家来になるな?」

勇者「うん! 家来になる!」

魔王「そうすると……奴隷からスタートやけどええか?」

勇者「うん! 奴隷でも良い!」

魔王「ほな、城の片付けとか色々あるけどええか?」

勇者「大丈夫大丈夫! 全然問題ない!」

魔王「味噌汁とかつくらなあかんねんで? 作れるん?」

勇者「善処します!」

魔王「ほな、開けたるわ」

ガチャガチャ、ガシャ

勇者「しぃいいいにぃいいさぁあああああらああああせぃいいいい!!」

勇者「最大雷呪文!! 拘束術式開放!!」

勇者「雷鳴よとどろけ!! 天地を破壊し、我の最強を示せ!」

魔王「待てやぁあああああああ!!」

……

…………

………………

勇者「どうしてこうなった!!」

魔王「あんたが話しきかんと、最大雷呪文ぶっ放すからや!」

魔王「今、どうなっておるかというと」

魔王「城の地下室にいるワイむかって雷呪文が落ちたため」

魔王「その間、つまり天と地の間にあった」

魔王「魔法使いの国の城は……」

魔王「跡形も残ってとらへんのや……」

魔王「そして最大雷呪文は勇者にしかうてん」

魔王「つまり、この城をぶっ壊したのは確実に勇者」

魔王「よーするに三国から指名手配やね」

魔王「ワイ倒してもどーしょーもないで、これ」

勇者「お前のせいだー―――!!」

魔王「味噌汁作れるんやったら家来にしたってもええで?」

勇者「お断りだー――――!!」

第一話:魔法使いの城脱出編:完 続く

魔王「というわけで早速第二話や」

勇者「何の話だ……」

魔王「まあ、アンタは気にせんでもええて」

魔王「というわけでワイらはぶっ壊れた城から脱出し――」

魔王「とりあえず寝床がないから、近くの森に入り」

魔王「周りの魔物に城を建設させた」

魔王「それも一夜で!」

勇者「労働法違反もいいとこだな!!」

魔王「これがほんとの一夜城!」

勇者「まさにそのとおりだけど!」

魔王「いい労働力だったで……、ゴブリンさんは……」

勇者「まだ生きてるからな!?」

ゴブリン「ブヒー」

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