勇者「どうしてこうなった!!」魔王「いやしらんがな」 5/6

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警備1「侵入者だー――!!」

警備2「大国を滅亡させた勇者と魔王だー―――!!」

警備3「俺達で相手できるわけがねー―――!!」

警備123「皆、逃げろォー―――!!」

魔王「逃げんなや……」

勇者「懐かしいなぁ……」

盗賊「これはこれは勇者殿ではありませんか」

勇者「よぉ、盗賊」

魔王「いつも思うんやけど、この世界皆」

魔王「身分と口調のギャップありすぎへんか?」

勇者「お前が言うな」

盗賊「まあ、漫才はそれぐらいにしてくださいませんか?」

盗賊「大方、私を始末しに来たのでしょう?」

盗賊「どうぞ、ご自由に」

盗賊「この職業に就くと決めた頃から覚悟は出来ています」

盗賊「世界を揺るがしかねない裏切りをして、その結果失敗した」

盗賊「賭け事に負けるということは、賭け金を支払うということですから」

勇者「盗賊……、お前、見た目も口調も紳士なのに……」

勇者「何で私を裏切ったりしたんだ」

盗賊「だって盗賊ですから」

盗賊「盗賊がパーティーの家計管理などで」

盗賊「満足していては名が廃れますよ!」

盗賊「盗賊として! 一世一代の勝負に出なければ!!」

盗賊「そう気づいたのは、あなたが魔王と戦う前夜でした……」

盗賊「そこで私は魔法使い、戦士の二人にこう、提案しました」

盗賊「勇者が魔王に勝てば、本格的に大国が世界を支配することになる……」

盗賊「だから勇者が魔王に止めを刺す直前で」

盗賊「裏切り、我ら三人だけの手柄にしよう、と……」

盗賊「馬鹿な二人は簡単にこの話に乗りましたよ……」

盗賊「戦士はともかく、魔法使いが馬鹿なのは少し笑えましたが」

勇者「……何が言いたい?」

盗賊「実は私の計画はコレで終わりではなかったのですよ」

盗賊「真の計画は勇者、あなたを魔法使いの城に捕らえてから……」

盗賊「あそこの牢は魔力を封じることの出来るとてつもない牢ですが」

盗賊「ちょっとした技術で鍵を開けることが出来ます」

盗賊「盗賊なら誰にでも出来るような……ね」

盗賊「そう! 私は裏切った振りをし!」

盗賊「絶望しきっているあなたを颯爽と助け!」

盗賊「あなたの一番大事なものを盗む手はずだったのです!」

勇者「な、なんだよ、一番大切なものって……?」

魔王「初体験ちゃう?」

盗賊「それはあなたの心です!」

勇者「……恥ずかしい」

魔王「自爆呪文が発動せぇへんかったのが不思議やな」

盗賊「うるさい! その計画を! 魔王!」

盗賊「あなたが勇者と共に脱走したことによってぶっ潰した!!」

盗賊「お前が居なければ、今頃勇者と」

盗賊「イチャイチャラブラブ盗賊ライフを送っていたのに!」

盗賊「お前のせいだァー―――!!」

盗賊「勇者よ! 今からでも遅くない! 私とよりを戻しませんか?」

勇者「なんだよ、その今まで付き合ってたみたいな発言は」

勇者「私とお前は単なる旅仲間だっただろう」

勇者「それに私はもう魔王と……ゴニョゴニョ」

盗賊「お腹にはあなたの子供がいるのよ!」

勇者「お前、男だろ!?」

盗賊「性転換したのよ!」

勇者「してたとしても私は女だから出来ない!」

魔王「なんや色恋沙汰の一つもないかと思ったら」

魔王「お相手が奥手なだけやってんなー」

勇者「ん……、どうやらそうみたい」

勇者「あ、『より戻したらええやん』とか言ったら」

勇者「雷呪文数万発食らわすからね?」

魔王「……色恋はともかく、相方を手放す気はないで」

盗賊「私を差し置いてイチャイチャしてんじゃねぇー――!!」

盗賊「勇者! 私の元へと戻って来い!」

盗賊「NOというのなら、この城もろとも、ぶっ飛ばす!!」

盗賊「既に地下に大量の火薬を用意している!」

盗賊「あとはこのボタンを押すだけだ!」

勇者「えーっと……、どうぞ?」

盗賊「えっ」

勇者「ほら私達、城ぶっ壊しても大国滅ぼしても」

勇者「その瓦礫とか余波とかで倒れてないじゃん?」

勇者「何故ならステータスの耐久力が高いから」

勇者「だから城がぶっ飛んだぐらいじゃ全然問題ないんだよね……」

勇者「お前はどうか知らないけど」

魔王「そういうことやで。やめとけやめとけ」

魔王「そんなことよりお前に頼みたいことがあってな……」

盗賊「ちくしょー―――!!」

ポチッ

魔王「あ、押しおった」

勇者「この……、馬鹿!」

ドドー――――ン!!

……

…………

………………

魔王「……盗賊の国の城までぶっ壊れたか」

魔王「この瓦礫やと、ワイら以外には生きとらへんやろな……」

勇者「まったく盗賊は馬鹿だよ……」

魔王「あいつは生きてるて……、ワイらの心に……」

勇者「それ、自爆呪文?」

魔王「ゴバハッ」

勇者「でも別にいいよ……」

勇者「魔王さえいればほかには何もいらないよ……」

魔王「やめて背筋がぞくぞくするわ」

勇者「うふふ……、うふふふふ……」

魔王「悪墜ちやのーて順調にヤンデレルートに……」

魔王「……まあ、とりあえず次どうする?」

魔王「魔法使いの国の城もぶっ飛ばしたし」

魔王「あとは戦士の国か」

勇者「そんなことより宿でイチャイチャしよう……?」

魔王「落ち着け落ち着けれれれ冷静になれ」

魔王「その後、ヤンデレモードの勇者はデレ期に変わる」

魔王「夜まで続くのであった……」

魔王「まあ、夜になってもあんまり行動は変わらんかったけどね……」

第四話:盗賊の国の城撃破編:完:続く

黒騎士「盗賊の国の城に来てみたはいいが……」

黒騎士「時、既に遅しか」

黒騎士「既に瓦礫の山だ」

黒騎士「移動呪文は勇者の洗礼を受けている」

黒騎士「姉さんにしか使えないしな……」

魔術師「という訳で第五話だヒャー――ハッハッハッハ!!」

黒騎士「うお! びっくりした!」

魔術師「よぉ、黒騎士ちゃん元気ィー?」

黒騎士「お前は確か、姉さんの仲間だった魔法使い……」

魔術師「またの名を魔術師――、まあどっちでも良いけどなぁ」

魔術師「するめというかあたりめというかの違いだし」

魔術師「ヒャー―――ハッハッハッハ!!」

黒騎士「もっとこう魔術師って落ち着いた雰囲気だろ、普通……」

黒騎士「お前はどっちかって言うと狂戦士って感じが……」

黒騎士「年齢も普通に若いし。まともなのは服装だけだよな」

魔術師「まず形から入れって言うだろォー?」

魔術師「それに俺みたいに才能があるとさァー」

魔術師「老け込むまで修行なんてしなくて良いのよォー」

魔術師「なーんせ、一度魔方陣を見た呪文なら……」

魔術師「移動呪文だろうが、雷呪文だろうが」

魔術師「自爆呪文だろうが、暗黒呪文だろうが」

魔術師「自分のものに出来ちまうんだからなァー――!!」

魔術師「まったく――、俺が酒場で酔いつぶれてなけりゃあ」

魔術師「あの二人の脱走も止められたんだがぁ」

魔術師「生憎とハメ外しすぎちまったぜ……」

黒騎士「でも移動呪文が使えるんなら、すぐに追えたはずだろう?」

魔術師「城直したり、犠牲者蘇生してたりしてたんだよぉー――!!」

魔術師「おまけにあいつら脱出から三日も経たずに」

魔術師「大国を滅ぼしやがった!!」

魔術師「その上にご丁寧に樹海まで生やしやがってなぁ!!」

魔術師「復興と住民蘇生に、俺が一体どれだけMP使ったと思ってやがる!」

魔術師「国の爺共が煩くなかったら放り出してる作業だぜ……」

黒騎士「そ、そうか……」

黒騎士「ということは義妹と兄上も?」

魔術師「もちろん蘇生させたよぉ」

魔術師「魂さえありゃあいくらでも蘇生呪文で蘇生できるからなぁ」

黒騎士「ドラゴソボールもびっくりだな」

魔術師「まぁ実質俺が勇者パーティー最強だからなぁ」

魔術師「それぐらい何とでもなるわけよぉ」

魔術師「ただよ――、大国を滅ぼした呪文」

魔術師「ありゃ一体なんだ?」

黒騎士「魔王の呪文じゃないのか?」

魔術師「そんな呪文覚えてたら、とっくに連発して」

魔術師「世界滅ぼしてるはずだろぉ?」

魔術師「つまりだ――」

魔術師「いつ覚えたか分かんねぇが、アレは勇者の呪文ってことだよ」

黒騎士「姉さんが……」

黒騎士「おのれ魔王……、姉さんを洗脳するだけじゃなく」

黒騎士「人体改造して、強力な呪文を覚えさせたんだな……」

魔術師「洗脳――っていうのもどうかと違うと思うぜぇ?」

魔術師「魔王が操ってるんだったらやっぱり」

魔術師「呪文連発して世界滅ぼしてるはずだしなぁ」

黒騎士「つまり……、姉さんはまだ完全に操られてないと?」

魔術師「いやそうじゃなくて」

黒騎士「まだ姉さんを元に戻す手はあると!」

黒騎士「待っててください姉さん――」

黒騎士「ねえさぁあああああああああああん!!」

魔術師(こいつと話してると――)

魔術師(俺が何だかんだで常識人ポジションに)

魔術師(納まってる理由が分かる気がする……)

魔術師(皆、ハッチャケ過ぎなんだよぉ……)

魔術師「とりあえず盗賊の城治して」

魔術師「盗賊の奴を蘇生してやるとするかぁ」

盗賊「それには及びませんよ」

魔術師「!?」

魔術師「生きていたのか盗賊――ッッ!」

盗賊「ふっ、勇者のパーティーが爆発ごときでくたばる訳ないでしょう?」

盗賊「彼らの法則は私にも通じたわけですよ」

盗賊「まぁあの二人に勝てるはずがないんで」

盗賊「くたばったフリをしていましたが」

魔術師「そぉか、良かったなぁ」

盗賊「さて黒騎士さん!」

黒騎士「ねえさぁあああああ……、なんだい?」

盗賊「私達とパーティーを組みましょう」

黒騎士「何でさ?」

盗賊「何でと聞きますか……、答えは簡単です」

盗賊「私達が組んだ方が」

盗賊「あなたのお姉さんを救出しやすいからですよ」

盗賊「魔術師の呪文! 私の手際! あなたの戦闘力!」

盗賊「この三つが合わされば、魔王なんて目ではないでしょう?」

黒騎士「たしかにね……」

黒騎士「しかし盗賊、お前は駄目だ」

盗賊「!?」

黒騎士「洗脳時代、お前の策によって」

黒騎士「何回、姉さんを取り逃がしたと思ってる!」

黒騎士「どうせ今回も自分だけが美味い思いをする」

黒騎士「策を練っているに決まってる!!」

黒騎士「僕は騙されないぞ!!」

魔術師「しかし盗賊の策がねぇとよー」

魔術師「ぶっちゃけ魔王と勇者同時に相手取るのは無理だぜ?」

魔術師「前回あの二人を捕らえられたのも、盗賊の策だし」

黒騎士「そういやさっきから逃がしただの」

黒騎士「捕らえただの言ってるけどさ」

黒騎士「何のことだよ?」

黒騎士「お前らは魔王に負けて」

黒騎士「姉さんだけ魔王に捕らえられたって聞いたけど?」

魔術師「え、ああ、お前にはそう言ってあったっけぇ」

魔術師「いやさぁ、実はよぉ……」

ガシッ!

盗賊「何話そうとしてるんですか、魔術師(ヒソッ」

魔術師「えぇ? 俺らが勇者裏切って魔王と一緒に捕らえたこ……」

盗賊「声がでかいッッ!!」

盗賊「いいですか、魔術師(ヒソッ」

盗賊「そんなことを今話せば、このヤンデレシスコン野郎は」

盗賊「私達を攻撃してくるに決まってます(ヒソッ」

盗賊「なんせ、最愛の姉を裏切った罪人なんですからね(ヒソッ」

盗賊「それをあなたは……、それに大国ともいずれ戦争になるのに」

盗賊「わざわざ直してしまってどうするんですか(ヒソッ」

魔術師「いやだって爺が『困った時はお互い様』って言ってくるしよ……」

魔術師「それにお前はああ言ってたが、ウチの国は基本鎖国主義だし」

魔術師「権力争いとかあんま関わらないタイプなんだよなぁ」

魔術師「裏切ったのもぶっちゃけ」

魔術師「あいつが気に入らなかったからだし(ヒソッ」

魔術師「牢に勇者ぶち込むのも大変だったんだぜー?」

魔術師「魔王の見張り役として一緒の牢に入るって」

魔術師「本人が頑固に言い張ってってことでぶちこんだからな(ヒソッ」

盗賊「端から処刑とか考えてなかったわけですか……(ヒソッ」

魔術師「だってうちじゃ、既にアイドルみたいなものだし」

魔術師「まったく爺どももあんな貧乳の何処がいいんだか……」

魔術師「しょっちゅう突っかかってきやがるし、小言は煩いしよぉー(ヒソッ」

盗賊(駄目だコイツ……、まったく後先考えてない……)

盗賊(田舎の若者って感じ丸出しだ……)

盗賊(勇者も勇者で世間知らずだったが……)

黒騎士「さっきから何二人でこそこそ話してる?」

盗賊「ああ、すいません。ちょっとした情報の行き違いのようです」

魔術師「だそうだ」

盗賊「とりあえず私もついていきます」

盗賊「あなた達二人じゃ出来ることも出来ませんよ」

盗賊「第一、あなた達。あの二人が何処に行ったのか」

盗賊「分かってるんですか?」

魔術師「あー……、うちの城、大国、盗賊の城と来てるから……」

黒騎士「戦士の城か?」

盗賊「ふん、一応頭の中に脳みそはあるようですね」

盗賊「そうです、次は戦士の城のはずです」

魔術師「よりによって戦士の城かよぉ……」

盗賊「それがどうかしましたか?」

魔術師「あの見た目幼女のところに行くのはな……」

盗賊「まあ、一緒にいるとガリガリと何かが削れていきますもんね」

盗賊(私は勇者一筋でしたが)

黒騎士「御託は良い」

黒騎士「さっさと移動呪文を使え」

魔術師「はいよ……」

魔術師「移動呪文!!」

ビュゥウウウウン

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