警備1「侵入者だー――!!」
警備2「大国を滅亡させた勇者と魔王だー―――!!」
警備3「俺達で相手できるわけがねー―――!!」
警備123「皆、逃げろォー―――!!」
魔王「逃げんなや……」
勇者「懐かしいなぁ……」
盗賊「これはこれは勇者殿ではありませんか」
勇者「よぉ、盗賊」
魔王「いつも思うんやけど、この世界皆」
魔王「身分と口調のギャップありすぎへんか?」
勇者「お前が言うな」
盗賊「まあ、漫才はそれぐらいにしてくださいませんか?」
盗賊「大方、私を始末しに来たのでしょう?」
盗賊「どうぞ、ご自由に」
盗賊「この職業に就くと決めた頃から覚悟は出来ています」
盗賊「世界を揺るがしかねない裏切りをして、その結果失敗した」
盗賊「賭け事に負けるということは、賭け金を支払うということですから」
勇者「盗賊……、お前、見た目も口調も紳士なのに……」
勇者「何で私を裏切ったりしたんだ」
盗賊「だって盗賊ですから」
盗賊「盗賊がパーティーの家計管理などで」
盗賊「満足していては名が廃れますよ!」
盗賊「盗賊として! 一世一代の勝負に出なければ!!」
盗賊「そう気づいたのは、あなたが魔王と戦う前夜でした……」
盗賊「そこで私は魔法使い、戦士の二人にこう、提案しました」
盗賊「勇者が魔王に勝てば、本格的に大国が世界を支配することになる……」
盗賊「だから勇者が魔王に止めを刺す直前で」
盗賊「裏切り、我ら三人だけの手柄にしよう、と……」
盗賊「馬鹿な二人は簡単にこの話に乗りましたよ……」
盗賊「戦士はともかく、魔法使いが馬鹿なのは少し笑えましたが」
勇者「……何が言いたい?」
盗賊「実は私の計画はコレで終わりではなかったのですよ」
盗賊「真の計画は勇者、あなたを魔法使いの城に捕らえてから……」
盗賊「あそこの牢は魔力を封じることの出来るとてつもない牢ですが」
盗賊「ちょっとした技術で鍵を開けることが出来ます」
盗賊「盗賊なら誰にでも出来るような……ね」
盗賊「そう! 私は裏切った振りをし!」
盗賊「絶望しきっているあなたを颯爽と助け!」
盗賊「あなたの一番大事なものを盗む手はずだったのです!」
勇者「な、なんだよ、一番大切なものって……?」
魔王「初体験ちゃう?」
盗賊「それはあなたの心です!」
勇者「……恥ずかしい」
魔王「自爆呪文が発動せぇへんかったのが不思議やな」
盗賊「うるさい! その計画を! 魔王!」
盗賊「あなたが勇者と共に脱走したことによってぶっ潰した!!」
盗賊「お前が居なければ、今頃勇者と」
盗賊「イチャイチャラブラブ盗賊ライフを送っていたのに!」
盗賊「お前のせいだァー―――!!」
盗賊「勇者よ! 今からでも遅くない! 私とよりを戻しませんか?」
勇者「なんだよ、その今まで付き合ってたみたいな発言は」
勇者「私とお前は単なる旅仲間だっただろう」
勇者「それに私はもう魔王と……ゴニョゴニョ」
盗賊「お腹にはあなたの子供がいるのよ!」
勇者「お前、男だろ!?」
盗賊「性転換したのよ!」
勇者「してたとしても私は女だから出来ない!」
魔王「なんや色恋沙汰の一つもないかと思ったら」
魔王「お相手が奥手なだけやってんなー」
勇者「ん……、どうやらそうみたい」
勇者「あ、『より戻したらええやん』とか言ったら」
勇者「雷呪文数万発食らわすからね?」
魔王「……色恋はともかく、相方を手放す気はないで」
盗賊「私を差し置いてイチャイチャしてんじゃねぇー――!!」
盗賊「勇者! 私の元へと戻って来い!」
盗賊「NOというのなら、この城もろとも、ぶっ飛ばす!!」
盗賊「既に地下に大量の火薬を用意している!」
盗賊「あとはこのボタンを押すだけだ!」
勇者「えーっと……、どうぞ?」
盗賊「えっ」
勇者「ほら私達、城ぶっ壊しても大国滅ぼしても」
勇者「その瓦礫とか余波とかで倒れてないじゃん?」
勇者「何故ならステータスの耐久力が高いから」
勇者「だから城がぶっ飛んだぐらいじゃ全然問題ないんだよね……」
勇者「お前はどうか知らないけど」
魔王「そういうことやで。やめとけやめとけ」
魔王「そんなことよりお前に頼みたいことがあってな……」
盗賊「ちくしょー―――!!」
ポチッ
魔王「あ、押しおった」
勇者「この……、馬鹿!」
ドドー――――ン!!
……
…………
………………
魔王「……盗賊の国の城までぶっ壊れたか」
魔王「この瓦礫やと、ワイら以外には生きとらへんやろな……」
勇者「まったく盗賊は馬鹿だよ……」
魔王「あいつは生きてるて……、ワイらの心に……」
勇者「それ、自爆呪文?」
魔王「ゴバハッ」
勇者「でも別にいいよ……」
勇者「魔王さえいればほかには何もいらないよ……」
魔王「やめて背筋がぞくぞくするわ」
勇者「うふふ……、うふふふふ……」
魔王「悪墜ちやのーて順調にヤンデレルートに……」
魔王「……まあ、とりあえず次どうする?」
魔王「魔法使いの国の城もぶっ飛ばしたし」
魔王「あとは戦士の国か」
勇者「そんなことより宿でイチャイチャしよう……?」
魔王「落ち着け落ち着けれれれ冷静になれ」
魔王「その後、ヤンデレモードの勇者はデレ期に変わる」
魔王「夜まで続くのであった……」
魔王「まあ、夜になってもあんまり行動は変わらんかったけどね……」
第四話:盗賊の国の城撃破編:完:続く
黒騎士「盗賊の国の城に来てみたはいいが……」
黒騎士「時、既に遅しか」
黒騎士「既に瓦礫の山だ」
黒騎士「移動呪文は勇者の洗礼を受けている」
黒騎士「姉さんにしか使えないしな……」
魔術師「という訳で第五話だヒャー――ハッハッハッハ!!」
黒騎士「うお! びっくりした!」
魔術師「よぉ、黒騎士ちゃん元気ィー?」
黒騎士「お前は確か、姉さんの仲間だった魔法使い……」
魔術師「またの名を魔術師――、まあどっちでも良いけどなぁ」
魔術師「するめというかあたりめというかの違いだし」
魔術師「ヒャー―――ハッハッハッハ!!」
黒騎士「もっとこう魔術師って落ち着いた雰囲気だろ、普通……」
黒騎士「お前はどっちかって言うと狂戦士って感じが……」
黒騎士「年齢も普通に若いし。まともなのは服装だけだよな」
魔術師「まず形から入れって言うだろォー?」
魔術師「それに俺みたいに才能があるとさァー」
魔術師「老け込むまで修行なんてしなくて良いのよォー」
魔術師「なーんせ、一度魔方陣を見た呪文なら……」
魔術師「移動呪文だろうが、雷呪文だろうが」
魔術師「自爆呪文だろうが、暗黒呪文だろうが」
魔術師「自分のものに出来ちまうんだからなァー――!!」
魔術師「まったく――、俺が酒場で酔いつぶれてなけりゃあ」
魔術師「あの二人の脱走も止められたんだがぁ」
魔術師「生憎とハメ外しすぎちまったぜ……」
黒騎士「でも移動呪文が使えるんなら、すぐに追えたはずだろう?」
魔術師「城直したり、犠牲者蘇生してたりしてたんだよぉー――!!」
魔術師「おまけにあいつら脱出から三日も経たずに」
魔術師「大国を滅ぼしやがった!!」
魔術師「その上にご丁寧に樹海まで生やしやがってなぁ!!」
魔術師「復興と住民蘇生に、俺が一体どれだけMP使ったと思ってやがる!」
魔術師「国の爺共が煩くなかったら放り出してる作業だぜ……」
黒騎士「そ、そうか……」
黒騎士「ということは義妹と兄上も?」
魔術師「もちろん蘇生させたよぉ」
魔術師「魂さえありゃあいくらでも蘇生呪文で蘇生できるからなぁ」
黒騎士「ドラゴソボールもびっくりだな」
魔術師「まぁ実質俺が勇者パーティー最強だからなぁ」
魔術師「それぐらい何とでもなるわけよぉ」
魔術師「ただよ――、大国を滅ぼした呪文」
魔術師「ありゃ一体なんだ?」
黒騎士「魔王の呪文じゃないのか?」
魔術師「そんな呪文覚えてたら、とっくに連発して」
魔術師「世界滅ぼしてるはずだろぉ?」
魔術師「つまりだ――」
魔術師「いつ覚えたか分かんねぇが、アレは勇者の呪文ってことだよ」
黒騎士「姉さんが……」
黒騎士「おのれ魔王……、姉さんを洗脳するだけじゃなく」
黒騎士「人体改造して、強力な呪文を覚えさせたんだな……」
魔術師「洗脳――っていうのもどうかと違うと思うぜぇ?」
魔術師「魔王が操ってるんだったらやっぱり」
魔術師「呪文連発して世界滅ぼしてるはずだしなぁ」
黒騎士「つまり……、姉さんはまだ完全に操られてないと?」
魔術師「いやそうじゃなくて」
黒騎士「まだ姉さんを元に戻す手はあると!」
黒騎士「待っててください姉さん――」
黒騎士「ねえさぁあああああああああああん!!」
魔術師(こいつと話してると――)
魔術師(俺が何だかんだで常識人ポジションに)
魔術師(納まってる理由が分かる気がする……)
魔術師(皆、ハッチャケ過ぎなんだよぉ……)
魔術師「とりあえず盗賊の城治して」
魔術師「盗賊の奴を蘇生してやるとするかぁ」
盗賊「それには及びませんよ」
魔術師「!?」
魔術師「生きていたのか盗賊――ッッ!」
盗賊「ふっ、勇者のパーティーが爆発ごときでくたばる訳ないでしょう?」
盗賊「彼らの法則は私にも通じたわけですよ」
盗賊「まぁあの二人に勝てるはずがないんで」
盗賊「くたばったフリをしていましたが」
魔術師「そぉか、良かったなぁ」
盗賊「さて黒騎士さん!」
黒騎士「ねえさぁあああああ……、なんだい?」
盗賊「私達とパーティーを組みましょう」
黒騎士「何でさ?」
盗賊「何でと聞きますか……、答えは簡単です」
盗賊「私達が組んだ方が」
盗賊「あなたのお姉さんを救出しやすいからですよ」
盗賊「魔術師の呪文! 私の手際! あなたの戦闘力!」
盗賊「この三つが合わされば、魔王なんて目ではないでしょう?」
黒騎士「たしかにね……」
黒騎士「しかし盗賊、お前は駄目だ」
盗賊「!?」
黒騎士「洗脳時代、お前の策によって」
黒騎士「何回、姉さんを取り逃がしたと思ってる!」
黒騎士「どうせ今回も自分だけが美味い思いをする」
黒騎士「策を練っているに決まってる!!」
黒騎士「僕は騙されないぞ!!」
魔術師「しかし盗賊の策がねぇとよー」
魔術師「ぶっちゃけ魔王と勇者同時に相手取るのは無理だぜ?」
魔術師「前回あの二人を捕らえられたのも、盗賊の策だし」
黒騎士「そういやさっきから逃がしただの」
黒騎士「捕らえただの言ってるけどさ」
黒騎士「何のことだよ?」
黒騎士「お前らは魔王に負けて」
黒騎士「姉さんだけ魔王に捕らえられたって聞いたけど?」
魔術師「え、ああ、お前にはそう言ってあったっけぇ」
魔術師「いやさぁ、実はよぉ……」
ガシッ!
盗賊「何話そうとしてるんですか、魔術師(ヒソッ」
魔術師「えぇ? 俺らが勇者裏切って魔王と一緒に捕らえたこ……」
盗賊「声がでかいッッ!!」
盗賊「いいですか、魔術師(ヒソッ」
盗賊「そんなことを今話せば、このヤンデレシスコン野郎は」
盗賊「私達を攻撃してくるに決まってます(ヒソッ」
盗賊「なんせ、最愛の姉を裏切った罪人なんですからね(ヒソッ」
盗賊「それをあなたは……、それに大国ともいずれ戦争になるのに」
盗賊「わざわざ直してしまってどうするんですか(ヒソッ」
魔術師「いやだって爺が『困った時はお互い様』って言ってくるしよ……」
魔術師「それにお前はああ言ってたが、ウチの国は基本鎖国主義だし」
魔術師「権力争いとかあんま関わらないタイプなんだよなぁ」
魔術師「裏切ったのもぶっちゃけ」
魔術師「あいつが気に入らなかったからだし(ヒソッ」
魔術師「牢に勇者ぶち込むのも大変だったんだぜー?」
魔術師「魔王の見張り役として一緒の牢に入るって」
魔術師「本人が頑固に言い張ってってことでぶちこんだからな(ヒソッ」
盗賊「端から処刑とか考えてなかったわけですか……(ヒソッ」
魔術師「だってうちじゃ、既にアイドルみたいなものだし」
魔術師「まったく爺どももあんな貧乳の何処がいいんだか……」
魔術師「しょっちゅう突っかかってきやがるし、小言は煩いしよぉー(ヒソッ」
盗賊(駄目だコイツ……、まったく後先考えてない……)
盗賊(田舎の若者って感じ丸出しだ……)
盗賊(勇者も勇者で世間知らずだったが……)
黒騎士「さっきから何二人でこそこそ話してる?」
盗賊「ああ、すいません。ちょっとした情報の行き違いのようです」
魔術師「だそうだ」
盗賊「とりあえず私もついていきます」
盗賊「あなた達二人じゃ出来ることも出来ませんよ」
盗賊「第一、あなた達。あの二人が何処に行ったのか」
盗賊「分かってるんですか?」
魔術師「あー……、うちの城、大国、盗賊の城と来てるから……」
黒騎士「戦士の城か?」
盗賊「ふん、一応頭の中に脳みそはあるようですね」
盗賊「そうです、次は戦士の城のはずです」
魔術師「よりによって戦士の城かよぉ……」
盗賊「それがどうかしましたか?」
魔術師「あの見た目幼女のところに行くのはな……」
盗賊「まあ、一緒にいるとガリガリと何かが削れていきますもんね」
盗賊(私は勇者一筋でしたが)
黒騎士「御託は良い」
黒騎士「さっさと移動呪文を使え」
魔術師「はいよ……」
魔術師「移動呪文!!」
ビュゥウウウウン