少女「じ、時代?」
勇者「勇者を求めない時代が悪い」
少女「は、はあ……」
勇者「そりゃ紋章も消える」
少女「……紋章って何をすれば浮かび上がるんですか?」
勇者「勇者っぽいことをすれば浮かび上がる」
少女「ひ、ひどくアバウトですね……」
魔王「………」
勇者「こいつが世界征服してた頃は良かった……」
少女「良かったって言っていいんですか……」
勇者「当時は本当に苦しかったが、今振り返るとそう思う……」
少女「何が良かったんですか??」
勇者「全てがシンプルだった……勇者として産まれて魔物や魔王を倒すだけの日々……単純明快でなんていうか生き生きとしていた……」
少女「………」
勇者「目的に一直線っていうか、悪いやつを倒す、そして人に認められる、分かりやすかった……」
勇者「それに比べて現世は何が悪いのかさえも分からない……一体俺は何を倒せばいい……辛い……辛いんだ……」
少女「勇者さん……」
勇者「なあ魔王……もう一回世界征服してみないか??」
少女「魔王さんを世界征服に誘うなーーー!!」
魔王「キョウミナイトイッタロ……」
勇者「俺が生きがいを感じるにはそれしかないんだよ……!」
魔王「……オノレノイキガイヲワシニオシツケルナ……」
勇者「……じゃあ俺は何をしていけばいいんだよ……!」
少女「……今こうやってバイトしてるんだしいいじゃないですか勇者さん」
勇者「え……?そうなの……?本当にそう思う?魔王はどう思う?」
魔王「……コノコガイウナラソウナンダロウ……」
少女「ほら、魔王さんもこう言ってることですし!」
勇者「そ、そうか……」
少女「勇者さんは理想が高すぎるんですよ」
勇者「……魔王はなんでバイトしてるの?」
店長(勇者のやつ一体何をしている……!)
店長(なんであんな普通に談笑している……!)
店長(このままいくのか……!?このまま魔王はここでバイトすることになるのか……!?)
魔王「カノジョニプレゼントヲカウタメダ……」
勇者「か、彼女だと……!?」
少女「へ~!魔王さん彼女いるんですか、何買うんですか?」
魔王「シリタイカ……?」
少女「はい!」
魔王「……インディードルゴドルマリンだ……」
店長(インディードルゴドルマリン……!?)
店長(なんだそれは……!?)
店長(調べてみよう……!)
-事務室-
カタカタ
店長「インディー……ドルゴ……ドルマリン……っと」
カタンッ!
店長「……ん!?」
カタカタ
店長「こ、これは……ほ、宝石じゃないか……!!」
カタカタ
店長「し、しかも一番小さいやつで2億5000万!?」
店長(こ……これを買うまで魔王はバイト続けるのか……!?)
店長(か、買うまで何百年ここにいるつもりだよーー!?)
店長「お……終わった………………………………」
少女「魔王が彼女にプレゼントする為に働くなんて素敵だな~」
魔王「ソ……ソウカ……///」
勇者「彼女…ブツブツ…魔王が…ブツブツ…」
少女「勇者さんは彼女いるんですか?」
勇者「えっ!?」
魔王「イルノカ……?」
勇者「……いないよ……!」
少女「いつからいないんですか?」
勇者「……2519年前から……!!」
少女「えっ……っていうか勇者さん魔王さんと戦った後何してたんですか?」
勇者「…………寝てた……」
少女「寝てたって、どのくらい……?」
勇者「2450年間くらい……」
少女(寝過ぎだろーー!!)
少女「どこで寝てたんですか……?」
勇者「……りんごの木の下で寝てた……」
少女「そんなに寝れるもんなんですか……?」
勇者「たまに起きて落ちてきたりんごをかじりまた寝てたまに起きてりんごをかじりの繰り返しをしていた……」
少女(だ、駄目人間だーー!!)
勇者「もう食い過ぎてりんごは見たくもない……」
魔王「ホカノヤツラハドウシテル……」
勇者「え?」
魔王「ナカマモフロウフシニナッタンダロウ……」
勇者「ああ……あいつらは……それぞれ生きている……」
少女「仲間達は今何をやってるんですか?」
勇者「……戦士は格闘技のチャンピオンになった後子供に格闘技教えてるらしい」
勇者「魔法使いは……海外でショーのプロデュースしてるらしい……」
勇者「あと僧侶はでっかい大学病院の教授になったとか聞いたな……」
少女「………」
ジ~
勇者「な、なんだその目は………」
少女「なんかそうやって並べられると……」
勇者「……ほっ、ほら俺も何かしなきゃいけないじゃないかああああああああああ!!!!!」
勇者「う、うわああああああああああああああああああああああああ」
ガチャッ!
バタンッッ!
勇者「!!?」
少女「……レンジ界にはいかせません……!」
勇者「頼む行かせてくれ……!」
少女「現実を受け止めましょう……!」
勇者「……う、うぐぐぐぐぐぐぁぁぁぁぁああああぁぁ……ッ!!」
ガクンッ……
少女(気絶したーー!!!)
魔王「……シズカニナッタナ……」
少女「そうですね……」
少女「っていうか暇な時間だけどお客さん本当に来ないなぁ……」
魔王「ソウダロ………」
少女「……そうだろ?」
魔王「ハイッテコヨウトシタオキャクヲ……イシニシテオイタ……」
少女「えっ……」
カチンコチン
ズラ~~~~~~!
少女「い、石になったお客さんが店の前にたくさん……!!」
魔王「ドウダ………」
少女「ど、どうだじゃないですよ魔王さん!!」
魔王「エ………」
魔王「ダメナノカ………」
少女「お客さんを石にしては絶対に駄目です……!!」
魔王「ナゼダ………」
少女「っていうか基本的に人間を石にしてはいけません覚えてください……!!」
魔王「ソウナノカ………」
ズラ~~~~リ
少女「美術館みたいになってるじゃないですか……!!今すぐ治してください……!!」
魔王「ワ……ワカッタ……」
ジュルルンド~ン!
ガヤ ガヤ ガヤ ガヤ
少女「ひゃ~、魔法が溶けたお客さんでいっぱいになった~」
魔王「ダカライシニシテオケバイイモノヲ……」
少女「それは駄目です……!!」
お客1「あら、なんでこんなに込んでるのかしらねぇ」
お客2「昼時じゃないのになんでだろうねぇ、何かあるの?店員さん」
少女「さ、さあなんででしょうねぇ、ははは、はは」
ピッ
ピッ
少女「合計で560円になりま~す!」
魔王「ギョウレツガデキテルゾ……」
少女「魔王さんのせいですよ、本当にもうっ!」
魔王「ス……スマン……」
少女「あ~、ダメだ~~~、一人じゃ乗り切れない~~~、店長呼んで来なきゃ~~~」
スクッ
勇者「……任せろ!」
少女「ゆ、勇者さん!!レジ打ちできるんですか!?」
勇者「俺を誰だと思ってるんだ……!!俺はコンビニバイト経験者なのだよ……!!」
少女「た、助かった~」
サッ
勇者「二番目でお待ちのお客様こちらへどうぞ~!!」
ガヤ ガヤ ガヤ ガヤ
魔王(グヌヌ………)
ガラーーーン
少女「ふう、なんとかなりましたね」
勇者「やってやったぜ……!」
少女「初めて勇者さんが頼もしく見えましたっ」
勇者「初めては余計だぞ……」
少女「……あれ?魔王さんは?」
魔王「……ワシハイマデンシレンジカイニイル……」
少女(魔王さんがレンジ界行ってるーーー!!)
魔王「グヌヌ……」
少女「ど、どうしたんですか魔王さん!!」
スッ
バタンッ
魔王「……マケタ」
少女「えっ?」
魔王「ワシハユウシャニマケタ……」
少女「負けたって……レジ打ちのことですか?」
魔王「アア………」
少女「そんなの魔王さんはやったこと無いんだからしょうがないじゃないですか……」
魔王「イカナルトキデモマオウハマケテハナラナイ……!!」
少女「れ、レジ打ちに勝ちも負けも無いですよ……ちょっと勇者さんからもなんか言ってくださいよ」
勇者「………次があるさ、魔王っ!!」
少女(それ勝者のコメントーーー!!)
魔王「グヌヌヌヌ……ユウシャメェェェェェ……!!」
勇者「き……気持ち良い~~~~~!!」
少女「ちょ、ちょっと……仲良くしてくださいよ……二人とも」
魔王「グヌヌ……」
少女「ゆっくり覚えて行きましょうよ、魔王さん」
魔王「ソンナユウヨハナイ……!」
ジュルルンド~ン!
少女「えっ」
魔王「………」
少女「ま、魔王さん今何したんですか!?」
魔王「……ジカンヲトメタ………」
ピタッ
勇者「………」
少女「ほ、本当だ!勇者さんピクリとも動かない……!」
魔王「ガハハ……」
少女「なんで時間なんか止めたんですか……!?」
勇者「………」
少女「ま、まさか、時間が止まってる間に勇者さんを……!!!」
魔王「ソンナコトハセン………」
少女「じゃ、じゃあ……!」
魔王「……レジウチヲオシエテクレ……」
少女「レジ打ちをうちに教わる為にわざわざ時間を止めたんですか……!?」
魔王「ソウダ……」
勇者「………」
少女「そ、そういえばあたしは動けますしね……」
魔王「タノム……レジノスベテヲ……オシエテクレ……」
少女「は、はい!」
……………………
…………
ジュルルンド~ン!
勇者「優った……俺は魔王より優った……」
ウィ~ン
少女「いらっしゃいませ~」
コトンッ
パラッ
おじさん「缶コーヒー一つで悪いけど、一万円からお願い」
少女(魔王さん……!)
魔王「………」
カタッッン!カタッッ!カタッッ!カタタッッッ!
ダゴーン!!
ペラペラペペペペラペラペラッ!!
ジャンジャラジャラジャラジャラ!!
勇者「!!!!??」
少女(ゆ、指先が見えない!!)
魔王「……9880エンノオカエシデス……」