店長「勇者君だっけ?じゃあ面接始めるね」 6/6

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-事務室-

ガチャガチャ……

ギギギィィィ………

バタンッ……!

店長「これでよし……!」

少女「こんな重い扉ありましたっけ……!?」

店長「比較的できて新しいコンビニには、レジバトルに備えてこんな二重扉が設置されているんだ」

少女「そ、そうだったんですか……、店長なんだかあたし恐くなってきました……」

店長「あとは……」

ガラッ!

店長「これ、付けろ」

ガコッ…

少女「きゃ、何これ!?……ガスマスク!?」

ガコッ…

店長「俺も着けてっと……これで観戦準備OK」

少女(れ、レジバトルってなんなんだー!?)

店長「頼む~~、防犯カメラ~~、壊れるなよ~~」

勇者「おい魔王……そろそろ魔界が恋しくなってきたんじゃないか……?」

魔王「………」

勇者「おい……どうした……怖じけづいたか?」

魔王「ワシハムクチナンダ………」

ズズズンッッッ……!!

勇者「う"っ…!?」

魔王「グクッ…!?」

キリ……キリ……

おじさん(ククク………)

-事務室-

店長「ん…!?なんだ!?」

少女「どうしたんです店長!」

店長「二人の様子が明らかにおかしい……!?」

少女「確かに苦しそうですね……」

店長「……か、会長……!会長の手の動きが……!」

少女「手の動き……?」

店長「あ、あれはレジバトルメモリを操作してる動き……!!」

少女「レジバトルメモリってなんですか!?」

店長「レジバトルボタンの側面に搭載されているレジバトルメモリだ……!!」

少女「だから何のメモリなんですか店長!!」

店長「レジバトルの営業停止5㎞の範囲を縮めたり……伸ばしたりするメモリのことだよ!!」

少女「やっぱり……伸ばしたらまずいんですか!?」

店長「レジバトル中のレジメモリを動かすこと自体ありえない事なんだ……!!」

勇者「なんだか一気に……身体が……ぐっ……!」

魔王「グヌヌ……ドウナッテイル……!」

勇者「とにかくレジバトルに何かしらの変化が……!!」

魔王「グヌヌヌヌヌヌヌ……!!」

勇者「同じコンビニ内にいるのに会長余裕で笑ってやがる……!」

おじさん「ククク……」

魔王「アイツハナニモノダ……!!」

勇者「……!?……よし……キタ……!!」

カタッ…!カタッ…!

おじさん(ほう先手は勇者か…………)

勇者「分かる……!分かるぞ……!」

-事務室-

少女「勇者がお客さんもいないのにレジを打ち始めた……!!」

店長「もしもし……ああ……そうか……分かった……」

ガチャ

店長「ふう……」

少女「店長、どこに電話したんですか!?」

店長「7㎞先のコンビニでは警報は鳴っていたが、8㎞先のコンビニでは警報は鳴っていなかった……」

少女「つまり会長さんはレジバトルメモリで営業停止範囲を半径5㎞から7㎞まで広げた訳ですね??」

店長「そういうことだ……、会長がこれまでにないくらい熱くなってらっしゃる……!!」

少女「店長、質問があります!!」

店長「なんだ?」

少女「勇者がお客さんが来て無いのにレジを打ち始めたんですが……あれはなんですか!?」

店長「どれどれ……ああ……これはコンビニに集まる購買欲を先に読み取って何を購入するか察知しレジを打ち始めているんだ」

少女「購買欲だけで何買うか分かるもんなんですか……?」

店長「優秀なレジリストならな……」

少女「レジリスト……?店長は分かりますか??」

店長「いいや、俺なんて今レジの前に行ったら立ってるだけで内蔵ぐちゃぐちゃになるよ」

少女「な、内蔵ぐちゃぐちゃ……!?なんでぐちゃぐちゃになるんですか!?」

店長「おっと……魔王の方にも動きがあったみたいだな……」

少女(ダメだ……夢中になってる……)

ガサッ ガサッ

魔王「…………」

おじさん(ほ~う……魔王の方はそちらの作戦でいくのか……かけに出たな……)

カタッ…!カタッ…!

勇者「ぐっ……指が……!!」

おじさん(そうだ勇者……先の読み過ぎは体力を消耗するだけに過ぎん……)

ウィ~ン

勇者「自動ドアが開いた……!!」

魔王「クルノカ……!?」

おじさん(さあ……ここからが本番だ……!!)

-事務室-

少女「店長、魔王さんは何をしているんですか??」

店長「魔王は購買欲から何を買うかを読み取り、商品を自ら取りに行っているんだ」

少女「先に持って来てお客さんに渡すということですねっ」

店長「ああ、でもそれもお客さんとの意思疎通ができて無いと、お客さんが商品を取りに行ってしまうというすれ違いが生じる危険性のある両刃の剣さ」

少女「そのリスクを背負って魔王さんは準備しているのか……」

店長「まあでもお客さんの入店前の二人のこの行動は気休め程度にしかならないけどな……」

少女「気休め??」

店長「まあ見ていれば分か……自動ドアが開いた……!?来るぞ……!!」

少女「何が来るんですか!?」

店長「客が……!!」

ズ┣¨┣¨┣¨┣¨ドドド!!!

ズ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨!!!

ズ┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨ド!!!

ドカドカドカドカドカ!!!

ギュウギュウギュウギュウ!!!

勇者(!!……だいた予想はしていたが……これほどの客の密度とは……!!)

魔王(グヌヌ……!!ミウゴキガトレン……!!)

ギッシリ………!!

おじさん(ククク……これが7㎞の密度……!!!)

おじさん(さあ、見せてみるがいい……!お前達のレジレジェンドを……!!)

-事務室-

ギッシリ…!

少女「きゃ~~~!!何このお客さんの数~~~!!すし詰め状態~~~!!」

店長「半径7㎞のレジバトルの入店映像を見るのは始めてだ……!!」

少女「ものすごい勢いでお客さんが入ってきましたね……!!」

店長「ああ、ただ棚にお客さんが激しくぶつかったりしてないだろ!?」

少女「確かに……それはなんでです!?」

店長「あれは購買欲をレジが読み取り入店客数を自動計算し、店舗内の重力を調整して激しい衝動が起こらないようにしているんだ……!つまり重力のクッションをレジが作っているんだよ……!」

少女「れ、レジってそんなことができたんですか……!!」

店長「レジバトルで怪我人はご法度さ……!!」

少女「な、なるほど……!!」

少女「でもこんなにお客さんいたらまともにレジ打つどころか身動き一つ取れないんじゃないですか……!?」

店長「その通り、レジバトル中にまともにレジなんか打てないんだ……!!レジバトル中レジに一回も触れずに一時間経った人もいるくらいなんだ……!!」

少女「レジバトルって……まともにレジに触れ無いんですか……!!」

店長「会計し終わったお客さんをいちいち外に出さなきゃいけないし、お客さんの順番も守らなきゃならないんだ」

少女「え!?こんなにごちゃごちゃなのにお客さんの順番があるんですか!?」

店長「どう見ても折り重なってるようにしか見えないだろ……??」

少女「は、はい……」

店長「これでも本人達は並んでるつもりなんだ……!!」

ギュウギュウギュウ!!ギュウギュウギュウギュウ!!

魔王「チョウドオアズカリイタシマス……」

カタッ!カタッ!

勇者「380円のお返しになります!!」

魔王「デクチマデイッショニイキマショウ……」

勇者「次は誰だ次は!!」

「はいはいわたしよ~」

魔王「ソコカラウエヲメザセバソトニデレマス……」

ピッ

勇者「240円になります!」

ギュウ!ギュウ!ギュウギュウ!ギュウギュウ!

おじさん(こやつら……!!こやつら……!!)

-事務室-

店長「す、すごい……!!」

少女「何がすごいんですか!?」

店長「レジバトル中にお客さんが店から入る流れと店から出る流れがちゃんと出来ている……!!」

少女「本来できないものなんですか……!?」

店長「本来ならお客さんが入る流ればっかりで出るのはまばらなんだ……!!」

少女「そうなんですか!!」

店長「もしかしたら無意識のうちに魔王と勇者が協力しあって、入と出のお客さんの流れを作り出しているのかも知れない……!!」

少女「バトルなのに協力してるんだ……!!」

店長「こいつらはもう既にレジバトルの向こう側に到達している……!!」

少女「レジバトルの……向こう側……!?」

ギュウギュウギュウ!!

ギュウギュウギュウ!!

勇者(何故だ……こんなすし詰め状態でも魔王の場所を把握できる……)

魔王(マサカコレホドマデユウシャト…………)

勇者(これは一人でも多くのお客さんをレジで打ち溶かしたいという気持ちが……)

魔王(シンクロスルトハ……)

勇者(分離することなく融合している……!!これはまるで……)

魔王(コレデマルデ……)

勇者魔王(コンビニ全体ガ一ツノ生キ物……!!)

ギュウギュウギュウ!!

ギュウギュウギュウ!!

おじさん(くぅ~!!!……こうなったら……こうなったら……!!)

キリ……キリ……

-事務室-

店長「こ、こんなレジバトル見たこと無い……!!」

少女「すごい、どんどんお客さんが商品を持って店の外へ出て行く……!」

店長「でもこれはまずいな……」

少女「どうしてです……!?」

店長「レジバトルというのはもちろん、レジ打ち能力の向上、そして男と男のレジ打ちの熱い戦いという意味を持ってるんだけど……」

少女「だけど……??」

店長「……レジに自信を持った若者がレジによって敗れる姿を会長が楽しみたいという側面も持ってることも確かなんだ……」

少女「じゃあこのまま勇者と魔王が協力していたら……」

店長「会長が暴走するかも知れない……!!」

ザー ザー ザー

店長「ん!?防犯カメラの……映像が乱れている……!!」

少女「これは……!?」

店長「もしかしたら……そのくらい重力も乱れてるのかも知れない……!!」

少女「じゃあ会長がレジバトルメモリを……」

店長「ま、まさか……!!」

プルルルルプルルルル……

店長「もしも……し…………」

ガチャ

少女「どうしたんですか店長……!!?」

店長「12㎞先のコンビニの………電話の奥で………警報が鳴っていた………!!!」

少女「えっ!!」

店長「……こんなのレジバトルじゃない!!ただの殺人ゲームだ!!」

少女「ひ、人が死ぬんですか……!?」

店長「レジバトル協会で半径10㎞以上のレジバトルは命の保障はされていない!!!」

少女「な、なんですってー!!」

ザー!ザー!ザー!

ザザザザザー!!!

店長「ち、ちくしょう…!!映像が完全に途切れやがった…!!」

少女「じゃ、じゃあ中の人達はどうなったの!?」

店長「集中した購買欲と重力で……くっ……!!」

少女「え……?嘘でしょ……?」

店長「……俺達もここにいては危ない……!!窓から脱出しよう!!」

少女「そんな……!!」

ガラッ

店長「……!??あ、あれは……」

少女「ど、どうしたんですか!?」

店長「これは幻覚か……!?……空に……空に……赤い目をした竜が飛んでいる……!!」

少女「りゅ、竜!?どこですか!?見せて下さい……!!」

少女「あ、あれは……!!!」

店長「な、な!?竜だろ……!?」

少女「あれは竜ではありません!!!」

店長「じゃ、じゃあなんなんだ!?」

少女「あれは、レジバトルのお客さんが連なっているんです……!!」

店長「なんだって!?」

少女「そしてその先頭には勇者……額に赤い紋章を浮かばせた勇者です!!!」

店長「竜の目だと思っていたのが、勇者の紋章……!?」

少女「そして勇者は左手には魔王を、右手には会長をしっかりつかんでいます!!!」

-天空-

魔王「マサカオマエニタスケテモラウコトニナルトハ……」

勇者「………」

おじさん「……何故全ての元凶の私まで救ってくれたんじゃ……」

勇者「分からない……」

勇者「ただ一つ理由を挙げるとすれば……」

勇者「俺が勇者だったからかな……」

-しばらくして-

おじさん「私はまだレジバトルを扱える器じゃなかったようじゃ、しばらく封印するよ」

勇者「ああ、その方がいい」

少女「勇者さん!紋章浮かび上がりましたね!!」

店長「これが本物の勇者の紋章か……!!」

魔王「ユウシャラシクナッタナ……」

勇者「そうか?ははは、嬉しいな」

トボ…トボ…

少女「勇者さん!どこに行くんですか?」

勇者「どこってコンビニ戻って退勤押しに行くんだよ、もう就業時間過ぎたからな」

少女「あ、あたしも押しに行きます!!」

魔王「ワシモイコウ」

勇者「じゃあみんなで行くか~」

-END-

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