店長「履歴書書いて来た?」
勇者「はい」
店長「じゃあ見せて」
ぱらり
店長「……う~ん」
勇者「………」
店長「これはどういうことかなぁ……」
勇者「え?」
店長「コンビニのバイトだからって舐めてるのかなぁ?」
勇者「はい?」
店長「まず、君の歳が約2500歳ってどういうことなの?」
勇者「あ……、すいません、約って付けたのはしっかり覚えていないからで……」
店長「いやね、俺は約に引っかかってる訳じゃないんだよ」
勇者「はあ」
店長「う~ん、2519歳ってことは俺の2484個上ってことになるね~、私には君が18、9にしか見えないんだけどねぇ」
勇者「成長が止まってるんです……」
店長「……あ、ちゃんと理由も書いてたね、え~っと19歳の時に魔王と戦ったんだね」
勇者「ええ……」
店長「で、その魔王が不老不死だったんだ?」
勇者「はい」
店長「そして死闘の末魔王の返り血を浴びて口に入って君も、不老不死になってしまったと……」
勇者「そうなんです」
店長「不老不死ならバイトする必要無いと思うんだけどねぇ……」
勇者「お腹は減るんです……」
店長「不老不死なのにお腹は減るの?不老不死も案外不便だねぇ~」
勇者「今もお腹減ってます……」
店長「でも餓死はしないんでしょ?」
勇者「餓死しそうになります……」
店長「特技が、剣術ってあるけど……剣道やってたの??」
勇者「いや、剣道じゃなくて……」
店長「ああ、ごめんごめん、剣で魔王と戦ってたんだね」
勇者「はい」
店長「あとずっと気になってたんだけど、額になんかマーク書いてあるけど、それ何?」
勇者「ああ……これは紋章で……」
店長「それ消せる?働く時はそれは消してもらわないとならないよ?」
勇者「け、消せるっていうかこれは浮かび上がってるもんなんで……」
店長「油性で書いちゃったんだ?」
勇者「い、いや書いた訳じゃなくて……」
店長「それとね、うちは接客業なんだけど、笑顔でいらっしゃいませって言える?」
勇者「笑顔ですか………」
店長「ちょっと言ってみて」
勇者「……いらっしゃいませ……」
店長「う~ん、全然笑顔になって無いなぁ、暗いし」
勇者「……魔王も倒してないのに……笑えないっていうか……」
店長「じゃあ先に魔王倒してからうち来た方がいいねぇ」
勇者「……いや……でも現世に魔王いないし……」
店長「というか何しに来たの君」
勇者「えっ、バイトの面接ですけど……」
店長「友達にやらされてるの?それとも本気?本気でやってたらちょっとおかしいよ君」
勇者「………」
店長「俺も別に暇って訳じゃ無いからね、付き合ってられないんだよ」
勇者「それは……落ちたってことですか?」
店長「落ちたよ、落ちた、そもそも君は受かる気無いでしょ」
勇者「えっ……そんな……」
店長「君ももう十分大人なんだから自分を見つめ直したほうが良いよ」
勇者「は…はい………」
店長「じゃあこれで面接終わるから、帰っていいよ」
勇者「……し……失礼しました……」
店長「魔王倒せるといいねー、頑張ってねー」
ガチャ
バタン
店長「はぁ……舐めくさりやがって……」
少女「あ、店長、さっきの人どうでした……?」
店長「どうしたもこうしたもないよ~、まったく……」
少女「変わった人でしたよね……」
店長「これぞゆとり教育の弊害と思ったわ、何考えてるんだか」
少女「なんか勇者っぽい格好してましたよね……」
店長「勇者も勇者よ、名前に勇者って書いてたから……」
少女「ははは……あの人ここで働くんですか?」
店長「働かせる訳ねぇだろ、あんなの何しでかすか分かんねぇ」
少女「ですよね……」
店長「なんだお前あんなのがタイプなのか?」
少女「ま、まさか……やめてくださいよ」
「すいませ~ん」
店長「ああお客さん呼んでるぞ」
少女「あ、は~い、今行きま~す」
-しばらくして-
コンコンッ
ガチャ
少女「て、店長、バイトの面接の人来てます……!」
店長「お~、じゃあ通していいよ~」
魔王「キタゾ……」
カラス「カァーカァー」
店長「はあ……またか」
店長「じゃあそこに座ってください」
ズシッ
魔王「………」
店長「こんにちわ」
魔王「コンニチワ………」
カラス「カァーカァー」
店長「………」
店長「じゃあ履歴書持って来た?見せて」
魔王「コレダナ……」
ぱらり
店長「う~~~ん……ふむふむ……」
魔王「………」
カラス「カァーカァー」
店長「……ちょっとその肩に乗ってるカラス黙らせてくれるかな?」
魔王「ア……コンナトコロニ……」
店長「えっ、肩に乗ったカラスに気付かなかったの?鈍感なのかな?鈍感な人なのかな?」
魔王「………」
店長「本当よくできてるなぁ、そのカラス……」
魔王「………?」
店長「え~っと、履歴書によると魔王なのね、あなたは」
魔王「ソウダ……」
店長「さっき勇者が面接に来たよ」
魔王「……ナンダト……」
店長「勇者は友達なのかな?友達とやってるのかな?」
魔王「トモダチナワケガナイダロ………」
店長「だよね、魔王と勇者は宿敵だもんね、友達な訳が無いよね」
魔王「ワカッテルジャナイカ……」
店長「え~っと、魔王さんは50万歳なのね」
魔王「アア……」
店長「きりがいいなぁ~」
魔王「………」
店長「あれ、先週が誕生日だったんだ?」
魔王「アア……」
店長「魔王の50万歳っていう記念すべき日に俺は立ち会ってるんだ?」
魔王「イワイタマエ……」
店長「祝いんたいんだけどね~、面接中だから祝え無いんだわ~」
魔王「グヌヌ……」
店長「住所が魔界になってるけど……、魔界に住んでるの?」
魔王「ソウダ……」
店長「アバウトだな~、魔界って広いんでしょ?もっと詳しく書いてもらわないと」
魔王「マカイハワシノニワ……」
店長「庭だろうけどさぁ~」
店長「通勤時間が0分になってるけど、これはテレポートできるってことかな?」
魔王「ソウダ……」
店長「どれだけ近所でも一分はかかっちゃうからそうだろうね~」
カラス「カァー」
店長「それ魔界のカラス?魔界のカラスだったらちゃんと魔界に返してね」
魔王「マカイニカラスハイナイ……」
店長「じゃあ人間界のカラスだね、来る途中に肩に乗ったんだ?」
魔王「キットソウダロウ……」
店長「テレポートできるならテレポートでここまで来れば良かったのに」
魔王「ハジメテクルトコロハテレポートデキナイ……」
店長「ああ、じゃあもしここでバイトし始めたらテレポートで通勤する訳だ?」
魔王「ソノツモリダ……」
店長「この履歴書の証明写真古いよね、これ」
魔王「ヨンジュウネンマエノダ……」
店長「40年前なのに顔が全然変わって無いね、まぁ50万年生きてるから変わる訳がないかぁ」
魔王「アア………」
店長「手のこんだイタズラするねぇ、本当」
魔王「……イタズラ……?」
店長「あ、特技の欄に世界征服ってあるね」
魔王「……マアナ」
店長「したことあるんだ?世界征服」
魔王「イチドダケダガナ……」
店長「一度でもすごいと思うよ~、世界征服は」
魔王「ガハハ………」
店長「あ、志望動機にお金を稼いで魔王女にプレゼントを買う為って書いてあるねぇ」
魔王「………///」
店長「魔界には無いものをあげたいのかな?何を買うのかな?それともそれを聞くのは野暮かな?」
魔王「ヒミツダ………」
店長「やっぱり秘密か~……魔王なのに盗んだりしないの?簡単なんじゃない?」
魔王「ジブンデハタライタオカネデカイタイ………」
店長「泣かせるせぇ、魔王さんにそこまでさせるってことはさぞお綺麗な方なのでしょう」
魔王「マアナ………///」
店長「あ、そうそう、働くことになったら角取ってもらうよ?」
魔王「ツ、ツノヲトレダト……!?」
店長「大体ねぇ、面接中にそんなの付けてるのがありえないんだけどねぇ」
魔王「オマエ……コロスゾ……」
店長「わーこわーいまおーにころされるー」
魔王「………」
店長「……もういいだろ、俺は良く付き合ったほうだよ」
魔王「………?」
店長「こういうの本当困るんだよねぇ」
魔王「ドウイウコトダ……?」
店長「さっきの勇者と友達なんだろ?んで勇者と魔王の格好してバイトの面接受けようぜとか盛り上がってやっちゃったんだろ?」
魔王「……ナニヲイッテイル……」
店長「そうやってバカ話をするまでいいんだけど、本気でやるとかバカだよ」
魔王「バ……バカ……?」
店長「もう他ではするなよ~、じゃあもう帰っていいから、俺も暇じゃないし」
魔王「ワシハオチタノカ……?」
店長「まだ言ってるのか」
魔王「ワシハオチタノカト……キイテイル……」
店長「落ちたよ、落ちた」
魔王「リレキショノウラヲ……ミテミロ……」
店長「履歴書の裏?まだなんかあるのか」
ぱらり
店長「……え~っと、わしを落としたら貴様を石にする……」
魔王「ワカッタカ………」
店長「人間を石にできるんだ、できるもんならしてもらいたいねぇ」
魔王「!?………」
店長「あ、そうだ俺の足を石にしてみてよ、もしできたら働かせてあげるから」
魔王「……ホントウダナ……」
…………
……………………
少女「調度お預かり致します~、ありがとうございました~」
ジャラジャラ
少女「ふう…」
少女(さっきの人本当に怖かったなぁ……)
少女(なんか大魔王って感じで)
少女(店長取らなきゃいいなぁ)
少女(取るわけないか)
「マジだったあああああああああああああぁぁぁぁ!!!」
少女「!?」
少女「この叫び声は店長!」
ドンッ
ドンッ
少女「て、店長!どうしたんですか!」
店長「マジだった……マジだった…マジだったああああああああああああ!!!」