女神「魔王が人間界に攻め込んだようです」 3/9

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戦士「ジャムくらい大した事ないぞー」モクモク

戦士「火の番は俺がしておくから二人はゆっくり休みな」

勇者「えっいいのでしょうか……」

戦士「明日には町に着くしな」

魔法「こう言っているんだしいいじゃない」

勇者「えぇー? だ、大丈夫でしょうか?」

戦士「無理そうだったら寝るよ」

勇者「火の番は?!」

勇者「ん……ふぁ」

勇者「あー……朝か」フォンフォン

勇者「……」フォンフォン

戦士「……」フォンフォンフォン

勇者「徹夜している上に素振りまでっ?!」

魔法「あー……? ふあぁぁ」

戦士「お早う。そうか、もうそんな時間か」

戦士「このまま進めば昼頃には町だ」

戦士「着いたら宿を取って休もう」

勇者「稽古の方は?」

戦士「んーもう俺からしつこく教える事はないだろうな」

戦士「自主的に素振りと型の練習をしろ」

戦士「後は実践で反省会をしていこう」

勇者「ちょ、ちょっと待って下さい! いくらなんでもそんな上達しているわけ無いじゃないですか!」

戦士「自身ではそう思うだろうが、俺からは多少のアドバイスしかしようがないんだ」

戦士「俺がちゃんと教わった部分なんてそんなものなんだよ」

勇者「わぁシルバースノウ以外の町っ! ここはウェッブリバーの領土内だよね?」

魔法「町ぐらいじゃあ……でもそうね。銀世界の町に比べたらこの町だけでも随分と違うわね」

勇者「見て見て! なにあの果物! 美味しそう!」

魔法「それじゃあ買って、一緒に食べましょ」

勇者「うん!」

戦士(……)

戦士(俺は……どうする? この旅の果てに……)

勇者「戦士さんもどうですか?」サッ

戦士「……っふ、はは。ああ、貰おうか」

魔法「……?」

戦士『流石にこの面子だ。部屋を分けよう』

勇者(……これが正しいはずなのに、少し寂しい気も)

勇者(っは! な、何を考えてるんだ! 男性と同じ部屋で寝ていたのがおかしいんだぞあたし!!)ブンブン

魔法「勇者、戦士とは出会ってどのくらいなの?」

勇者「え゛っ! どどどういう事かなぁ?」

魔法「ちょっと、ね……」

勇者「……? ええと約三週間ぐらいかな」

勇者「どうかしたの?」

魔法「何だろう……さっき貴女の様子を見ていた時の戦士の顔」

勇者(あ、あたしの事を見ていた? 見つめられていた?!)ドキドキ

魔法「あいつの事がよく分からなくなった。普通、三週間くらいの付き合いの相手にあんな……」

勇者「……え? どんな表情だったの?」

魔法「凄い優しい顔をしていた。父親、みたいな……」

勇者「え、子供扱い?」

戦士「勇者……そうか、夢は叶ったって事なのか……」

戦士「酷な話だな……俺は……どちらを……」スゥ

『朝だよー起きてー』ユサ

『お兄ちゃーん? あっさだよー』ユサユサ

「朝ですよー? 出発するんですよー?」ユサユサ

戦士「っ!」ガバ

勇者「きゃあ!」ガッシ

戦士「……***」

勇者「せ、戦士さん?」

魔法「ちょっとあんた! いきなりなに勇者に飛びついているのよ!」

戦士「……あ、いやすまない」パッ

勇者「い、いえあたしは大丈夫です」

勇者(***? 名前?)

戦士「あー寝過ごしてしまったな。すまん、急いで支度するよ」

魔法「私達は下で先に朝食を済ませておくからね」

戦士「ああ、そうしてくれ」

戦士「さて次の町までは三日ほどかかるのだが……」

商人A「ウェッブリバーの首都まで護衛してもらえるなんて助かるよ」

商人B「荷台に余裕持たせておいて正解だぁよ」

勇者「こちらこそ助かります」ペコ

魔法「しばらくの間宜しくお願いします」ペコ

商人A「おまけにこんな別嬪さんときたもんだ」

商人B「幸運の女神様だぁ。今回の商い、大成功間違い無しだぁべ」

戦士(まさか足が手に入るとは)

戦士(移動が早い分、交戦数も一気に落ちる……勇者とは軽く打ち合いした方がいいだろうか?)ガタガタ

戦士(いやいや、対人間の動きが癖付いてしまっては……しかし魔王は魔人。役に立たないわけでもないが)ガタゴト

勇者「のどかだなぁ……」グデー

魔法「何時魔物に襲われてもいいよう臨戦態勢でいるのよ?」

勇者「だってこんな陽気じゃぁ……シルバースノウじゃ滅多ないからなぁ」ノビー

戦士「今のうちに体を起こしておけよ。次の町についたら軽く稽古をする」

勇者「稽古っ」ピコン

戦士「俺に打ってこい。勿論、反撃もするからかわすなり防ぐなりしろ」

勇者「わぁ……スパルタ再発ぅ」

魔法「それ、流石に危険じゃないの?」

戦士「流石に真剣じゃないし、俺は寸止めくらいで打ち込むさ」

勇者「あ、あたしは全力でかからないと駄目でしょうか?」

戦士「当たり前だ。何のための稽古だ」

勇者「う、うわあ、本気で当てちゃったらどうしよう」

戦士「そう簡単に当たらんさ」

魔法「早すぎる杞憂ね」

勇者「……分かってはいるけど魔法使いちゃんまで」

魔法「少し見ればかなりの差があるくらい分かるわよ」

勇者「たああああああ!」ヒュンビュンフォン

戦士「……」ガガガ

魔法「へえ……」

勇者「はあ!」ビュ

戦士「……よ」ヒラリブォン

勇者「っ!」ガッ

戦士「もう一丁」ブァ

勇者「ぐっ!」ガッ

戦士「隙あり、過ぎっ」ゴツ

勇者「あたっ!」

戦士「攻撃を受ける時は盾で受け止めろ」

戦士「それでも剣で受けざるを得ない時は受け流すように受けるんだ」

戦士「剣で真っ向から受け止めていたんじゃ、すぐに刃が駄目になるぞ」

勇者「は、はいっ」

戦士「それと対人であっても、防御と回避には常に次の行動を意識」

戦士「あれじゃあ体勢を立て直せずに防戦一方になるぞ」

勇者「わ、分かりました……」

魔法「ふーん……」

戦士「何だ?」

魔法「凄い強いのね」

戦士「そりゃあ伊達で剣を振ってるわけじゃ無いからな」

勇者「なんたってあたしのお師匠様だもの!」

魔法「へー……剣なんか今までやっていなかったんでしょ? 戦士の教えがいいのかしら?」

戦士「俺の教え以上に勇者の筋がいいかな」

戦士「普通に考えたらこんなに早く上達する訳が無い。流石は勇者というべきか」

戦士(まーこれは色んな神様が張り切っちゃったんだろうなぁきっと)

戦士「そうだ……後で君らの部屋に行くが構わないか?」

勇者「えっ!」

魔法「何で?」

勇者(わーー! うわーーー! 入浴後にばったりとかだったらどうしよう!)ドキドキ

戦士「馬車で移動する以上、戦闘は減るだろうからな……それに対する対策と」

戦士「ウェッブリバー以降のをどうするか、だ。歩くのか馬車を引くのか便乗か」

勇者(それとかそれとか暑くて薄着の所を見られてうわーー! きゃーー!)ドキドキ

魔法「あー……確かに考えておかないといけないわね」

戦士「夕食の後すぐでいいだろう」

魔法「そうね、変に時間をあけられてもお風呂が困るわね」

勇者(きゃーきゃー!)

夕食後

勇者(どうしてこうなった)

戦士「神妙な顔をしてどうした? 相談するぞと言っただろう?」

魔法「もう乗せてもらう代わりに護衛するって言ってしまったしどうするの?」

戦士「そこはもう」

勇者「諦め?」

戦士「スパルタだろう」

勇者「わーぉ」

魔法「仕方が無いわよね」

勇者「フォローして!」

戦士「ウェッブリバーの首都から先の足はどうする?」

魔法「私はできれば馬車のが快適なのだけどもねぇ」

勇者「更に魔物が強くなる事を考えると、もう行商の人とかはいなさそうですね」

魔法「そうなのよねぇ……私がウェッブリバーを発つ時点で、南への交易をどうするかって話題があったぐらいだし」

魔法「は~徒歩かぁ。私は二人のように肉体派じゃないのだけども」

勇者「……どうにかできないでしょうか?」

戦士「……まあ、最終決定は首都についてからでないと判断はできないが」

魔法「流石に馬を借りたりは資金不足だし……行商がいなければ徒歩よねぇ」

戦士(馬……馬かぁ……。俺はあんま乗馬した事無いし、勇者だってなさそうだし。そもそも魔法使いは乗れるのか?)コッコッ

戦士(窓? おいおいここは二階だぞ?)ガラッ

鳥「」ジー

戦士(わぁー……凄い見た事ある鳥さんだぁ)

戦士(また小規模の転移魔法の魔石がついてる……通信相手は誰だ?)

戦士「あーテステス。癒しの神の従者、勇者一行の戦士だ」

『お、噂に聞いていたが本当にお前か』

戦士「お、日の神様の」

『よー五年ぶりだなっ』

戦士「五年ぶりの久しい声は何を担いできた」

『凶報』

戦士「そんな気はした……そんなフラグな感じだった」

『そう落ち込むなよー』

『で、だ。合わせて各国の状況とかも教えておこうかと』

戦士「あー頼む」

『一先ず他の従者は各国の防衛、または鉱山に対し攻撃を行っている』

『勿論、人間の軍隊と共にな。あ、鉱山の話は知っているか?』

戦士「魔王が魔力を放って魔力が滞留。それを餌に集まった魔物に色んな鉱山が占拠されつつあるってやつだろ」

『残念』

戦士「え?」

『全部占拠された』

戦士「えっ」

『一応、軍と従者で攻撃しているが、完全に篭城状態だからなぁ』

『一部じゃ奴らを外に出さないようにして、撃破は諦めるかって流れだな』

戦士「ぅゎぁ」

『まー町とか村とか微妙に滅んでたりするけど、国が落ちるような事態はまずなさそうだ』

戦士「とりあえず防衛は大丈夫か」

『ただあまり長期化すると産業や貿易がって所だな。宜しく頼むぞ』

戦士「ああ、任せてくれ」

戦士(……まあ人間サイドからしたら、居住地滅ぼされて黙っていられないだろうけどなぁ)

『あ、すまん。言い忘れていたが、もし鉱山内の魔物が一気に外へと流れ出したら決壊するから宜しく』

戦士「死んででも守りぬいてくれ」

『で、本題の凶報なんだが』

戦士「えっ」

『おいおい、今までのは各国のお話だけだぞ?』

『どうも魔王は空を飛べるらしい。それも結構な高度で結構な速度でだ。魔力を使った力技みたいなもの、と分析されたようだ』

戦士「どうしろって言うんだ」

『まあ、魔王城内での決戦ではその瞬発力に注意って程度だ。で本題の本題、魔力による超強力な障壁を展開している』

戦士「詰んだ」

『まだ安全だった鉱山で従者部隊が魔力を放出しに来た魔王と遭遇。男神従者という戦闘型PT為す術なく全滅』

戦士「オワタ」

戦士「なになに、どうしろって? 死ねって?」

『一時的に魔力を消滅させる何かを作っているらしい』

戦士「それ使うと魔王の魔力が空っぽになるのか? とんでも兵器だな」

『いや、外界に放出された魔力を分解し、その効力を消滅させるってものだとよ』

『障壁を張り直されたらまた使うしかないってこった』

戦士「それができるまではのんびり旅してろって?」

『いや、急いで魔王城近辺まで向かって、待機しててほしいそうだ』ピシ

『おっともう時間切れか。何かあったらまた』

戦士「ああ、助かるよ」パキン

戦士「……ふう」

戦士「勝てるのかなぁ……俺ら」

魔法「勇者はさ……そんなに戦士の事が好きなの?」

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