女神「魔王が人間界に攻め込んだようです」 5/9

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魔法「お願いだから貴方がそんなにならないで……こんな所で貴方が自爆したら私も終わるのよ」

戦士「勇者が連れて行かれた方角は」

魔法「今私達がいるのがこのあたりになるから……」ガサ

戦士「……鉱山か」

魔法「けれど勇者を連れて一体どうやって内部に入るつもりなのかしら?」

戦士「もしかしたら周辺も魔物達が抑えているのかもしれない。だとすれば山頂なりなんなり、安定した足場のある場所に下ろすだけで済む」

戦士「とにかく鉱山に向かうでいいな?」

戦士「流石に一日じゃ無理か……」

魔法「勇者……無事でいて」

「なんだお前達は!」

戦士「俺達は勇者と共に旅をしている者だ。昨日、魔物に攫われた少女がこっちに来たはずだ」

「な……あれが勇者様だったのか」

「おい! こうしちゃいられないぞ!」

「全部隊、突撃準備にかかれ!」

魔法「へ?」

「我らの命運かかった勇者様をお助けするぞ!!」

「「おおおーーーーー!!」」

戦士(勇者に対する期待、でかすぎじゃないか?)ヒソ

魔法(遠方じゃ元は町人Aだったのを知らないのかもしれないわね)ヒソ

戦士(兎にも角にも……俺らもこの突撃に乗じて乗り込むぞ)ヒソ

魔法(ええ)

「全部隊突撃準備完了まで後五分!」

「十分後、全部隊を突撃させよ!」

魔法「早っ!」

戦士「まあ、一人攫われてるのを見ていたんだ。何時でも突撃できる準備はあったんだろう」

「全部隊突撃開始ぃっ!」

「「うおおおおおおお!!!」」ドドドドド

魔法「私達はどうするの?」

戦士「地図で見る限り、平坦そうな所はこことこことここ……だが」

戦士「この辺りに道がある……下手をするとここから坑道に入れるのかもしれない」

魔法「まさか……」

戦士「兵士達はがんがん山登って行ってる。正面から入ったら、俺らだけで中を対処する事になるからなぁ」

戦士「俺達は中腹の入り口を目指そう」

戦士(無事でいてくれよ……勇者)

勇者「……」ダラダラダラ

鳥型「ギャアアアアア!!」

犬型「バァウ! バゥ!」

オーク「ガハハハハ! でかしたぞぉお前らぁぁ!!」

オーク「しかも中々に美味そうな人間」ジュルリ

勇者(いやあぁっ! 初めてがオークとか嫌過ぎるぅ!!)

オーク「二日後は満月だったな……グフフ、月見酒をしながら人間の肝を肴とするかぁ」

勇者(おわああああ! そっちかああああ!!)ガクガクブルブル

勇者(か、考えるんだ。現状を打破しうる方法をっ)

勇者(あれはまだあたしが勇者である事を知らない……あたしが勇者だと知れば……)

ケース1

オーク「なにぃ!? ならばその首を魔王様に献上すれば俺も……グフフフ!!」ズドッ

ケース2

オーク「ゆ、勇者だとぉ! とんでもねぇ地雷だ! 今すぐにでも!!」ズドッ

ケース3

オーク「こいつぁ大手柄だぁ! 生け捕りした勇者を魔王様に差し出せば! よし、今すぐ魔王様にお伝えしろ」

オーク「逃げられでもしたら厄介だからなぁ!!」

勇者(うん? あれ? え? 詰んだ?)

オーク「てめぇらぁぁ! 二日後は大宴会だぁ! 準備するぞぉ!!」

「ギエエエエエエエエ!!」

「オオオオォォォン!!」

勇者(雉も鳴かずば撃たれまい……例え二日の延命でも)

オーク「さぁて……こいつはしっかり下拵えをすべきか否か……」

勇者(鳴かずとも撃たれるぅ?!)

オーク「初めての人肉で生きてるときたらぁ鮮度を選ぶよなぁ!!」ゲラゲラ

勇者(よし、延命!)ドギマギ

戦士「」ユラァ

魔法(せ、戦士がかつて無い形相を……)ブルブル

魔物の群れ「」

オーク「」

戦士「勇者!!」

勇者「戦士さんっ!」バッ

勇者「うわぁぁん!! ごわがっだでずよぉぉ!!」ギュ

戦士「勇者! 勇者!」ギュウ

勇者「せ、戦士さん?」

魔法「戦士?」

戦士「良かった……勇者、本当に。すまない……本当に」ギュウウ

勇者「……あ、ありがとう、ございます」カァ

戦士「怪我は無いか? 痛い所は?」

勇者「は、はい。戦士さんが助けてくれたので」

戦士「本当に大丈夫か? 何か酷い事をされていないか?」

勇者「は、はい……」

勇者(な、何これ?! どうなってるの?!)

魔法(勇者が攫われた時、ほぼパニック状態だったわよ)

勇者(ええぇぇ?!)

戦士「何て事を……ああ、だが無事でよかった……俺が傍にいながら……本当にすまない」

勇者(実はフラグ立ってるとか!!)wktk

魔法(……以前の様子を踏まえ、何か違う気もするわね)

戦士「……」ギュウ

勇者(うぇひひ、戦士さんの熱い抱擁)ジュルリ

魔法(されどお互い鎧姿)

勇者(されている事に意味があるのっ)

オーク「」ムクリ

戦士「……」ピタ

オーク「よぉくも、まあぁやぁってくれたなぁ?」

勇者「ひぃっ!」ビク

魔法「あの傷でまだ立ち上がるの?!」

オーク「あんなぁんで死ぬぐらいじゃあぁ、とぉっくに陥落してるわぁ」

オークゾンビ「ふぅぅざけた野郎がぁぁ!! ぶっ殺してやるぅ!」カッ

ゾンビ鳥「ギギ、ギギャア! ギギャア!」ムク

ゾンビ犬「グル、ググゥ! グルルル!」ムク

勇者「そんな……倒した魔物まで!」

戦士「」スラァン

鳥首犬首「」

勇魔(ですよねー)

オークゾンビ「グハハハ! 所詮は雑兵か!」ブォン

戦士「ぐっ!」ガキィン

オークゾンビ「腐り爛れた身を魔力で補っている俺はぁ!」ガキィン

オークゾンビ「身体が耐えられる以上の力が発揮できるんだよぉ!!」ガキィィン

オークゾンビ「この重い一撃、何時まで受け止められるかぁぁ?!」ブァ

戦士「……」ギィィン

オークゾンビ(なんだこいつは? 今までの一撃は辛うじて受けていた癖に、大振りの一撃を簡単に)

戦士(なるほど……魔王以外ならリミッター解除でどうとでもなるな)スゥ

戦士「はああ!」ギィン

オークゾンビ「えっ!」

勇者「鍔迫り合いの状態から剣を弾いた!」

魔法「完全に力技ね」

戦士「……」ブォ

オークゾンビ「へ、へへ、斬るがいいさぁ! だがなぁ、俺ぁ何度でも起き上」ドッ

肉塊「」

戦士(流石に限界を超えて力を出しているだけはある……体がだるい)フゥ

勇者「す、凄い一撃……」

魔法「剣圧で叩き潰した? そんな芸当できたのならさっさと使えばいいものを」

戦士「体への負担が大きいんだ」ブル ブル

戦士「おまけに生涯に行っていい回数なんてのもある」

魔法「……なるほど。人の限界を超えた力の代償ね。その回数を超えたら人体が裂けるのかしら?」

戦士(なんで分か……あれ)クラ

魔法「……ちょっと待って。あなた、休憩時間も惜しんで私を負ぶってきて、そんな力を出して大丈夫なの?」

勇者「なにそれ! 魔法使いちゃんっ!」

魔法「あっ。あー……あれは仕方が無かっ」ドサ

戦士「」

戦士「……ん?」パチ

戦士「宿屋か?」ムク

戦士(状況を見るにあのまま気絶した感じか……)ガチャ

勇者「戦士さん!!」

魔法「あら、案外丈夫ね」

戦士「丈夫ってお前……」

魔法「力なく倒れた時はもう駄目かと思ったわよ」

勇者「うわぁぁん! 戦士さーん!!」ガバァ

戦士「あー……心配かけてすまなかったな」

戦士「ああ、鉱夫達の宿所か」

魔法「今日一日はゆっくり休んでいなさいよ」

勇者「でも、明日も様子見たほうがいいよね?」

魔法「そうねー……疲労とあの技の所為だとは思うけど、明日の朝の様子次第かしらね」

戦士「そんな病み上がりみたく。言うほどの事じゃないだろう」

勇者「……戦士さん、あたしを助けに来た日から二日経っているからね?」

戦士「え?」

魔法「丸二日寝ていたのよ」

戦士「えっ?」

戦士(疲労があったとは言え、リミッター解除したら丸二日眠るって……)

戦士(連続で使ったらどうなるんだろう? 丸四日? 反動膨れてもっと? いや体弾けと飛ぶとか?)ブルル

戦士(だとしてもこんなデメリットがあるだなんて……女神様、こういうのはしっかりお願いしますよ)コンコン

戦士「? どうぞ」

兵士「よー。久しぶりだな」ガチャ

戦士「日の神様のっ。なんだ、こんな所の勤務だったのか?」

兵士「いんや、飽くまでウェッブリバーの兵士ってだけだ。初の鉱山陥落で内部の調査とか、残党がどうだとか、てので来たんだ」

兵士「ま、何はともあれお疲れさん」

兵士「まだ調査段階だけどもな、多分お前の大手柄になると思うぞ」

戦士「何がだ?」

兵士「魔王が放つ魔力、その爆心地における鉱石が含む魔力が特殊みたいでな」

兵士「恐らく魔王の結界を消滅させる手段となるだろうな」

兵士「天界にはもう送ってある。何柱かの神様方が額を寄せ合っているって話だ」

戦士「最後、あんまり良い話じゃなくないか?」

兵士「進展はしているらしいから時間の問題だろう。俺達従者は、主の手腕を信じて命を遂行するだけさ」

戦士「そりゃまあそうなんだけどな」

戦士「じゃあなんだ? これからはどんどん鉱山を潰していけって事か?」

兵士「どうだろうな。今回採取できた特殊魔石で、どれだけ多くの魔力分解兵器を作れるか、だな」

兵士「まあ、潰したきゃあ潰してくれて構わないが、近くに他の従者がいないと天界にも魔石が送れないからな」

兵士「お前、魔法が使えないしな。魔法使えたら自分で送れるのになー」

戦士「悪かったな」

兵士「ま、これを機に人手の薄いところを従者達で襲撃して、鉱山奪還を計るかって話も出てきているし無理しなくてもいいだろう」

兵士「とりあえずこれ、回復薬だ」

戦士「お、助かる」

兵士「あとこれは滋養強壮剤」

戦士「いらん」

兵士「そういう意味じゃない。今回の件で体に負担かかってるだろう、て事で天界製の物を渡せっつわれたんだ」

戦士「それなら頂くが」グビッ

兵士「んじゃあ俺はこれでな。お前も頑張れよ」

戦士「クハーーッ! おう、またな」

……

戦士「良し、そろそろ行くか」

勇者「昨日目覚めたばかりなのに、大丈夫なのですか?」

魔法「無理をして倒れられても困るのよ」

戦士「三日もゆっくり休んだんだ。もう平気だよ」

戦士(そりゃあ天界の、それも神の酒さえも原料とした薬だからな」

戦士(人間の体には過ぎるほどの効力だ)

戦士「ふぅっ! たぁっ! ふっ! せっ!」ズババババン

勇者「せ、戦士さん……」

戦士「三日も休んだ分、体を慣らさないとな」

魔法「だとしても前線で戦い過ぎじゃない?」

戦士(俺自身強くならない事には、魔王も倒せないだろうからなぁ)

戦士(……とは言え、魔王に勝てる見込みが全く無い)ズゥゥン

戦士(俺でさえ素のままじゃ、オークゾンビに押されていた訳だし)

戦士(あれ、これ由々しき事態じゃないか? というか従者としてすら魔王には適わないものなのに)

戦士(神々は何故人間に任せる事になったんだ? やばい……何で今まで楽観視していたんだ)

戦士(開発中の兵器で魔王が弱体化……いや、俺が出撃した段階において、そういった道具の必要性は考慮されていなかった)

戦士(それとも、人間界を襲っている魔王は、魔王の中でもとびきり弱い者なのか?)

戦士(そうでもなければ……説明がつかないな)

戦士(とは言え、今のままでは戦力不足なのは間違いないが……)

勇者「馬車通りませんねー」

魔法「気長に歩くわよ……」

戦士「……」ヒョイヒョイ

勇者(こ、この間から戦士さんがやたらと石を拾うようになったんだけども)ヒソ

魔法(私に言われても知らないわよ)ヒソ

戦士(今できる事なんぞ筋力上げとスタミナ上げくらいか……この先が不安で堪らないな)

勇者「首都以降初めての町だね」

魔法「ゆっくり宿屋で休みたいわぁ」

勇者「稽古の方はどうします?」

戦士「……」ウーム

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