女神「魔王が人間界に攻め込んだようです」 6/9

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戦士「すまんが自主トレーニングで。俺は俺で鍛えなければならない」

勇者(何だろう……ちょっと寂しい)シュン

魔法「まーあれはあれで、勇者が攫われたのに相当堪えたみたいね」

勇者「首都以降初めての町だね」

魔法「ゆっくり宿屋で休みたいわぁ」

勇者「稽古の方はどうします?」

戦士「……」ウーム

戦士「すまんが自主トレーニングで。俺は俺で鍛えなければならない」

勇者(何だろう……ちょっと寂しい)シュン

魔法「まーあれはあれで、勇者が攫われたのに相当堪えたみたいね」

戦士「ふっ! たぁっ!」ズババン

魔物の群れ「ギィギィ」ワラワラ

戦士(従者の身であれば一撃で吹き飛ばせるものをっ!)

戦士「ど、っけぇぇぇ!!」ブォッ

魔物の群れ「ギッ」ドッ

魔物達「ギギィ」ワラ

戦士「はぁっはぁっ」

戦士(何だ……? 半数近くが叩き潰れたぞ?)

勇者「……」ビュビュビュン ビュッ

魔法「随分と様になってきたわねー」ズズー

勇者「うーん、でもまだまだだよなぁ……」

勇者「せめて戦士さんの足を引っ張らないレベルにならないと、役立たずなレベルだし」

魔法「それは言いすぎじゃないかしら?」

勇者「いやいや……正直あたし要らないよねぇ、と思っているくらいだし」

勇者「ぶっちゃければ出願者さえいれば、あたしでなくてもいいよね」

勇者「神様がどうたらとか抜きに、戦士さんクラスの人達が集まった方がよっぽど魔王を倒せる気がするし」

魔法「まーそれはそうでしょうね。けれども、それでも人はすがるものよ。諦めなさい」

勇者「え? や、逃げ出したい……訳じゃないけど勝率考えるとさー」

魔法「ふう……普通の食事はいいものね」モクモク

戦士「喜んで犬型の魔物肉を食べていたじゃないか」

勇者「いやーやっぱりこういう食事があると、こっちの方がいいですよねー」

戦士「でも外じゃあ魔物肉に食らいつく、と」

魔法「静かに食べたらどうなの?」

勇者「女の子にそういう事言っちゃダメですよ」

戦士「あれ、俺が悪いのか?」

戦士(うーん年頃の女の子の考える事は分からない)

戦士(そりゃあ周りに女性はいるが、従者と人間じゃあ価値観が変わってくるからなぁ)ドサ

戦士(にしても体が裂けるくらいに痛い……一人で魔物の群れと大立ち回りはやり過ぎか)ギスギス

戦士(もう休もう……明日に響、く)ウトウト

勇者「そういえば、戦士さんはどんな稽古していたんだろう?」

魔法「案外、一人で魔物と戦っていたりしてね」

勇者「ありえそうだから困る。なんだか疲れていたみたいだし大丈夫かなぁ?」

魔法「勇者が心配するほど柔じゃないでしょうに」

数日後

戦士「……」ヒュヒュン

魔物の群れ「」

勇者「戦士さんが異様に強くなっている気が」

魔法「異常な速度ね」

戦士(やはり素でも剣圧で敵を薙ぎ払えるようになっているな)

戦士(もしかして人間の肉体と言えど、限界値はかなり高く設定されているのか?)フーム

戦士「おー緑の壁が見えてきたな」

勇者「うわぁ……凄い。あれがグリーングランド」

魔法「樹海の国と言われるだけはあるわね。私達遭難しないわよね」

戦士「道ならちゃんとある、が」

勇者「が?!」

戦士「魔物侵攻の関係で何処が安全なのやら」

魔法「トラップとかがあるという事かしら?」

戦士「グリーングランドは樹海という地の利を生かして魔物を退けているらしい」

戦士「ともすれば樹海はトラップだらけだろう……」

勇者「どうするんです? 迂回でもしますか?」

戦士「それはそれで凄い時間がかかるんだよなぁ。近くに町があるはずだからそこで情報を集めて、かな」

宿

戦士「……」ウーム

勇者「あ、お帰りなさい」

魔法「どうだったかしら?」

戦士「予想以上に面倒だな……一応ルートは分かったが」ガサ

戦士「ここを入り口にこう行ってここを進んでここを登ってここを抜けるとグリーングランドの首都に着く」

戦士「樹海内部は首都と大きな町がいくつかあるだけだからな。途中で補給もできないし、二人にとっては歩きなれない地だ」

戦士「敵の事も考えて五日くらいかかると思ったほうがいいかもしれないな」

魔法「そんなに?」

戦士「地面は苔むしているからな。足を取られるだろうし起伏も激しいルートだ」

勇者「うわー疲れそう」

勇者「ひぃ! ひぃ!」

魔法「はぁ……なん、なのよ、これ」

戦士「だから言っただろう。ここを上りきれれば休めるぞ」

勇者「し、死ぬぅ~」

戦士「魔法使い手」

魔法「あ、ありがと……」ガッシ

勇者「」ゴァ

魔法「こっちは……ギリギリだから……そんな目しない、でぇ」

勇魔「」グッタリ

戦士「ふう……ここらの敵も粗方片付いたし」

戦士「こりゃあ五日でも着けるか分からないかもしれないな」

勇者「な、なんで戦士さんは余裕なんですか?」」

魔法「いくらなんでもおかしいわよ」

戦士「いや、そんなもんだろう」

魔法「蛇肉美味しいわ」

勇者「初めはうえぇなんて思ったけど、悪くないね」

戦士(野営マジックなんだけどな)

戦士(にしてもあの上りが酷かっただけで結構安定した道だな)

戦士(これなら五日でつけそうだな)

勇者「にしても視界が遠くまで届かないってここまで辛いだなんて」

魔法「町が近いのか遠いのか……」

戦士「……」ザッザッ

勇者「ふぅ……ふぅ」ザッザッ

魔法「ひぃ……ひぃ」ザッザッ

勇者「せ、戦士さん……そろ、そろ」

戦士「……」キョロキョロ

戦士「もうちょいだな」ザッザッ

勇者「えぇー……」

魔法「ひぃ……まだぁ?」

戦士「……」ザッ ピリリ

勇者「止ま……?」ピタ

魔法「」ピタ

勇者「ま、魔法、使いちゃん……」ヒィヒィ

魔法「」ヒュー ヒュー

戦士(グリーングランドの最終防衛ラインか)ピリリ

戦士「こちらの少女は神より勇者の啓示を受けた者だ。魔王討伐の為旅をしている。こちらを通させていただきたい」

狩人「……」ガザ

戦士「流石にピリピリしているな」

狩人「ここまでやってくる魔物はいないが油断はできんからな」

狩人「それにしても……勇者様はこんな幼いとは」

勇者「ど、どうも……」ハーハー

狩人「我々は我々の国さえ守っていれば、勇者様が魔王を倒すだろうと思っていた」

狩人「だが……何て愚かで浅ましい考えだったか」

戦士「少しでも労わってくれるなら、先に進ませて宿」クイクイ

勇者「無理……無理」プルプルフルフル

魔法「」ゼェハァ

戦士「……休ませてくれないか?」

グリーングランド首都

魔法「美味しい」モクモクモク

勇者「凄い山菜鍋ですねー」パクパク

戦士「名物だからな」モグモグ

魔法「それにしてもこれからどうするの?」

戦士「ここから樹海の外に出る最短コースを案内してもらるとさ」

戦士「そこからは平地が続き……細く長い岬の先に魔王城がある」

戦士「魔物との戦闘も激化するだろうから、時間はかかるだろうが目と鼻の先だ」

勇者「き、緊張してきた」モグモグ

魔法「プレッシャーで胃がどうにかなりそうね」モクモク

戦士「どこがだ?」

……

戦士「で、だ。樹海を抜けた訳だが」

戦士「ここから南に町がある。一旦そこで休息を取った後、南東の岬に向かう」

戦士「その町が最後の町になるからな……ゆっくり休むとしようか」

魔法「ここからだとどのくらいかかるのかしら?」

戦士「そうだなぁ……四日ぐらいで着くか」

勇者「最後の町まで四日かぁ……」

戦士「ま、慌てる事はないさ。何せ魔物も強いのが現れるだろう。心していこうか」

魔物の群れ「グォォォォォン!」ドドド

戦士「おー牛型の魔物か」

勇者「うっわ強そう」

魔法「これは辛そうね。戦士、少し時間を稼いでくれないかしら?」

戦士「良しきた」バッ

勇者「赤いマントなんて何時から持っていたんですか?!」

戦士「元はただの布」

魔法「その赤って……」

戦士「うおおおおお!」ドドド

魔物の群れ「オオオォォォォン」ズドドド

魔法「……」キィーン

魔法「火炎魔法・中!」ゴッ ドアアアアア

戦士「うおおおおお?!」ゴォォォォォ

勇者「うわー……全てを灰塵とする勢いだぁー」ゴゴゴゴゴ

ヴェリー・ウェルダンな炭「」シュウウウ

戦士「おい、俺までちょっと焦げたぞ! というか俺ごと焼き殺す気か!」チリチリ

魔法「ご、ごめんなさい」

戦士「というかなんだあの威力……本当に火炎魔法・中か? 今まで撃っていた魔法はなんだったんだ」

勇者「魔法使いちゃんは先天的な大魔力の持ち主なんだよ」

勇者「ウェッブリバーに魔法を学びに行ったんだけども、一番の目的は制御しきれなくなって暴発する魔力をどうにかする為だったの」

戦士「暴発? そんな事あるのか?」

戦士(人間の器じゃ零れる量の魔力? そうそう無いぞ)

戦士「あーあれか? 勢い余って生活用魔法で人死に出したとか」ハハ

魔法「……」プルプル

戦士「……。え? ドンピシャ?」

勇者「近くに人がいなかったら怪我人一人出なかったんだけども家が廃屋に……あれにはあたしもびっくりしたなぁ」

戦士「え? マジで?」

魔法「お願い……その話だけは止めて……」トラウマ

戦士(なんだこの子……というか中であの威力って従者でもいないぞ?)

戦士「因みに……魔力的には残りはどんなもんだ?」

魔法「……? ……たかだか中一発撃ったぐらいじゃ、余裕だけども?」

戦士「強クラスも撃てるのか?」

魔法「一度だけなら撃った事はあるわ」

戦士「一度?」

魔法「……強が撃てる環境がないのよ」

戦士「」

戦士(おいおいこの子、人間の身で神様クラスの魔力なんじゃないか?)

戦士(死んだら一柱増えたりして。おわー天界で会いたくねぇー)

戦士(いや、落ち着け。冷静に考えればこれはとんでもない火力だぞ)

戦士(というか魔王城ごと消し炭にできるんじゃないか?)

戦士(あれ……勝ち戦?)

魔法「ああ……言い忘れたけども、今まで私が撃っていた魔法はそこそこ力込めた生活用魔法ね」

戦士「本来焚き火するのに火を起こす程度なのに、敵を燃してるってどういう事だ」

戦士「……とりあえず最後の町を過ぎたら強を撃ってもらいたいな」

勇者「あ、あたしも見てみたーい」

魔法「私にとってある意味深刻な話なのよ……」

魔法「年々魔力は増えるばかり……これから先どうしたらいいのか」

戦士「現在進行形か……」

戦士(なんか、神様が転生しているんじゃないかと疑いたくなるな)

戦士「ご馳走様でした」フゥ

勇者「あー美味しかったぁ」

魔法「私は一足先に部屋に戻るけれども、勇者はどうするの?」

勇者「うーん、ちょっと武器屋見てこようかな」

戦士「なんだ? 買い忘れか?」

勇者「いやーほら、魔法剣とかあったじゃん」ジュルリ

魔法「元はただの町娘なのに……」

戦士「頭の中まで剣士に育って……」

勇者「えっ」

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