魔王「この世界に魔法など存在しない!」 2/5

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―――王城

ヴァンパイア(ここが人間の城か……くくくっこうもりの姿ならバレまい)

王様「何!?敗退だと!?」

参謀「はっ……兵力では勝っていたのですが……」

王様「ならば何がまずかったのだ!戦略か!ならば貴様の責任だぞ!」

参謀「いえ!そ、それが魔王です!やつ一人に我が軍はなすすべもなく……くっ」

王様「魔王だと!?新しくなった魔王がか!?王座についたばかりで力もないものと思っておったが……」

参謀「やつの魔力に魔法も弾かれ……やつに受けた傷は治癒魔法さえ効かず……」

王様「なんと恐ろしい……」

参謀「我ら人間はこのままやつに屈するしかないんですか。くっ……」

勇者♂「そんなことはねぇよ!」

王様「お前は……勇者!間に合ったか!」

勇者「ああ、ちっと南のほうで魔族を叩くのに手間取ってたがな。北方の魔王?相手にとって不足はない。なぁ、みんな」

魔法使い♀「当然!魔力が強い?あはは、あたしの魔法で消し炭にしてやるわ」

賢者♀「それはわたくしの台詞でしょう?姉さん。わたくしの魔法で八つ裂きです」

僧侶♀「だ、大丈夫でしょうか。あの……その……」ビクビクッ

参謀「こ、この方たちは?」

王様「預言の勇者たちだ!」

参謀「預言?」

王様「ああ、ババさま!」

預言者「なんじゃ?」

王様「預言をもう一度聞かせてくれ」

預言者「よかろう……おお……見える……見えるぞ……」

預言者「おお……恐ろしい……世界が青き混沌に支配されようとしておる……」

参謀「青き混沌!?魔王のことか!?確かに全身青色の化け物でした!」

預言者「その者、青き混沌を晴らすため……狼を駆り……聖なる力を得るだろう」

預言者「聖なる力と声が響き渡り、その後世界は混沌から救われるであろう!」クワッ

王様「その者こそこの勇者殿だ!そして魔法使いと賢者、この二人は双頭の狼ケルベロス姉妹と呼ばれておる。魔法でかなうものはおらん」

参謀「おお!ではこの僧侶は?」

王様「なんか聖なるとか言っておったので入れてみた」

参謀「……」

僧侶「あはっ……は」

勇者「まぁ俺たちに任せておけば安心よ。青き混沌の魔王もおしまいだぜ」

王様「期待しておるぞ」

ヴァンパイア(勇者か……これは知らせねば我等の存続が危ないな)

僧侶「あ、あの……ところであの窓のところにいるおじさんは誰ですか?」

王様「何!?」

勇者「何者だ!」バッ

ヴァンパイア「俺に気づくとはさすがだな!勇者よ!」

勇者「こうもり!?」

ヴァンパイア「今の話効かせてもらった!勇者よ!我ら魔族、貴様を決して生かしてはおかん!預言は絶対に阻止するぞ!ハハハハハハハハ」パタパタ

勇者「待ちやがれ!くっ……逃げられた!」

僧侶「おじさんがぱたぱた言いながら壁を降りていく……」

勇者「なんだ?僧侶?」

僧侶「な、何でもありません!何も見てません!私何もおかしくありません」ブンブン

勇者「しかし、さすがだな。僧侶。あのわずかな魔力を見逃さないとは」

魔法使い「あたしは魔法は使うばっかで感知系は苦手なのよねぇ」

賢者「僧侶さんにはかないませんね」

僧侶「いや、あの……ごめんなさいごめんなさい」ペコペコ

王様「魔王にお主のことを知られた以上、のんびりもしてられぬ。頼んだぞ!勇者」

勇者「ああ!任せておけ!魔王は俺が必ずしとめる!」

―――魔法使いの家

魔法使い「出発前に我が家でゆっくりくつろいでいってよ」

賢者「わたくし達の実家、この国なんですよ」

勇者「悪いな、ありがたいぜ。宿屋よりゆっくり出来るな」

僧侶「あ、あのこの料理なんですが……」

魔法使い「あたしの手料理よ。母さんにも手伝ってもらったけどね」

賢者「ほとんど母さんの料理でしょ」

魔法使い「言わなきゃわかんないのに!もう!」

勇者「はははははは、でも旨いよ」

僧侶「このシチュー火が通ってないような……」

魔法使い「火?あたしの魔法の炎でたっぷり暖めたわよ」

勇者「そうだぜ。こんなに熱々じゃねえか。はふはふっ……」

僧侶「魔法の炎……煮えてない……ううっ硬い」ガリッ

勇者「はぁ?僧侶……お前もしかしてまだ魔法なんて存在しないとか言い出すんじゃねえだろうな」

僧侶「な、何言ってるんですか!魔法はありますよ!私だって使い手です!」

勇者「だよな。でもまたそんなこと言ってると施設に入れられちまうぞ?」

僧侶「ひぃ!だ、だだだから違います……ちょっと食欲がないだけで……」

勇者「まぁいいや、それよりお前らの母さんにあいさつさせろよ。料理のお礼もしないとな」

賢者「あ、じゃあわたくしが連れてきますね。母さーん!ほらっ、こっちこっち」ズルズルッ

賢者「この間母さん死んじゃって蘇生受けたばっかだから少しだけですよ」

ズルズルッ

勇者「あ、おばさんお邪魔してまーす」ペコッ

僧侶「ひぃ!し、死体!?」

勇者「ん?」

僧侶「な、なんでもないです……」

魔法使い「あはは、もうっ母さんったら久しぶりのお客さんだからってはしゃいじゃってぇ」ズルズルッ

賢者「ほらっ、ここに座っておしゃべりしましょう」ドスン

僧侶「あ……ああ……神様……」ブルブルッ

勇者「どうしたんだ?僧侶、おかしなやつだな。まぁ、明日から戦場だからな。ちゃんと寝ておけよ」

ワイワイ

僧侶(怖い……怖い……誰か助けて……)

―――魔王城南方30km砦

側近「ヴァンパイアの情報のおかげで先手を取れましたね」

魔王「ああ、だが、ここまで進出したおかげで前線が延びてしまった。一度兵たちも交代させねばなるまい」

魔王「ちょうど魔王城の歩兵部隊の兵錬が終わるころだな。半数を城に戻して城から歩兵部隊を向かわせる」

側近「では私が半数を交代させてきましょう。魔王様はこちらで指揮を」

魔王「わかった……ん?」

ヴァンパイア「魔王!これはどういうことだ!」

魔王「これとな何のことだ?」

ヴァンパイア「これだ!この俺の部隊の編成表だ!俺の魔法兵団がすべて歩兵に降格だと!?いったい誰のおかげでここまで来れたと思ってるんだ」

魔王「降格ではない。正当な戦力増強策だ」

ヴァンパイア「何を馬鹿な!我が血族は古より伝わる吸血鬼の家系!魔力こそ戦力の源だぞ!それを歩兵などと」

魔王「それでな、側近。歩兵は槍兵と弓兵をメインとする。長距離武器を活かすのだ。城の兵たちにも伝えよ」

側近「はっ!」

ヴァンパイア「聞けよ!」

魔王「だから何度も言っているだろう。魔法など存在せんと」

ヴァンパイア「あー!そうかい!わぁったよ!おい!側近!城に戻るんだろう!俺も帰る!」

魔王「好きにしろ」

側近「じゃあ、一緒に戻りますか」

ヴァンパイア「じゃあな!」

―――砦兵舎

側近「え?私だけ一足先に魔王城へ?」

ヴァンパイア「そのほうが効率いいだろ。俺は半数を魔王城に戻す。あんたは半数を魔王城から連れてくる。一緒にやれば半分の時間だ」

側近「確かにそうですけど……」

ヴァンパイア「任せておけって!ちゃんとやるからよ」

側近「分かりました。ではお任せします。一足先に馬を飛ばして行きます!それでは!」

パカッパカッ

ヴァンパイア「行ったか……魔王のやろう……見てろ」

ヴァンパイア「司令官!司令官はいるか!」

司令官「はっ、ヴァンパイア将軍。何事でしょうか」

ヴァンパイア「兵を交代させることは聞いているな」

司令官「はっ、城で兵連をつんだ弓兵と槍兵を投入するとか」

ヴァンパイア「そのとおり。そのため全軍ここよりいったん撤退する」

司令官「はっ!?半数と聞いておりましたが……」

ヴァンパイア「予定は変更だ。魔王様もすでに城へ戻られた。一度城でこの伸びすぎた前線を立て直す!」

司令官「本当ですか?この苦労して手に入れた砦を手放すとは」

ヴァンパイア「俺が信用できないのか!?」

司令官「い、いえ!了解しました!全軍撤退準備!」

ヴァンパイア(くくくっ、これで魔王はこの砦に一人。人間軍の餌食になるがいいわ)

ヴァンパイア(城には魔王様の命令だったとでも言っておこう。あいつさえいなければ最悪力ずくでも何とかなる)

―――砦南方

勇者「見えてきたな。あの砦か」

参謀「はっ!先日魔王に選挙されまして、今も立て篭もっております」

魔法使い「なっさけないわねぇ、あんたたちも」

参謀「くっ……」

勇者「いや、もし魔王が俺と同じくらいの実力があるのであればそれも無理ないだろ」

賢者「そうですね。一般兵がいくらいても同じでしょう」

僧侶「そ、それでどうするんですか……」

勇者「参謀さんよ、あんたたちは後ろのほうからついてくりゃいいよ。あの砦程度一人ででも落してやるからよ」

参謀「それでは我等の役目は……」

勇者「まっ、雑魚が逃げ出さないように城を囲んでてくれ。はーっはっはっは」

―――砦内

勇者「っと言ったものの……誰もいねーじゃねーか!」

参謀「そんなまさか……確かに落されたのはこの砦ですが」

魔法使い「あたしたちに恐れをなして逃げたんじゃないのぉ?」

僧侶「ゆ、油断しちゃだめですよ……死んじゃったらおしまいです」ビクビクッ

賢者「そのときはあなたが蘇生すればいいじゃないですか。ねぇ?」

僧侶「人は死んじゃったら生き返ら……いえ、なんでもないです」

参謀「ここが仕官の部屋でしたが……」

勇者「どれ、ちょっとどいてな。おらぁ!」

バーンッ

魔王「誰だ!ドアを蹴って開けるやつは!どういう教育を受けて……ん?」

参謀「ぎゃああああああああああああ!まままままままま……」

勇者「青い肌……」

魔法使い「頭に二本の角……」

賢者「そしてアホ毛……」

魔王「アホ毛のことは言うな」

僧侶「青?角?どこに……?」

勇者「お前が魔王か!」

魔王「人間どもか!?兵たちはどうした!?」

勇者「誰もいなかったぞ!」

魔王「なに!?どうなっている?何者だ!」

勇者「俺か?俺は勇者。青き混沌の魔王!お前を滅ぼす者だ!」

魔王「はぁ?」

勇者「僧侶!」

僧侶「は、はい」

勇者「魔王の弱点が分析できるか」

僧侶「え……その……多勢に無勢ですからみんなで弓でも射掛ければ倒せるんじゃないかと……」

参謀「馬鹿な!数千の軍でもかなわなかったんですぞ!」

勇者「僧侶、お前腹へって頭に血が回ってないんじゃないか?」

僧侶「確かにお腹はすいてますけど……いつも生のものばっかでほとんど食べられないし……」

勇者「仕方ねえ、俺たちでやるか」

勇者「僧侶、お前は一般兵たちと一緒に下がってな。ちょろちょろしてると消し飛ぶぞ」

参謀「は、はい!」ザッ

勇者「行くぞ!みんな!」

魔法使い「まかせて!」

賢者「あなたは双頭の狼の力を知ることになる」

僧侶「え、えっと……その……よろしくおねがいします」ペコッ

魔王「何やら分からんが……くっ……武器がないがやるしかないようだな……」

勇者「はぁああああああああああ!神よ!我に力を!」

勇者「神装!!!」

勇者「説明しよう!神に選ばれし勇者はその魔力を開放することにより、神に等しい力をその身に装着し、詠唱なしでその神威を使用できるのだ!」

僧侶「じ、自分で言っちゃうんですか……」

魔王「お前言ってて恥ずかしくないのか?勇者」

勇者「お前魔法兵団長のエターナルフォースブリザードを破ったそうだな」

魔王「破る前にそんなものはなかったがな」

勇者「俺のはちっとレベルが違うぞ!はああああああああああああ!」

勇者「賢者!魔王に呪縛を!」

賢者「おっけー!臨!兵!闘!者!皆!陣!列!前!行!」

賢者「九龍結界陣!」

勇者「魔法使い!神装強化だ!」

魔法使い「まかせて!ほおおおおおおおお!世界に数多にかける力の象徴よ!力の神アスラよ!我らに力を!」

魔法使い「マッスル……マッスル……マッスルオクレ!マッスルパワーアップ!!」

勇者「おおおおおおおおおおおおおおお!力がみなぎるううううう!いくぞおおおおおおおおおおお!」

勇者「エターナルフォースブリザアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアド!」

ドギャアアアアアアアアアアアアアアア

魔王「あのな、お前今、自分でドギャアとか言ってるからな……」

勇者「なに!?弾かれただと!?」

魔法使い「あたしが強化した魔法で……そんなまさか!」

魔王「ではこちらから行くか」ザッ

賢者「動いた!?結界の呪縛も聞いてないですって!?」

魔王「武器がないから素手になるが……体術は一通りこなしておる」

魔王「いくぞ!」ザッ

僧侶「上段突き!」ドスッ

魔王「うぐっ……何……お前は……」

僧侶「……」ヒュンヒュン

魔王「棒術だと……」

勇者「僧侶!?お前そんなことできたのか!?」

僧侶「教会で一通り棒術は教わりましたから」

僧侶「返し突き!薙ぎ払い!」ガッガッ

魔王「うっ……シンプルだが……強い!」グラッ

僧侶「足払い!」カッ

魔法使い「僧侶!もっと魔法も合成して使いなさいよ!ほらっ!グランドスラムとか!」

僧侶「そんなのないです……」

勇者「まぁいい!よくやった僧侶!あとは任せな!」ドンッ

僧侶「きゃっ」ドテッ

勇者「いくぜ!魔法使い!賢者!」

勇者「エターナルフォース……」

魔法使い「ハイパーマッスル……」

賢者「化血陣発動……」

魔王「ええい!馬鹿馬鹿しい!いい加減それやめんか!」

魔王「この世界に魔法なんぞ存在せんのだぞ!」

僧侶「え……」ドキッ

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