魔王「この世界に魔法など存在しない!」 3/5

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僧侶(魔法が……ないって言った?)

魔王「ごっこ遊びは家でやれい!」ドガッ バキッ ドスッ

勇者「く、くそ!!な、なんて魔力だ」

魔法使い「や、やられる……」

賢者「いえ、さっきの僧侶の攻撃は効いていたわ……もしかして……勇者。さっきの僧侶の分析はあっていたんじゃ……」

勇者「何?」

賢者「僧侶を信じてみましょう」

勇者「くっ……信じられねぇが……参謀!いるか!」

参謀「はっ」

勇者「やつに弓を射掛けろ!普通の弓でいい!」

参謀「で、でもそんなものじゃ怒りを買うだけじゃあ……」

勇者「はやくやれ!」

参謀「は、はい!弓を撃てー!」

ドスッ

魔王「ぐっ……なん……だと……腕が……」

参謀「き、効いている!?ど、どんどん撃ち込めー!」

ヒュンヒュンッ

魔王「くっ……こいつはまずい」サッ

参謀「逃がすな!囲め!」

魔王「まずい……やられる……いや、だが……こいつらは魔法があると信じている……」

魔王「そこをつけば……」

魔王「うおおおおおおおおおおおおおおおお!」

参謀「ひ、ひぃ!吼えた!」

勇者「魔力が膨れ上がったぞ!気をつけろ!」

魔王(ひるんでいる……いけるか!?)

魔王「こ、これだけはやりたくなかったが……仕方ない……」

魔王「すーぱーうるとら……///」

魔王「みらくるぎゃらてぃっく……///」

魔王「すぺちゃるぼんばーろいやるふぁいなる魔王びーむ!!!///」カー

勇者「……」

魔法使い「……」

賢者「……」

参謀「……」

シーン

魔王「くっ……恥ずかしい……いっそ死にたい……くそっ///」カー

僧侶(あ、あの反応……もしかしてあの人は……私と同じ……?それにちょっと噛んだ?)

魔王「あれだけの屈辱を耐えたのに……効かなかったのか……?」

勇者「ぎゃああああああああああああ!目が!目がつぶれたああああああああああ!」

魔法使い「ひぃいいいいいいいい!焼ける!全身が焼けるように熱いわ!」

賢者「おおおおおおおおおおおお!体の内側から呪いがあふれて……きゃあああああああ!」

参謀「……ぶくぶくっ」ガクッ

魔王「き、効いた!よし!この隙に……」

勇者「僧侶おおおおおおお!回復をしろおおおおおおお!」

僧侶「え……」

勇者「お前の法力ならいけるだろ!はやくしろおおおおおおおお!みんなしんじまうぞ!」

僧侶「で、でも……」

勇者「はやくしろおお!また施設送りにするぞ!ごらあああああ!」

僧侶「ひぃ!わ、わかりました。え、えっと……すーぱーうるとらみらくるぎゃらてぃっく……///」

魔王「お、おい!やめろ!それさっき私が……///」カー

僧侶「すぺちゃるぼんばーろいやるふぁいなる癒しの手!!!///」カー

魔王「ぎゃああああああ!やめろおおおおお!」

勇者「き、きたきたきたああああああ!体が治っていくぜ!しかも魔王にダメージまで!」

勇者「さぁ、こっちには無限の回復力がある!やっちまうか!」

魔王「くっ……ここまでか」

僧侶「ま、待ってください!」

勇者「なんだ、僧侶。なにかあるのか」

僧侶「ま、魔法がないって言ってました……よね?」

魔王「ああ!魔法など存在せん!」

勇者「僧侶!耳を貸すな!きっと幻惑魔法だ!」

僧侶「で、でも……」

参謀「ゆ、勇者殿!大変です!」

勇者「ああ、もう!今度はなんだ!」

参謀「外に魔族が……」

側近「魔王様あああああああああああああ!」

魔王「側近!?下か!?」ガタッ

ワーウルフ「助けにきたっすよー!っていっても俺達だけっすけど」

側近「早く逃げて!馬は用意してあります!」

魔王「助かったぞ!ここは退かせてもらう!」バッ

勇者「逃がすな!弓を放て!」

参謀「はっ!」

ヒュンヒュンッ

僧侶「あっ!ま、待って……」

魔王「なんだ?さっきからの様子を見ていたが……お前……もしかして私と同じか?」

僧侶「わ、私も連れて……きゃっ」

魔王「来るがいい!」バッ

勇者「窓から逃げたぞ!」

魔法使い「僧侶がさらわれたわ!」

賢者「僧侶は幻惑魔法にやられたんです!はやく追わないと!」

魔王「はぁ!」パカッパカッ

僧侶「あの……あの……」

魔王「しっかり捕まっていろ!」

僧侶「はいっ!」ギュッ

―――魔王城

魔王「事情を説明してもらうか。側近……うぐっ……」

側近「それより怪我の治療を!治癒魔法の得意なものを呼びますので」

魔王「いらんっ!包帯と傷薬をよこせ!」

側近「そ、そんなんでいいんですか?はい」スッ

魔王「お前達に任せておいたら傷が腐るわ」ペタペタ

僧侶「あ、私やります」ペタッ

魔王「そうか。頼む」

側近「で、その女は?どうするんです?」

ワーウルフ「へへへっ、食べるんっしょ?ねぇ、ちょっと俺にもかじらせてくださいっす」

僧侶「ひぃ!」ガクガクッ

魔王「誰が食べるか!こいつに手を出したら許さんからな!」

ワーウルフ「えー」

魔王「それよりどうして砦に私一人残して退却したのだ。側近」ギロッ

側近「わ、私じゃないですよ!そんな魔眼で攻めないでください」

魔王「ならばどうしたというのだ」

側近「ヴァンパイアのやつが裏切ったんです。態度がおかしかったので問い詰めたら吐きました」

魔王「それでやつは?」

側近「地下牢に入れております」

魔王「またゴーストやらに見晴らせておるわけではなかろうな」

側近「ゴーストは魔王様がやっちゃったじゃないですか」

魔王「しかしヴァンパイアのやつはなぜ……」

魔王「どうも魔道兵が減らされるのが気に食わなかったみたいですね」

魔王「そんなくだらん理由で……」

グー

魔王「なんだ?側近お前か?」

側近「ち、違いますよ!」

グー

魔王「何の音だ?」

僧侶「あ、あの……あのあの……///」カー

僧侶「ごめんなさい……最近あまり食べてなくて……」

グー

僧侶(ううっ……はずかしい……だって勇者様たちの食べ物火が通ってなくて食べられなかったんだもん……)

魔王「そういえば私も腹が減ったな。空腹では怪我も治らん。よしっ、食堂に行くぞ」グイッ

僧侶「あっ……」

魔王「そこで食事でもしながらお前の話も聞かせてもらおう」

―――食堂

魔王「食事ができるまで話を聞かせてもらおうか」

僧侶「あの……あの……」ビクビクッ

魔王「なぜ一緒に来た?」

僧侶「それは……その……一緒かと思ったから……」

魔王「一緒とは何がだ」

僧侶「魔法なんて存在しないって……」

魔王「やはりそれか。お前も魔法が見えないのだな?」

僧侶「じゃあやっぱり魔王様も……」

魔王「だが、そんなお前がなんで勇者とともに魔法の使い手をしているのだ」

僧侶「あの……ここではどうなのかわかりませんけど、王国じゃ魔法が見えないなんて言ったら絶対いけないんです……」

魔王「言えない?」

僧侶「そんなことを言ったら異常者として施設に収容されてしまうんです……だから……私も見えるふりをしていました……」

僧侶「でも……施設に入れられてしまって……」

魔王「魔法が見えるふりをしていたのになぜ施設にいれられるのだ?」

僧侶「私の両親は神官で、教会で働いていたんですが……二人とも事故で亡くなってしまいました。それで私は両親を埋葬して弔ったんですが……」

僧侶「そ、それを……それをみんなは生きてる両親を私が生き埋めにしたって!そして蘇生させると言って両親の遺体を掘り出して……」ブルブルッ

僧侶「両親は生きてることになってますが遺体はそのままです……私は施設に入れられてしまいました」

魔王「なんと……人間達の国ではそんなことが……」

僧侶「だから私は施設に入ってからは絶対に魔法が見えないなんて言いませんでした……魔法を使えるふりまでしました」

僧侶「そのうち魔法攻撃に動じない私は高位の僧侶ということになって……」

僧侶「で、でも……私のような出来損ないと同じ境遇なのに……魔王様は堂々と魔法など存在しないって……」

魔王「出来損ないだと!?馬鹿を言うな!自分を信じないでどうする!」

僧侶「魔王様……」

魔王「僧侶とかいったか。お前には私の姿がどう見える?」

僧侶「ど、どうって……アホ毛の生えてる以外は普通の人ですよね?肌も肌色ですし」

魔王「アホ毛いうな。そうだ、私もお前も同じ人間だ。何も恥じるところなどないな」

僧侶「……///」ポーッ

魔王「おっと食事がきたようだ。続きは食べながら話すか」

魔王「どうした。食べんのか?」

僧侶「あ、はい。いただきます」

魔王「いただきます」パクッ

魔王「んっ?な、なんだこれは!料理長を呼べ!」

料理長「お、お呼びでしょうか。魔王様」

魔王「この料理を作ったのは誰だ!」

料理長「わ、私です」

魔王「貴様はクビだ!出て行け!」ガタッ

料理長「な、なんでですか!?私の料理のどこがいけないんです」

魔王「このスープ……だしの取りかたは完璧だ。食材も最高のものを使っておる」

料理長「そうですとも!魔王様に食べていただくんです。最高の料理です!」

魔王「だがかすかに香りがつけてある。この香りはなんだ……木苺でもない、苔桃でもない、桑の実でもない……これは魔力草だ!そうだな!?」

料理長「は、はい!魔王様の魔力を回復していただこうと……」

魔王「私はあの青い草が大嫌いだと言ってあっただろうが!」

料理長「でも魔力草はたいていどんな料理にも入っていまして……」

僧侶「あ、あの……私これ……食べられません……魔力草が入ってます……アレルギーで……」

魔王「ん?」

僧侶「え?」

魔王「これは……もしかして……おい、その施設にいたやつらは魔力草を食べていたか?」

僧侶「確か嫌いな人が多かったような……」

魔王「いや、気のせいかもしれんが……あいつで試してみるか」

―――地下牢

ヴァンパイア「だせー!ここからだせー!俺は将軍だぞ!」ガタガタッ

魔王「元気そうだな。ヴァンパイア」

僧侶「あ、壁降りてたパタパタおじさん」

ヴァンパイア「魔王!よくもこんなところへ!魔族のことを想うならこの俺をここからだせ!そして魔道兵を復帰させろ!」

魔王「くくくっ、いつまでそんなことを言っておれるかな?」

ヴァンパイア「お、俺に何をする気だ……ま、まさか……」

魔王「おい、料理長」

料理長「は、はい!」

魔王「貴様の失敗は帳消しにしてやる。その代わりヴァンパイアへの食事は私と同じものを食わせろ」

料理長「わ、わかりました」

ヴァンパイア「はぁ、俺にあんたと同じもの食わせてくれるのか?」

魔王「さっき作り直した料理を出してやれ」

料理長「ど、どうぞ」カチャッ

ヴァンパイア「じゃあいただきます」モグモグ

ヴァンパイア「ん?なんだ?なんか足りねぇな」

魔王「まだ気づかんか。味オンチめ、しばらく様子を見よう」

―――1ヵ月後

ヴァンパイア「うあああああああああああ!魔力草!魔力草をよこせえええええええ!」ガタガタ

魔王「相変わらずやかましいやつだな」

ヴァンパイア「魔王貴様ー!食事から魔力草を抜きやがったなぁああ!魔力が衰えるうううううう」ガタガタ

魔王「そんなものはじめからないわ」

ヴァンパイア「まだ言うかああああ!草をくれえええええええ」

魔王「どうした、得意の魔法でも使って見せろ」

ヴァンパイア「おおおおおおお!メギドフレイム!」

シーン

ヴァンパイア「あ、あれ?エナジードレイン!」

シーン

ヴァンパイア「な、なんだ!?魔法がでないぞ!」

魔王「ふんっ、出ていないのか。私には最初から分からんがな。これでも魔法があるというか?」

ヴァンパイア「ま、魔力切れだ!そうだ!魔力草が足りないからだ!」

魔王「そうか、では側近」

側近「はい?なんです?」

魔王「ちょっと魔法使って見せろ。簡単なものでも構わん」

側近「魔法ですか?では……ファイアーボール!」ゴゴォ

魔王「どうだ?ヴァンパイア。見えたか?」

ヴァンパイア「な、何をしている?側近。何も出ていないぞ、自分でゴゴォと言っていたぞ」

魔王「続けてみろ」

側近「?」

側近「では……深淵のよりいでし混沌の申し子よ……我が血と魔力を糧に顕現せよ……ダークエターナル!」ドギュー

魔王「どうだ?」

ヴァンパイア「あ……あ……も、もしかして……俺もあんな感じだった?」

魔王「ああ、ノリノリであったな」

ヴァンパイア「ぎゃあああああああああああああああああああああ!」ジタバタ

魔王「ふははははは!己の恥を知ったか!」

僧侶「ちょっと可哀想じゃないですか?」

魔王「だがこれで決まりだ!原因は魔力草だな!側近!」

側近「は、はい?」

魔王「魔力草を全面禁止にする!今あるものもすべて燃やし尽くせ!」

側近「な、何をいってるんですか!魔力草は我々の魔力の源ですよ!魔力草の栽培地があることで人間どもより有利に立ってるんですから!」

魔王「そんな栽培地など人間どもにくれてやれ!いいか?人間に勝ちたいなら言うことを聞け」

側近「うぐ……」

魔王「それとも私とやりあうか?」ギロッ

側近「わ、分かりましたよ!どうなってもしりませんよ!」

魔王「それから僧侶」

僧侶「は、はい!」

魔王「お前の収容されていた施設というのはどこにある?」

僧侶「え……」

魔王「王国に攻め入り、まずそこを開放する。我らの仲間だろうからな」ニッ

僧侶「魔王様……///」

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