魔王「この世界に魔法など存在しない!」 1/5

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側近「はぁ?いったいなにを言ってるんですか?」

魔王「魔法が使えるなどと言う戯言に付き合う気はないと言っているのだ」

側近「……」

魔王「我が魔王軍から魔道兵団を廃止する。歩兵部隊を増強するのだ!」

側近「ちょっ、何言ってんですか。そんなことしたら人間軍にまけてしまいます!」

魔王「黙れ、私が魔王になったからにはそんな戯言には付き合わん。魔法など存在せん」

側近「いえ、現に魔法は…」

魔王「ならばつかって見せよ」

側近「え」

魔王「魔法が使えるのであれば見せてみよ」

側近「お、おい。ワーウルフ」

ワーウルフ「へ?」

側近「魔法をお見せしろ」

ワーウルフ「ここででっすか?」

側近「早くしろ」

ワーウルフ「は、はいっす!はぁぁ…」ゴゴゴゴゴ

ワーウルフ「闇に堕ちし地獄の太子よ…獄炎となりてすべてを滅ぼせ!」

魔王(何言ってんだ?こいつ…)

ワーウルフ「ファイアーボール!」ゴゥ

側近「どうです!この威力!壁が吹き飛んでしまいました」

魔王「そんなものは見えんぞ」

側近「へ?」

魔王「ふんっ、前魔王のジジイといい、お前たちといい、こんな下らんごっこ遊びをいつまで続けるつもりだ」

ヴァンパイア「おい、こら。言っていいことと悪いことがあるぞ!」

魔王「む?」

ヴァンパイア「あんたが倒したとはいえ、魔道王と呼ばれた前魔王様を侮辱することはゆさねぇ!」

魔王「あのもうろくジジイのことか。ボケもあそこまでいけば奇跡だな」

ヴァンパイア「貴様ー!」

魔王「それに倒しただと?あのジジイが火の上を歩いて渡れるとか言うからやらせてやったら火傷で死んだんだろうが」

ヴァンパイア「まだ愚弄するかー!」

側近「ん?何?人間どもの軍隊が?」

魔王「どうした」

ヴァンパイア「俺の話をきけー!」

側近「伝令によると人間どもの軍がこの魔王城に向かって進行中とのことです」

魔王「魔王が変わったこの時がチャンスと思ったか……情報が早いな」

魔王「仕方ない!兵科は現状のままで構わん!半数は残れ。残りは私と人間どもを迎え撃つ!」

側近「はっ!では、魔王様もこちらの武器を」スッ

魔王「何だこれは」

側近「魔界に伝わる伝説の魔剣ガラティーンでございます」

魔王「なんだ、その恥ずかしい名前の剣は。私はこの普通の鉄の槍で構わん」ヒュン

側近「そんな魔力も込められていない槍でどうします!」

ワーフルフ「そうっすよ!槍よりやっぱ剣っしょ!剣のほうがつよいっすよ」

ヴァンパイア「どうせ槍ならゲイボルクやロンギヌスでも使ったらどうだ」

魔王「何を馬鹿な。剣で槍に勝てるものか。リーチが違うわ!私はこの鉄の槍でよい」

―――魔王城南方1km地点

魔王「来たな。人間ども」

側近「魔道兵団、魔族歩兵団ともに配置につきました」

魔王「歩兵団だけでよいのだが、非常時だ。何もいうまい」

魔王「ん?なんだ?お前の持ってる木の棒は?」

魔族歩兵A「はっ、魔王様!これこそ北の火山より生まれし炎の魔力剣ファイアブランドです!」

魔王「ではお前の持っているそのハタキは?」

魔族歩兵B「はいっ!よくぞ聞いてくれました!これが伝説と歌われる悪魔の王が生み出した魔剣ムラサメです!」

魔王「これは心配だ……」

側近「光った!人間どもに動きがありました!」

―――人間軍

参謀「いいか!我らには神がついておる!王城に輝く聖火が我らの道を照らしてくれる!魔法兵準備は言いか!」

魔法兵団長「魔法兵!構えー!」

魔法兵A「はっ!」

参謀「ここは敵地であるが恐れるな!我らの神がここでもまた真の神なり!詠唱はじめー!」

魔法兵「太陽の神アポロンよ……その光を持ちて我らの矢となりたまえ!」

魔法兵団長「てぇー!」

魔法兵「ライトボール!」カッ

―――魔王軍

側近「きたっ!魔法の攻撃です!」

魔王「ん?どこだ?見えないが」

魔道兵A「ぎゃああ!光の玉があああああああ」

側近「怯むな!魔族の魔力を見せてやれ!」

魔道兵B「はっ!深遠よりいでし漆黒よ……我らの炎となりて敵を焼き尽くせ!」

魔道兵「ダークファイアー!」

魔王「お前達言ってて恥ずかしくないのか?」

側近「歩兵隊よ!我らが援護する!進めー!」

ワーウルフ「いよっしゃー!先方は俺にまかせてくれっす!今夜は満月っすから……アオオオオン!」

魔王「どうした、ワーウルフ。突然叫んで」

ワーウルフ「満月が俺を狼へと変えるんすよ。アオオオオオオオオン!力10倍っす」

魔王「変わっておらんが……」

ワーウルフ「歩兵部隊いくっすよ!くらえー!ギャラクティカマグナム!」

魔族歩兵A「将軍につづけー!真空!虎牙破斬!」

魔族歩兵B「空波斬!」

魔王「お前ら!そんな敵から離れて何をやっておる!剣が届くわけないだろうが!」

魔王「ええい!馬鹿馬鹿しい!私が出る!」ザッ

―――人間軍

魔法兵「ま、魔王だ!魔王が出たぞおおおおおお!」

魔法兵「ひいいい!なんて恐ろしい顔だ」

魔王「ひどい言われようだな」

魔法兵「肌が青色だぞ……まさに悪魔のようだ」

魔王「肌は肌色だ!」

人間魔法兵「頭にも恐ろしい!二本のつのが!」

魔王「角などないぞ!」

人間魔法兵「そして……頭の真ん中に……おおっ!恐ろしい!アホ毛が」

魔王「アホ毛のことだけは言うな!」

魔法兵団長「落ち着け!」

魔法兵「おおっ!団長がきてくれたぞ」

魔法兵「団長ー!」

魔法兵団長「たとえ魔王であろうと我等の敵ではない!お前たちの魔力をオラに分けてくれ!」

魔法兵「はっ!みんな手を天に上げろ!」

魔法兵「おおおおおおおおおおおお!」

魔法兵団長「大天使ミカエルよ!我等の祈りに答え、その神威を示したたまえ!おおおおおおおおおおお!」

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

魔王「何いってるんだ?こいつら」

側近「魔王様危険です!お下がりください!」

魔法兵団長「エターナルフォースブリザード!」カッ

側近「魔王様には指一本触れさせん!はああああああ」

側近「カルマよ!我がカルマ!ここに顕現し力を示せ!開け!地獄の門!」

側近「ダークバリアー!」カッ

魔法兵団長「おおおおおおおおおおおお!」ドドドドドッ

側近「ま、魔王様……今のうちにお逃げください」ビリビリッ

側近「は、はやく……ぐぐぐぐぐぐっ、長くは持ちません」

魔法兵団長「みんな!もう少しだ!もう少しだけオラに魔力を!おおおおおおおお!」ドドドドドッ

側近「手が……指が溶ける……魔王様ばんざああああああああい!」ジュウ

魔王「お互いに手のひら向け合って何をやっとるんだ?お前達は」

魔法兵団長「魔王!どどめだあああああああ!」

魔王「……」シーン

魔法兵団長「なんだと!?エターナルフォースブリザードがはじかれた!?なんという魔力!」

魔王「ごっこ遊びは家でやれ!」ドスッ

魔法兵団長「ごふっ……」

魔王「槍で一撃ではないか」

魔法兵「団長がやられたぞおおおおおおお!衛生兵ー!」

魔法兵「蘇生だ!蘇生魔法をかけろ!」

衛生兵「はぁぁあ……な、なんだこれは……傷が治らない……」

魔王「手をかざしただけで傷が治るはずないだろう」

魔法兵「呪いだ……魔槍か……魔王の魔槍の呪いだあああああああああ!」

魔王「ただの鉄の槍だ!」

側近「魔王……さ……ま……」ガクッ

ワーウルフ「側近様……惜しい人を亡したっす……」

魔王「貴様、まだ何もしておらんではないか!さっさと起きて戦え!」バシーン

側近「あいたっ!」

ワーウルフ「すごい!ビンタ一発で治ったっす……」

魔族歩兵「魔王様の治癒魔法か!死んだ人間を生き返らせた!」

魔族歩兵「うおおおおおおおおおお!ビンタ一発魔法!魔王様!魔王様!」

魔王「いいから進めー!」

魔族歩兵「ギャラクティカマグナム!」

魔王「意味のない遠隔攻撃はやめろ!」

参謀「た、退却だーーーーーー!」

ワーワー

―――魔王城

側近「いやぁ、快勝でしたね」

魔王「勝った気がせんがな」

側近「ヴァンパイア、これであなたもちょっとは魔王様を見直したでしょう」

ヴァンパイア「まぁ、あんた強いってことは分かったよ。恐ろしいほどの魔力と魔法だ」

魔王「いや、魔力も魔法もないといっているだろうが」

ヴァンパイア「ふん、謙遜は嫌味だぜ」

伝令「側近様……」ゴニョゴニョ

側近「何!?」

魔王「どうした?」

側近「そ、それが先の戦いで捕獲した敵兵なのですが」

魔王「ああ、確か地下牢に入れておくように命じたな」

側近「それが……全員逃げられてしまいました」

魔王「なんだと!?誰だ!警備についていた者は!」

側近「ゴーストです」

魔王「ゴースト?知らんやつだな。とにかく呼べ!」

側近「すでに来ております。さぁ、釈明しろ。ゴースト!」

魔王「ん?え?どこだ?どこにいる?」

側近「ゴースト!お前魔王様になんてことを言うんだ!言い訳にしても見苦しいぞ!」

魔王「お、おい。側近、貴様誰と話をしておる?ゴーストなどいないではないか?」

側近「ゴーストなどいない……ひ、ひぃ!」

ワーウルフ「ま、まさか魔王様やっちまうっすか」

ヴァンパイア「いないことにしちまうってか」

ゴースト「」

側近「ゴーストおおおおおおおおおおおおお!」

ヴァンパイア「さすが魔王だぜ……容赦ねぇな」

ワーウルフ「消しずみっす」

魔王「何?私が今何かしたのか?消したのか?ゴーストを?」キョロキョロ

ヴァンパイア「あんたの恐ろしさ……理解したぜ……もうさからわねぇよ」

側近「逃げた人間どもから我等の情報が漏れる危険もあります。これはこちらも敵の情報を得る必要があるかと」

魔王「そうだな。密偵が必要か」

ヴァンパイア「それなら俺がうってつけだろう」

魔王「何?」

ヴァンパイア「俺にはこの変化の術がある」ドロンッ

側近「おおっ!一瞬でこうもりに」

ワーウルフ「変化というか正体っすよね」

ヴァンパイア「そしてこの飛行能力がある。ハハハハハハ!では行ってくるぞ!」パタパタ

側近「窓から飛んでいってしまいましたね」

魔王「私にはおっさんが口でパタパタ言いながら壁を降りていくのが見えるのだが……」

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