魔王「この世界に魔法など存在しない!」 4/5

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―――王国

王様「どどどど、どうなっておるのだ。勇者よ、魔族に連戦連敗ではないか」

勇者「申し訳ない!やつら魔法耐性をあげてきやがって……」

魔法使い「魔王が地獄の門を開いてその力で守ってるのよ」

賢者「神をも恐れぬ所業を……恐れ多いことを」

王様「どうするのだ!」

勇者「だが、安心してくれ。この王国にやつらが迫ったとき……それが魔族の最後だ」

王様「ほぅ……策があるのか?」

勇者「ああ、最近魔力草も大量に手に入るようになっただろ?だから魔法使いと賢者で罠を張っている」

魔法使い「多重結界の大規模魔方陣よ。ふふふっ……大人数の高位の術師たちの魔力が必要になるけど……魔力草が大量にあれば……」

賢者「そこに魔族たちが足を踏み入れたら……ジ・エンド」

王様「おお!さすが勇者だ。城の術師も総動員させよう」

勇者「ははははは!ここが魔王の墓場になる!」

―――王国北方5km地点

ワーウルフ「先方は俺っすよ!アオオオオオオオオオオオン!」

魔王「満月だからってそんなにはしゃぐな。お前もう狼になったりしないだろう。全然変わってないな」

ワーウルフ「気分っすよ!気分!ノリが大事っす」

ヴァンパイア「いやぁ、晴れ晴れした気分ですね!魔王様!」

僧侶「あの……この人は変わりすぎて気持ち悪いんですけど……」

ヴァンパイア「酷いな!君は!わたくしはもとから紳士だよ」

側近「もう王国目前ですね。どうします?兵たちの士気も十分です。今なら王国だって落せますよ」

魔王「いや、まずは王国のはずれ……あそこにある壁の中の施設を落す」

ワーウルフ「なんすか?あれ?刑務所っすか?」

僧侶「刑務所のほうがまだ人間らしい生活ができます……そんなところです……」

魔王「行くぞ!」

―――不能者収容所

ドドドドドド

門番A「な、何の音だ?」

門番B「あ、あれは……敵襲!敵襲だああああ!」

カーンカーン

門番A「ど、どうするよ?」

門番B「どうするって?」

門番A「俺たちがここにいるのは中のやつらを出さないためだ。守るためじゃない」

門番B「そ、そりゃそうだ!じゃあ……逃げるか?」

門番A「ああ、逃げよう!そうしよう!」

ワーウルフ「アオオオオオオオオオン!」ドガッ

ヴァンパイア「敵前逃亡とは紳士にあるまじき行為!許せません!紳士キック!」ドスッ

門番A・B「……」バタッ

魔王「この中か……頑丈な鉄の扉だな……」

門番A「お、お前らにこの門がやぶれるものか……この門は魔法の結界で……」

魔王「破城槌を出せ!」

側近「はっ!」

門番A「な、なんだその木の道具は……そんなもので魔法の扉が……」

魔王「突き壊せい!」

ドーン ドーン ガシャーン

魔王「そんなものとやらで壊せたようだな?お前達のいう魔法の扉は」

門番A「あ、あ、あわわ……」

囚人A「なんだなんだ?」

囚人B「そ、外だ!門が壊れている」

囚人C「いったい何が……」

魔王「貴様ら!私を見よ!」

囚人A「誰だ?あれは……」

魔王「貴様らには私が何に見える?」

囚人A「アホ毛の人間」 囚人B「アホ毛の人間」 囚人C「アホ毛の人間」

魔王「あ、アホ毛言うな!こほんっ!そうだ!人間に見えるのであれば安心だ……私は魔王!」

魔王「そしてお前達にこの言葉を教えてやる!」

魔王「この世界に魔法など存在しないとな!」

囚人A「い、言った……あいつ言いやがった……言ってはいけない言葉を……」

囚人B「でも魔王?魔族の王なのに普通の人間だ……」

囚人C「あいつの自信はなんだ?もしかして……俺たちは……」

ザワザワ

魔王「そうだ!お前達はできそこないなどではない!狂っているのは……そう!あそこにいるやつらだ!」ビシッ

囚人A「城の……国の人々……魔法を信じる人たちが狂っている?……俺たちは間違っていない?」

囚人B「そうだ!俺たちは最初からまともだった!」

囚人C「そうだそうだ!」

勇者「そこまでだ!異常者ども!」

賢者「魔王軍がどこに向かったかと思ったらこんなところに……ふふふっ、おあつらえむけの場所ですね」

魔法使い「しかも、国のゴミどもと一緒なんてね。ふふふっ、まとめて始末できるわ」

僧侶「ま、待ってください!」

勇者「僧侶!無事だったのか!おい、さっさとこっちにこい!」

僧侶「ここの人たちは異常者なんかじゃありません!訂正してください」

勇者「僧侶……お前……いまだに魔王の幻術の虜なんだな……。ま、死んで蘇生させてから治してやるよ」

僧侶「待って!あなたたちの魔法は間違ってます!分かってるんですか、魔法で……怪我は治せないんですよ!死んだ人も生き返らないんですよ!」

賢者「これは救いようがありませんね」

僧侶「怪我を魔法で治療としたつもりになって……そのまま悪化して死んでしまった人がたくさんいます……私!もうそんなひとから目をそらしません!」

魔法使い「悲しいけど……これ戦争なのよ」

勇者「多重結界魔方陣準備!」

参謀「はっ!魔法部隊展開せよ!」

ラーラーラー♪

魔王「なんだ?この歌は」

勇者「天使の歌だ……ははははは!ここに天使を降ろす!」

ラーラーラー♪

魔法使い「私達の魔法技術を舐めてもらったら困るわね。天使の力を借りるんじゃない、天使の力そのものをここに降ろすのよ」

賢者「さぁ……歌いなさい。この魔法の歌声が天使を降ろすの。この1万人の高位魔法使いの歌声がね。結界内のあなたたちは消し炭よ」

勇者「さぁ!食らうがいい!天威を!」

囚人D「いやあああああああああああ!やめてえええ!」

魔王「どうした?」

僧侶「き、きっと症状が軽いとされてた囚人じゃ……魔力草がいくらか体内に残ってて……」

僧侶「ど、どうしよう……このままじゃ……」

ワーウルフ「このままだとどうなるんすか?」

僧侶「きっと何人かは精神がやられてしまいます……あいつらの言うことをそのまま真に受けて……」

ヴァンパイア「ではどうすればいいのかね?紳士的には!」

僧侶「それは……」

魔王「貴様ら!どこを見ている!私を見ろといっておるだろうが!」

魔王「この魔王が断言する!この世界に魔法など存在しない!」

囚人「で、でも……初めてあったひとを信じるなんて……」

魔王「私を信じなくてもいい!」

魔王「己自身を信じろ!」

囚人達「!!」

魔王「お前達は自分自身を信じることも出来ないのか!今は自分を信じてみろ!」

パァァァ

勇者「来る……くるぞ……来た!食らええええええ!天使の威!!!エンジェルコア!!」

ピシャアアアアアアアアアア!

囚人A「は……ははは」

囚人B「ば、馬鹿じゃねーの?あいつら?」

囚人C「だ、だよなぁ?恥ずかしいよな」

囚人D「なんであんなの怖がってたのかしら」

魔王「勇者よ、これが答えだ」

勇者「くそっ!また魔王の魔力に阻まれた!」

魔法使い「なんて防御結界なの!?」

賢者「もうわたくしたちには魔王を倒す手はないの……?」

魔王「まだ言うか」

勇者「な、ならばこれでどうだ!」ボッ

魔王「なんだ?」

勇者「普通のたいまつだよ。普通の」

勇者「お前には普通の攻撃が意外と効くみたいだからな……火をかけろー!」

魔法使い「いっておくけど、あたしの魔法の火じゃないわよ」

賢者「お城から持ってきた火ですからあなたたちの魔法防御で防げるかしらね」

参謀「火をはなてー!」

ボッ

僧侶「ゆ、勇者様……」

魔王「大丈夫だ。信じろ」ギュッ

僧侶「はい……」

勇者「ははははは!燃えろ燃えろ!出来損ないごと燃えてしまえー!」

賢者「綺麗……火の柱が天まで……」

魔法使い「あっつ……これはさすがに耐えられないでしょ」

―――数時間後

勇者「どれ?死体は確認しておくか」

魔法使い「建物も焼け落ちて何もかも真っ黒こげね……見つかるかしら?」

賢者「ないですね……死体が……」

勇者「どういうことだ?」

魔王「死体も何も火などついておらんぞ!」

勇者「な、なに!?魔王が無傷だと!?」

魔王「私だけではない!お前達は最初から火などつけておらん!」

パァァァ

勇者「な、なんだ!?建物が……直っていく!」

魔法使い「そ、そんな……こんな奇跡みたいなことが……?」

賢者「もう元通りの光景……ありえません……魔王が奇跡を起こすなんて……」

魔王「ほぅ?お前達にはそう見えるのか?」

勇者「なぜだ……普通の火で燃やしたのに……」

僧侶「普通の火……それはあれのことですか?」ビシッ

勇者「ああ!そうだ!王国建国のときよりある王城に輝く聖火の火だ!なぜ燃えうつらないんだ!」

僧侶「当たり前です……今なら……言えます!あそこに火なんて最初から灯っていません!」

勇者「な……に?」

僧侶「大昔の聖者が灯した魔法の火……そんなもの存在しない」

僧侶「そう!この世界に魔法なんて存在しないんですから!」

魔王「よく言った、僧侶……あとは私達に任せろ」

魔王「さぁ、かかってくるか?勇者ども」

勇者「く、くそがあああああああああああ!」

カッ

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