側近「お、おい!女!」バタンッ
側近「テレビもつけっぱなしで……おーい!」
テレビ「……次のニュースです」
魔王「ほほぅ?これがテレビというものか?」
テレビ「1ヶ月前、砂漠の町でおきた暴力事件で、警察は側近とその妻への逮捕状を請求しました」
テレビ「側近容疑者は逃亡しておりますが、その妻へのインタビューをご覧ください」
テレビ「女『人間……なんて……死ね』『もう帰れ!……死ね……死ね』」
テレビ「コメンテーター『いやぁ、こんな露骨な差別主義者初めて見ました』」
テレビ「みなさん、暴力と差別はどんなことがあってもいけません。我々はそのための正義に基づいて真実の実名報道を心がけております」
側近「な……んですか……これ……音声切り貼りじゃないですか……いつも一緒にいた私には分かります……」
側近「こんなものが……真実……?」
魔王「おい、側近。こっちの部屋で人が死んでおるぞ?」
女「」プラーン
側近「なっ……なっ……自殺……追い詰められて……」
側近「……許さん……私の家族を二度も……人間どもめ……」ゴゴゴゴゴッ
魔王「お、おい、側近、落ち着け」
テレビ「では次に、最近ブームのやくそう料理をご紹介しましょう」
側近「ぐあああああああああああああああああああ!人間など消滅しろおおおおおおおお!」
ゴバアアアアアアアアアアアン!
魔王「ぐおおおおおおおお!」
―――砂漠の町跡
魔王「やっと復活したというのに、死ぬかと思った」
側近「すみません、頭に血が上って」
魔王「町ひとつ吹き飛ばすとはな。だが、これでテレビとやらも消滅したのだな、よかったよかった」
側近「いえ、あれはテレビの端末のひとつに過ぎません」
魔王「なんだ、たくさんあるのか?」
側近「ええ、受信するアンテナがたくさんあってそこに電波を飛ばしてくるんです」
魔王「なるほど、では全部ぶち壊してやるか!」
側近「全部ですか!?」
―――王城
大臣「王様!大変です!」
王様「どうした」
大臣「砂漠の町が消滅しました」
王様「なんだと!?どういうことだ!」
大臣「現地を調査したものによると跡形もなく吹き飛んでいたと……さらにそこから二人の者が立ち去るのを確認しております」
王様「レジスタンスどもか……?いや、やつらにそんな力はあるまい……」
大臣「その一人は側近であったとか……」
王様「側近……どこかで聞いた名だな……」
大臣「先日の暴力事件でさらわれた町人の名ではなかったですか?」
王様「ああ、そうだそうだ。ではもう一人というのは犯人……?」
大臣「どういたしましょう」
王様「とりあえず、ガス爆発ということで報道しておけ。下手に庶民に知らせるな」
王様「その二人の向かった先は分かるか?」
大臣「西のほうに向かったと……おそらく次の町へ……」
王様「町を吹き飛ばすほどとはな……だが、情報はすべてここに集まる」
王様「暴力程度であれば法律で裁いてやったものを……やりすぎたことを後悔させてやるぞ」
―――草原の町
側近「見えてきましたよ、あれが草原の町です」
魔王「砂漠の町よりは大きいな」
側近「あれです、あの家の上にあるのがアンテナといってテレビを受信するんです」
魔王「ほぅ?ずいぶん細いのだな」
側近「それからあの道に立ってる電柱という柱でテレビを動かす電気を供給してるんです」
魔王「魔力を生み出す魔方陣のようなものか」
側近「いや、ぜんぜん違うと思いますけど……」
魔王「さあ!全部ぶちこわすぞ!」
側近「はっ!」
―――数日後
兵士A「こちらアルファ1配置についた」
兵士B「アルファ2了解。目標は町を出て時速6kmで西に移動中、距離は1km」
兵士A「装弾の準備はどうだ」
兵士B「いま完了しました。いつでも撃ちだせます」
兵士A「了解。900時に作戦を実行せよ」
兵士B「了解……」
兵士B「来たな……発射準備……」
兵士B「5・4・3・2・・・劣化ウラン弾発射!」
ドゴオオオオオン!
―――草原
魔王「ふはははは、みなびっくりしておったな」
側近「そりゃいきなり家に来てアンテナとテレビ壊されたらびっくりしますね」
魔王「だが、これで妙な情報で魅了されることはなくなるだろう」
側近「どうでしょうねぇ」
ドゴオオオオオン
魔王「なんの音……」
バキバキバキッ
魔王「ぐおおおおおおおおおおおお!」
側近「魔王様!お腹に何かが刺さって……」
魔王「ぐああああああああああ!」
兵士B「命中を確認!」
兵士A「よし!よくやった!」
兵士B「なっ……なんだって……そんな……馬鹿な……」
兵士A「どうした!?」
兵士B「劣化ウラン弾が貫通しないだって……鋼鉄の壁でも貫通するんだぞ……どうして……」
兵士B「あの黒いやつは……化物か……」
兵士A「おい!報告しろ!何があった!」
魔王「こ、こんな槍なんぞおおおおお!」ズボッ
魔王「ふんっ」ドシーン
側近「魔王様!大丈夫ですか?」
魔王「こんなもの唾をつけておけば治る!」
側近「さすが魔王様」
魔王「ふ、ふふふふふ。ふはははははは!しかし、面白い!このような槍を投げてくるなどよほどの強者だろうな!全力で相手をしてやろう!」バサァ
側近「羽をだして……まさか……」
魔王「槍が来た方向は向こうだな!行くぞ!」バサバサッ
ピュー
兵士B「ほ、報告を……」
魔王「貴様か!次はこちらから行くぞ!」
兵士B「ひ、ひぃいいいい!来た……あの距離を一瞬で!黒い羽の生えた……」ズササー
魔王「くらえい!」ドガ
兵士B「ぎゃあ!」
兵士B「……」バタッ
魔王「ん?お、おい……まさか一発で?」
側近「魔王様待ってくださいよー、もう、一人で行っちゃって」
魔王「おい、側近。これはどういうことだ?あのような攻撃をしてきたものがたった一発で倒れるとは……」
側近「たぶんですけど、あれは槍じゃないんじゃないですか?」
魔王「槍ではない?では誰があそこまで投げたのだ」
側近「そこにある機械でじゃないです?」
魔王「機械?」
側近「そのあたりはあまりテレビでも言わないものですから想像になってしまいますが……」
側近「ようするにこれは大きいゴム鉄砲みたいなものなんでしょう」
側近「でもおかしいですね、軍や兵器の使用や開発は禁止されていたはずですが……せいぜい認められてるのは警官の鉄砲くらいで……」
魔王「なるほど……撃ったのはただの人間なのか……つまらん。もっと力と魔法を駆使した戦いがしたいのだが」
側近「いや、それが……魔法はもうないんですよ。禁止されています」
魔王「なんだと!?」
側近「魔法は危険だとかなんとかで……」
魔王「ではこの世界には勇者も魔法もないというのか!?」
側近「いえ、勇者はいますし、魔法を認められてる唯一の人間なんですけど……」
―――辺境
女の子A「はい、勇者様。あーん」
勇者「あーん」モグモグ
女の子B「あー、勇者様ずるいー。あたしのも食べて、はい」
勇者「あーん」
女の子C「勇者様、私は口移しで食べさせてあげる」
勇者「あははは」
魔法使い「勇者様、そろそろ仕事のお時間です」
勇者「そんなことより君も一緒にこっちにきて楽しまない?」
魔法使い「勘違いなさらないでください。私は家事手伝いでこちらで仕事させてもらっているだけです」
魔法使い「あなたのハーレムメンバーじゃないんですから。今度そんなこと言ったらぶち殺しますよ」
女の子A「やーん、メイドさんこわぁい」ギュッ
女の子B「勇者様ぁ」
女の子C「あんな子が好みなの?勇者様ぁ」
勇者「あー、もう分かったよ。仕事は国民の義務だからね」
勇者「じゃ、みんな行って来るよ」チュッチュッ
―――台所
ザザッ……
魔法使い「こちらブラボー2、ブラボー1応答お願いします。どうぞ」
『こちらブラボー1。どうだ、勇者の様子は。どうぞ』
魔法使い「相変わらずアホ面下げて王国の言いなりになってるわ。今仕事に行ってる所」
『仕事か。開拓だったか?』
魔法使い「ええ、それも一人で。窓から今見てるけど……剣の一振りで山を平地にしてるわ」
『マジか……恐ろしいやつだな……どうだ?俺たちレジスタンスには入りそうか?』
魔法使い「どうかな……王国から与えられたハーレムに満足してるって感じだけど」
『やつが王国についたらかなりやっかいだ。がんばってくれ』
魔法使い「難しいと思うけどね……そっちの調子は?』
『相変わらず仲間が増えない。情報をほとんど王国に握られているのが痛いな』
魔法使い「そう、そっちもがんばってね」
『ああ、最悪の場合、勇者を敵に回しても勝てるように準備はしておく。終了だ、オーバー』
魔法使い「了解。こっちもがんばるわ、オーバー」 ザザッ……
―――王国
大臣「王様、魔王討伐に向かった兵たちが全滅しました」
王様「全滅だと!?どういうことだ。劣化ウラン弾の使用も許可したはずだぞ」
大臣「相当の負傷はおったようですが、反撃にあい、あえなく全滅に……」
王様「敵はどのようなやつなのだ」
大臣「報告によると、ええと……黒くて……なんでしたっけ……」
大臣「それから羽が生えてて……カサカサしてる?とか……言っていた様な……」
王様「なんと恐ろしい姿のやつだ……しかし、通常兵器では効かぬか……」
大臣「こうなったら勇者を使ってはいかがでしょうか?」
王様「まぁ待て。勇者は最後の手段だ、そう簡単には奥の手はだせん」
大臣「ではどうするんです?」
王様「そうだな……ではガスを使うか」
大臣「ガスですって!?」
王様「VXガスの使用を許可する。即時実行しろ、やつも生物には違いあるまい、毒ガスなら効くだろう」
大臣「しかし、それでは周辺の町への影響が……」
王様「そうだな……たしか近くの町に王国を批判する記事をかきおった大学教授がいたな……」
王様「よし、その大学教授が実験で使ったとか何とか報道しておけ」
大臣「分かりました」
王様「それからやつらのその後の動きはどうなっておる」
大臣「テレビとアンテナを破壊しているようです」
王様「くくくっ……なんと愚かな……大臣、分かっておるな?」
大臣「はっ」
―――草原の町
魔王「おい、側近。この町のアンテナは少し前に破壊したよな?」
側近「ええ、確かに」
魔王「ならばなぜ全部元に戻っておるのだ!」
側近「修理したんでしょうか……にしてもすばやいですねぇ……ん?あれは……」
主婦「本当に無料でいいんですか?」
男「いいんですよ、テレビもアンテナも国が無料で補償しますから」
主婦「悪いわねぇ」
魔王「あいつか!直してるのは!」ダッ
男「あ……やべっ」ササッ
魔王「お、おい!……くっ見失った」
側近「ああやってすぐ直してるんですね……」
魔王「ゴキブリみたいなやつらだな」
側近「本当ですね」
―――草原
魔王「いくら壊してもきりがない」
側近「そうですねぇ……これは大元を叩くしかないんじゃないですか?」
魔王「大元?」
側近「テレビ局です、っといってもほどんど国が関与してる独占状態ですけどね」
魔王「そこをつぶせば終わるのか?」
側近「分かりませんが、アンテナを一本ずつ折ってるよりは早いかと」
魔王「先に言わんか……」
兵士C「そこまでだ貴様ら!」バッ
魔王「むっ?」
側近「変なマスクしてますね……もしや変質者?」
兵士C「変質者ではない!貴様らの命もここまでよ」
魔王「なんだ、決闘をしたいのか?ふはははは、よいぞ!どこからでも……」
兵士C「VXガスを食らえええええええ!」ブシュー
魔王「ごほっ……なんだこの煙は」
側近「ガスとか言っていましたが……くさっ!」
兵士C「この毒ガスを吸って生きてられるものはいない!」
魔王「毒……だと?」
兵士C「どうだ、苦しんで死ね」
魔王「ふはははははは!愚かな!」
兵士C「な、なに?」
魔王「この私を誰だと思っておる!瘴気の漂う魔界で生まれたのだ!この程度の毒などむしろ懐かしいくらいだわ」
側近「私はちょっと臭いの嫌なんですけどね」
魔王「どれ、では私が本当の瘴気というものを貴様に味合わせてやろうではないか、ほれっ、マスクをはずしてみよ」ガシッ
兵士C「や、やめ……ぎゃあああああああああああああああ!」