少年「勇者に選ばれたんだ」幼馴染「どゆことー!?」 1/6

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―――少年宅

幼馴染(13歳♀)「おはようございまーす」

母「あら、どうしたの?」

幼馴染「いえ、なんか話があるっていわれて」

母(35歳♀)「ああ……少し待ってて」

幼馴染「はい」

幼馴染(なんのはなしだろう……ま、まさか……こ、こくはく……?)

幼馴染「きゃー!やだー!そんなことあるわけないなーい!あ、でも……もしかしたらってことも……」

幼馴染「えへへ……」

少年(15歳♂)「―――おはよ」

幼馴染「あ、お、おはよ!!」

―――噴水広場

少年「悪いな。朝早くに」

幼馴染「ううん、いいよいいよ」

少年「……」

幼馴染「あの……は、話ってなにかな?」

少年「あ、のさ……」

幼馴染「う、うん……」

少年「実は、俺……」

幼馴染「ま、まって!!」

少年「え?」

幼馴染「緊張してきた……」

少年「……?」

幼馴染「深呼吸するから待って」

少年「……ああ」

幼馴染「よし!……どうぞ」

少年「俺……勇者に選ばれたんだ」

幼馴染「……はい……え?」

少年「昨日……これが届いた」

幼馴染「手紙……?」

少年「青紙ってやつだ」

幼馴染「うそ……」

少年「来年、俺勇者として旅立つよ」

幼馴染「どゆことー!?」

少年「このことをお前に伝えておこうと思って……」

幼馴染「な、なんで!?なんで君が勇者に……?」

少年「魔王によって勇者の家系が滅んで以降、民衆から選抜してたじゃないか。それぐらい知ってるだろ?」

幼馴染「だ、だからってなんで君が……?」

少年「さぁ」

幼馴染「だって……だって……今まではいかにも強そうな筋肉モリモリの人ばっかりだったのに」

少年「決まったものは仕方ない」

幼馴染「ま、魔物と戦うんだよ……?」

少年「知ってる」

幼馴染「外……怖いよ?」

少年「分かってる」

幼馴染「死んじゃうかも……知れないよ?」

少年「死ぬだろうな……歴代の勇者が誰ひとり帰ってこなかったんだから……」

幼馴染「や、やめなよ……そんなの従うこと……ないよ」

少年「従わなかったら罪になるだろ?」

幼馴染「そうだけど」

少年「母さんに迷惑をかけるわけにはいかない」

幼馴染「来年って……それまでどうするの?」

少年「お城で色んな訓練をすることになってる」

幼馴染「訓練……」

少年「多分、俺を戦えるようにするんだろ」

幼馴染「……」

少年「じゃあ、これで」

幼馴染「あの……」

少年「いつも遊んでくれてありがとう……楽しかった」

幼馴染「……」

少年「バイバイ」

幼馴染「はぁ……勇者だなんて……」

幼馴染「魔王のことなんて……どうでも……よくはないか……」

幼馴染「確か……もう世界の半分ぐらいは支配されてるんだもんね……」

幼馴染「このままお別れなんて……やだなぁ……」

幼馴染「私の想いだって伝えてないし……」

幼馴染「……よ、よし!!」

―――少年宅

少年「なんだよ?」

幼馴染「……あの……」

少年「色々とこっちも準備があるんだけど?」

幼馴染「……えっとね……わ、私ね……」

少年「ん?」

幼馴染「……」

少年「……?」

幼馴染「わ、私……き、君のこと……が……」

少年「……」

幼馴染「あの……」

少年「……」

兵士「―――すいません」

幼馴染「わぁ!?!」

少年「なんですか?」

兵士「王が呼んでいます。一緒に来ていただけますか?」

少年「わかりました。……じゃあな」

幼馴染「あ、うん」

幼馴染「……くそ」

幼馴染「……どうしようかなぁ」

子供「えーん……いたよぉ……」

幼馴染「あれ、どうしたの?」

子供「ころんじゃって……ひざが……」

幼馴染「あ、じっとしてて……いたいのいたいの、とんでけー♪」

子供「あ……きずがなおった……」

幼馴染「もう大丈夫かな?」

子供「ありがとう、おねえちゃん!!」

幼馴染「気を付けてね」

子供「うん!」

幼馴染「……」

幼馴染「……はぁ」

幼馴染「早く、伝えないと……」

―――王城

少年「仲間……ですか?」

王「今のうちに選んでおけ。一年で見つけられない場合は兵士を3人つけてやろう」

少年「はっ……」

―――廊下

少年「……仲間か」

兵士「――聞いたか?また勇者についていく奴、3人選ぶんだってよ」

兵士「でもそれ、勇者が仲間を見つけたらいいんだろ?」

兵士「ばーか。魔王退治なんて誰がいくんだよ」

兵士「それもそうだよな……はあ、選抜された時点で二階級特進だぜ……ったくよ」

兵士「国王も必死なのはわかるけど……単に無駄死にを増やしてるだけだよな」

兵士「勇者がいた国としての誇りを守ろうとしてるんだろうけどな」

少年「……」

―――幼馴染宅

幼馴染「着火!!」

幼馴染「ふぅ……あったかい……」

兄(18歳♂)「またそんなことで魔法使って」

幼馴染「楽だもん」

兄「はいはい」

幼馴染「……ねえ、知ってる?」

兄「なにが?」

幼馴染「……今年、勇者の選ばれた人」

兄「ああ、聞いてる」

幼馴染「なんで……あの子、なのかな?」

兄「城に高名な占い師を呼んで、占いで決めてるって話だな」

幼馴染「……そうなんだ……」

兄「気にするなよ。俺達には関係ない話だ」

幼馴染「そんなことないよ!!」

兄「……」

幼馴染「……だって……私は……」

兄「そーだな。お前はアイツのこと大好きだもんな」

幼馴染「ちょっと、違うよ!!」

兄「早く告れよ。旅立てば取り返しがつかないぞ?」

幼馴染「……むぅ」

兄「勇者か……」

幼馴染「魔王なんかに、人間が勝てっこないのにね……」

兄「そんなことみんな知ってる。でも、戦わないわけにはいかない」

幼馴染「……」

兄「はやいとこ気持ちの整理はしとけよ?」

幼馴染「気持ちの整理……」

―――翌日 少年宅

少年「じゃあ、行ってきます」

母「体には気を付けるのよ?」

少年「週末は帰ってこれるよ……城の兵士寮にいるだけだし、何かあったらすぐに帰ってくるから」

母「うん……」

少年「母さん……ありがとう」

母「……うん」

少年「……」

少年(死ぬための訓練が始まるのか……)

少年(嫌だな……)

少年(はぁ……)

幼馴染「―――待って!!」

少年「え?」

幼馴染「間に合った……」

少年「お、おまえ……なんだよ、その大荷物……」

幼馴染「ふっふっふ……じゃーん!!」

少年「おま……それ青紙……?!」

幼馴染「志願したらすぐくれた」

少年「な、なにかんがえてんだよ!?」

幼馴染「これで私も勇者だー!!あっはっはっは!愚民ども、ひれふせー」

少年「おい!!」

幼馴染「……これで寂しくないでしょ?」

少年「お、まえ……」

幼馴染「ごめんね。でも、君をこのまま行かせたくなかったから……」

少年「バカな真似はよせ」

幼馴染「もう紙もらったし、今更断れないよ」

少年「なんで……そんなこと……」

幼馴染「だって……」

少年「バカ野郎……」

幼馴染「……ごめん」

少年「……ほら、荷物かせ」

幼馴染「え?い、いいよ」

少年「半分もってやる。貸せ」

幼馴染「あ、ありがとう……」

少年「死ぬんだぞ?」

幼馴染「死なないよ」

少年「なんで……?」

幼馴染「君と私なら、死なない」

少年「どこにそんな根拠が……」

幼馴染「なんとなく♪」

少年「バカ」

幼馴染「君もね」

少年「あー、そうかもな」

―――幼馴染宅

母「ごめんください」

兄「はい?――ああ、どうも」

母「妹さんが勇者に志願したって」

兄「ええ、バカな妹ですよ」

母「貴方は?」

兄「……なにがですが?」

母「気持ちの整理……できましたか?」

兄「……」

母「止めるなら今しか……」

兄「貴女は止めないんですか?」

母「私は……」

兄「勇者なんてただの死地への流刑だ……止めないわけがない」

母「……」

兄「でも、あいつは止まらなかった。止まらなかったんですよ……」

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