勇者「念願の勇者になった。これで夢だった僧侶との二人旅ができる」 2/6

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―――酒場

店員「ご注文は?」

勇者「えっと、これとこれと……僧侶は?」

僧侶「え……?」

勇者「何が食べたい?」

僧侶「あの……勇者様が決めてください……」

勇者「そ、そうか……じゃあ、これとこれ」

店員「畏まりました」

勇者「……自分で決められないのか?」

僧侶「いえ……私は勇者様に選んでほしかったんです」

勇者「そうなのか」

僧侶「はい」

勇者(それはなんか違う気がするけど……)

僧侶「楽しみですね、勇者様♪」

勇者「そうだな」

店員「お待たせしました」

勇者「おー♪きたきたー」

僧侶「わぁ……すごいですね」

勇者「おし。んじゃ、いただきまーす!」

僧侶「……(ニコニコ」

勇者「うんうん!うまい!!」

僧侶「へえ。そうなんですか?」

勇者「……あれ?早く食べないと冷めるぞ?」

僧侶「え……?これ、食べてもいいんですか?」

勇者「それは僧侶の分だ」

僧侶「あ……そうなんですか」

勇者「いやいや、目の前にあるんだから―――」

勇者(そうか。俺、この子に食べろって指示を出してなかったな……)

勇者「食べていいぞ」

僧侶「わぁい♪ありがとうございます、勇者様♪―――いただきまぁす♪」

僧侶「はむはむ……」

勇者「そっちのお皿とそっちのお皿は僧侶のだから、食べても良いぞ?」

僧侶「はぁい♪」

勇者(はぁ……これは先が思いやられるぞ……)

僧侶「はむはむ……んぐ!?」

勇者「あ!?大丈夫か!?」

僧侶「んんんん!!??」

勇者「水を飲め、水を!!」

僧侶「……(コク」

僧侶「ゴクゴクゴク……ぷはぁ」

勇者「急いで食べるな」

僧侶「はい」

勇者「はぁ……」

僧侶「もぐ……もぐ……」

勇者「良く噛んでるな。いいことだ」

―――宿屋

勇者「じゃあ、寝ようか。僧侶は向こうのベッドで寝るんだぞ?」

僧侶「分かりました」

僧侶「……勇者様!」

勇者「ん?」

僧侶「おやすみなさい」

勇者「ああ、おやすみ」

僧侶「……」

勇者「……僧侶?」

僧侶「なんですか?」

勇者「……いや、なんでもない」

僧侶「はい」

勇者(なんでも言うことを聞く半面……命令がないと動けない僧侶……)

勇者(旅を続けられるのか……?)

街道

勇者「よし。いくぞ!」

僧侶「おー♪」

勇者「あ、そういえば、僧侶が今使える呪文はやっぱりホイミだけ?」

僧侶「えっと、ニフラムとラリホーは使えますよ?」

勇者「へぇ」

僧侶「それがどうかしました?」

勇者「いや……」

勇者(ラリホーは使えるな……)

僧侶「あ!勇者様!」

勇者「む!」

バブルスライム「ギャピーー!!」

勇者「よし!戦闘だ!!」

僧侶「はい!後ろにいます!!」

勇者「―――でぁ!!」

バブルスライム「ギュピ!?」

勇者「―――隙ができた!!」

僧侶「……(ニコニコ」

勇者「僧侶!ラリホーだ!!」

僧侶「わかりました!ラリホー!」

バブルスライム「……ぐー」

勇者「よし……でい!!」

僧侶「―――やりましたね!」

勇者「ああ。僧侶のおかげだ」

僧侶「そんな……勇者様が戦ってくれたからですよ」

勇者「僧侶のラリホーが効いたからだよ」

僧侶「いえいえ、勇者様のおかげです」

勇者「違うってば」

僧侶「勇者様ですって」

勇者「野宿か……ま、こんなときもあるよな」

僧侶「……(ウトウト」

勇者「僧侶?休んでもいいぞ?」

僧侶「いえ……外では……隣に居てほしいと……ゆう、しゃ、さま……が……くー……」

勇者「おいおい」

勇者「……これで暖かいはずだ」

僧侶「ゆうしゃさ、ま……おそばに……すー……」

勇者「……僧侶?俺とキスするか?」

僧侶「……はぁい……どうぞ……」

勇者「ふふ……冗談だ」

僧侶「……すー……すー……」

勇者「ま、なんとかなるか……」

勇者「この子も学んでいけばいいだけだしな」

翌朝

勇者「僧侶、起きろ」

僧侶「あ、おはようございます」

勇者「涎、拭け」

僧侶「……はい。拭きました」

勇者「よし。僧侶、これから戦闘での基本的な戦術を作ろうと思う」

僧侶「基本的な戦術?」

勇者「そうだ。とりあえず戦闘になったら守ってほしい約束事を決めようと思ってな」

僧侶「はい」

勇者「とりあえず、歩きながら話すから」

僧侶「じゃあ、出発の準備をしますね」

勇者「うん」

僧侶「えっと……これはここで……」

勇者(この子……一度言われたことは忠実に守るんだよなぁ)

街道

勇者「どちらかが傷つき、危なくなったら?」

僧侶「回復します!」

勇者「俺の背中が魔物に狙われたら?」

僧侶「私が打撃、或いは呪文で援護します!」

勇者「俺が逃げろって言ったら?」

僧侶「全力で逃げます!」

勇者「―――よし。ま、こんなとこだな」

僧侶「はい!」

勇者「でも、俺が君を守るから……君が傷つくことなんてないけどな」

僧侶「そうなんですか?」

勇者「おう」

僧侶「そうですか」

勇者「嬉しいか?」

僧侶「はい!嬉しいです♪」

村人「旅の方か……この村は魔物に支配されておる……早くいきなされ」

勇者「魔物に……それは見過ごすわけにはいきません」

村人「しかし……」

勇者「俺は勇者です。任せてください」

村人「勇者、さま……!?」

勇者「で、その魔物というのは?」

村人「ここから北にある洞窟にいます」

勇者「そうですか……わかりました」

村人「僧侶様……お願いです、この子の傷を治してください!」

子ども「いたいよぉ……」

僧侶「……」

村人「僧侶様!!お願いします!!」

勇者「僧侶!?何をしているんだ!?」

僧侶「え?どうかしましたか?」

勇者「早く、子供の手当てをしてあげろ」

僧侶「分かりました。ホイミ!」

村人「あ、ありがとうございます……」

僧侶「……」

勇者「おい」

僧侶「はい」

勇者「助けを求めてる人がいるなら、助けてあげろ。いいな?」

僧侶「はい。わかりました」

勇者「はぁ……すいませんでした。もう大丈夫ですか?」

村人「え、ええ」

子ども「あ、ありがとう、お姉ちゃん……」

僧侶「……」

勇者「おい……礼を言われたんだぞ?……どういたしましてぐらい言っとけ」

僧侶「はい。―――どういたしまして♪」

勇者(やっぱり……少し面倒だな……これ)

洞窟

勇者「ここに村を支配している魔物がいるらしい」

僧侶「そうなんですか?」

勇者「話を聞いてなかったのか?」

僧侶「すいません……」

勇者「人の話はちゃんと聞くこと。俺の言葉ばかりに耳を傾けてもダメだ」

僧侶「わかりました」

勇者「あ、でも。俺以外の人について行ったらダメだからな?」

僧侶「はい。勇者様以外の人にはついていきません!」

勇者「よし。んじゃ、奥に進もう」

僧侶「はい」

勇者「―――ん?」

僧侶「どうかしましたか?」

勇者「奥から声が……」

僧侶「……」

ボストロール「がははははは……(ガリガリ」

村娘「ひぃぃ……弟がぁ……」

ボストロール「ふひひひ……次はお前だ……」

村娘「あぁ……おかあさん……おとうさん……産んでくれて……ありがとう……」

ボストロール「いただきまーす!!」

勇者「まて!!」

ボストロール「ん?」

勇者「その人を返してもらおう!」

ボストロール「面白い……勇者か……!!」

勇者「僧侶、支援頼むぞ!」

僧侶「はい!後ろにいます!!」

ボストロール「ぐははははは!!来るがいい!虫けらども!!」

勇者「はぁぁぁ!!!」

ボストロール「―――ぐふぅ!?」

勇者「はぁ……はぁ……」

僧侶「ホイミ!!」

勇者「ありがとう……」

ボストロール「くそぉ……まさか……勇者が現れるとは……魔王様に報告せねば……」

勇者「―――逃げたか」

村娘「あぁ……」

勇者「大丈夫ですか?」

村娘「は、い……でも、私の家族はみんな奴に……」

勇者「すいません。もう少し早く来ていれば……」

村娘「いえ……でも、弟を……連れて帰りたかった……」

僧侶「どうぞ」

村娘「ひぃぃぃいいい!!!?!!?!?」

勇者「僧侶!?なにを持ってきてるんだ?!!」

僧侶「これ、弟さんの腕だと思います。これだけでも連れて帰ってあげればいいかと」

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