勇者「念願の勇者になった。これで夢だった僧侶との二人旅ができる」 1/6

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勇者「長かった。けど、ついに勇者として認められた……!魔王の討伐も命じられたし……しっかりしなければ」

勇者「早速、ルイーダに行こう」

勇者(―――俺はずっと憧れていた。可愛い僧侶との二人旅を)

勇者(冒険を通じて芽生える絆、そして、愛……)

勇者「うひょー!!!たまんねー!!」

―――ルイーダの酒場

店員「どうも」

勇者「あの、新しく勇者になったものです。あの、王様にここで仲間を得よと言われたのですが」

店員「ほお……魔王を倒すのですか?」

勇者「はい!」

店員「それはすばらしい。最近、魔王は半ば野放しでしたし、勇者も現れないものとばかり……」

勇者「あの……仲間は?」

店員「ああ、まずは二階に行って登録を済ませてください」

勇者「登録?」

店員「ええ……仲間の登録をしなければ仲間を得ることができませんので」

ルイーダ二階

勇者「あの……仲間の登録に来ました」

店員「お……勇者さんか?」

勇者「はい」

店員「これは久しぶりだなぁ」

勇者「いえ……魔王討伐が自分の務めだと思ってますから」

店員「そうか……登録だったな。どっちにするんだ?」

勇者「どっち?」

店員「男か女かだよ」

勇者「あ、えと……お、女で」

店員「好きだねえ」

勇者「いやぁ……へへへ」

店員「―――じゃあ、この子にするか」

勇者「な!?!なんですか!?そのカプセルは!?!?」

店員「この中に勇者様の仲間になる子が入ってるんだよ」

勇者「は?」

店員「見る?」

勇者「え、ええ」

プシュ……

勇者「は、裸!?!?」

店員「まだ職業が決まってないからね」

勇者「は、はやく閉めてください!!!」

店員「なんだ。案外、初心だね」

勇者「はぁ……びっくりしたぁ」

店員「さて、職業はどうする?」

勇者「え……そ、僧侶で」

店員「僧侶ね……(ピ……ピ……」

店員「よし。次だ。この種を使って、カスタマイズしてくれ」

勇者「カスタマイズ?」

店員「勇者様だけの僧侶を作るんだ」

勇者「ちょっと待ってください!!作るってなんですか!?」

店員「なんだ勇者なのに歴史も知らないのか?」

勇者「歴史?」

店員「一昔前、多くの勇者が輩出されたのは知っているだろう?」

勇者「ええ」

店員「そのとき、殆どの勇者は仲間を欲した。だが、勇者が多すぎたために、一人旅を強いられる勇者が続出した」

勇者「それで無残な死を遂げた勇者も少なくないとは聞きました」

店員「それを看過できないと王様はこういうシステムを作ったのさ」

勇者「それが……このカプセル?」

店員「所謂、人造人間だ。作る仲間が現れたことによって、一人で旅立つ勇者はいなくなったんだ」

勇者「なるほど……」

店員「さ、昔話は終わりだ。さっさと使う種を決めてくれ」

勇者「わ、わかりました……」

店員「……」

勇者「じゃあ、えっと、かしこさの種を……」

店員「―――やさしい人になりそうだな」

勇者「そうなんですか?」

店員「ああ。じゃあ、仲間にするときは一階にいってくれ。こっちからこの子は送るから」

勇者「分かりました」

店員「あれ?一人でいいのかい?普通は三人ぐらい登録するんだが」

勇者「はい!」

店員「そうか……あ、そうそう」

勇者「なんですか?」

店員「この子は赤子と同じだからね」

勇者「え?」

店員「勇者様がしっかり育ててあげるんだ」

勇者「わ、わかりました」

店員「頼むよ」

勇者「はい」

ルイーダ一階

店員「―――僧侶さーん、勇者さんがお呼びですよー」

勇者「……あ」

僧侶「―――はじめまして、勇者様。私、僧侶です」

勇者「あ、ああ。よろしく」

僧侶「はい」

店員「じゃ、がんばってね」

勇者「あ、じゃあ、行こうか」

僧侶「はい、勇者様」

勇者「えと……まずは買い物をしていこうか」

僧侶「はい」

勇者「おーし、冒険の始まりだー!」

僧侶「おー♪」

街の外

勇者「薬草も買ったし、これで大丈夫だな」

僧侶「はい、そうですね」

勇者「さてと。ここからは魔物に注意していかないといけない」

僧侶「はい」

勇者「二人だから、俺が基本的に前衛で戦う。君は俺の後ろにいればいいよ」

僧侶「後ろですね。わかりました」

勇者「じゃあ、出発しようか」

僧侶「はい」

ザッザッザッザ……

勇者「―――あの」

僧侶「はい?」

勇者「なんで、俺の後ろを歩くの?普通は隣を歩かない?」

僧侶「でも、今、後ろにいろと勇者様が……」

勇者「え……いや、それは戦闘のときだけでいいから」

僧侶「そうなんですか?」

勇者「うん。だって歩いてるときに後ろにいられると、なんか怖いし」

僧侶「すいません……」

勇者「あ、いや……俺も言い方が悪かった、ごめん」

僧侶「あ、そんな勇者様が謝ることではありません」

勇者「とりあえず、魔物に出逢うまでは隣にいてほしい」

僧侶「分かりました。戦闘以外では隣にいますね」

勇者「そうしてくれると嬉しい」

僧侶「勇者様が嬉しいと私も嬉しいです」

勇者「あ、うん……そうか」

僧侶「はい♪」

勇者(この子……すごい純粋だ……)

勇者(赤子って話は本当なのか……?)

スライム「キュピーー!!!」

勇者「出たな!!」

僧侶「後ろにいますね!」

勇者「ああ!!」

スライム「キュピピー!!」

勇者「であ!!」

スライム「キュピー!!」

勇者「なんの!!!」

スライム「キュピー!!!」

僧侶「……(ニコニコ」

勇者「ぐわ!?」

スライム「キュピー!!!プルプルー!!!」

勇者「ぐはぁ!!!」

僧侶「……(ニコニコ」

勇者「ちょ!僧侶!!俺、やばいんだけど!?!」

僧侶「え?」

勇者「え?じゃなくて、なんか回復してほしい!!」

僧侶「わかりました!ホイミ!!」

勇者「よし!!―――おりゃぁ!!」

スライム「きゅぅぅぅ……」

勇者「勝ったぜ!!」

僧侶「やりましたね!」

勇者「……あのさ」

僧侶「なんですか?」

勇者「いや、普通あれだけ傷つけられたらすぐに回復してくれるものじゃないか?」

僧侶「そうなんですか?」

勇者「そうだよ」

僧侶「……すいません」

勇者「あ、いや……」

勇者(もしかして、指示を出さないと動けないのか、この子……?)

勇者「ふぅ……夜になる前に辿り着けたな」

僧侶「そうですね」

勇者「なにはともあれ、宿屋だ」

僧侶「そうなんですか?」

勇者「寝ないと辛いだろ?」

僧侶「勇者様がそういうのなら、宿屋に行きましょう」

勇者「う、うん……」

―――宿屋

店主「一泊10Gね」

勇者「じゃあ、これで」

僧侶「……(キョロキョロ」

勇者「どうかしたのか?」

僧侶「あ、えと、初めてなので……すいません」

勇者「そっか……じゃあ、部屋にいこう」

勇者「ふぅ……やっと、落ち着ける……」

僧侶「そうですね」

勇者「……あの」

僧侶「なんですか?」

勇者「いや、僧侶のベッドは向こうだ。ここは俺のベッド」

僧侶「しかし、戦闘以外では隣にいてほしいと勇者様が……」

勇者「え……」

僧侶「……違いましたか?」

勇者(やっぱり……この子は命令されないとダメなのか……)

僧侶「あの……」

勇者「……ちょっといいかな?」

僧侶「なんですか?」

勇者「君は……俺の言うことなら何でも聞くのか?」

僧侶「はい。私は勇者様の僧侶です。なんでも言ってください」

勇者「……」

僧侶「どうか、しましたか?」

勇者(―――は!?ダメだ!!ダメ!!!俺は勇者だぞ!!そしてこの子はただ純粋なだけだ!!)

僧侶「勇者様?」

勇者「……あ、そーだ。ご飯にしよう」

僧侶「はい」

勇者「じゃ、じゃあ、酒場にでも行こうか」

僧侶「わかりました」

勇者(これからは逐一命令しなきゃいけないのか……むー)

僧侶「ご飯、楽しみですね、勇者様♪」

勇者「そうだな……」

僧侶「ふんふーん」

勇者「嬉しそうだな」

僧侶「勇者様とならどこでも楽しいです」

勇者「そ、そうか」

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