―――勇者の故郷 ルイーダ
店員「なに?!この技術を教えてくれだと?!」
勇者「そうです」
僧侶「お願いします」
ドラゴン「教えてください」
店員「だが……」
ドラゴン「丸焦げになりたいかぁ」
僧侶「ダメですよ」
店員「……なぜ、知りたいんだ?」
勇者「―――では、教えてください。どうしてこんな便利なものがあるというのに、魔王を倒せないのですか?」
店員「……!?」
勇者「こんな装置、技術があるのなら……戦士でも武道家でも大量生産して魔王討伐に向かわせればいい話だ」
店員「それは……」
勇者「……最初は疑問にも思わなかったが、これはそういった使い道もできるはず。なのにしないのは、なにか問題があるんですか?」
店員「……この子たちは勇者の命令しか聞かない……だが勇者はそう簡単には生まれない……知ってるだろ?」
僧侶「でも、勇者って王様に認められた人がそう呼ばれるだけですよね?」
勇者「厳しい試験と試練があるけどな」
店員「……」
ドラゴン「なんだ。勇者も大量生産できるじゃないですか」
勇者「それに勇者が一人いれば、全員に指示を出すことだってできる」
店員「……それは……そうだけど……」
僧侶「今こそ大量生産しましょう!!」
勇者「ああ、それがいい」
ドラゴン「そうですね」
店員「―――あんたら、何も分かってない……!!」
勇者「え?」
店員「いいか?百人作って、魔王に戦いを挑んだとしよう。そのうち、生き残ったのが半分いたとする……そいつらはその後、どこに行くんだ?」
勇者「あ……」
店員「一人や二人、三人ぐらいなら勇者一人でもその後の面倒は見れるだろう……でも五十人なんてどうやって面倒をみるんだ?」
勇者「それが大量生産したがらない理由か……」
店員「行き場を失ったこの子たちは誰が面倒を見るっていうんだ?それとも誰かが殺してくれるのか?」
勇者「それは……」
僧侶「……命令すれば」
勇者「おい」
僧侶「勇者様が命令すれば……みんな死にます」
店員「確かに命令は守るだろう……だが、この子たちだって生きたいって思ってる。ずっと勇者様の傍にいたいって思ってる」
勇者(そういえば……僧侶も死ぬのは嫌だって言ってたな)
ドラゴン「……事情はよぉくわかりました」
勇者「ドラゴン?」
ドラゴン「でも、教えてください」
店員「なんだと……!?」
ドラゴン「魔王様は裏切りを決して許さない。きっと、私を追ってきているはずです」
店員「な?!」
勇者「この街が戦場になるっていうのか?!」
ドラゴン「ですから、早く教えてください!貴方ができないのなら、魔物である私がやります!!」
店員「ふざけんな!!!」
僧侶「で、でも……」
勇者「分かりました。俺が全部、責任を持ちます」
店員「え……」
僧侶「勇者様?」
勇者「勇者として、この街を戦火に巻きこむわけにはいかない」
ドラゴン「いいんですか?」
勇者「ああ」
店員「だが……しかし……」
勇者「俺は勇者だ!!仲間を一人として犠牲になんてさせない!!!そして、その後のことも俺が請け負う!!」
店員「……!?」
僧侶「勇者様……」
勇者「作ってください!!お願いします!!!」
店員「……勝手にしろ!!!このカプセルは100体分用意できる!!―――その代り、この街と、生まれてくるこの子たちを絶対に守れよ!!」
勇者「―――恩に着る。僧侶、ドラゴン、手伝ってくれ。100人の仲間を用意するぞ」
ルイーダ 一階
店員「ちょっと?!なに!?登録の量がおかしくないですかぁ!?」
勇者「よし、出来あがったな!」
僧侶「やったぁ♪」
ドラゴン「なるほど……あんな技術が……ふむふむ」
店員「なにをしたんですか!?」
勇者「100人登録した。今から全員を呼び出してくれ」
店員「そんな無茶な!?」
勇者「無茶でもやるんだ!!」
僧侶「というか、私達で勝手に連れて行きますんで」
店員「えええ!?ちょっとぉ!!」
ドラゴン「戦士さーん!!魔法使いさーん!!」
僧侶「武道家さーん!!」
ゾロゾロ……
勇者「よし……!みんな、出発だ!!!」
魔王「ふふふ……あそこか……」
ボストロール「立派な城も見えますね……」
魔王「皆の者!!全てを灰にしてしまえ!!!」
魔物達『オォォォォォォォ!!!!!!!』
魔王「くくくく……」
キメラ「魔王様!!!大変です!!!」
魔王「どうした?」
キメラ「それが……あの街から続々と……その……」
魔王「なんだ、はっきり言え!!」
キメラ「勇者の仲間らしき者たちが……隊を成しています!!!」
魔王「なに!?」
勇者「みんな、止まれ!!」
勇者「いいか!!俺たちは全員仲間だ!!一人として死者が出てはいけない!!」
勇者「一人として捨て駒なんていない!!俺たちは100人の勇者だと思え!!!いいな!!!」
仲間『はい!!勇者様!!』
ボストロール「あ、あれが……勇者の仲間だってのかぁ!?!」
キメラ「魔王様……!!」
魔王「ふん……ざっと100人程度ではないか……我が軍は1000を超えている……何を恐れることがあろうか」
ボストロール「そ、そうですね……そうですよね!!」
魔王「それに、やつらは思考回路を持たぬ人形にすぎん。やつらを統率することなど到底不可能だ……」
勇者「よし―――では、作戦部長の話をよくきけ!!」
仲間『はい!勇者様!!」
ドラゴン「敵は1000を超える大軍です。故に、皆さんには私の指示に従ってもらわなければ、勝てる見込みなどありません」
仲間『……』
勇者「みんな!ドラゴンの言葉は俺の言葉だと思え!!」
仲間『はい!勇者様!!』
ドラゴン「ではまず陣形からいきましょう。後方に25人の魔法使いさんを配置し、その前に僧侶さん25人を配置します」
勇者「うんうん」
ドラゴン「戦闘開始直後、後方部隊さんたちで前衛50人の戦士さんと武道家さんにバイキルト、スカラ、ピオリムをかけていただきます」
僧侶「ほうほう」
ドラゴン「恐らくこれでザコはほぼ一掃できるでしょう」
勇者「それから?」
ドラゴン「まあ、大きな問題は魔王様なんですけど……」
魔王「よし……この位置からでいい。仕掛けるぞ!!」
ボストロール「―――いけえ!!!!」
魔物達『オォォォォォォォォオオ!!!!!!!」
魔王「人間どもを食らい尽くせ!!!!」
勇者「む……始まったな」
僧侶「勇者様……」
勇者「僧侶……お前は俺の傍にいてくれ」
僧侶「はい……勿論です」
ドラゴン「では、背中に乗ってください!!」
勇者「みんな!!頼んだぞ!!」
仲間『いってらっしゃいませ!勇者様!!!』
武道家「私たちは向かってくる敵を倒すだけ」
戦士「私たちは向かってくる敵を倒すだけ」
魔物「なんだこいつらぁ!?」
魔物「ひるむなぁ!!!かかれー!!!」
魔法使い「バイキルト……スカラ……バイキルト……スカラ……」
僧侶「ピオリム……ピオリム……ピオリム……」
戦士「うおぉぉぉぉぉぉおおお!!!!!」
魔物「ぎゃぁああああああ!!!!!!」
魔物「くそがぁぁぁぁぁ!!!!!」
武道家「―――勇者様の道をあけろぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
魔王「なんだ……?!あの強さは!?」
ドラゴン「あれが人間の力ですよ」
魔王「―――ドラゴン!?」
勇者「ここまでだ。魔王」
僧侶「観念してください
魔王「くくく……貴様たちに何ができる?矮小な存在どもめ!!!」
勇者「その矮小な存在が、今まさにお前を追い詰めていることに気がつかないのか?」
魔王「なんだ?強がりか?我が軍の数には……「」
僧侶「あれでも、ですか?」
魔王「?!!?」