戦士「おいそこの誰か」 2/7

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猪「ぶもおー!?……ぶもー!」

戦士「どこ見てやがる!そっちには行かせねえよ!」ザン!

猪「ぶもーっ!」ドン!

戦士「うごはぁ!いてえ……」

猪「ぶもー!」

戦士「くそっ……!人間様舐めてんじゃねえぞこの獣がー!」

~ ~ ~

猪「」チーン

戦士「だめだ、死ぬ……」

エルフ「まったく、だらしない」

戦士「お前と違ってこっちは攻撃受けてんだよ!いててて……」

エルフ「そこそこの大物だったようだな。まずまずの稼ぎになるだろう」

戦士「これだけ体張って三割かよ……」

エルフ「文句あるか」

戦士「ねえよ!だけどこれでもう借りは返したからな!」

エルフ「ああ、確かに」

戦士「んじゃ、帰って換金しちまうぞ。もう俺は付き合えないからな」

エルフ「わかった」

戦士「……えらく聞き分けがいいな?」

エルフ「解体と運ぶのは任せたぞ」

戦士「……おい」

エルフ「どうした」

戦士「俺はもうくたくたなんだ」

エルフ「それで?」

戦士「いい加減にしろよこの野郎!ぶっ殺すぞ!」

エルフ「短気な奴め」

戦士「どんだけ温厚な奴なら今のでキレねえんだよ」

エルフ「……仕方ない、私もやるか」

戦士「当たり前だ!」

エルフ「そうとなったらさっさとやるか。おい、血抜きは早めにやれ」

戦士「わかってるっての!」

《ギルド》

受付嬢「お疲れ様でーす!これが今回の報酬になりまーす!」

ずしっ

戦士「へへっ、結構重たいじゃねえか」

エルフ「七割」

戦士「これも七割取ろうってのか!?」

エルフ「……?」

戦士「何さも当然だろう?みたいな顔してんだよ。欲張りすぎだぞてめえ」

エルフ「……ならとっとと半分よこせ」

戦士「ほらよ!……ったく、あばよ。お前にはもう二度と借りを作らねえ」

エルフ「おい」

戦士「なんだよ?」

エルフ「私はまだこの町に来たばかりなんだ」

戦士「へー、それが俺とどういう関係があるんだよ」

エルフ「道案内をしろ」

戦士「……おい」

エルフ「なんだ?」

戦士「今までは借りを作ってたから我慢してたけどよ。もう少し口のきき方ってもんがあるだろうよ」

エルフ「……」

戦士「今の俺とてめえの立場は対等なはずだろうが」

エルフ「……道案内を頼みたい」

戦士「最初っからそう言えってんだ。いいぜ、一緒に仕事をこなした仲だ。ついて来いよ」

エルフ「……ああ」

戦士「今日は疲れたから宿屋だけでいいよな?日も落ちたしよ」

エルフ「ああ、そうしてくれ」

《宿屋》

戦士「ここが俺行き着けの宿屋だ」

エルフ「……ボロいな」

戦士「まあな、でも値段は安いからよ。懐には優しいぜ」

エルフ「……」

戦士「金があるなら別のところ紹介してやってもいいけどよ」

エルフ「……ここでいい」

戦士「そうか、部屋は大勢で寝る大部屋と個室があるからよ」

エルフ「……そうか」

戦士「俺は大部屋に居るからよ、じゃあな」

エルフ「ああ」

《個室》

エルフ「……はあ、疲れた」

エルフ「初日からこんなので私、これから大丈夫かな……」

エルフ「……弱気になるな。一人で生きていくって決めたんだから」

エルフ「……明日も大変なんだろうな」

エルフ「でも早速冒険者の知り合いもできたし、悪くはないスタートをきれたはず」

エルフ「いじめられるのはもう嫌だ」

エルフ「……そうだ、これからは私が踏みにじる側になるんだ」

エルフ「……寝よう」

エルフ「……」

エルフ「……お母さん」

《翌日》

戦士「おっす!よく寝れたかー?」

エルフ「朝早くから元気だな貴様は」

戦士「元気なだけが取り柄でね。んじゃ、昨日の約束通り道案内をしてやる」

エルフ「頼む」

戦士「あいよ、ところで今日も働くつもりか?」

エルフ「そのつもりだが」

戦士「んじゃ、組まねえか?なんだかんだあったけど昨日の猪だって俺一人じゃあ無理だったしな。そっちだって稼ぎてえだろ?」

エルフ「……別に構わない」

戦士「おっしゃ、それで決まりだな!それじゃ行こうぜ」

エルフ「ああ」

《ギルド》

戦士「おいっーす」

受付嬢「はいどうもおはようございまーす。依頼の確認ですか?」

戦士「ああ、そうだ。朝早くから確認してねえとおいしい依頼がとられちまうからな」

受付嬢「見た目によらず勤勉ですねー」

戦士「うるせえっ!……おい何してんだ?」

エルフ「……少し、な」

受付嬢「賞金首のチェックですかー。お二人にはまだまだまだまだ早いと思いますよ?」

戦士「まだが多いっつうの!俺はそんなこととっくに知ってらあ!……こいつがどうだかは知らねえけどよ」

エルフ「私もそれくらいはわかっている」

戦士「あーあー、それにしてもすげえ額だよなぁ……。討伐できたら結構の間遊んで暮らせるぜ」

エルフ「……そうだな」

受付嬢「あなた達には無理無理かたつむりなので身にあった依頼を受けてくださいねー」

戦士「いちいち言わなくてもわかってらあ!」

エルフ「それで依頼はどうだ……?」

戦士「あんまりうめえのはねえな……」

受付嬢「そりゃだいたいの相場ってものがありますから」

戦士「それじゃあ依頼は後回しにして案内してやるよ」

エルフ「頼んだ」

受付嬢「またのご来店をお待ちしてまーす」

エルフ「……それでいいのか?」

受付嬢「それっぽければいいんですよー」

《大通り》

戦士「ここがこの町の大通りだ。そこそこ賑わってるだろ?」

エルフ「そうだな」

戦士「露天商とかで買うならなるべく食い物だけにしとけよ?目利きが利くのなら別にいいけどよ」

エルフ「わかった」

戦士「なんだかんだでちゃんと店を構えてる方が物がいい。値段はそれ相応だがな」

エルフ「……」

戦士「どうしたよ?」

エルフ「……思ったより案内がまともで驚いた」

戦士「てめえが俺をどう思っているのかようくわかったぜ!教えてくれてありがとよ!」

エルフ「礼などいらない」

戦士「皮肉って言葉知ってるか?」

エルフ「貴様にも皮肉が言えたのか」

戦士「お前はいちいち人を挑発しねえのしゃべれねえのか?ああ!?」

エルフ「別にそういうわけではない」

戦士「けっ、親の顔が見てみたいもんだぜ」

エルフ「親は関係ないだろうが……!」

戦士「……」

エルフ「なんだその目は……!」

戦士「お前下手したら俺よりキレやすいんじゃねえか……?」

エルフ「うるさい。案内を続けろ」

戦士「へいへい」

エルフ「なんだそのぞんざいな扱いは」

戦士「べっつにー?」

《広場》

戦士「いい加減腹も減ったし飯にしようぜ」

エルフ「そうか。私は肉や魚は食べないからな」

戦士「へえ、やっぱりエルフは菜食主義者なのか」

エルフ「食べる習慣がないんだ」

戦士「へえ、そんなんで力でるのか?」

エルフ「出る」

戦士「ふーん、肉が食えねえとか考えたくもねえな」

エルフ「そうか」

戦士「それともそれがエルフの長生きのコツなのかね?」

エルフ「エルフが長生きなのは種族的なものだ」

戦士「そうなのか」

エルフ「まあ長生きと言っても人より少し長いだけだがな」

戦士「それでも百年は生きるんだろ?」

エルフ「まあな」

戦士「それにしてもエルフの冒険者なんて珍しいな。ほとんどのエルフは自分達の里から出てこねえのによ」

エルフ「……いろいろあるんだ。ならば聞くが貴様はなぜ冒険者をやっている?」

戦士「俺の家は農家でよ、俺は三男でさ。三男じゃ貰える土地もすくねえからな。せっかくだしでっかく生きてみてえだろ?」

エルフ「……」

戦士「しみったれた生き方するなんてごめんだね」

エルフ「……博打だな」

戦士「博打で結構!楽しければいいんだよ楽しければな」

エルフ「貴様は何も悩みがなさそうでいいな」

戦士「お、俺にだって悩みごとぐらいあるっつうの!」

エルフ「ほう?」

戦士「その……今何を食おうかな、とか」

エルフ「それはそれは、大層な悩みをお持ちで」

戦士「うるせえ!悩みごとがなくって悪かったなあ!」

エルフ「別に悪いなどとは言ってないだろう」

戦士「いーや言ったね。絶対にそういう意味がさっきの言葉の中に入ってた。間違いない」

エルフ「そんなことはない、貴様の気のせいだ。それよりも朝食にしようか。あそこの果物なんて美味しそうだぞ」

戦士「ちっ、ごまかしやがった」

ドンッ

エルフ「……ッ!」

盗人「おっとごめんよ、わざとじゃねえんだ。エルフのお嬢ちゃんも気をつけな」

エルフ「…………おい」

盗人「ああ?なんだ……」

バキィ!

盗人「へぶッ!?」

戦士「おいなにやってんだよ!?」

エルフ「盗ったものを返せ、この薄汚い盗人が!」

盗人「こ、このアマ!何しやが…」

ドゴッ!

盗人「ふぐぅっ!」

エルフ「返せと言っているんだ。目をつけた相手が悪かったなこの屑が」

盗人「か、返すから許してくれよぉ……」

戦士「まったくよお。スリをするならちゃんと相手を……」

エルフ「そうか、なら次は落とし前をつけさせてもらおうか」

盗人「え……」

エルフ「……盗みをするようなその手なんていらないよな?」

盗人「ひいっ!」

エルフ「指を一本づつ切り落としてやろう」

戦士「おい」

エルフ「……なんだ」

戦士「それくらいでいいだろ。脅しもそれくらいにしとけ」

エルフ「……なぜこいつを庇う?」

戦士「別に庇ってなんかねえよ」

エルフ「ならなぜ止める」

盗人「た、助け……」

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